ウナギ 食材としてのウナギ

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ウナギ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/06/01 06:16 UTC 版)

食材としてのウナギ

ウナギの蒲焼

日本

ウナギは高タンパク、高ビタミンAビタミンB1ビタミンB2ビタミンDビタミンEDHAEPAミネラル亜鉛カルシウム)が豊富で消化も良く、日本では縄文時代の遺跡からも食用としたウナギの骨が出土している[44]日本料理食材としても重要で、鰻屋と呼ばれるウナギ料理の専門店も多い。皮に生息地の水の臭いやエサの臭いが残っているため、天然、養殖を問わずきれいな水に1-2日入れて泥抜き・臭み抜きをしたものを料理する。夏バテを防ぐためにウナギを食べる習慣は、日本では大変古く、『万葉集』にまでその痕跡をさかのぼる。以下の歌は大伴家持による(括弧内は国歌大観番号)。「むなぎ」はウナギの古形。

痩人(やせひと)をあざける歌二首

石麻呂に吾(あれ)もの申す夏やせによしといふ物そむなぎ取り食(め)せ(3853)

痩す痩すも生けらば在らむをはたやはたむなぎを捕ると川に流るな(3854)

徳川家康の時代に江戸を開発した際、干拓によって出来た湿地に鰻が住み着くようになったため、鰻は労働者の食べ物となった。当時は蒲焼の文字通り、の穂のようにぶつ切りにしたウナギを串に刺して焼いただけという食べ方で、値段もそばと変わらなかった[45]

江戸で濃口醤油が開発されると、ウナギをタレで味付けして食べるようになった。現在のように開いてタレにつけて焼くようになったのは、上方江戸とも享保の頃(1716-1736年)と思われる[45]蕎麦ほど徹底した美学はないものの、「鰻屋でせかすのは野暮」(注文があってから一つひとつ裂いて焼くために時間が掛かる)、「蒲焼が出てくるまでは新香を飲む」(白焼きなどを取って間を繋ぐのは邪道。したがって鰻屋は新香に気を遣うものとされた)など、江戸っ子にとっては一家言ある食べ物でもある。出前も行われており、その後は冷めにくいようにと丼に蓋をするようになり、またその後に鰻屋「重箱」から重箱を使用する事も始まった。

土用の丑の日や夏バテ予防に食べられるが、ウナギの旬は冬眠に備えて身に養分を貯える晩秋から初冬にかけての時期で、秋から春に比べても夏のものは味が落ちる[46]。また日本における疲労研究の第一人者である[46][47][48]大阪市立大学大学院特任教授の梶本修身によれば、食肉など栄養価の高いものを食することが当たり前になった現代においてはエネルギーやビタミン等の栄養不足が原因で夏バテになることは考えにくく、夏バテ防止のためにうなぎを食べるという行為は医学的根拠に乏しいとされ、効果があまりないとしている[46][49]

ウナギの血液はヒト[50]およびその他の哺乳類に対して有毒である[51][52][53]。ただし、この毒は100 kDaのタンパク質であり、60℃で5分以上加熱すれば変性して毒性を失うため、加熱調理した分には危険はない[54]

ウナギの血清に由来する毒素は、アナフィラキシーの発見によりノーベル賞を受賞したシャルル・ロベール・リシェに使用された(ウナギ血清を犬に注射し効果を観察した)。

古くから「鰻と梅干食い合わせが悪い」とされる。これは食禁の代表的な例として挙げられることが多いが、貝原益軒の『養生訓』にも記載がなく、江戸時代中期以降に広まった日本固有の俗信と考えられる。鰻も梅干も決して安いものではなく、両方を同時に食べるような贅沢を戒めるため、このような迷信が広まったという説もある。医科学的な根拠は(少なくとも現時点では)見出せない。

実際には鰻を食べた後に梅干を食べる事により、梅干の酸味が鰻の脂を緩和する効果があるため、食い合わせは良いという。

海外

中華人民共和国はウナギを日本のほかマレーシアフィリピンタイなど合計50カ国以上に輸出している。中国の国内消費量も伸び、年間1万トンに達している。訪日旅行でウナギ料理に触れた中国人が増えたことなどが背景とみられる。蒲焼のほかウナギピザなどが飲食店で提供されており、専門店もある[55]

アジアの他、ヨーロッパでもイギリスオランダイタリアなどにウナギ食文化があり、内陸部でも淡水ウナギを使った料理が存在する。古代ローマ人の好物でもあった。古代ローマではうなぎを背開きにし、魚醤とはちみつを混ぜたタレを塗りながらパピルスや羽うちわで扇ぎつつ炭で焼き、胡椒を掛けて食べていた。医師ヒポクラテスは「ウナギの食べ過ぎなどによる肥満は人間の体の最大の敵」と著述している。古代ローマでもうなぎは高価な料理であったらしい。一方、ユダヤイスラームでは「鱗の無い魚は食べてはいけない」という戒律から、近年まで鱗が目立たない鰻を食べることはタブーとされていた(現在でも一般的にはタブーとされる事がほとんど)。

ウナギを使った料理

ウナギを素材とする料理は多く、その地方独自の食文化によって様々な料理が発達している。好き嫌いなどの個人差はあるが、一般的には非日常的なご馳走であり、高級料理として扱われる。

蒲焼
日本で最も一般的な料理法。開いて骨を取り去った身に串を打ち、甘辛いタレを付けて焼く。関東では背開きにして頭を落とし、素焼きした後に蒸しを入れ、その後タレをまぶして本焼きとするが、関西では頭(半助)を付けたままの腹開きで、蒸さずにじっくり地焼きにする。九州では背開きで蒸さずに深めに焼くものが主流。
白焼
タレを付けずに焼いたもの。関東では下焼きの後に一度蒸し、その後もう一度焼き上げる。ワサビ、大根おろしまたはショウガ醤油などを付けて食べる。
静岡焼き
を風味付けに使った、ウナギの焼き方。
ぼく飯・ぼく煮
鰻の白焼きとささがきにしたゴボウを醤油と砂糖などで甘辛く煮た浜松市の郷土料理。ご飯にかけるとぼく飯、そのままで食べる場合はぼく煮となる。卵を入れて柳川風にする場合もある。
鰻丼鰻重
御飯の上に蒲焼を乗せたもの。用いる食器重箱の場合は鰻重と呼び分けられる。食べる前に山椒の粉を振りかけるのが一般的である。
ウナギの肝
肝吸い
を中心とした内臓部分を吸い物にする。鰻丼鰻重と共に供されることが多い。
串焼き
肝焼き - 数匹分の胃などを串に刺してタレに浸け焼く。
レバー - 肝臓。串焼きや煮付けで供される。
ひれ巻 - 背びれの部分を串に巻いて焼いたもの。
かぶと焼き - 数匹分のウナギの頭部を串に刺してタレに浸け焼く。
くりから焼き - ウナギを捌く際に出る端切れを串刺しにしたもの。 不動明王の持つ倶利伽羅剣に例えてそう呼ばれる。
半助豆腐
蒲焼にしたウナギの頭と豆腐を煮たもの。頭を付けたまま焼く関西地方特有の料理。
鰻の飯蒸し
関西風に焼き上げた蒲焼とタレで味付けしたおこわを竹の皮で包んで蒸したもの。
うざく
小さく切ったウナギの蒲焼とキュウリミョウガなどを使った酢の物
う巻き
鰻巻き。ウナギの白焼きまたは蒲焼を芯にして巻いた卵焼きのこと。溶き卵に出汁を入れ、鰻を芯として巻き上げる。小口切りにして切り口が見えるように器に盛り、木の芽などを添えて供する。「う巻き卵」とも。ただし、稀に「ウナギのゴボウ巻き」(京都料理の八幡巻)をう巻きと呼ぶこともある。
八幡巻
ゴボウを軸としてウナギなどを螺旋状に巻きつけた上で、煮たもの、または、焼いたもの。ただし、ウナギが使われないこともある。
せいろ蒸し
関西風に焼き上げた蒲焼を、タレをまぶしたご飯の上に乗せて蒸し上げる福岡県柳川市の料理。
刺身洗い
しっかりと血抜きしたウナギを薄切りにして醤油やポン酢で食べる。皮も湯引きして細切りにする。
しゃぶしゃぶちり鍋
骨切りした生の鰻を用いる。
うなぎ茶漬け
蒲焼あるいは白焼きにした鰻を薬味とともに茶漬けとする。
ひつまぶし
ウナギの蒲焼を5ミリから8ミリ幅に細切りにし、お櫃に盛ったご飯の上に載せて供される。茶碗に取り分け、薬味を加えたりお茶や出汁をかけて茶漬けにしたりして食される。名古屋市を中心とした中京地方の郷土料理で、名古屋めしと呼ばれるものの一つ[56]
ウナギの握り
ウナギの蒲焼を種とする握り寿司
うなり寿司
稲荷寿司をひっくり返し、ウナギの蒲焼きを切ったものが載せてある。名前の由来は「うなぎ」と「いなり」の合成語。
うなぎボーン
ウナギのを素揚げにした料理、スナック菓子。
うなぎパイ
「ウナギパウダー」入りの菓子パイが有名である。他にも「うなぎんぼ」などのうなぎ成分を使った菓子がある。
うなぎパイ(eel pie、イギリス南部の郷土料理)
イギリスの伝統料理。パイ生地にぶつ切りにしたウナギを入れて焼き上げた物。これにマッシュポテトを添え、リカーと呼ばれる緑色のソースを掛け回した一皿であるパイ・アンド・マッシュが、フィッシュ・アンド・チップスと並ぶロンドン庶民の味として親しまれてきたが、テムズ川産ウナギが希少化し、より安価な牛肉を用いたミート・パイで代用されるようになっている。
ウナギのゼリー寄せ
イギリス、主にロンドン・イーストエンドの郷土料理。現地ではjellied eelsと表記される。ぶつ切りにしたヨーロッパウナギをスープストックで煮込み、ゼラチンで冷やし固めた料理。チリビネガーを掛けて食べるのが一般的である。
フライ
ウナギを衣揚げにし、胡椒のソースなどを掛けて食べる。日本ではあまり見られないが、ヨーロッパなどで供される。
煮こごり
ヨーロッパウナギやアメリカウナギなどの他のウナギもイタリアスペインフランスなど南欧を中心に、主に煮こごり料理として各地で食用にされている。イタリアのものはイギリスのゼリー寄せに似ているが、チリビネガーではなくバルサミコ酢を使用する。
シラスウナギ料理
スペインではウナギの稚魚であるシラスウナギを食する習慣がある。代表的なものとして、シラスウナギをそのままオリーブオイルで煮立てた「アヒージョ」と呼ばれるオイル煮がある。スペインでもシラスウナギは希少・高価な存在であり、すり身で作ったウナギの稚魚もどきが販売されている。
燻製
ドイツではウナギの燻製はポピュラーな食材である。そのまま焼いて食べる他、煮込み料理にも使用する。
煮込み(スープ)、鍋料理

フランスのワインを使用して煮込むマトロット、ドイツのアールズッペ、中華料理、韓国料理

マリネ

茹でる・焼く・揚げるかのいずれかの方法で調理したウナギを、別途用意した漬け汁と合わせて食べる。 ラテン系の地域ではエスカベッシュという名前で、よく出てくる料理。

輸入ウナギの安全性

2003年7月に中国産ウナギから合成抗菌剤エンロフロキサシンが、10月に台湾産ウナギから合成抗菌剤スルファジミジンがそれぞれ検出され残留農薬に関する調査が厳重化され始める[57][58]。2005年にはらでぃっしゅぼーやが台湾産を国産と偽って販売し、しかもその蒲焼から合成抗菌剤エンロフロキサシンが検出された[59]

2007年6月29日、アメリカのFDAは中国産のウナギ、エビ、ナマズの1/4に発ガン物質が検出されたとして輸入方法を変更した。今までは検査なく輸入可能であったが、第三者機関の証明書の添付を義務付けた[60]。中国政府は自国の検査証明書で通関可能とするよう交渉中である。検出された物質のうちニトロフラン[要出典]マラカイトグリーンは動物実験で発ガン性が確認され、中国でも魚介類への使用が禁止されている物質であった[60]。マラカイトグリーンは以前に中国産のウナギから日本でも検出されたことがある[要出典]。ウナギの日本国内消費量およそ10万トンのうちおよそ6万トンは中国産であり[60]、これをきっかけに日本国内でのウナギの売れ行きは激減した[要出典]。この検出事件に関して日本鰻輸入組合森山喬司理事長は、アメリカに輸入されたウナギから上記の物質が検出されたものの、「日本に輸入されている中国産ウナギは中国政府による検査・各工場の自主検査、日本での命令検査をパスしており安全だ」「ウナギが危ないと連日報道されて消費者の不安が煽られ、ウナギの売れ行きは激減している。いかに努力して安全なものにしているか実態を理解してほしい」とコメントしている[61]中国産食品の安全性も参照のこと)。

中国側の検査の実情として、中国の国家品質監督検査検疫総局は2007年7月11日、中国の食品会社41社の安全管理に問題があったとして、輸出差し止めとした[62]。このうち11社は、日本向けに水産食品を輸出、そのうち5社[要出典]はウナギのかば焼きであった[62]。これらの工場は日本の通関時に違反事例を起こしており、既に日本への輸入は止められている[要出典]。また15社は中国側の検疫手続きを免れていたことが判明している[62]。また森山喬司理事長の所属する佳成食品株式会社は、2007年7月に細菌多数につき食品衛生法違反でウナギ廃棄を命じられている[63]。そんなこともあり、2007年の土用の丑の日の各コンビニスーパーマーケットは前年に比べ値段は高くなったものの、国産ウナギ使用のうな重等をアピールしていた[要出典]

コープさっぽろは2007年の土用の丑の日の翌日になって、2007年7月31日に日本水産の子会社に委託していた中国産鰻から発ガン性のある抗菌剤を検出したと発表、回収を開始した[64]。このウナギはweb上では「抗生物質などの薬品をほとんど使用していません」と宣伝され、店頭では「コープ札幌で取り扱っているウナギは報道等で取り上げられているウナギとは別の商品なので安全です」と広告されていた。

食品偽装問題(産地・魚種)

日本国内において国内産ウナギと称して販売されているウナギの中にも、実際には外国産と表示すべきものがあり(産地偽装)、台湾から輸入したウナギに「愛知三河 一色産ウナギ」ブランドを付して流通させていたという事例があった[65][66]。これを受け2008年6月18日、農水省はそのようなウナギがJAS法に違反しているとして業界団体等に適正な表示を依頼する文書を発出した[67]

また、グリーンピース・ジャパンが2017年秋に実施したDNA検査によるとニホンウナギとして販売されていたウナギが別種のアメリカウナギだった例もあったという(ただし問題とされた小売事業者の一部が独自に外部調査機関に依頼した結果ではニホンウナギだったとしている)[39]


注釈

  1. ^ 柳田國男の記録による。TBS系アニメ「まんが日本昔ばなし」1991年8月10日放送の「鰻沢」はこの伝承を土台に翻案したもの。

出典

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  72. ^ 岡本綺堂. “岡本綺堂 鰻に呪われた男”. 青空文庫. 2017年4月25日閲覧。
  73. ^ 「されど山の芋鰻にならず、相かわらずの貧乏」(東海道中膝栗毛・発端)
  74. ^ 21世紀研究会編著 『食の世界地図』 文藝春秋〈文春新書〉、2004年5月、155頁。
  75. ^ ダンテ神曲』煉獄編 XXIV, 21-24


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