いっ‐ち【一致】
一致
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/09/12 00:12 UTC 版)
ナビゲーションに移動 検索に移動一致(いっち、英語: agreement[1])または呼応(こおう、英語: concordance[1])とは、ある語や句の意味的・形式的な特徴によって、別の語の形式が変わることである[2][3]。照応または符合といわれることもある[4]。ある語が別の語の文法範疇に応じて屈折する現象といえる[5]。
概要
(1) | ロシア語 | ||||||||||||||||||||
Знаешь какой мне всегда давала совет моя мама? | |||||||||||||||||||||
zna-eš' | kak-oj | mne | vsegda | dava-l-a | sovet | moj-a | mam-a? | ||||||||||||||
知っている-2単 | どんな-男単対 | 私.与 | いつも | 与える-過-女単 | 忠告(男)[単対] | 私の-女単主 | 母(女)-単主 | ||||||||||||||
「母が私にいつもどんな忠告をしてくれたか知っていますか」 |
例えば上のロシア語の例では、名詞とそれを修飾する形容詞の間に性・数・格の一致、名詞句とそれを主語とする動詞の間に性・数の一致が起きている。sovet「忠告」は男性名詞 (M) で単数 (SG)・対格 (ACC) のかたちをとっているので、それを修飾する kakoj「どんな」も男性・単数・対格の語尾 -oj をとっている。また、mama「母」は女性名詞 (F) で単数・主格 (NOM) なので、名詞句の moja mama「私の母」も女性・単数・主格となり、それを主語とする動詞 davala「与えた」が女性・単数の語尾 -a で終わっている。
用語
一致を引き起こす要素をコントローラー (controller) またはトリガー (trigger)、ソース (source) と呼び、コントローラーとの一致によってその形式が決まる要素をターゲット (target) という。一致の起きる統語的環境は一致のドメイン (domain) 、一致を引き起こす特徴は素性(そせい、feature[1])と呼ばれる。素性は値(あたい、value[1])を持っており、例えばロシア語の性の素性には男性・女性・中性の三つの値がある。素性は伝統的には文法範疇とも呼ばれる。上で述べた名詞とそれを修飾する形容詞の性・数・格の一致を例にとると、名詞がコントローラーであり、それを修飾する形容詞をターゲットとして一致が起きている。一致している素性は性・数・格の三つで、一致のドメインは句である。
典型的な一致
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普通、コントローラーの素性の値はそれ自体にはっきり示されているので、典型的な一致は情報量が少なく冗長的である[6]。例えば右の英語の例では、名詞句 the book/the books が動詞の一致を引き起こすコントローラーであり、the book は単数 (SG)、the books は複数 (PL) ということがそのかたちからはっきり分かる。動詞 is/are は主語の名詞句に合わせてかたちを変えているだけであり、かたちが変わることによって新しい情報が伝わるわけではない。
一方、コントローラーに素性の値が示されない場合には、一致によって新しい情報が伝わることがある。例えば単複同形の the sheep が主語である場合、動詞が is/are とかたちを変えることで羊が一匹なのか複数いるのかという情報が伝えられる。
典型的でない一致(ブルガリア語の例) | |||
---|---|---|---|
Негово Величество е дошъл. | |||
Negov-o | Veličestv-o | e | došăl. |
彼の-N.SG | 威厳(N)-SG | ||
国王陛下[M.SG] | AUX.3SG | 来る.PST[M.SG] | |
「国王陛下がいらっしゃった」 |
また、コントローラーの素性の値が常に変わらないのが典型的な一致である。例えばロシア語の名詞 mama「母」は、常に女性として一致し、男性や中性のかたちを引き起こすことはない。しかし、右のブルガリア語の例のように、あるドメインでは中性、別のドメインでは男性として一致を引き起こすような場合がある。
日本語
日本語では、名詞句の格はそれに1回だけ後置する格助詞で表され、名詞とそれを修飾する形容詞の格の一致はない。また主語と動詞との一致もない。一方で、名詞とそれを修飾する数詞の語尾(助数詞)が一致する(例:一本の棒/一枚の紙/一匹の犬/ひとりの男)。これらは東アジアの多くの言語に共通する性質である(アイヌ語には主語および目的語と動詞の間、また所有者に関する人称の一致がある)。
日本語特有の一致としては、係助詞と述語の活用形の一致である係り結びがある。
脚注
- ^ a b c d 『文部科学省学術用語集:言語学編』
- ^ Steele 1978: 610.
- ^ Corbett 2006, p. 4.
- ^ 亀井・河野・千野(編)1996、p.69
- ^ 斎藤・田口・西村(編)2015、p.10
- ^ Corbett 2006.
参考文献
- Corbett, Greville (2006). Agreement. ISBN 9780521001700
- 亀井孝・河野六郎・千野栄一編 「照応」 『言語学大辞典:第6巻 術語編』 三省堂、1996年、710頁。ISBN 4-385-15218-7。
- 斎藤純男・田口善久・西村義樹編 「一致」 『明解言語学辞典』 三省堂、2015年。ISBN 4385135789。
関連項目
一致
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/09/17 13:58 UTC 版)
たとえば Mātökô ma ngai manya mābālë māne ma ncömbëlī yo maölimbana. 「君が私に買ってくれた私のこれら2つの大きな匙がなくなっている」という文中で mātökô〈匙〉の ma という接頭辞は他の語の接頭辞や節の前の小辞として繰り返し登場するが、Whitehead (1899:8) はこれを「頭韻的一致」(英: alliterative agreement)と呼び、こうした共通の接頭辞による節と主語の一致はバントゥー諸語に共通して見られる現象であるとしている。Whitehead はまた同ページにおいて、「特に出だしで間違えると会話、作文いずれにおいても後の試みで誤りが明白に現れるし、伝達手段よりも思考の方に気を取られていると、そうして引き継がれてきた最初の誤りが嘆かわしくも必ず現実のものとなるであろう」などと述べ、ボバンギ語におけるこの文法的特徴を疎かにしないように戒めている。
※この「一致」の解説は、「ボバンギ語」の解説の一部です。
「一致」を含む「ボバンギ語」の記事については、「ボバンギ語」の概要を参照ください。
一致
「一致」の例文・使い方・用例・文例
- 彼の言うことは行動と一致しない
- 2つのグループは改革について意見が一致していない
- 2通の紹介状は一致した
- その犯罪に関する2人の目撃者の説明は一致しなかった
- ロマンス語では形容詞は性と数が修飾する名詞と一致する
- その点では我々は一致していた
- 次に何をなすべきかについてはまだ意見が一致していない
- それは我々の要求と一致した
- 政府はこれらの規則を他のヨーロッパ諸国のものと一致させなければならないだろう
- その薬の販売を禁止するという動議が満場一致で可決された
- 彼の言うことは事実と一致しない
- 彼の意見は党の政策に一致しているようには思えなかった
- 何という偶然の一致だろう
- 意見の一致;世論
- その問題について意見の一致をみる
- 彼の話は事実と一致しない
- 一致協力して努力する
- 理想と現実はめったに一致しない
- 言行を一致させなさい
- 彼は約束と実行とがあまり一致しない
一致と同じ種類の言葉
品詞の分類
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