日本の警察 日本の警察の概要

日本の警察

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/27 09:00 UTC 版)

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日本の警察のシンボルマーク(旭日章

警察活動

警察の行う活動を警察活動という。犯罪の予防や治安の維持などの活動を行政警察活動、既に起こった犯罪についての捜査犯人逮捕などの活動を司法警察活動と呼び、日本の警察活動では、この両者が区別されている。騒乱内乱を未然に防ぎ、国内の安寧を保つことを目的とする公安警察活動、また、発生した場合に鎮圧することを目的とする警備警察活動は、広義には行政警察活動に含まれる[1]

歴史

知恩院を警護する検非違使。髭面で巨大な棒を持ち藍染の上着を着ている2人が放免。

平安時代弘仁7年(816年)頃に警察組織として検非違使が設置され、主に京都の警備にあたった。警備や犯罪捜査などの実務には、罪を許された前科者から構成される放免が当てられた。

江戸時代には警察に相当する組織としては、町奉行勘定奉行などがあった。江戸市中は町奉行所が扱い、幕府直轄領については勘定奉行が扱った。たとえば江戸には南北の町奉行が、諸国には地名を冠した遠国奉行があり、その職員である与力同心は現在の警察官に相当した。ただし、与力、同心の人数は人口に対して非常に少なく、江戸の人口100万人(当時の日本は身分制の社会で、城下町の人々は武家方・寺社方・町方(など)に分類され[2]、町奉行の活動の対象となる町方(=町人)の人口は半分の約50万人)に対して警察業務を執行する廻り方同心は南北合わせて30人にも満たなかった。この人数で江戸の治安を維持することは困難であったため、同心は私的に岡っ引と呼ばれる手先を雇い、警察業務の末端を担わせていた。江戸の岡っ引は約500人、その手下の下っ引を含めて3,000人ぐらいいたという。また、重罪であった放火押し込み強盗などを取り締まる火付盗賊改方も断続的に設置された。

明治維新によって江戸幕府が崩壊し、新たに薩長土肥が主導する明治政府が誕生すると、諸藩兵)が治安維持に当たった。しかし、藩兵は純然たる軍隊であり、警察ではなかった。1871年東京府 邏卒(らそつ)3,000人が設置されたことが近代国家警察の始まりとなった。邏卒には薩摩藩長州藩会津藩越前藩、旧幕臣出身の士族が採用された[3]が、その内訳は薩摩藩出身者が2,000人、他が1,000人であり、日本警察に薩摩閥が形成される契機となった[4]。同年、司法省警保寮が創設されると、警察権は同省に一括され、東京府邏卒も同省へ移管された。

薩摩藩出身の川路利良は天皇を中心とする中央集権国家にふさわしい警察制度研究のため渡欧し、フランスの警察に倣った制度改革を建議した。司法省警保寮は内務省に移され、1874年首都警察としての東京警視庁が設立された。

以後の警察は、国家主導体制のもと、管轄する中央省庁の権限委任も多く行われたが、最終的に内務省に警察権が委任され、内務省方の国家警察・国家直属の首都警察としての警視庁と、各道府県知事が直接管理下に置く地方警察の体制に落ち着いた[5]

1933年大阪市天六交差点で起きたゴーストップ事件(天六事件)にて、陸軍と警察の大規模な対立が起こり、その後、現役軍人に対する行政措置は警察ではなく憲兵が行うこととされるようになり、軍部政軍関係を超えて次第に国家の主導権を持つきっかけのひとつとなった。

第二次世界大戦後は、連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)により、それまでの中央集権的な警察組織が廃止され、1948年旧警察法が定められる。旧法では、地方分権色の強い国家地方警察自治体警察の二本立ての運営で行われるが[6]1954年には現警察法に改正され、国家行政組織の警察庁と地方組織の都道府県警察に統一されて今日に至っている[7]

なお、この間、1938年厚生省内務省から分立し、衛生業務は保健所に移管された[5]消防業務に関しては、1948年、国家行政組織として消防庁が設置され、消防は警察から独立し、自治体消防制度が発足した。宮内省皇宮警察部禁衛府皇宮警察部警視庁皇宮警察部、国家地方警察本部、皇宮警察府と変遷して警察庁の附属機関皇宮警察本部に落ち着いた。

組織

警察庁が置かれている中央合同庁舎第2号館

日本警察組織は、国の機関としては内閣府外局である国家公安委員会特別の機関として警察庁が置かれる[8]。そしてその地方機関として東北関東中部近畿中国四国九州の6管区警察局などが設置されている。

警察庁は主に警察政策企画立案を行う。片や都道府県警察は、「現場」(実働部隊)を以って捜査・取締りなどを担う。例外的に皇室警衛を担当する皇宮警察本部は、(「現場」組織ではあるが)国の管理下として、警視庁でなく警察庁の附属機関として設置されている。

地方自治体の警察機関として、各都道府県公安委員会の管理の下に都道府県警察が設置されるのが日本の警察組織の基本構造である。警察庁の傘下ではない。ただし、次の点に注意する必要がある。

  • 東京都だけが特別に「東京都警察本部」でなく「警視庁」という名称であり、その長の呼称も「本部長」でなく「警視総監」とされている。また、総監の任免は、国家公安委員会が行い、都公安委員会の同意および内閣総理大臣の承認が必要である[9]。この点も他の道府県警察本部長と異なる。
  • 警視庁と北海道だけは国の機関である管区警察局の管轄から除外される。これは、北海道が管区(ブロック)と同等の領域・規模であること、警視庁が首都警察であるためである。
  • 北海道公安委員会はその管轄を5つの方面に分けている。そのうち札幌方面のみは直轄とし、函館旭川北見釧路の4方面に方面公安委員会を設置している。それに伴い、北海道警察も方面公安委員会が置かれた方面を所管する組織として方面本部を設置しているが、札幌方面は道警察本部が直轄しており、札幌方面本部は置かれていない。なお、1953年(昭和28年)4月1日の改正までは札幌方面にも方面公安委員会及び方面本部が置かれていた。

国際的な犯罪や各国の警察との連絡調整は、182ヶ国警察が加盟する国際刑事警察機構(ICPO)が管轄しており、日本は1952年から加盟しており、その日本の窓口は警察庁である。

警察庁と都道府県警察の関係

日本の警察組織は都道府県が主体となって設置され(警察法第36条)、都道府県が国の法定受託事務(かつての機関委任事務)として行う事務ではないため、一般的には自治体警察とみなされることが多い。しかしながら、都道府県公安委員会ではなく警察庁が都道府県警察への指揮命令権を有することや、警視正(職制としては警察本部の主要課課長、主要所轄署の署長)以上の幹部国家公務員たる地方警務官であることから、実態は国家警察と自治体警察の折衷型に近い[10]

アメリカ合衆国の警察の場合も同様に「警察委員会」がレベルから置かれるが、日本のそれよりも権限が強い。性格としては日本の消防が似ている。特に、ニューヨークサンフランシスコなど大都市圏警察の本部長は市長の直接指揮下に置かれ、処分や勧告・罰則なども市長→警察長→市警察官といった手順で行われる。これに対して日本の場合は警視庁(東京都の警察)を例にとっても都知事警視総監という序列にはなっておらず、法令上、警視総監は都知事の直接的な指揮下には置かれていない。警視庁は東京都が設置した警察行政機関であるが、警視総監に処分を下せるのは国家公安委員会警察庁)のみである。

地方警務官制度の建前としては、国家公安委員会が都道府県公安委員会の同意を得て人事が行われることになっているが、これまで一度たりとも都道府県公安委員会が拒否権を発動した事例は無く、都道府県警察の主要幹部はすべて警察庁人事での決定を追認している[11]。また、公安警察に関する予算国庫支弁となっており、都道府県警察の公安部門は警察庁の直接指揮下にある[12]


注釈

  1. ^ かつて、東京都小笠原村では、所轄の小笠原警察署につながっていた。

出典

  1. ^ フランク・B・ギブニー編『ブリタニカ国際百科事典 1-20』(ティービーエス・ブリタニカ、1972年)第6巻383項、警察の項の機能についての記述を参考。
  2. ^ [1]
  3. ^ 福地重孝 『士族と士族意識―近代日本を興せるもの・亡ぼすもの』 春秋社 p.333
  4. ^ 警察政策学会 『警察政策』 第20巻(2018) 立花書房 p.274
  5. ^ a b (1) 戦前の警察制度」『平成16年 警察白書警察庁(原著2004年9月)。2010年2月22日閲覧。
  6. ^ (2) 旧警察法の制定」『平成16年 警察白書』警察庁(原著2004年9月)。2010年2月22日閲覧。
  7. ^ 2 新警察法の制定…市町村警察から都道府県警察へ」『平成16年 警察白書』警察庁(原著2004年9月)。2010年2月22日閲覧。
  8. ^ 警察法 第15条
  9. ^ 警察法 第49条
  10. ^ 青木理『日本の公安警察』、講談社講談社現代新書〉、2000年、P17-18
  11. ^ 神一行 『警察官僚―日本警察を支配するエリート軍団』 勁文社 p.47
  12. ^ 驚愕の深層レポート 新たなる公安組織< Ⅰ・S >の全貌 前編
  13. ^ 警察行政職員とも呼ばれている。
  14. ^ a b 警察庁警察史編さん委員会 1977, pp. 307-309.
  15. ^ 警察庁警察史編さん委員会 1977, pp. 507-513.
  16. ^ a b 東京湾岸警察署 2008.
  17. ^ 警察庁警察史編さん委員会 1977, pp. 307-308.
  18. ^ a b c 警察庁警察史編さん委員会 1977, pp. 513-516.
  19. ^ a b c 小林 2008.
  20. ^ a b 警察庁生活安全局地域課 2015.
  21. ^ a b c 警察庁警察史編さん委員会 1977, pp. 516-518.
  22. ^ 東山尚一: “日本のヘリコプター半世紀(1960年代)” (2002年12月6日). 2018年11月11日閲覧。
  23. ^ 大分県警察本部>110番について>海外では?”. 2011年11月27日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2010年8月27日閲覧。
  24. ^ 警察庁. “警察総合相談電話番号”. 2012年7月12日閲覧。
  25. ^ 警視庁史編さん委員会 1978, pp. 330-332
  26. ^ 島根県警察本部:110番制度の歴史”. 2015年9月24日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。
  27. ^ 110番通報の適切な利用の促進について:政府広報オンライン”. 2014年10月20日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。


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