熱処理とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 同じ種類の言葉 > 工業 > 加工 > 熱処理 > 熱処理の意味・解説 

ねつ‐しょり【熱処理】

読み方:ねつしょり

[名](スル)材料加熱・冷却操作をして、目的とする特性改善すること。金属の焼き入れ焼きなまし焼き戻しなど。


熱処理

英語 heat treatment

材料いろいろな組み合わせ加熱冷却行い材料性質改善変更する処理のこと。金属材料場合では、熱処理によって金属組織変化し、必要とされる性質や状態を付与することができる。鉄鋼材料焼き入れ焼きなましなどが代表的なものである。自動車ではエンジンミッションアクスル関係の鍛造部品主体種々の熱処理が行われていて、機械加工前に行う調質(焼入れ焼もどし)や、機械加工完了後に熱処理を行うものがある。なお、最近は非調質鋼採用増え調質処理を行うことは少なくなっている。

※「大車林」の内容は、発行日である2004年時点の情報となっております。

ねつしょり 熱処理 heat treatment


熱処理

heat treatment
固体鉄鋼製品全体として又は部分的に熱サイクルさらされ、その性質及び/又は組織変化をきたすような一連の操作
備考 鉄鋼製品化学成分がこの操作の間に変化することもある。

熱処理

鉄鋼代表される一部金属加熱冷却によってその内組織変態起こり性質大きく変化する場合がある。
  熱処理とはこうした特性利用して材料特性向上を目的行われる処理のことである。
  圧延など、金属冷間加工した場合組織格子欠陥増大して硬化する加工硬化)。これを融点半分程度まで加熱すると、熱エネルギーにより結晶再構築されて元の硬さに戻る(回復)。このときの温度再結晶温度と呼ぶ。
  鋼の場合温度冷却時間によって、パーライトオーステナイトマルテンサイトソルバイトといったそれぞれ異なった結晶構造変態する
  焼ならしは鋼をパーライト組織にする熱処理で、高温熱して一旦オーステナイト組織にした後、徐々に冷却してパーライト組織を得る。この際加工硬化影響無くなり靭性改善される焼ならし前処理として行われることが多い。
  焼入れは、鋼を熱してオーステナイト状態にした後、水中または油中で急冷してマルテンサイト組織変態させる。これにより硬度硬くかつもろくなる
  マルテンサイト組織の鋼は、もろいので再度熱処理を行い靭性回復させる。これを焼戻しという。
  金属再結晶温度以上に熱することを焼なまし焼き鈍し)といい、これにより加工硬化などを起こしていた組織再結晶によって整えられる。これにより硬度は下がり、加工応力除去される結晶組織均質化するため、加工前後工程として行われることが多い。

熱処理の種類
鋼をオーステナイト状態から徐々に冷却してパーライト組織にする。 加工硬化除去靭性改善
鋼をオーステナイト状態から急冷してマルテンサイト変態起こさせる処理。 硬度が増す。
靭性低くなる
焼戻し 焼入れした鋼を、再度600付近熱処理することにより、マルテンサイト組織ソルバイト変態する 焼入れによって低くなった靭性高くする。
焼なまし 金属再結晶化温度以上に熱することにより、組織均質化加工応力除去する 残留応力の除去硬度低くする、結晶組織均質化する。

用語解説

変態
温度上昇または下降させた場合などに、ある結晶構造から他の結晶構造変化する現象磁気変態のように必ずしも結晶構造の変化伴わないものもある。
加工硬化
金属材料加工により外力が加わると、その結晶中に多く欠陥転位)が発生する。この転位絡み合ってすべりを起こさなくなると結果的に硬化が起こる。
靭性
じん性粘り強さ衝撃破壊起こしにくいかどうか程度
※本用語集は、索引元の東大阪市製造業支援サイト「東大阪市技術交流プラザ」において、平成16年度委託事業で構築したコンテンツです。

熱処理

材料に、加熱冷却など特定の履歴与えることにより、所要性質および状態を付与する加工方法である。焼入れ焼きなまし焼きもどしなどは、熱処理の代表的なものである。ステンレスねじにおいては加工前に固溶化熱処理が行われ、また高張ボルト六角穴つきボルト、セットスクリュー、自動車用特殊鋼ボルトタッピングねじなどは、原則として成形後に焼入れ焼きもどし施し所定強度靭性粘り強さ)を得る。

熱処理(Heat Treatment)


熱処理

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/19 05:02 UTC 版)

熱処理ねつしょり: heat treatment)とは、主に金属材料に対して行われる、加熱・冷却・雰囲気により材料の性質を変化させる処理である。

熱処理の種類

全体熱処理

焼入れ
広義には、金属を所定の高温状態から急冷させる操作全般を指す[1][2]。狭義には、鉄鋼材料を金属組織がオーステナイト組織になるまで加熱した後、急冷してマルテンサイト組織にする熱処理のこと[3][4]
焼戻し
焼入れされた材料を適切な温度へ再度加熱し、組織を安定化、機械的性質を改善する処理[5]。マルテンサイト化させる焼入れの後には、ほとんど必ず行われる[6]。鉄鋼材料の焼戻しの場合、加熱温度は最大でもオーステナイト変態点以下とするのが原則で、実際には 100–250 °C の低温焼戻しや 450–680 °C の高温焼戻しが行われる[7][5]
調質
鉄鋼材料に対しては、焼入れと高温焼戻しの組み合わせを意味する[8][9]
焼なまし
残留応力の除去、延性の向上、被削性の向上、組織中の化学組成の均一化、結晶組織の調整などを目的として行う熱処理の総称[10][11][12]。鉄鋼材料に対しては、組織が平衡状態あるいはそれに近い状態になるように、加熱・冷却する熱処理を指す[13]。いずれにしても、「焼なまし」という語は非常に一般的な表現なので、「完全焼なまし」「中間焼なまし」「等温焼なまし」などのようにより具体的な表現が望ましいとされる[12][13]。鉄鋼材料に対して単に「焼なまし」と言った場合、オーステナイトになるまで加熱して十分な時間保持した後に徐冷する「完全焼なまし」を指すことが多い[11][14]焼鈍しと表記したり、焼鈍(しょうどん)と呼んだりもする[15]
焼ならし
サブゼロ処理
温度 0 °C 以下に冷やす処理[7]深冷処理零下処理とも呼ばれる[16][17]。主に焼入れ直後の鉄鋼材料に対して経年変化の元となる残留オーステナイトを減少させるために行う[16]セミオーステナイト系析出硬化型ステンレス鋼などでは、準安定オーステナイトをマルテンサイト化させるために行う[18]。およそ −80 °C まで冷やすようなサブゼロ処理ではメタノールドライアイスなどが冷却材として使われ、−200 °C 近くまで冷やすような場合は液体窒素が使われる[19]
溶体化処理
加熱・急冷することによって、析出を起こさせずに析出物が十分に溶け込んだ室温の材料を得る熱処理[9][20]。溶解させる析出物の固溶限度線以上まで加熱する[21][22]固溶化熱処理とも呼ばれる[9][20]アルミニウム合金チタン合金析出硬化系ステンレス鋼に対しては溶体化処理は時効硬化処理の前処理として行われる[23][22][24]オーステナイト系ステンレス鋼では主に耐食性確保のために行われる[21]
時効硬化処理
溶体化処理した材料を、適切な高温または室温で保持する処理[9]析出硬化処理などともいう[25][24]析出硬化型の合金について行われる熱処理で、微細な相を材料中に析出する[25]。上述のアルミニウム合金チタン合金析出硬化系ステンレス鋼などに対して行われる。
水靭
高マンガン鋼に行われる処理で、1050–100 °C の炭化物が固溶化する温度まで加熱したのち、急冷して組織を均一なオーステナイトにする処理[26][27]水じんとも記す[27]

表面熱処理

高周波焼入れ
火炎焼入れ
浸炭
窒化
レーザ焼入れ
浸硼
浸硫

炉の種類

  • 空気炉
  • 真空炉
  • ソルトバス炉

関連項目

出典

  1. ^ JIS B 6905 1995, p. 3.
  2. ^ ASTM A941-10a, p. 5.
  3. ^ 日本機械学会(編)、2007、『機械工学辞典』第2版、丸善 ISBN 978-4-88898-083-8 p. 1307
  4. ^ 山方 2010, p. 96.
  5. ^ a b 日本熱処理技術協会(編) 2013, p. 131.
  6. ^ 山方 2010, p. 102.
  7. ^ a b JIS B 6905 1995, p. 4.
  8. ^ JIS G 0201 2000, p. 11.
  9. ^ a b c d JIS B 6905 1995, p. 5.
  10. ^ JIS B 6905 1995, p. 2.
  11. ^ a b 日本熱処理技術協会(編) 2013, p. 121.
  12. ^ a b ASTM A941-10a, p. 1.
  13. ^ a b JIS G 0201 2000, p. 8.
  14. ^ ASTM A941-10a, pp. 1, 3.
  15. ^ "焼きなまし(焼鈍し)". 世界大百科事典 第2版. コトバンクより2020年9月22日閲覧
  16. ^ a b 日本熱処理技術協会(編) 2013, p. 134.
  17. ^ 大和久 2008, p. 16.
  18. ^ 田中 良平(編)、2010、『ステンレス鋼の選び方・使い方』改訂版、日本規格協会〈JIS使い方シリーズ〉 ISBN 978-4-542-30422-2 p. 112
  19. ^ 山方 2010, p. 110.
  20. ^ a b JIS G 0201 2000, p. 13.
  21. ^ a b ステンレス協会(編)、1995、『ステンレス鋼便覧』第3版、日刊工業新聞社 ISBN 4-526-03618-8 p. 89
  22. ^ a b 土田 信・吉田 英雄、1989、「アルミニウムの熱処理」、『軽金属』39巻8号、軽金属学会、doi:10.2464/jilm.39.587 pp. 592–594
  23. ^ 村上 陽太郎、1987、「チタン合金の相変態と熱処理」、『鉄と鋼』73巻3号、日本鉄鋼協会、doi:10.2355/tetsutohagane1955.73.3_420 pp. 424–426
  24. ^ a b 大和久 2008, p. 26.
  25. ^ a b 析出硬化”. 伸和熱処理. 2020年7月22日閲覧。
  26. ^ 日本熱処理技術協会(編) 2013, p. 135.
  27. ^ a b JIS G 0201 2000, p. 12.

参照文献

外部リンク


熱処理

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/10/21 09:17 UTC 版)

研磨材」の記事における「熱処理」の解説

褐色電融アルミナ研磨材は、加熱する壊れにくくなる。粒内の非晶質表面滲み出し、破壊起点となる傷を埋めるためである。

※この「熱処理」の解説は、「研磨材」の解説の一部です。
「熱処理」を含む「研磨材」の記事については、「研磨材」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「熱処理」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ

熱処理

出典:『Wiktionary』 (2021/08/22 01:35 UTC 版)

名詞

処理ねつしょり

  1. 材料昇温降温温度保持などの操作加えて材料性質変える処理

下位語

翻訳


「熱処理」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。



熱処理と同じ種類の言葉


品詞の分類


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「熱処理」の関連用語

熱処理のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



熱処理のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
デジタル大辞泉デジタル大辞泉
(C)Shogakukan Inc.
株式会社 小学館
三栄書房三栄書房
Copyright c San-eishobo Publishing Co.,Ltd.All Rights Reserved.
ダイキン工業ダイキン工業
Copyright (C) 2025 DAIKIN INDUSTRIES, ltd. All Rights Reserved.
吉崎メッキ化工所吉崎メッキ化工所
Copyright (C) 2025 (株)吉崎メッキ化工所. All rights reserved.
東大阪市技術交流プラザ東大阪市技術交流プラザ
Copyright (C) 2025 TECH PLAZA
丸ヱム製作所丸ヱム製作所
© 1998-2025 Maruemu Works Co,. Ltd. All rights reserved.
ジャパンナイフギルドジャパンナイフギルド
Copyright (C) 2025- JKG, All rights reserved.
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの熱処理 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの研磨材 (改訂履歴)、オーステナイト系ステンレス鋼 (改訂履歴)、オーステナイト・フェライト系ステンレス鋼 (改訂履歴)、ステンレス鋼 (改訂履歴)、チタン合金 (改訂履歴)、ポリアクリロニトリル (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。
Text is available under Creative Commons Attribution-ShareAlike (CC-BY-SA) and/or GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblioに掲載されている「Wiktionary日本語版(日本語カテゴリ)」の記事は、Wiktionaryの熱処理 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、Creative Commons Attribution-ShareAlike (CC-BY-SA)もしくはGNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2025 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2025 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2025 GRAS Group, Inc.RSS