スラッシュ雪崩
別名:雪代、雪泥流
大量の水気を含んだ雪がなだれ(雪崩)を起こす現象。崩落中の斜面の土砂を巻き込み、雪崩というよりは土石流のようになって下流へと押し寄せる。
富士山の周辺地域は山頂付近に万年雪がある影響などでスラッシュ雪崩が起きやすい。現地では古くから「雪代」の呼び名で畏れられてきたという。最近では2007年と2018年に「大沢崩れ」付近での大規模なスラッシュ雪崩の発生が確認されている。
関連サイト:
富士山周辺で発生するスラッシュ雪崩に注意 - 国土交通省 富士砂防事務所 平成21年2月13日(PDFファイル)
富士山周辺で発生するスラッシュ雪崩の発生条件の検討 - 砂防学会誌 62 巻 (2009) 2 号
雪泥流
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/08/06 13:16 UTC 版)
雪泥流(せつでいりゅう)とは、雪崩(スラッシュ雪崩)が大量の水を含むことで土石流化したものを指す。ただし融雪による土石流と区別を付けづらい。斜面から渓流へと流下する際に、渓岸や河床の堆積物を浸食する。
日本各地でも小規模の雪泥流は頻繁に発生していると考えられている。
概要
湿った雪が多く降る山間部、万年雪が残る山頂部などが集中豪雨などに曝される際に発生する。普段、水が流れていない涸沢の上流部で発生すると、土砂災害への備えが不十分なため規模が拡大しやすい。逆に、冬場でも水量がある川の水面や岸を覆っていた雪氷が気温上昇などで流れ出し、川の狭隘部に詰まって天然ダム(アイスジャム)を形成。それが決壊して発生する場合もある[1]。
富士山の雪泥流
日本の富士山では、大規模な雪泥流が降雨により定常的に発生し、「雪代」(ゆきしろ)と呼ばれる[2]。標高3000m以上の斜面から流下し規模が大きく長く、流れ下った雪は遠隔地からもよく観察できる。富士山南西斜面では、砂防事業による対策が講じられている。
被害
- 1834年6月22日(天保5年5月16日)に富士山で発生した雪泥流は富士北麓の富士吉田市域と富士南麓の富士宮市域の一帯に大量の土砂を流出させ被害を出した[3][4]。
- 1945年3月23日未明に青森県の赤石川で発生した雪泥流(鉄砲水)により死者87名を出す被害が出た[5][6][7]。
- 2018年3月5日に富士山の須走口斜面、標高2300m付近から発生したスラッシュ雪崩は通称グランドキャニオン付近から土石流となり、ふじあざみラインの馬返し付近を寸断、陸上自衛隊東富士演習場へ流入し、これにより作業員2名が死亡。さらに北へ分流した土石流は東富士五湖道路の須走インターチェンジ付近まで達した[8][9]。
脚注
- ^ 【気象・防災】「アイスジャム」雪泥流の脅威『毎日新聞』朝刊2018年6月1日(くらしナビ面)2018年6月7日閲覧。
- ^ 小森次郎 (2010). “富士山南東斜面の雪代イベントの特徴と発生予測”. 富士学研究 7 (1): 22 - 31 .
- ^ 出典:富士山の大規模雪代災害-天保五年(1834)の大雪代- (PDF) - 財団法人砂防フロンティア整備推進機構 井上公夫、2021年2月閲覧
- ^ 井上公夫「富士山の大規模雪代災害-天保五年(1834)-の流下経路」『砂防学会誌』第62巻第2号、2009年、45 - 50頁、doi:10.11475/sabo.62.2_45。
- ^ 出典:大然部落遭難者追悼碑 - 砂防に関する石碑〜碑文が語る土砂災害との闘いの歴史
- ^ 出典:『碑文が語る土砂災害との闘いの歴史: 砂防法施行百年記念』1998年、砂防広報センター 編集、監修:建設省河川局砂防部
- ^ 出典:県鰺ヶ沢の鉄砲水(1945年) - 事故災害研究室(きうり)
- ^ “2018年3月5日の須走口の土石流について - researchmap”. researchmap.jp. 2021年2月23日閲覧。
- ^ 諸橋良, 安間荘, 花岡正明「平成19年3月25日富士山スカイラインを襲ったスラッシュ雪崩」『砂防学会誌』第60巻第2号、砂防学会、2007年、45 - 50頁、doi:10.11475/sabo1973.60.2_45、ISSN 0286-8385、 CRID 1390001204066942080。
関連項目
外部リンク
- 小林俊一「新しい雪氷災害「雪泥流」とその予測」『新潟応用地質研究会誌』第51巻、新潟応用地質研究会、1998年、9 - 18頁、 hdl:10191/11227、 CRID 1050845764165030656。
- 土石流の映像 - 国土交通省富士砂防事務所
雪泥流と同じ種類の言葉
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