ふせん‐じょうやく〔‐デウヤク〕【不戦条約】
【不戦条約】(ふせんじょうやく)
第一次世界大戦後の1928年、フランスのパリで調印された
「国際紛争の解決手段としての戦争を放棄し、武力によらない方法で紛争を解決する」
ことを約した国際条約。
別名「パリ条約(協定)」「パリ不戦条約」「ケロッグ=ブリアン条約(協定)」。
ヨーロッパを主な舞台として繰り広げられた第一次世界大戦は、その参加国のほとんどに深刻な人的・物的被害を(勝敗にかかわらず)もたらした。
特に戦車・航空機・毒ガス・潜水艦など、科学技術の発達に伴って現れた種々の新兵器群は、その攻撃力を格段に増加させ、また、「国家総力戦」思想に伴って各国で徴兵制が広く採用されていたことと、「塹壕戦」と呼ばれる膠着状態が長く続いたことで、より多くの国民が戦争に関与させられることになり、各国とも多くの人材と国富を失うこととなった。
これらのことから、戦争終結後の1920年代、国際法学者たちの間に
「戦争そのものを『非合法化』することでなくしてしまおう」
という考えが生まれ、アメリカ・フランス・ドイツ・英国・日本などの15ヶ国が参加する多国間条約として誕生したのが本条約である。(その後、ソ連など63ヶ国が参加した)
とはいえ、多くの国が自衛権を留保しており、また、違反に対する制裁措置もないため実効性は薄い。(事実、本条約が調印されてから約10年後に第二次世界大戦が起きている)
ちなみに、本条約の第1条と日本国憲法第9条1項とは文面が極めて類似しており、両者の基本精神の共通性が窺える。
【参考】
・不戦条約第一条
締約国ハ国際紛争解決ノ為戦争ニ訴フルコトヲ非トシ且其ノ相互関係ニ於テ国家ノ政策ノ手段トシテノ戦争ヲ抛棄スルコトヲ其ノ各自ノ人民ノ名ニ於テ厳粛ニ宣言スル
・日本国憲法第九条第一項
日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
参考リンク:http://www.geocities.jp/nakanolib/joyaku/js04-1.htm
当初の条約参加国
不戦条約
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注釈
- ^ 現代風の表記:第1条 締約国は、国際紛争解決のために戦争に訴えることを正しくないとし、かつ、その相互の関係において国家政策の手段として戦争を放棄することを、その各々の人民の名において厳粛に宣言する。
第2条 締約国は、相互間に発生する紛争又は衝突の処理又は解決を、その性質または原因の如何を問わず、平和的手段以外に求めないことを約束する - ^ Article I
The High Contracting Parties solemnly declare in the names of their respective peoples that they condemn recourse to war for the solution of international controversies and renounce it as an instrument of national policy in their relations with one another.
Article IIThe High Contracting Parties agree that the settlement or solution of all disputes or conflicts of whatever nature or of whatever origin they may be, which may arise among them, shall never be sought except by pacific means.
- ^ イギリス司法長官は「(この)条約は現在も有効でありイギリスは加盟している」とする。イギリス議会2013年12月16日議事録 [1]
出典
- ^ 綱井幸裕 2010.
- ^ チェンバレン外相宛アサートン駐英アメリカ大使信書1928.6.23
- ^ 細川真由 2018, p. PDF-P.12.
- ^ 中沢志保 2011, p. 5(pdf).
- ^ 「支那国政府の不戦条約加入と国民政府承認問題との関係」昭和3年11月6日 [2] アジア歴史資料センター:レファレンスコードB04122285900
- ^ 竹村仁美「国際刑事裁判所規程検討会議の成果及び今後の課題」『九州国際大学法学論集』第17巻第2号、九州国際大学法学部、2010年12月、1 - 42頁、NAID 110007973722、NCID AN10479341、2020年6月28日閲覧。
- ^ 国際連盟 (30 September 1938). 機関紙 (PDF). 第103回理事会 第2回総会. 京都大学. p. 878. PDF p.1
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- ^ 極東軍事裁判所判決第3章34頁
- ^ 戦時国際法講義第1巻(信夫淳平著、丸善、1941年)702~703頁。
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- ^ Bibliothèque de documentation internationale contemporaine, F°∆ rés 716 (FONDS JULES PRUDHOMMEAUX), CARTON N°6 (Association Paix par le droit), “SCELLE (Georges), Le Pacte Kellogg.” http : //argonnaute. u-paris10. fr/ark : /14707/a011403267944pOt4iQ (最終アクセス 日:2018年 7月 25日).Guieu, op. cit., pp.157-158.
- ^ a b 細川真由 2018, p. PDF-p.14, 直接の引用.
- ^ Norman Ingram, “Les pacifists et Aristide Briand,”in Jacques Bariéty (éd.), Aristide Briand, la Société des Nations et lʼEurope, 1919-1932 (Strasbourg :Presses universitaires de Strasbourg, 2007), p. 205.
- ^ 加瀬英明/ヘンリー・スコット・ストークス『なぜアメリカは、対日戦争を仕掛けたのか』祥伝社新書
- ^ a b オーナ・ハサウェイ/スコット・シャピーロ 著、野中香方子 訳『逆転の大戦争史』文藝春秋、2018年10月10日、254頁。ISBN 9784163909127。
- ^ a b オーナ・ハサウェイ/スコット・シャピーロ 著、野中香方子 訳『逆転の大戦争史』文藝春秋、2018年10月10日、17頁。ISBN 9784163909127。
- ^ Eva Buchheit: Der Briand-Kellog-Pakt von 1928 – Machtpolitik oder Friedensstreben? (Studien zur Friedensforschung, 10), Lit Verlag, Münster 1998, P.358
- ^ 神川彦松「不戦条約の価値批判」(『外交時報』昭和3年9月号)(神川彦松全集第九巻所集)P.810
- ^ a b 戦争放棄とは - 日本大百科全書(ニッポニカ)
- ^ サン・ピエール - 日本大百科全書(ニッポニカ)
- ^ 国連憲章テキスト - 国連広報センター
- ^ 日本国憲法 - 衆議院
不戦条約
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ハーグ平和会議の開催(1899年(明治32年)、1907年(明治40年))など19世紀末から、国際法上において侵略戦争を実定法により規制し平和を確保するための努力が進められ、国際連盟規約(1919年(大正8年))、ジュネーヴ議定書(1924年(大正13年))、不戦条約(パリ不戦条約、戰爭抛棄に關する條約)などが締結された。このうち不戦条約は第一次世界大戦後の1928年(昭和3年)に多国間で締結された国際条約である。同条約では国際紛争を解決する手段としての戦争を放棄し、紛争は平和的手段により解決することなどを規定した。 Kellogg-Briand TreatyARTICLE IThe High Contracting Parties solemnly declare in the names of their respective peoples that they condemn recourse to war for the solution of international controversies, and renounce it, as an instrument of national policy in their relations with one another. ARTICLE IIThe High Contracting Parties agree that the settlement or solution of all disputes or conflicts of whatever nature or of whatever origin they may be, which may arise among them, shall never be sought except by pacific means. — Kellogg-Briand Treaty 不戦条約第一條締約國ハ國際紛爭解決ノ爲戰爭ニ訴フルコトヲ非トシ且其ノ相互關係ニ於テ國家ノ政策ノ手段トシテノ戰爭ヲ抛棄スルコトヲ其ノ各自ノ人民ノ名ニ於テ嚴肅ニ宣言ス 第二條締約國ハ相互間ニ起ルコトアルヘキ一切ノ紛爭又ハ紛議ハ其ノ性質又ハ起因ノ如何ヲ問ハス平和的手段ニ依ルノ外之カ處理又ハ解決ヲ求メサルコトヲ約ス — 戰爭抛棄ニ關スル條約 日本国憲法第9条第1項の「国際紛争を解決する手段としては」の文言の解釈については、不戦条約にある「國際紛爭解決ノ爲」の文言との関係をどうみるべきかという観点から学説は分かれており、憲法第9条全体の解釈として一切の戦争を放棄しているとするのであれば「国際紛争を解決する手段としては」の文言についても不戦条約等の国際法上の用例に拘泥すべきでないとする説 と憲法9条は平和という国際関係と密接な関連性を有するもので「国際紛争を解決する手段としては」の文言についても不戦条約等の国際法上の用例を尊重すべきであるとする説 が対立している。
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