トウモロコシの起源とテオシント
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「トウモロコシ属」の記事における「トウモロコシの起源とテオシント」の解説
「トウモロコシ#起源」も参照 トウモロコシの起源については遺伝学的に最も近いイネ科野生植物テオシントが祖先種であるという説が唱えられていたが、テオシントとトウモロコシの形態が大きく異なっていたことからいくつかの異論があった。その中でも有力視されていたのは、ManglesdorfとReevesによって1938年に提唱された「三部説」である。この説では、トウモロコシの祖先は既に絶滅した「野生型トウモロコシ」であり、テオシントはトウモロコシと近縁のトリプサクム属(英語版)との交雑に由来するものであるとし、トウモロコシの大きな変異の多くはトウモロコシとトリプサクム属の交雑によるものであるとした。この三部説は考古学者も巻き込んで人気のある説となり、権威ある学術雑誌に掲載されたが、トウモロコシとトリプサクム属は染色体の数が異なるため自然界での交雑が起こるとは考えにくく、遺伝学者は認めていなかった。 その後数十年の間に進化遺伝学的な研究が進み、染色体の形態や反復配列、アイソザイム、葉緑体DNAの解析が行われ、いずれの結果もトリプサクム属がトウモロコシの起源に関与しているという説ではなく、テオシントが祖先種であるという説を支持していた。トウモロコシとテオシントとの間には、分げつ性や、雌穂の条性、穎果を包む硬い殻の有無などの明確な形態的な差異があることが、テオシント起源説への反論の大きな論拠であったが、これらの違いは僅かに5つ程度の遺伝子の差異によって説明できることが示されている。 2001年にはアメリカの遺伝学やゲノムサイエンス、進化生物学の権威である12人が、トウモロコシの祖先種はテオシントであり、他の説には何の根拠もないという趣旨の論文を考古学の雑誌に発表し、考古学の分野からもこの見解が支持されている。 また、トウモロコシの祖先野生種は Z. m. subsp. parviglumis であり、約9200年前にメキシコのバルサス川(英語版)流域に生息していた集団が栽培化されて分岐したことが明らかとなっているが、品種によっては Z. m. subsp. mexicana のゲノムが最大20%移入していることも報告されている。
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