トウモロコシ
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品種分類
トウモロコシは、長い栽培の歴史の中で用途に合わせた種々の栽培品種や一代交配種が開発されている。糖度や実のやわらかさ、食味などに焦点を当てて品種改良が進み、世界中の地域でさまざまな品種がつくられている[17]。雑種強勢(異なる品種同士を交配すると、その子供の生育が盛んとなる交配の組み合わせ)を利用したハイブリッド品種が、1920年代からアメリカ合衆国で開発され、以後収量が飛躍的に増加した。また、近年では遺伝子組換えされた栽培品種も広がりつつある。
一般にトウモロコシの分類に用いられるのは、粒内のデンプンの構造によって種を決める粒質区分である[14]。種によって用途や栽培方法に違いがある。デント種、ポップ種、フリント種などがあるが、スイート種の未熟果用、缶詰用に利用され、他は食品加工用や飼料用にされる[7]。なお、スウィート・コーン(スイートコーン)とは「甘いトウモロコシ」の意味で、甘味種全般を指した呼び名である[17][18]。
食品用途の品種
- 甘味種(スイート種、スウィートコーン)(Zea mays var. saccharata)
- 食用の品種。粒の色により、イエロー系、シルバー系、バイカラー系の3種類がある[18]。ヤングコーンは間引いたスイートコーンの幼果である[18]。茹でる、焼く(焼きトウモロコシ)、蒸す調理方法がある。
- 加工食品用の材料でもあり、例えばコーンフレークやコーンミールなどの材料にもなる。種子に含まれる糖分が多く強い甘味を感じるが、収穫後の変質や呼吸による消耗が激しく、夏季の室温中では数時間で食味が落ちる。劣化対策は、コールドチェーンの徹底か、収穫後すぐに加熱すること。
- ベビーコーン(ヤング・コーン) - 生食用甘味種の雌穂を若どりしたもの、あるいは多穂性の品種の若い未熟果を摘み取ったもの[7]。サラダや煮込み料理に用いられる。幼果のため栄養は少ない[17]。水煮の缶詰に加工されることが多く、サラダやシチューのアクセントにも使われる[17][19]。
- 甘味黄色粒種(イエロー系、ゴールド種)
- 実が黄色の甘味が多い品種。
- 味来390(みらい390) - 米国で品種改良された品種で[20]、1997年(平成9年)から日本に出回った生食可能なスーパースイート種の先駆けで[21]、平均糖度12度。やや小ぶりで、繊維がやわらかく、ハニーバンタムよりも甘味が強いがさっぱりしている[19]。「味来」がつく品種がいくつかある[20]。
- 恵味(めぐみ) - スーパースイート種で甘味が強いが、フルーツのような爽やかさがある。繊維がしっかりしていて、シャリ感のある歯切れの良さをもつ[19]。
- サニーショコラ - 糖度15度以上、生食可能。
- ゴールドラッシュ - サカタのタネが育成し、2022年に発表された登録商標名。「ゴールドラッシュ88」「ゴールドラッシュ86」「ゴールドラッシュ90」「ゴールドラッシュネオ」などがある[20]。生食も可能で、実が柔らかく、糖度の高い。
- ミエルコーン - 粒の皮が薄く、糖度の高い品種。生食可能。ミエルとは、フランス語で「蜂蜜のような甘さ」という意味を表している。
- ピクニックコーン - 「味来」の品種改良型で平均糖度が18度以上と高く、自然交配からできた小振りな品種[22][20]。生食可能。種苗会社では、火を通した後に冷やすことにより甘みが増加されることをPRし、火を通した後冷たくして食べることを推奨している[23]。
- 嶽きみ(だけきみ) - 青森県弘前市の岩木山麓の嶽地区で作られる、2008年4月に地域団体商標登録に認定されたブランド品種。昼夜の気温差が大きい高原で栽培されるため、糖度は18度以上と高く、生食もできる[22]。
- みわくのコーン - スーパースイート種の新しい品種で、味来(みらい)と恵味(めぐみ)の中間的な特徴を備える。繊維がやわらかく、歯触りはシャリ感があり、甘味も強いがさっぱりしている[19]。
- 甘味白色粒種(シルバー系)
- 実が白色で甘味が多い品種。実は小粒でつやがあり、皮もやわらかくサラダなど生で食べることができる[18]。
- シルバーコーン(ホワイトコーン) - 「シルバーハニーバンタム」ともよばれるハニーバンタムの白粒種[19]。小粒で乳白色でツヤがあり、皮がやわらかくて甘味が強い[17]。サラダに向く[19]。
- ピュアホワイト - 雪印種苗が開発して2002年に発表された品種で[20]、実が白く、甘さとジューシーさが特徴[22]。白いとうもろこし(とうきび)や幻のとうもろこし(とうきび)とも呼ばれ、平均糖度17度以上とも謳われている。生食も可能で、火を通すと甘味が増すが[22]、甘味黄色・バイカラー種に比べると食味はやや劣る。
- 雪の妖精 - ピュアホワイトの改良種。平均糖度17度で生食も可能。
- ホワイトショコラ - ピュアホワイトの改良種。平均糖度17度で生食も可能。
- ロイシーコーン - 「ピュアホワイト」の改良種。糖度は17 - 18度で、生でも食べられる[24]。皮がやわらかく、ジューシーさとクリーミーな甘さが特徴[20]。
- 甘味バイカラー粒種(バイカラー系)
- 実が白、黄色系など色が混ざった混合品種。「バイカラー」は2色の意味[18]。
- ハニーバンタム - 甘味の強い品種で、日本で昭和40年代から全国的に栽培されるようになり、主流となった代表的なスーパースイート種[17][7]。スープやコロッケなどどんな料理にも向く[19]。その後の品種改良により「ピーターコーン」が登場して以来、生産が減少し市場流通より姿を消しつつある。
- ピーターコーン - 坂田種苗(現:サカタのタネ)により育成された、黄色い実に白い実が3対1の割合で混ざり合っているF1品種[25]。粒皮がやわらかく、糖度が高い[7]。1985年(昭和60年)から登場し、「ハニーバンタム」の種皮が硬く口に残ることを改善し、より軟らかく糖度が高い[7][25]。
- ウッディコーン - 黄色、白色、茶色がかった紫色の3色の実が混在している。粒がしっかりしていて歯ごたえもよく、もちもちした食感が特徴[17][22][7]。
- ゆめのコーン - サカタのタネの実が柔らかく糖度の高い品種。生食可能。甘み低下が遅いので、収穫適期の幅が広い[26]。
- カクテルコーン - 黄・白粒が混ざり(カクテル)、実が柔らかく糖度の高い品種。生食可能。
- 甘々娘(かんかんむすめ) - 糖度が15度以上と高く、生でも食べられる品種。他の品種と比べて時間経過による糖度の低下が遅い[20]。しかし発芽率が低く、栽培の難しい品種でもある。
- 硬粒種(フリント種、フリントコーン)(Zea mays var. indurata)
- 食用、家畜用飼料、工業用原料に主に使用される。
- グラムジェムコーン - 米国で育成されたフリントコーンの改良種。カラフルな色合いが特徴。飼料やトウモロコシ粉に加工されるほか、ポップコーンにもできる[20]。
- 爆裂種(ポップ種、ポップコーン)(Zea mays var. everta)
- 菓子のポップコーンの原料となる。乾燥させた実を加熱して爆裂させて、ポップコーンにしてから食べる[22]。粒がかたく、アメリカ大陸で古くから栽培されてきたもので、実が完熟してから収穫する[27]。
- 糯種(ワキシー種、ワキシーコーン)(Zea mays var. seratina)
- 別名「モチトウモロコシ」「モチキビ」「
糯 種トウモロコシ」ともよばれる[22]。英名の Waxy corn(ワキシーコーン)は、完熟種子表面がワックスしたように、ツルツルしているのでこの名が付けられた。実の色は白色、黄色、黒色、紫色がある[22]。加熱するとモチモチした食感になり[22]、デンプンがもち性を示すため、もち米の代替品として、加工原料に使われる[28]。
- もちもち太郎 - 大和農園が育成して2019年に発売された品種。「もちもち太郎パープル」と「もちもち太郎バイカラー」がある[20]。
- 軟粒種(ソフト種、ソフトコーン、スターチ・スイートコーン)(Zea mays var. amyrae-saccharata)
- 子実が軟質澱粉により形成されている。
- ジャイアントコーン
- 種子が大きいのが特徴。
家畜用飼料となる品種
- 馬歯種(デント種、デントコーン)(Zea mays var. indentata)
- 成長すると果実に含まれる糖分が、ほとんどデンプンに変わるため通常食用にはしない。主に家畜用飼料、デンプン(コーンスターチ)の原料、エタノール生産に使用。米国のトウモロコシ生産といえば、通常デント種の生産で、飼料向けとエタノール向けが同程度であり、これらが全体の7割超を占め、約1 - 2割が海外への輸出向けとなっている他、残り約1割が工業用などとなるその他向けとして大きな増減なく安定している[29]。
- アメリカ合衆国農務省の連邦穀物検査局(FGIS)によると、デントコーンのハイブリッドには2つのカテゴリがあり、穀粒の色(黄色または白)で分類される。黄色デント種は、主に動物飼料およびエタノール、食用油の産業用に用いられる[30]。FGISは、「食品( 加工肉、トルティーヤチップス、スナック食品、コーングリッツ)、食用グレードのコーンスターチ、紙といったものには、一般的に白色デント種が使用されている」と確認した[31]。デンプン含有量に応じて、黄色デント種も、ヒトが消費する食品の生産に使用される[30]。
注釈
出典
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