インスタレーション【installation】
インスタレーション
インスタレーション
【英】:INSTALLATION
「設置」、「取り付け」という意味。芸術作品を展示するのに際して、その場としての空間に一つ一つの作品を単に展示するというのでなく、いくつかの作品を用いて意識的表現を加えて、空間構成しようとする展示の試み、工夫をいう。よって展示会期中、観者に示されるが、会期が終われば解体される運命にあるもので、ふつう一時的な作品と考えられる。壁や床の配置だけでなく、時には天井から吊り下げられるものもあって、壁・床・天井などに囲まれた空間全体に及ぶものである。目新しく人目をひくようなものや、大がかりなものもあり、1970年代以降、しばしば用いられてきた試みである。
インスタレーション
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/04/16 13:05 UTC 版)
インスタレーション(英語: installation art)は、空間の内部または特定の場所に、物体、映像、音、光、建築的要素、日用品、テキスト、身体的行為などを配置し、鑑賞者がその場を移動しながら体験することを重視する現代美術の表現形式である[1][2]。作品は、個々の絵画や彫刻を独立して鑑賞する形式とは異なり、空間全体、鑑賞者の移動、視覚・聴覚・身体感覚、場所の文脈などを含めて成立することが多い[1][2]。
インスタレーションは、彫刻、環境芸術、ランドアート、コンセプチュアル・アート、ハプニング、パフォーマンスアートなどと重なり合いながら展開した[1][3]。また、映像を用いる場合はビデオ・インスタレーション、音を主な構成要素とする場合はサウンド・インスタレーション、特定の場所との関係を重視する場合はサイトスペシフィック・アートと関連づけて論じられることがある[4][2]。
概要
「インスタレーション」という語は、英語で「設置」「取付」を意味する installation に由来する。美術館・画廊における作品の展示作業や展示状態を指す一般的な語としても用いられてきたが、現代美術においては、展示の方法そのものや空間構成を作品の中心的要素とする表現を指す語として用いられるようになった[1][2]。
インスタレーションでは、作品の構成要素に制約は少ない。彫刻的な物体、既製品、廃材、写真、映像、スライド、音響、照明、匂い、テキスト、コンピュータ、観客参加型の仕掛けなどが用いられることがある[2]。展示場所も、美術館や画廊の展示室に限られず、住宅、学校、倉庫、街路、広場、自然環境、歴史的建造物などが選ばれる場合がある[4][2]。
このため、インスタレーションは単に物体を置くことではなく、物体・空間・場所・鑑賞者の関係を組み替える表現として理解される。鑑賞者は作品を外側から見るだけでなく、作品の内部に入り、歩き、視点を変え、音や光の変化を受け取りながら体験することが多い[2]。
特徴
空間性と体験性
インスタレーションの大きな特徴は、作品が空間全体を構成する点にある。絵画や彫刻のように単体の物体を鑑賞する形式とは異なり、壁、床、天井、光、音、配置、動線、鑑賞者の身体的位置などが作品の意味に関与する[1][2]。
作品によっては、鑑賞者が内部を歩くこと、一定の方向から見ること、音を聞くこと、暗闇や光の変化を経験すること、複数の物体の間を移動することが想定される。こうした性格から、インスタレーションは「見る」芸術であると同時に、「入る」「歩く」「体験する」芸術として説明されることがある[2]。
一時性
多くのインスタレーションは、展覧会の会期や特定の企画にあわせて制作・設置され、会期終了後に撤去される[1][2]。そのため、作品は写真、映像、設計図、記録文書、批評、展示カタログなどを通じて記録されることが多い。
ただし、すべてのインスタレーションが一時的であるわけではない。美術館、公園、公共施設などに恒久的に設置される作品もあり、恒久設置の場合でも、設置場所や鑑賞者の移動を含む空間構成が作品の重要な要素となる。
サイトスペシフィック性
インスタレーションは、特定の場所の歴史、建築、地形、社会的文脈、記憶などに応答して制作されることがある。このような作品はサイトスペシフィック・アートと呼ばれ、場所から切り離すと意味や効果が大きく変化する場合がある[4][2]。
一方で、すべてのインスタレーションがサイトスペシフィックであるとは限らない。展示場所を変えて再構成される作品もあり、その場合には、作家の指示書、展示設計、作品構成要素、再制作の条件などが作品の同一性を支えることがある[2]。
歴史
前史
インスタレーション・アートは、1970年代以降に現代美術の語彙として広く用いられるようになったが、その前史には20世紀前半の前衛芸術がある[1]。マルセル・デュシャンのレディメイドは、既製品を美術作品として提示することで、作品・展示・制度の関係を問い直した。また、クルト・シュヴィッタースの《メルツバウ》は、自宅内部を長年にわたり増殖する立体的な構成物へ変化させた作品であり、後の環境的・空間的な作品の前史として言及される[5]。
20世紀半ばには、展示空間や鑑賞者の身体的経験を重視する試みが増えた。抽象表現主義以後の大型作品、アッサンブラージュ、環境芸術、キネティック・アートなどは、伝統的な彫刻や絵画の枠組みを拡張する動きと結びついていた[3]。
ハプニング、環境芸術との関係
1950年代末から1960年代にかけて、アラン・カプローらによるハプニングは、演者、鑑賞者、物体、音、空間、時間的進行を組み合わせる表現として展開した。MoMAは、カプローの《18 Happenings in 6 Parts》(1959年)について、構造、演劇的要素、インスタレーション、同時性、観客参加、絵画、音を用いた作品であったと説明している[6]。こうした実践は、後のインスタレーション・アートにおける空間性、参加性、時間性の重要性と関係している[1]。
Tateは、インスタレーション・アートが、1957年頃以降にカプローらが制作した「環境(environment)」から展開したと説明している[1]。この流れでは、作品は単なる物体ではなく、鑑賞者が入り込む状況や環境として構成された。
1960年代から1970年代
1960年代には、ミニマル・アート、コンセプチュアル・アート、アルテ・ポーヴェラ、ランドアート、パフォーマンスアートなどが、作品の物質性、展示空間、制度、鑑賞者の経験を問い直した。これらの動向は、インスタレーションが独立した表現形式として認識される背景となった[1][7]。
1970年代には、フェミニズム・アートの文脈でも住居空間や日常生活の場を用いたインスタレーションが制作された。代表的な例として、1972年にカリフォルニア芸術大学のフェミニスト・アート・プログラムを中心に実施された《ウーマンハウス》がある。この企画では、住宅空間そのものが展示・制作の場となり、家事、身体、性別役割、私的空間をめぐる問題が扱われた[8]。
日本における関連動向
日本では、1950年代の具体美術協会が、野外展示、身体的行為、物質との直接的な関わりを重視する作品を展開した。具体美術協会の実践は、後に国際的な前衛美術やパフォーマンス、環境的な作品との関係で再評価されている[9]。
関連する形式
ビデオ・インスタレーション
ビデオ・インスタレーションは、映像機器、投影、モニター、音響、空間構成を組み合わせるインスタレーションである。単一の映像作品をスクリーンで上映する場合とは異なり、複数の映像、展示空間、鑑賞者の移動、音の配置などが作品の一部となることが多い。
サウンド・インスタレーション
サウンド・インスタレーションは、音響を主な素材として空間を構成する作品である。音源、スピーカーの位置、反響、鑑賞者の移動、時間的変化などが作品の意味に関与する。
ライト・インスタレーション
ライト・インスタレーションは、照明、蛍光灯、ネオン、自然光、投影などを用いて空間を構成する作品である。ダン・フレイヴィンのように蛍光灯を主要な素材とした作家は、光そのものと展示空間の関係を作品化した[10]。
参加型・没入型の作品
インスタレーションには、鑑賞者が作品内部を歩くだけでなく、触れる、選ぶ、反応する、行為に参加するなどの形で関与する作品もある。こうした作品では、鑑賞者の行動が作品の成立や変化に関わるため、作品と観客の境界が曖昧になる場合がある[2]。
保存と再展示
インスタレーションは、一時的で場所に依存する性格を持つため、保存と再展示に特有の課題を伴う。作品の構成要素が失われたり、使用機材が旧式化したり、元の展示場所が存在しなくなったりすることがある[2]。
再展示にあたっては、作家の指示書、設計図、写真、映像記録、使用素材、展示記録、関係者への聞き取りなどが参照される。作品によっては、同じ部材を保存することよりも、作家の意図、空間構成、鑑賞者の経験をどのように再現するかが問題となる。
市場と所有
インスタレーションは、単一の物体として売買・収蔵しにくい場合がある。作品が特定の空間に依存していたり、複数の部材、機材、設計図、再制作手順、作家の監修を必要としたりするためである[2]。一方で、美術館やコレクターが、作品の部材、設計図、証明書、再展示の権利、記録資料などを含めて収蔵する場合もある。
また、制作前のドローイング、模型、記録写真、映像、展示カタログ、使用部材などが、作品に関連する資料として保存・公開・取引されることもある。ただし、これらはインスタレーションそのものではなく、作品の構想・記録・派生資料として位置づけられる。
主な作家・作品例
インスタレーションと関連して論じられる主な作家・作品には、次のような例がある。
- クルト・シュヴィッタース - 《メルツバウ》。自宅内部を長期にわたり変化させた空間的作品として、後のインスタレーションの前史に位置づけられる[5]。
- アラン・カプロー - 《18 Happenings in 6 Parts》。ハプニング、環境、観客参加、時間的進行を組み合わせた作品として知られる[6]。
- ダン・フレイヴィン - 蛍光灯を用いた光の作品により、展示空間と光の関係を作品化した[10]。
- クリストとジャンヌ=クロード - 建築物や風景を布などで一時的に変化させる大規模プロジェクトを行った[11]。
- 草間彌生 - 鏡、光、反復的な形態を用いた没入的空間作品で知られる[12]。
- イリヤ・カバコフ - 物語性をもつ空間構成や「トータル・インスタレーション」の概念で知られる[13]。
- アニッシュ・カプーア - 彫刻、建築的空間、反射、空洞などを用いた大規模作品で知られる[14]。
- ジェームズ・タレル - 光と知覚を主題とする空間作品で知られる[15]。
- ルイーズ・ブルジョワ - 彫刻的作品や環境的な展示構成を通じて、記憶、身体、家族関係などを扱った[16]。
- クリスチャン・ボルタンスキー - 写真、衣服、光、記憶の資料を用いたインスタレーションで知られる[17]。
- 塩田千春 - 糸、日用品、記憶を組み合わせた大規模な空間作品で知られる[18]。
ギャラリー
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ヴァシリー・ラブチェンコ《ビッグベンビ》、1994年。
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クリスチャン・ボルタンスキー《シグニチャ》、2011年。
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ヴォルフ・フォステル、1973年、Museo Vostell Malpartida。
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ガブリエル・レスター、DOCUMENTA (13)、2012年。
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吉岡徳仁《Tornado》、Design Miami、2007年。
脚注
- 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 “Installation art”. Tate. 2026年4月16日閲覧。
- 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 “What is Installation Art?” (PDF). Irish Museum of Modern Art. 2026年4月16日閲覧。
- 1 2 “Sculpture - Modern forms of sculpture”. Encyclopaedia Britannica. 2026年4月16日閲覧。
- 1 2 3 “Site-Specific Art/Environmental Art”. Solomon R. Guggenheim Museum. 2026年4月16日閲覧。
- 1 2 “In Search of Lost Art: Kurt Schwitters’s Merzbau”. The Museum of Modern Art (2012年7月9日). 2026年4月16日閲覧。
- 1 2 “Selected works from the exhibition: Allan Kaprow. Scrapbook documenting 18 Happenings in 6 Parts. 1959”. The Museum of Modern Art. 2026年4月16日閲覧。
- ↑ “Conceptual art”. Encyclopaedia Britannica. 2026年4月16日閲覧。
- ↑ Womanhouse: Exhibition of the Feminist Art Program. California Institute of the Arts. (1972)
- ↑ “Gutai: Splendid Playground”. Solomon R. Guggenheim Museum. 2026年4月16日閲覧。
- 1 2 “Dan Flavin”. Solomon R. Guggenheim Museum. 2026年4月16日閲覧。
- ↑ “Christo and Jeanne-Claude”. Tate. 2026年4月16日閲覧。
- ↑ “Yayoi Kusama”. Tate. 2026年4月16日閲覧。
- ↑ “Ilya and Emilia Kabakov”. Tate. 2026年4月16日閲覧。
- ↑ “Anish Kapoor”. Tate. 2026年4月16日閲覧。
- ↑ “James Turrell”. Solomon R. Guggenheim Museum. 2026年4月16日閲覧。
- ↑ “Louise Bourgeois”. Tate. 2026年4月16日閲覧。
- ↑ “Christian Boltanski”. Tate. 2026年4月16日閲覧。
- ↑ “Chiharu Shiota”. Tate. 2026年4月16日閲覧。
参考文献
- Bishop, Claire. Installation Art: A Critical History. Tate Publishing, 2005.
- Reiss, Julie H. From Margin to Center: The Spaces of Installation Art. MIT Press, 1999.
- Rosenthal, Mark. Understanding Installation Art: From Duchamp to Holzer. Prestel, 2003.
- Suderburg, Erika, ed. Space, Site, Intervention: Situating Installation Art. University of Minnesota Press, 2000.
関連項目
インスタレーション
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2016/08/22 06:10 UTC 版)
「ダニエル・ビュラン」の記事における「インスタレーション」の解説
1960年代からビュランはアメリカ、ベルギー、フランス、ドイツなどにおいて恒久的なサイトスペシフィックインスタレーションを制作してきた。1986年にはパレ・ロワイヤルの中庭に3,000平方メートルのインスタレーション作品Les deux plateaux を制作。通称「Colonnes de Buren(ビュランの円柱)」と呼ばれているこの作品は歴史的建造物とコンテンポラリー・アートの統合に関しての議論を巻き起こした。1993年ジャン=ピエール・レイノーとのコラボレーションでルーブル美術館のカフェ・リシュリューにおいてインスタレーション作品Poser/Déposer/Exposerを制作。 1990年代からはさらに建築的なインスタレーションへと発展し、展示場所はシティーセンター (A Colored Square in the Sky (2007))、公園 (La Cabane Éclatée aux 4 Salles (2005))、美術館全体 (The Eye of the Storm (2005))、浜辺 (Le Vent soufle où il veut (2009)) にまで及ぶ。ニュージーランドのGibbs Farmで制作されたGreen and White Fence (1999/2000)では牧場の起伏に沿ってフェンスの役目を果たすポール状の立体作品を4mごとに設置した。2004年のフランス中国文化年において北京の天壇でDe l'azur au Temple du CIelを制作。2009年にはカリフォルニア州パサデナにおいて二千枚以上のフラッグを用いたA Rainbow in the Skyを制作した。 ビュレンはエルメスと繰り返しコラボレーションを行ってきた。2000年ブリュッセルにてエルメスの最初のギャラリー「ラ・ヴェリエール」のオープニングを飾り、その後ソウルの「アトリエ・エルメス」のオープニングにあたってFiltres colorésというカラーパネルを使った作品を制作した。2010年には「カレ」の限定版として写真とストライプ模様によるスカーフをデザインした。これには1950年代からphotos-souvenirsシリーズで撮影されてきた世界中の自身の作品や旅行の膨大なドキュメンタリー写真が使用されている。 2013年春夏コレクションにおいてルイ・ヴィトンとコラボレーションを行った。
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「インスタレーション」の例文・使い方・用例・文例
- サウンドインスタレーションという,音を発する彫刻
- サウンドインスタレーションという,音を出す装置
- インスタレーションアートという美術表現様式
- インスタレーションアートという表現様式による美術作品
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