博物館
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日本の博物館
概説
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博物館のように様々な物品を展示する施設としては、近代以前から社寺(神社・仏教寺院)の宝物殿や絵馬殿があった。また江戸時代後期には、平賀源内ら本草学者たちが「物産会」として博覧会のようなことも行っていた[10]。文久元年(1861年)の江戸幕府による文久遣欧使節に随行した市川清流は、その日録に英語で記された「British Museum」(大英博物館)に対して「博物館」の訳語を与えた。この文久2年4月24日(1862年5月22日)の記事が日本語による「博物館」の嚆矢であると考えられる[11]。その後の慶応3年(1867年)には、福澤諭吉の『西洋事情』でも「博物館」が用いられ[12]、また同年のパリ万博には幕府と薩摩藩、佐賀藩が出展した。
明治になってから、そのパリ万博の参加者だった田中芳男や町田久成によって、日本国内での博物館の設置が進められた[13]。1872年(明治5年)、ウィーン万博への出品準備として開かれた湯島聖堂博覧会(文部省博物館)が日本の博物館の始まりとされ、東京国立博物館はこの時をもって館の創立としている[14]。文部省博物館は翌年には太政官所轄の「博覧会事務局」に改編された。1875年(明治8年)、博覧会事務局から博物館と書籍館(国立国会図書館の前身)が分離して文部省の管轄に復帰し、前者は東京博物館と改称された。また、博覧会事務局は内務省管轄の博物館に改編され、東京にはこれら2系統の博物館が存在することとなった[15]。東京博物館は1877年(明治10年)に上野公園内に移転して、教育博物館と改称された。この教育博物館は現在の国立科学博物館である[16]。なお、東京国立博物館は前述の内務省管轄の博物館を前身とし、教育博物館とは別に人文系の博物館として同じく上野公園内に1882年(明治15年)に移転したもので、その建物はイギリス人のジョサイア・コンドルの設計によるものであった(関東大震災で倒壊)。
博物館の多くは1970年代中頃から急激に増え始め、1988年(昭和63年)に始まった「ふるさと創生事業」では各地で博物館の新設ラッシュが起き、1980年代後半のバブル期まで増え続け、1998年(平成10年)を過ぎると開館数は急激に減少していった[17]。
資料館、美術館、文学館、歴史館、科学館、水族館、動物園、植物園などの施設は日本語では博物館の名を持たないが、いずれも世界標準からは博物館そのもの、あるいは博物館に準ずる施設(剥製や標本ではなく、生きている生物を主に扱う施設の場合)であり、後述する日本の法制上でも、条件を満たして登録措置を受ければ、博物館法上の博物館、あるいはそれに準じた博物館相当施設として扱われる。こうした法制上の扱いを度外視し、名称上博物館を名乗らないが実質的に博物館そのものである施設を含めた広義の博物館の総数は約5,700[18]と推計されている。マンガ・アニメミュージアムが全国に続々オープンし、現時点で60施設ほど存在しているとされる。
課題
入館者減少や地方自治体の財政難などにより閉館に追い込まれたり、存続が危ぶまれたりしている博物館も多い[19]。
地方の少子高齢化、過疎化に伴い、住民から民具などを寄贈されたものの収蔵場所の確保が追い付かない問題も生じている[20]。
東日本大震災(2011年)などの災害により博物館の建物や収蔵品が被害を受けることもあり、防災や被災後の収蔵品補修、再開などが重要になっている[21]。
博物館の法制度
日本には博物館に関する法令として博物館法がある。
同法第2条による定義では、博物館とは概ね「歴史、芸術、民俗、産業、自然科学等に関する資料を収集し、保管(育成を含む。以下同じ。)し、展示して教育的配慮の下に一般公衆の利用に供し、その教養、調査研究、レクリエーション等に資するために必要な事業を行い、あわせてこれらの資料に関する調査研究をすることを目的とする機関」であって、公民館・図書館を除くもののことである。
カテゴリー一覧
- ^ 佐々木亨、亀井修、竹内有理『新訂 博物館経営・情報論』放送大学教育振興会、2009年、202頁。ISBN 978-4-595-30826-0。
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- ^ 山浦綾香:[海外交通事情]観光資源としてのミュージアム『運輸と経済』第68巻 第3巻(2008年3月)pp.69-77
- ^ “新しい博物館定義、日本語訳が決定しました”. ICOM日本委員会. 2023年2月1日閲覧。
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- ^ 鈴木眞理ほか『博物館学シリーズ1 博物館概論』樹村房、2001年、23頁。ISBN 4-88367-030-9。
- ^ 鈴木眞理ほか『博物館学シリーズ1 博物館概論』樹村房、2001年、25頁。ISBN 4-88367-030-9。
- ^ 『日本経済新聞』朝刊2015年1月3日「インドの仏 仏教美術の源流展」告知記事
- ^ 鈴木眞理ほか『博物館学シリーズ1 博物館概論』樹村房、2001年、35頁。ISBN 4-88367-030-9。
- ^ 『東京国立博物館百年史』東京国立博物館、1978年、10頁。ASIN B000J9CO8I。"資料編548頁"。
- ^ 上野益三『日本博物学史』(講談社学術文庫、1989年。ISBN 978-4061588592)193頁
- ^ 後藤純郎「博物局書籍館長、町田久成 : その宗教観を中心として」(『教育学雑誌』第10号、日本大学教育学会、1976年3月、NAID 110009901386)
- ^ 「館の歴史 湯島聖堂博覧会」東京国立博物館ホームページ
- ^ 『学制百二十年史』「草創期の社会教育」文部科学省サイトホームページ
- ^ 科博の概要と沿革(国立科学博物館サイト)
- ^ 竹内誠監修『知識ゼロからの博物館入門』(幻冬舎、2010年)196ページ
- ^ “博物館の概要”. 文化庁. 2023年8月14日閲覧。
- ^ 【風紋】苦境の地方博物館 宝の資料どう守る『日本経済新聞』朝刊2019年7月15日(26面・社会)2019年7月28日閲覧
- ^ 博物館 満杯「収蔵庫9割超」57%施設で スペース広げる予算なく『読売新聞』夕刊2024年1月11日8面(2024年2月12日閲覧)
- ^ 日本博物館協会ホームページ内「大規模災害への対応について」(2024年2月12日閲覧)
- ^ “VI 博物館についての国際的規程、条約等” (PDF). 国立教育政策研究所. 2021年1月12日閲覧。
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- ^ Inc, Shogakukan. “全てのマニアにおすすめしたい!中の人が描いた博物館の裏側マンガ「へんなものみっけ!」|@DIME アットダイム”. @DIME アットダイム. 2024年2月11日閲覧。
- ^ “話題の企画展だけじゃ勿体ない!もっと日常的に博物館へ行こう!と思える一冊。《国内6000館を訪ね歩いた著者 栗原 祐司氏が教える博物館の鑑賞法!》”. PR TIMES. 2022年6月17日閲覧。
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