アルミニウム
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用途
20世紀のうちにアルミニウム及びそれを主体とする合金は鉄鋼材に次ぐ主要金属材料としての地位を確立している。日用品も多く、非常に生活に身近な金属である。天然には化合物のかたちで広く分布し、ケイ素や酸素とともに地殻を形成するおもな元素のひとつである。自然アルミニウム(Aluminum、Native Aluminum)というかたちで単体での産出も知られているが、稀である。単体での産出が稀少であったため、自然界に広く分布する元素であるにもかかわらず発見が19世紀初頭と非常に遅く、上述のとおり製錬にも大きなエネルギーを必要とすることから産業的に広く使用されるようになるのは20世紀に入ってからと、金属としての使用の歴史はほかの重要金属に比べて非常に浅い。
アルミニウムの比重は鉄の3分の1程度と軽量であるために利用しやすく、また、軟らかくて展性も高いなど加工しやすい性質を持っており、さらに表面にできる酸化皮膜のためにイオン化傾向が大きい割には耐食性もあることから、一円硬貨やアルミ箔、缶(アルミ缶)、鍋、外構、エクステリア、建築物の外壁、道路標識、ガソリンエンジンのシリンダーブロック、自転車のフレームやリム、パソコンや家電製品の筐体など、さまざまな用途に使用されている。ただし大抵はアルミニウム合金としての利用であり、1円硬貨のようなアルミニウム100 %のものはむしろ稀な存在である。代表的なアルミニウム合金であるジュラルミンは航空機材料などに用いられているが、金属疲労に弱く、腐食しやすいという欠点を持つため、アロジン(クロメート処理)やジンククロメートで表面を保護し、定期的な点検で腐食部を早期に発見する体制を取ることが求められる。
2014年度において、日本のアルミニウム用途でもっとも大きかった用途は輸送用機械の製造であり、40.1 %を占める。次いでアルミサッシなどの建築用途が12.9 %、アルミ缶やアルミ箔などの容器包装用途が10.6 %を占め、この3分野がおもなアルミニウムの用途であるといえる[24]。
輸送用機械
軽量で加工性もよいことから、軽さと強度の両立のため部材形状の工夫も求められる航空機ではアルミ合金が主流となった。冷戦中盤あたりまで、塗装まで削って軽量化したアルミの銀色の輝きは高速航空機の象徴であった(ただし20世紀末頃からさらなる性能向上の要求のため炭素繊維複合材料やチタン合金等の新素材の割合が増えつつある)。鉄道車両でも新幹線電車をはじめとして特急型電車や通勤型電車などでアルミ車体の採用例も多い。押し出し材を使って長大な部材を一体成型し、さらに連続溶接組立する低コスト化量産法が確立され、同一断面を保った16–25 mに及ぶ車体を持つ鉄道車両では、生産性の面でメリットが大きい。なお、一時期自動車も航空機材料に倣うかたちでアルミ化の取り組みがあったが、一部メーカーの高級車やスポーツカーなど特殊な車種での導入に留まり、費用対効果を両立させるため、現在はアルミではなくハイテン材料(高張力鋼)の適用が進み、また炭素繊維の適用も始まっている[25]。軽量さが要求される高速船でもアルミが船体材料に選択されることがある。アルミ合金は軍事分野では装甲車輌や戦闘艦にも応用されているが、鉄鋼に比べて火災時の高熱や被弾に弱いため、軽量さを求められる小型の艦船や、自走砲など直接敵と交戦することを想定しない装甲車輌での使用が主流である。
建材
構造材としての使用もある(アルミニウム構造)が、窓枠(アルミサッシ)やフェンス等、外構での使用が多い。工場での規格集中生産により高い精度で加工されており、また軽量であるため、建付けや現場での組み立てやすさ、基本的な耐候性が優秀で、1960年代以降急速に普及した。しかし、断熱性の問題から窓ガラスともども結露を生じやすく、近年は代替品として樹脂サッシや現代化された木製サッシが増えている[26]。
導電体
高圧送電線にもアルミニウム線が使用される。銅に比べ単位体積あたりの電気伝導度は劣るが、密度が低いため銅線よりも軽量に抑えながら断面積をより大きく取る(太くする)ことができ、単位質量あたりの電気伝導度で優り材料費でもほぼ拮抗する。このため支柱(送電鉄塔)のスパンが大きくなる高圧送電線の材料として有利である。
粉末
粉末になったアルミニウムは可燃物であり、粉塵爆発を起こす場合がある。アルミニウム粉は燃焼熱が大きく、燃焼するときにガスを生じないため熱が集積して高温となり、強い白色の光を発する。これを利用して火薬類に発熱剤として添加される。スペースシャトルの固体燃料補助ロケットでも燃料として使用された。アルミニウム粉の性質は表面積の大きさによって左右されるため、等級は粒度ではなく重量あたりの表面積を示す水面拡散面積で表示される場合が多い。粒度で表示されるような粒の大きいものは粒状アルミニウム粉(アトマイズドアルミニウム粉)と呼んで区別することが多い。
スラリー爆薬などの水湿状態の火薬に混ぜると、アルミニウムの表面で以下のような反応が起きて発熱し、水素が発生する。このため、アルミニウム粉の火災には水をかけることは禁忌である。
アルミニウム粉末は塗料に混ぜて使う場合もある。また、指紋の検出(おもに警察の鑑識課による捜査活動)などでアルミニウムの粉を使用することもある。
アルミニウム粉と酸化鉄(III)との混合物はテルミットと呼ばれ、マグネシウムリボンで着火すると激しく反応し、酸化アルミニウムおよび溶融鉄を生じる。この反応は鉄の溶接にも使われているテルミット反応である。鉄以外の金属の精錬(還元)にも応用される(テルミット法)。
日本の消防法では、150 μmの網ふるいを通過する量が50 %を超えるアルミニウム粉を第2類危険物と定めている。
その他
スポーツ用自転車フレームの素材としては、炭素繊維より安価で鉄鋼より軽量なため主流の素材である(ただし価格面に加えて疲労強度=耐久性の問題から、多数を占める廉価な日常車や実用車では依然として鉄鋼が占めている)。
真性半導体であるケイ素に微量のアルミニウムを添加することにより、P型半導体が得られる。
軽量で熱伝導性に優れるため、調理器具にアルミニウム合金がよく利用される。熱伝導度についても銅に劣るが、銅よりも安価であるため広く使われる[8]。
俗に「銀ペン」とも呼ばれる銀色の塗料には、アルミニウムの微粉末が顔料として加えられている。耐食性があるため、橋梁などの建築物によく使われた。
アルミニウムを利用した製品
- パナール・ディナ - 世界で初めてのオールアルミ合金の本格量産車。
- ホンダ・NSX - 世界で初めてオールアルミモノコックボディを採用した。
- 国鉄203系電車
- 国鉄301系電車
- A-train - 日立製作所が製造するアルミニウムダブルスキン構造の鉄道車両。
- アルミ箔
- アルミホイール - 自動車用ホイール。
注釈
- ^ 北米ではaluminumの綴りが用いられ、国際的にはaluminiumの綴りが用いられる[2]。
- ^ 訳注:ここでの「土」は西洋の四元素における土元素を意味する。
- ^ 原文:Was Oersted für einen Aluminiumklumpen hielt, ist ganz gewiß nichts anderes gewesen als ein aluminiumhaltiges Kalium.[41]。
- ^ 産金法(1937年)、金、銀又は白金等の取引等取締に関する件(1945年)、貴金属地金の取引等についての帳簿及び報告に関する政令(1949年)の廃止と同時に新設された貨幣回収準備資金に関する法律(2002年)により、財務大臣は貨幣回収準備資金に属する地金(引換貨幣及び回収貨幣を含む)を貨幣の製造に要する地金として造幣局に交付することができる。
出典
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- ^ ついに量産車へ、炭素繊維「鉄並み価格」視野で経済圏拡大 日本経済新聞 2014年11月19日
- ^ 低い断熱性なぜ放置、世界に遅れる「窓」後進国ニッポン 日本経済新聞 2014年11月7日
- ^ 「アルミニウムと健康」連絡協議会 ‐ Q7.透析脳症とアルツハイマー病の関係性は?-アルミニウムと健康Q&A
- ^ 「アルミニウムと健康」連絡協議会 ‐ よくわかる「アルミニウムと健康」基礎知識
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- ^ 日本貿易図鑑「アルミニウムの輸入(輸入額、輸入先、輸入量)」。
- ^ 財務省「地金の売払いスケジュール(地金の売払い見通し)」。
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