保護体制
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/10 09:08 UTC 版)
可動文化財の保護を目的とした法制度(不動産文化財保護を含む)としては、武力紛争の際の文化財の保護に関する条約(ハーグ条約)・文化財の不法な輸入、輸出及び所有権譲渡の禁止及び防止の手段に関する条約(ユネスコ条約)・盗取された又は不法に輸出された文化財に関する条約(ユニドロワ条約)・水中文化遺産保護条約などがあり、国内法でも文化財の不法な輸出入等の規制等に関する法律・海外の文化遺産の保護に係る国際的な協力の推進に関する法律・海外の美術品等の我が国における公開の促進に関する法律・展覧会における美術品損害の補償に関する法律などがあり、文化財に特化したもの以外では関税及び貿易に関する一般協定(GATT)でも第二十条の一般的例外で「美術的、歴史的又は考古学的価値のある国宝の保護のために執られる措置」が上げられている。 法的根拠はないが選定事業として、「原版から直接作った版画並びに独創的創作手段としてのポスター及び写真、あらゆる材料の独創的美術的なアセンブラージュ及びモンタージュ」「肉筆及び初期の活版印刷による古書、写本、書籍、文書又は出版物」「古銭学上(メダル及び硬貨)及び切手研究上重要な物件」「原文記録、地図その他の製図上の資料を含む文書、写真、映画フィルム、録音物、及び機械によって解読できる記録」を主体とし、ユネスコ記憶遺産が制定された。 「科学的又は技術的な価値を有する可動物」は産業遺産の対象として国際産業遺産保存委員会(TICCIH)によるニジニータギル憲章において、設備や製品サンプルなどを上げている。特に現代の家庭用電気機械器具などは文化財と見做されにくいことから、重要科学技術史資料(未来技術遺産)や機械遺産のような活動は可動文化財の裾野を広げる役割を果たしている。 民具の保護を実践した民芸運動は草の根活動ながら海外で高い評価を得ている。 具体的な保護行動としては、国際刑事警察機構(ICPO・インターポール)が盗難文化財のデータベース化と捜査をしており、イギリスのロンドン警視庁(スコットランドヤード)には美術骨董課があり盗難品の専従捜査を行っている。日本では内閣府認定公益民間活動として一般社団法人FAPRAが文化財流出防止に、一般財団法人デジタル文化財創出機構が電子文化財の啓蒙に一役かっている。 また、修復作業も保護の一環で、イタリアのローマを拠点とする国際文化財保存修復センター(ICCROM)はユネスコの諮問機関であり、不動産を含む文化財の総合的な修復に関与している。文化庁では重要文化財指定の有形文化財(美術工芸品)補修に国庫助成をしているほか、文化財保護法では第十章を「文化財の保存技術の保護」にあてている。同法に基づき、「選定保存技術」として漆工品・飾金具・能楽器・琵琶・木工品・歌舞伎衣装・祭屋台・木造彫刻の修理技術が選定され、保持者・保存団体が認定されている。特に木造彫刻修理はユネスコの無形文化遺産へも提案されている(登録には至っていない)。
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