日系人 日本の国籍上の取り扱い

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日系人

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/01/28 18:02 UTC 版)

日本の国籍上の取り扱い

日本国の国籍法は、1985年に改正されるまで父系血統主義をとっていた[18]。すなわち、父親が日本国民であれば子も日本国籍を得られるが、母親のみが日本国民である場合、子は日本国籍を得られなかった[18]。20世紀前半に日本から移民した1世のもとで生まれ、現地で結婚した日系2世の女性から生まれた子供(3世)は、日本国籍を得ていない[要出典]。またこの事情により日本国籍を得られなかった3世男子の子供(4世)も日本国籍を得られない。日本国の国籍法の父母両系血統主義の採用から30年近くが経過し、このような事情が存在していることを想像することは難しくなっているが、留意すべき点である[独自研究?]

日系人はしばしば複数の国籍を持っている。1985年以降、日本は国籍に関して主に「父母両系統血統主義」(親のいずれかが日本国民ならば日本国籍を取得できる)である[18]。一方で日本人が多く移住した北米・南米の多くの国は主に「出生地主義(生地主義)」(生まれた国の国籍を取得できる)を採っているためである。近年の改正により、出生地主義国も血統主義的な要素を、血統主義国も出生地主義的要素を統合する傾向がある。例えばカナダ人夫婦の子供は、カナダ国外で生まれてもカナダ国籍が与えられる。

生地主義の国で1985年以降に生まれた者は、両親のどちらかが日本国籍を保持している限り日本と出生国両方の国籍を持つことができる[18]。また生地主義の国ではなくとも、日本人と血統主義の国の人間との国際結婚であれば、生まれた子供が二重国籍を持つ可能性がある(イランなど父親のみの血統主義しか認めない国もある)。またそのような国際結婚家庭の子供が生地主義の国で生まれた場合(例えばペルー人と日本人の子供がアメリカ合衆国で生まれた場合)、子供は三重国籍となる。

ただし、中華人民共和国など一部の国では血統主義の規定が厳密である。例えば、出生した日本人と中華人民共和国籍保持者の子は、出生とともに中国籍を保有するか、日本籍を選択することを強いられる。仮にも日本人と中国人の親を持つ子供が両国に出生届を出して、両方の国籍を得ようとしても、日本の国籍を選択する意向がないか厳しく調査される。中国当局に外国籍の所持が発覚した場合、中国籍を剥奪されるため、中国人と日本人夫婦の子孫は日系人にはなりえたとしても、日本国籍と中国籍を持つ多重国籍になることはほぼあり得ない。

海外で出生の子供の出生届を日本の大使館総領事館に提出しなかったり、出生届に国籍留保の記入をしなかった場合は、両親とも日本人であっても子供に日本国籍は与えられない(ただし、養子でなく日本国民であった者の子の場合、日本に引き続き3年以上住所または居所が有れば、帰化手続きを取って日本国籍を取得することができる)。

日本の国籍法は、経過措置等を除き、多重国籍を防止するよう1984年に改正、1985年に施行されたため、基本的には22歳になるまでに国籍を選択しなければならないとされている[18]。しかし、日本国籍の選択の宣言をしても、他の国が多重国籍を権利として認めている場合にはその国籍は失われないため、多重国籍の状態でいられることになる。日本の国籍法は日本の国籍の選択の宣言をした場合、他国の国籍の離脱に努めることとなっているが、それには強制力は無く、また実際の運用上それを強力に要求した事例は知られていない。他国籍についてはあくまで「日本の国内法に基づき」「外国籍を放棄する」ことを「日本政府に対してのみ宣言」したと「日本政府が一方的にみなす」に過ぎず、当該「他国政府」に対して国籍を変動させるような拘束力を持たないからである。日本の国籍法は、多重国籍を認めている他国において日本国民の権利を行使する事や他国民の権利を行使することを禁じてはいない。

また、法改正前からの既得権者に対する経過措置として、みなし宣言者に対しては国籍法第15条の「国籍選択の催告」及び第16条の「他国籍の離脱の努力規定・外国公務員となった場合の日本国籍喪失規定」は適用されないこととなっている(既得権対象者であっても自主的に日本国籍を選択した人は第16条の対象にはなる)。このため、「日本政府からは『日本国籍を選択し外国籍を放棄することを宣言した』とみなされているものの、法的には日本国籍も外国籍も引き続き合法的に保有している」重国籍者が多数存在する。

一方、この改正以降に出生するなどして本人の志望によらずに日本と他国との重国籍となった者は、22歳になるまでの間に国籍の選択をしなければならないのは改正前からの重国籍者と同じである。ただし

  1. その期限までに選択しなかった場合に「日本国籍選択宣言したものとみなす」ようなどちらかに自動決着させる規定はなく、そのまま「未選択状態」が続く
  2. 選択をしなかった場合は国籍法第15条の「催告」規定の適用を受け日本国籍を失う可能性がある。
  3. 日本国籍の選択を宣言した場合は他国籍の離脱に努めることが求められる(あくまで努力規定)

など、改正前からの重国籍者とは異なり、規制が厳しくなっている(ただし、過去実際に第15条と第16条の手続が行われた例はない)。

なお、元々の制度として重国籍者を網羅的に正確に把握・登録するシステムが日本にはない(重国籍を自ら表明している著名人や自ら重国籍者であることを法務局等に届け出ている人のような個別ケースを除く)。このような「みなし宣言者」、「未選択者」、「日本選択宣言者」である日本人の中には日本の旅券と外国の旅券の両方、あるいは外国の旅券のみを持って日本での出入国手続に及ぶ者が存在する。このような場合、出入国管理及び難民認定法(入管法)第2条第2号の規定の建前から言えば重国籍者は「当然に日本の旅券で日本人扱いで出国・帰国手続をする」ことが求められることになる。実際には前述のように政府がそもそも誰が重国籍者かを把握しきれていないため、(重国籍者とは気づかれぬまま)外国旅券でそのまま外国人として手続ができてしまうケースもある。現実的な出入国手続の現場の対応としては、戸籍謄本その他の資料で確認の上、外国旅券に日本人用の出国・帰国証印(スタンプ)を押して「重国籍者」と漢字で付記し日本人の出国・帰国の記録として取り扱うこととなっている[19]が、特に日本からの出国で外国旅券のみの場合は日本国籍の確認に手間取り出発便に乗り遅れるなどの不便をこうむる可能性もある[20]

日本の国籍法の多重国籍に関するさらに詳しい内容は国籍法 (日本)#多重国籍者の国籍選択制度を参照のこと。


注釈

  1. ^ ヤンマーサッカー部セレッソ大阪の前身)在籍時代、釜本邦茂Jリーグ初代キャプテン)とチームメイトだった。

出典

  1. ^ http://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/tokei/hojin/11/pdfs/1.pdf[要ページ番号]
  2. ^ Japan news, commentary, culture, sports | The Japan Times(2009年3月6日時点のアーカイブ). Search.japantimes.co.jp. Retrieved on 2013-08-24.
  3. ^ Adachi, Nobuko (2006-05-30). Japanese diasporas: Unsung pasts, conflicting presents, and uncertain futures. ISBN 978-0-415-77035-4. https://books.google.co.jp/books?id=litYzL0GYSkC&pg=PA97&lpg=PA97&redir_esc=y&hl=ja#v=onepage&q&f=false. [要ページ番号]
  4. ^ 海外日系人協会の資料より在日日系人数、海外日系人数を合計。概数。アジア・ヨーロッパなどへの永住者や日系人は含まれていない。
  5. ^ “Uruguay entra al radar de Japón”. エル・パイス英語版. (2018年2月25日). オリジナルの2018年2月25日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20180225094255/https://www.elpais.com.uy/que-pasa/uruguay-entra-radar-japon.html 
  6. ^ Boxer Codex”. Boxer mss. II (ca. 1590). 2019年12月7日閲覧。
  7. ^ 「慶長遣欧使節」派遣400周年」ニッポンドットコム財団
  8. ^ 「慶長遣欧使節」派遣400周年」ニッポンドットコム財団
  9. ^ 吉岡桂子 (2018年6月8日). “「越境者の政治史」書評 「移動」に焦点、「日本人」とは”. 朝日新聞. オリジナルの2020年3月26日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20200326222025/https://book.asahi.com/article/11605271 
  10. ^ “(世界発2018)メキシコの村、息づく日本 榎本武揚が提唱、121年前に入植”. 朝日新聞. (2018年2月13日). オリジナルの2021年8月23日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20210823021050/https://www.asahi.com/articles/DA3S13356994.html?iref=pc_photo_gallery_bottom 
  11. ^ “日本と中南米(エピソード集)~遠くて近いアミーゴの国々~”. 外務省. オリジナルの2021年2月24日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20210224182949/https://www.mofa.go.jp/mofaj/kaidan/kiroku/s_hashi/arc_96/nanbei/episode.html 
  12. ^ a b “安倍首相、ウルグアイとパラグアイを訪問”. MBS. (2018年12月3日). オリジナルの2018年12月4日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20181203163916/https://www.mbs.jp/news/zenkokunews/20181203/3539503.shtml 
  13. ^ a b “安倍首相、ウルグアイとパラグアイを訪問”. BSN. (2018年12月3日). オリジナルの2018年12月4日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20181203164041/https://www.ohbsn.com/news/detail/jnnzenkoku20181203_3539503.php 
  14. ^ a b “安倍首相、ウルグアイとパラグアイを訪問”. TBS. (2018年12月3日). オリジナルの2018年12月4日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20181203164350/https://news.myjcom.jp/video/story/3539503.html 
  15. ^ 引き揚げのはじまり”. 舞鶴引揚記念館. 2020年11月28日閲覧。
  16. ^ “パラグアイ共和国(Republic of Paraguay) 基礎データ”. 外務省. (2020年11月25日). オリジナルの2021年6月7日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20210607054604/https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/paraguay/data.html 
  17. ^ 貴堂嘉之 『移民国家アメリカの歴史』岩波書店岩波新書〉、2018年10月19日、199頁。 
  18. ^ a b c d e 日本と海外の国籍について知る”. 日本経済新聞 (2017年2月20日). 2020年11月28日閲覧。
  19. ^ “日本人出・帰国記録(EDカード)の廃止について”. 法務省. (2001年6月8日). オリジナルの2001年10月19日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20011019075741/http://www.moj.go.jp/PRESS/010608-1.html 
  20. ^ “国籍の選択について”. 法務省. オリジナルの2020年12月23日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20201223055433/https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06.html 
  21. ^ “熊谷6人殺害 ペルー人容疑者の兄は17人殺した「死の使徒」” (日本語). 日刊ゲンダイ (日刊ゲンダイ). (2015年9月18日). オリジナルの2015年9月19日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20150919151032/http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/newsx/164199/1 2015年9月19日閲覧。 
  22. ^ “熊谷6人惨殺!ペルー男なぜ日本名?日系人は優遇されて稼げる” (日本語). ジェイ・キャスト (ジェイ・キャスト). (2015年9月18日). http://www.j-cast.com/tv/2015/09/18245619.html?p=all 2015年9月19日閲覧。 
  23. ^ 海外日系人協会資料より抜粋。平成29年。概数。





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