ロータリーエンジン モータースポーツ

ロータリーエンジン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/15 14:10 UTC 版)

モータースポーツ

ロータリーエンジンは構成部品が圧倒的に少なく、特に組み付けと調整に多くの時間を要する動弁系を持たないことや、ジャーナルとキャップ間などのオイルクリアランスの管理箇所が少ないことで、オーバーホールの時間を大幅に短縮でき、レースユースには非常に適している。ローコストで高性能が得られることから、多くのプライベーターの支持を受け、1970年代以降の日本のモータースポーツ界を支えた。

コスモスポーツでのマラソン・デ・ラ・ルート84時間参戦に始まるロータリーエンジンのモータースポーツ活動は、その後日本国内でも1971年のサバンナによる日産・スカイラインGT-Rの連勝記録ストップとその後の同車との一騎討ち的な闘い、富士グランチャンピオンレースでのマツダRE搭載車の活躍などがあった。世界三大レースの一つであるル・マン24時間レースにも参戦し続け、1991年には787Bが日本車初の総合優勝を果たすなど、日本国内外において幅広く活躍した。

その後、1992年にマツダはレース活動自体から撤退。マツダスピードはロータリーエンジンでの耐久レースを続けていたが、1999年に解散し、ワークスレベルでの支援は望めない状況になってしまった。そのような中でもRE雨宮は、自然吸気仕様の20B型エンジンを搭載したFD型RX-7でSUPER GTに参戦し、プライベーターながらGT300クラスのタイトルを獲得した。

北米では古くから現地のマツダ法人によるモータースポーツ活動が行われ、2000年代末までIMSAの市販車・GTクラスで勝利を重ね続けていた。また同じく北米でマツダが関わっていたミドルフォーミュラのフォーミュラ・マツダプロ・マツダ チャンピオンシップでロータリーエンジンが使用されていた。

ロータリーエンジンは採用チームの少ない割に性能均衡が難しいことから搭載自体を禁止するカテゴリも多く、規則の自由度が高いことで知られる世界耐久選手権(WEC)でも認可されていなかった。そのため、2010年代以降のトップカテゴリでロータリーエンジンが禁じられていないものは、世界ラリークロス選手権のツーリングカークラスやWRC3のような、アマチュア志向の市販車クラスのみとなっていた。

しかし、2020 - 2021シーズンにLMP1に代わって導入されたWECのハイパーカー規定から、ロータリーエンジン搭載車両が参戦可能となった。マツダが787Bでル・マンを制した1991年以来初のことであり、マツダも参戦への関心を示していることが報じられた[46]


  1. ^ ローター - Weblio/三栄書房・大車林(更新日不明)2018年10月26日閲覧
  2. ^ エキセントリックシャフト - Weblio/三栄書房・大車林(更新日不明)2018年10月26日閲覧
  3. ^ 例えばマツダ13B型エンジンの単室容積xローター数は654 ccx2=1,308 ccであり、実質吸気量でいえばその2倍の2,616 cc相当となるが、税制区分上は1.5倍の1,962 ccと換算されて、同エンジン搭載車は排気量1.5リットル以上2.0リットル未満の車として課税される。なお、換算式内の「1.5」を俗に「ロータリー係数」と言うが、正式名称ではない。
  4. ^ 毎年のように見直されたが、その都度ロータリーとレシプロの優劣関係が変動した
  5. ^ 後にマツダの第6代社長を務める。
  6. ^ 出典書籍内では2008年時点の公道走行車両用水素エンジン同士での比較がされている。マツダ・13Bロータリー(2ローター1,308 cc)109 PS/14.3 kgmに対し、BMW・レシプロ(V型12気筒5,972 ㏄)260 PS/39.8 kgm。排気量比で約1:4.6、出力比で約1:2.4である。
  1. ^ a b 『自動車工学』P.58-P.64 (下田茂 著、共立出版株式会社、3353-618071-1371)
  2. ^ 自動車税-京都府ホームページ
  3. ^ 『モーターファン・イラストレーテッド Vol.19 ロータリーエンジン ― 基礎知識とその未来 ―』P.030-P.031(三栄書房、ISBN 978-4-7796-0403-4)を参考とした。
  4. ^ 『モーターファン・イラストレーテッド Vol.19 ロータリーエンジン ― 基礎知識とその未来 ―』P.027(三栄書房、ISBN 978-4-7796-0403-4
  5. ^ 「RE特許、鈴木に譲渡 東洋工、すでに具体交渉」『朝日新聞』昭和49年(1974年)11月1日朝刊、13版、1面
  6. ^ a b c 株式会社フリード (2009年8月22日). “産業技術記念館へ行きました”. 会長ブログ. 2021年4月4日閲覧。
  7. ^ a b 山口京一 (2018年7月15日). “トヨタも日産も! マツダ以外のメーカーで開発された日本のロータリーエンジン【RE追っかけ記-11】”. cliccar. 2021年4月4日閲覧。
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  12. ^ Archive: 1971 Yamaha GL 750 - Motorcycles.com
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  14. ^ Kawasaki X99 Rotary Prototype - Kawasaki NZ
  15. ^ ロータリーといえばスズキのRE-5...実はホンダもヤマハもカワサキも作ってた - バイクの系譜
  16. ^ a b RE-5-(1) - 「日本モ-タ-サイクルレ-スの夜明け」
  17. ^ RE-5-(2) - 「日本モ-タ-サイクルレ-スの夜明け」
  18. ^ 第1回夢の閃き官能エンジンU-TWIN開発秘話 - バージンハーレー
  19. ^ VOSTOK - Autosoviet
  20. ^ 驚異の12ロータリー・エンジン。2400馬力。ただしボート用。- http://mazdafan.com
  21. ^ a b c d e 「世界初のロータリー船外機を完成」『ヤンマー100年史 1912-2012』ヤンマー、159頁。
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  24. ^ 「空冷ディーゼル、ロータリーエンジンへの挑戦」『ヤンマー100年史 1912-2012ヤンマー、127-128頁。
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  26. ^ 汎用小型 RE - 「日本モ-タ-サイクルレ-スの夜明け」
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  28. ^ a b 一見の価値あり、伐採~運材の歴史 - 岐阜県立森林文化アカデミー
  29. ^ Model Profile: 2-10 - Chain Saw Collectors Corner Home
  30. ^ Model Profile: Super Pro 80 - Chain Saw Collectors Corner Home
  31. ^ 6回目の未年との遭遇 日本カーボン会長・石川敏功(随想)1991.01.21 化学工業日報 1頁 写有(全1,892字)
  32. ^ 2000年11月7日放送 NHKプロジェクトX 第28回『ロータリー47士の戦い 夢のエンジン・廃墟からの誕生』、2004年5月25日再放送[2]2021年(令和3年)6月29日 プロジェクトX 4Kリストア版として放送。
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  34. ^ 電気自動車の発電にRE活用 - 中国新聞 2012年6月6日
  35. ^ 電気自動車の発電にRE活用 - 47NEWS 2012年6月6日
  36. ^ 水素ロータリーエンジン発電 EVリースへ - 東京新聞 2012年6月6日
  37. ^ マツダ、EV航続距離延長にロータリーエンジン活用 - 日本経済新聞 2013年12月20日
  38. ^ 「マツダ」ロータリーエンジンが11年ぶり復活 国内で販売へ - NHK NEWS WEB 2023年9月14日
  39. ^ 水素とロータリーエンジン - マツダ
  40. ^ マツダ(株)、RX-8水素ロータリーエンジン車の公道走行を開始 - マツダ 2004年10月27日
  41. ^ 『マツダ プレマシー ハイドロジェンREハイブリッド』の国土交通大臣認定を取得 - 2008年6月20日
  42. ^ 過早着火 - Weblio/三栄書房大車林(更新日不明)2018年11月1日閲覧
  43. ^ 『モーターファン・イラストレーテッド Vol.19 ロータリーエンジン ― 基礎知識とその未来 ―』P.036-P.039(三栄書房、ISBN 978-4-7796-0403-4
  44. ^ Crighton Motorcycles”. Crighton Motorcycles. 2023年4月29日閲覧。
  45. ^ 小松信夫「イギリスで新世紀のロータリースポーツが登場! クライトン「CR700W」|ハンドメイド生産の限定25台、価格は約1300万円」『webオートバイ』、2021年11月9日。2023年4月29日閲覧。
  46. ^ https://www.netdenjd.com/articles/-/225078
  47. ^ 【ビデオ】これが世界初の6ローターロータリーエンジン! - autoblog.com
  48. ^ TRW Wankel pre-tensioner system
  49. ^ Mercedes-Benz. “Occupant Safety Systems”. pp. 11-12. 2007年12月31日閲覧。
  50. ^ Charles E. Steffens, Jr. “Seat belt pretensioner”. 2007年4月11日閲覧。
  51. ^ ロータリー熱エンジン (RHE) - 株式会社 ダ・ビンチ






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ロータリーエンジン「もしゴットリープ・ダイムラーという人が何も発明していなかったら、ここには自動車工場などありはしないでしょうし、いまごろあなたは馬車屋の親方がせいぜいでしょうな」—激怒したヴァンケルがキッセルに放った言葉1930年代初め、ダイムラー・ベンツはフェリクス・ヴァンケルにロータリーエンジンの研究開発の委託を試み、その契約書はヴァンケルの署名を待つのみだった。当時、ロータリーエンジンは開発の途上にあり、日頃から「のろまであることが私の信条」とうそぶいていたヴァンケルは、ダイムラー・ベンツとの契約書も未署名のまま放置していた。ヴァンケルの研究が進んでいないと見たキッセルは、ヴァンケルに「製品化までたどり着くわけがない」と嘲りの言葉を投げかけ、これはヴァンケルを激怒させ、結果として契約も決裂することになった。ヴァンケルはその後すぐさまBMWに赴いて契約を結び、戦後にNSUでロータリーエンジンを完成させ、世界初のロータリーエンジン搭載車両はNSUから発売された。モータースポーツ

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