アルマイト
アルマイト加工
アルマイト
アルマイト
アルマイト
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/03/06 22:31 UTC 版)
アルマイト(英: alumite or anodize、almite[1])は、アルミニウム表面に陽極酸化皮膜を作る表面処理。アルミニウムは活性な金属で大気中に放置しただけで表面に薄い酸化被膜を形成するが、アルマイトはその酸化被膜を人工的に厚く形成させたものである[2]。
概要
アルマイトは人工的に酸化被膜を厚く成長させる方法であり(アルマイト法)[3]、これによって表面に形成された酸化アルミニウムAl2O3被膜をアルミニウム陽極酸化被膜といい、一般に「アルマイト」と呼んでいる[4]。この被膜は耐蝕性、耐候性を向上させるほか、その被膜の吸着性を利用して着色したり塗装下地に用いられる[3]。なお、アルマイト(アルミニウム陽極電化)とメッキは異なるものであり[2][3]、メッキの場合には素地金属とは無関係に他金属が表面を被覆するのに対し、アルマイトの場合には素地金属そのものが被膜を形成する[3]。具体的には、ワークにつなぐ電極がアルマイトでは陽極、メッキでは負極であり、メッキの場合は処理溶液中に溶けている金属がワーク表面に積層するのに対し、アルマイトの場合はワーク表面で酸化反応が起きることで表面を溶かして酸化被膜を形成する[2]。
陽極酸化とは、対象となる材料の表面を陽極として、主に強酸中で電解によりバルブ金属の表面を酸化させる処理を指す。アルマイトはアルミニウムの代表的な表面処理方法である。日本産業規格としてはJIS H8601「アルミニウム及びアルミニウム合金の陽極酸化皮膜」(ISO7599対応)、JIS H8603「アルミニウム及びアルミニウム合金の硬質陽極酸化皮膜」(ISO10074対応)及びJIS H0202「アルミニウム表面処理用語」(ISO7583対応)がある。
歴史
1917年(大正6年)に創設された理化学研究所(理研)では物理学部の鯨井恒太郎の研究室(鯨井研究室)で電気絶縁材料の研究が行われており、1918年(大正7年)10月に鯨井研究員の助手として植木榮が入所した[5]。そしてまず1923年(大正12年)12月28日に鯨井と植木によって『「アルミニウム」並びに「アルミニウム合金」の防銹法』(特許第61920号)が特許出願され、これが日本で最初の陽極酸化被膜の特許となった[5][6]。
その後、1928年(昭和3年)7月、宮田聡(宮田聰)を実験工場の責任者として陽極酸化被膜製品の工業化に着手した[5]。ある日、宮田がアルミニウム製三角定規の陽極酸化処理の煮出し(湯洗)を行っていたところ、本来重なってはいけない箇所が重なったまま処理されたことがきっかけで、アルミニウム酸化被膜の多孔性は高圧水蒸気にさらすことでなくなると考えた[5]。宮田は横浜高等工業学校で教授をしていた親友の山田嘉久を訪問し、オートクレーブで検証実験を行って高圧蒸気処理法を生み出した[5]。この時をもって「アルマイト誕生の瞬間」とされることもある[5]。
機能
腐蝕保護
鉱物性の酸化物であるアルマイト皮膜を形成することで、化学的あるいは電気化学的にアルミニウムの素地を保護することができる[3]。耐蝕性は一般的に被膜が厚くなるほど増大し、封孔処理などの後処理によっても改善される[3]。
耐摩耗性
アルミニウムは銀白色の金属光沢をもつが、曝露によって金属光沢は失われる[3]。また、アルミニウムは比較的軟らかい金属であるため、ひっかき傷や擦り傷ができやすい[3]。アルマイトにすることで硬度を増すことができ光沢面を長期に維持できるようになる[3]。
装飾目的
アルマイトは光輝処理や梨地仕上げなどの組み合わせにより、光沢を出したり、艶消しに加工したりできる[3]。またアルマイトに対しては染色、印刷、写真焼付け等もできる[3]。
種類
アルマイトは普通アルマイトと硬質アルマイトに大別される[2]。普通アルマイトは硬さ150 - 250(HV)、処理電圧15V、処理温度20℃以下である[2]。一方、硬質アルマイトは硬さ300(HV)以上、処理電圧30V、処理温度0 - 10℃以下である[2]。
なお、普通アルマイトと硬質アルマイトとは別に、特殊な皮膜性能をもったアルマイトを機能アルマイトと呼ぶことがある[4]。被膜の吸着性(アルマイト層の微細孔への染料の吸着)を利用したものに着色アルマイトがある[2][3]。日本では1924年(大正13年)に開発されてから1934年(昭和9年)に、アルマイトより先行してあったクロム酸による被膜への着色技術ができるまではシュウ酸の自然発色のものしかなかった(外国では1925年にイギリスで陽酸化被膜を染色溶液に浸漬して全面着色の特許が取られている)[7]、このため当初はアルマイトと言うと「金色の金属」というイメージがあった。シュウ酸・シュウ酸法での着色原因については諸説あるが、意図的に染料を入れたものとは異なる[8]。
処理の工程
アルマイト処理
電解液には硫酸やシュウ酸(蓚酸)、クロム酸、リン酸などがあるが、工業的には硫酸(10 - 15%)、シュウ酸(3 - 5%)が用いられる[3]。
封孔処理
アルマイト層にできた微細孔を煮沸することで狭くして耐蝕性等を持たせることを封孔処理という[3]。
利用
アルマイトを利用した家庭用製品には弁当箱・やかん・鍋などがある。また、戦後まもなくの1951年(昭和26年)にアルマイト製の食器が学校指定食器に指定されたことで、学校給食の食器としてもアルマイトが用いられるようになった。非常に軽く児童の持ち運びにも適していたほか、頑丈であったためその後も長く学校給食で用いられてきた。しかし、熱い料理を入れると熱さで持てなくなることから、次第に陶器やプラスチックに置き換わっていった[9][10]。
関連項目
脚注
- ^ 理化学研究所による表記。
- ^ a b c d e f g 川崎孝俊 (2013). アルミ陽極酸化処理(アルマイト)技術の修得. 福井大学. pp. 15-18.
- ^ a b c d e f g h i j k l m n 生田一夫 (1963). “アルマイト製品のよしあし”. 日本醸造協会雑誌 (日本醸造協会) 58 (9): 788-791. doi:10.6013/jbrewsocjapan1915.58.788.
- ^ a b アルマイト処理発注の前に必ず知っておきたい16の事 - 東榮電化工業 2026年2月23日閲覧。
- ^ a b c d e f 富田悟 (2021). “理研におけるアルマイト研究の歴史を紐解く”. 表面技術 (一般社団法人 表面技術協会) 72 (4): 189-193. doi:10.4139/sfj.72.189.
- ^ 杉本克久「アルマイト」『日本大百科全書(ニッポニカ)』小学館。コトバンクより2024年12月23日閲覧。
- ^ 山口(2009)p.206・207
- ^ 馬場(1976) p.393
- ^ “学校給食の今 今は懐かしアルマイト製 全小学校で樹脂製食器に | 藤沢”. タウンニュース (2021年2月12日). 2025年1月29日閲覧。
- ^ 辰濃隆; 小林町子. “安全性を第一に給食を楽しめる食器を”. 教育家庭新聞. 2025年1月29日閲覧。
参考文献
- 馬場 宣良. “アルミニウム陽極酸化皮膜の発色機構”. 軽金属 (社団法人 日本金属学会) 15 (9): pp.204-215. doi:10.2320/materia1962.15.393. ISSN 1884-5835.
- 山口 裕. “アルミニウムの陽極酸化処理と装飾的表面処理”. 軽金属 (一般社団法人軽金属学会) 59 (4): pp.204-215. doi:10.2464/jilm.59.204. ISSN 1880-8018.
外部リンク
- アルマイト処理発注の前に必ず知っておきたい16の事
- メーカー技術者・加工業者のための「アルマイトQ&A」
- 特殊アルマイト/機能アルマイト
- 蓚酸アルマイト(蓚酸法陽極酸化皮膜) - (理研アルマイト工業株式会社)
- 硫酸アルマイト(硫酸法陽極酸化皮膜) - (理研アルマイト工業株式会社)
- 耐熱アルマイト等の高機能・精密アルマイト加工の東榮電化工業株式会社(神奈川県相模原市)
- アルマイト加工の株式会社ミヤキ(静岡県浜松市)
アルマイト(あるいはシュウ酸アルマイト)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/15 15:17 UTC 版)
「給食」の記事における「アルマイト(あるいはシュウ酸アルマイト)」の解説
軽く収納しやすいなど長所もあるが、熱伝導性が高く熱い物を入れると器が高温になり持つことや口にすることが困難となり、また、内容物が冷めやすいといった欠点もある。さらに、作業時の騒音もうるさいという欠点がある。従来は学校給食で多く用いられていた。
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