台風
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/04/21 04:41 UTC 版)
「台風」の語源
日本では、古くは野の草を吹いて分けるところから、野分(のわき、のわけ)といい、11世紀初頭の『枕草子』『源氏物語』などにもその表現を見ることが出来る[9][10]。ただし、野分とは暴風そのものを指す言葉であり、気象学上の台風とは概念が異なる[11]。
江戸時代には熱帯低気圧を清国にならって颶風(ぐふう)と訳した文献(伊藤慎蔵によってオランダ語から翻訳された日本初の気象学書『颶風新話』)があるが、明治の初めにはタイフーンまたは大風(おおかぜ)などと表していた[12]。
明治末頃、岡田武松によって颱風という言葉が生まれたとされている[13][14]。1956年(昭和31年)に指針として「同音の漢字による書きかえ」が示されて以降は多く台風と書かれるようになった[13](これに対し台湾、香港では現在も「颱風」と呼称する)。由来には諸説があり、主な説としては、以下のものが挙げられる[9]。
- ギリシア神話に登場する怪物・テュポン (τυφων, Typhon) に由来する「typhoon」から「颱風」となった。
- アラビア語で嵐を意味する「طوفان (tufan)」が東洋に伝わり、「颱風」となった。また、英語では「typhoon」(タイフーン)となった。
- 中国広東省で、南または東の激しい風のことを外国からの風のとして大風(daai6fung1、ターイフォン)といい、その後、西洋に伝わり、ギリシア神話のテュポンの影響でギリシャ式の"typhoon"というつづりで書かれるようになり、東洋に逆輸入され「颱風」となった。
- 沖縄(当時は琉球)でつくられた言葉とする説:久米村の気象学者蔡温の造語であるといわれる[要出典]。
英語の「typhoon」は、古くは「touffon」と綴り、中国語の「大風」が由来とする説は不自然とされており、アラビア語起源、ギリシア語起源の二つの説が有力とされる。
[誰によって?]
ちなみに沖縄のウチナーグチでは「カジフチ(風吹き)」または「テーフー(台風)」と称される。
注釈
- ^ ただし、サイクロンは、温帯低気圧を含めた全ての低気圧を意味することもある[要出典]。
- ^ ハリケーンは台風やサイクロンよりも風速の基準が高い。なお、この区域で最大風速が17.2m/s以上32.7m/s未満のものをトロピカルストームと呼ぶ。
- ^ 中心付近は遠心力が強く、中心へ収束しようとする暴風と打ち消し合う。
- ^ 例えばユーラシア大陸からの冷たい寒気が対馬暖流の上を移動する事で、下層と上層の温度差が極地方の海上並みに非常に大きくなる等して発生し得る。
- ^ 船舶向けは1997年(平成9年)7月から。
- ^ 値が空白となっている月は、平年値を求める統計期間内に該当する台風が1例もなかったことを示している。
- ^ 接近は2か月に跨る場合があり、各月の接近数の合計と年間の接近数とは必ずしも一致しない。
- ^ 括弧内は1970年 - 2000年の平均値。
- ^ 「本土」は本州、北海道、九州、四国のいずれかの気象官署から300km以内に入った場合を指す。
- ^ 「沖縄・奄美」は沖縄地方、奄美地方のいずれかの気象官署から300km以内に入った場合を指す。
- ^ 地方の区分については、気象庁のサイトを参照。
- ^ 「九州北部地方」は山口県を含み、「中国地方」は山口県を含まない。
- ^ 「関東地方」は伊豆諸島および小笠原諸島を含まない。
出典
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- ^ また、柳田国男は、古代語「わき」におそろしい強風という意味が含まれていなかったかと指摘している。参照:山本健吉『基本季語五〇〇選』(講談社学術文庫、1989年)600-601頁。
- ^ 高橋 1976, pp. 155–156.
- ^ 『世界大百科事典』平凡社 1998年
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