武力紛争の際の文化財の保護に関する条約とは? わかりやすく解説

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ハーグ‐じょうやく〔‐デウヤク〕【ハーグ条約】

読み方:はーぐじょうやく

オランダハーグ締結され条約の略称。

[一]ユネスコによる「武力紛争の際の文化財の保護に関する条約」の通称戦争による文化財の破壊国外へ不正な流出を防ぐための条約1954年締結日本平成19年2007批准

[二]ハーグ国際私法会議締結され国際私法条約総称。「民事訴訟手続に関する条約」「外国公文書の認証を不要とする条約」「国際的な子の奪取の民事面に関する条約」など30上の条約締結されている。

[三]《「国際的な子の奪取の民事面に関する条約」の通称一方の親が子を居住国から不法に連れ去る事件防止する目的締結され多国間条約ハーグ国際私法会議締結され国際私法条約一つ国籍異な夫婦一方が子を無断国外に連れ去った場合連れ去られた側の申し立て受けて、子は連れ去られる前に居住していた国に戻される親権は、子が元の居住国に戻された後、その国の裁判所争われる1980年ハーグ国際私法会議採択され1983年発効日本平成26年2014加盟

[四]《「航空機の不法な奪取の防止に関する条約」の通称航空機不法奪取等を犯罪とし、その犯人処罰引き渡し等について定めた国際条約1970年作成され1971年発効日本昭和46年(1971)に締結ハイジャック防止条約

[補説] これ以外にも「ハーグ条約」と通称される条約複数ある。英語読みでヘーグ条約」ともいう。


武力紛争の際の文化財の保護に関する条約

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/18 03:48 UTC 版)

武力紛争の際の文化財の保護に関する条約
武力紛争の際の文化財の保護に関する条約が定める文化遺産の識別のための標章
通称・略称 武力紛争の際の文化財保護条約
1954年ハーグ条約
署名 1954年9月6日
署名場所 パリ
発効 1956年8月7日
寄託者 国際連合教育科学文化機関事務局長
文献情報 平成19年9月12日官報号外第209号条約第10号
言語 英語、フランス語、ロシア語、スペイン語
主な内容 武力紛争の際に文化財を保護するため、締約国が、平時において適当な措置をとること、武力紛争の際に文化財を尊重すること等を定める
条文リンク 武力紛争の際の文化財の保護に関する条約 - 外務省
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「特別保護」の対象となる文化遺産には3個の標章が付される

武力紛争の際の文化財の保護に関する条約(ぶりょくふんそうのさいのぶんかざいのほごにかんするじょうやく、Convention for the Protection of Cultural Property in the Event of Armed Conflict)は、戦争などの武力紛争の際に文化遺産を保護するための措置を定めた条約である。1954年ハーグ条約とも表記される。

概要

第二次世界大戦では、武力による文化遺産の破壊行為のみならず、占領国が被占領国の文化遺産を強制的に買い取るという事実上の組織的略奪が行われた。文化遺産の略奪禁止は1907年に作成されたハーグ陸戦条約でも規定されていたが不十分であった。こうした反省に基づき、国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)の主導のもとで「武力紛争の際の文化財の保護に関する条約」が作成された。

条約は1954年5月14日オランダハーグで採択され、1956年に発効した。同時に「武力紛争の際の文化財保護議定書」(第一議定書)が作成された。1999年には規定が見直されて「武力紛争の際の文化財保護第二議定書」(第二議定書)が作成され、2004年に発効した。2017年10月時点で条約の締約国は129か国である[1]。2017年9月12日にイギリスが批准をし、安全保障理事会常任理事国5カ国すべてが批准をしたこととなった。

日本は1954年に条約に署名したが、保護の対象となる文化遺産と軍事目標となる施設との間に距離を置かねばならないという規定により京都奈良の文化遺産が条約による保護(この枠組みは「特別保護制度」と呼ばれる)の対象とならない可能性があったこと、また平和憲法の下で武力紛争を前提とした条約への加盟が途惑われた等の理由により、長らく未批准にとどまっていた。しかし第二議定書において距離制限が撤廃された「強化された保護」と呼称される制度が導入されたこと等の理由により、2007年5月に国会で承認され、同年9月に批准書を寄託し117番目の締約国となった[2]。批准に伴い、国内法として武力紛争の際の文化財の保護に関する法律が制定された。

第一議定書

武力紛争の際の文化財の保護に関する議定書
通称・略称 武力紛争の際の文化財保護議定書
署名 1954年9月6日
署名場所 パリ
発効 1956年8月7日
寄託者 国際連合教育科学文化機関事務局長
言語 英語、フランス語、ロシア語、スペイン語
主な内容 武力紛争の際に占領地域からの文化財の流出を防ぐため、締約国の義務として、自国が占領する地域からの文化財の輸出を防止すること、占領地域から自国に輸入される文化財を管理すること等を定める
条文リンク 武力紛争の際の文化財の保護に関する議定書 - 外務省
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この条約はハーグ陸戦条約の流れを汲むものであるが、「利益保護国」の制度を採り入れるなど1949年のジュネーヴ諸条約の影響も受けている。

1956年に発効した第一議定書では、締約国に対して、平時に文化遺産保護のための適当な措置を取ること、武力紛争の際には文化遺産を尊重すること等を義務付けている。

保護の対象としては、建築物考古遺跡、芸術品などの文化遺産に加えて、美術館図書館などの保管施設も保護の対象に加えられている。なお「文化財」の中には宗教的な礼拝の対象(寺院教会神殿など)も含まれる。

条約ではさらに、特に重要な文化遺産については国際的な管理下に置く制度を定めている。文化遺産の管理を担当する「文化財管理監」は締約国とその敵国の利益を代表する「利益保護国」の合意で選ばれ、文化遺産の識別のための特殊標章を付するなどの活動を行うことになる。

第二議定書

千九百九十九年三月二十六日にハーグで作成された武力紛争の際の文化財の保護に関する千九百五十四年のハーグ条約の第二議定書
通称・略称 武力紛争の際の文化財保護第二議定書
署名 1999年3月26日
署名場所 ハーグ
発効 2004年3月9日
寄託者 国際連合教育科学文化機関事務局長
言語 英語、フランス語、ロシア語、スペイン語
主な内容 特に重要な文化財の国際的な管理につき「強化された保護」の制度を定めるとともに、武力紛争の際の文化財の保護に関する条約に違反する一定の行為を締約国が犯罪化すること等を定める
条文リンク 千九百九十九年三月二十六日にハーグで作成された武力紛争の際の文化財の保護に関する千九百五十四年のハーグ条約の第二議定書 - 外務省
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1990年代には、武力紛争の主要な原因が民族紛争や宗教対立へと変化したことに伴い、文化遺産は敵対する民族の象徴として、より積極的に攻撃目標とされるようになった。

ユーゴスラビア紛争では、世界遺産の暫定リストに登録されていたクロアチアドゥブロヴニク旧市街やボスニア・ヘルツェゴビナモスクなどの文化遺産が破壊される行為も起きた。

こうした国際情勢を背景に、ユネスコでも武力紛争時の文化遺産の破壊防止の取り組みが積極的に考察され、条約の再検討の機運が高まった。

こうして第二議定書が1999年に作成され、2004年に発効した。第二議定書は、締約国間の武力紛争時のみならず平時および非国際的武力紛争にも適用される。また、強化保護、刑事責任と管轄権、国際援助の枠組み等に関しても規定された。

脚注

  1. ^ http://www.unesco.org/eri/la/convention.asp?KO=13637&language=E
  2. ^ 佐藤義朗「武力紛争における文化財の保護」、成蹊法学第85号

参考文献

関連項目

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