監察官とは? わかりやすく解説

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監察官

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/08/06 04:27 UTC 版)

監察官(かんさつかん、英語Inspector General ; IG)とは、官吏などの督査などを担当する職名である。強制力を行使する権力的公務など、特に職務の性質上、内部の監察を要する官庁その他には監察官が置かれている。

日本

監察官が置かれている官庁

冠称のない「監察官」という名称の職が置かれているのは枚挙に暇がないが、例えば次のようなものがある。

冠称付きの監察官

  • 法務省
    • 最高検察庁監察指導部 -最高検察庁の長として庁務を掌理し、全ての検察庁の職員を指揮監督するという 検事総長の権限により設けられている(検察庁法第7条)。責任者は監察指導部の部長。検事総長に昇進する場合がある。

日本の警察の監察官

日本の警察における監察官は警察庁警視庁および各道府県警察本部に設置される常設職である。警察不祥事の捜査や服務規定違反など内部罰則を犯した警察官への質疑、さらには会計監査業務に携わる。

沿革

1999年ごろ神奈川県警、新潟県警などで不祥事が相次いだため、西田司国家公安委員会委員長国家公安委員会は2000年1月、「監察に関する規則」を制定し、警察庁長官並びに警視総監及び道府県警察本部長は監察実施計画を作成すること、実施状況の国家公安委員会又は都道府県公安委員会への報告を義務付けた[1]。それぞれの公安委員会は市民を代表してそれをチェックする。

委員会は同年3月には、警察刷新会議を発足させて緊急提言を行い、これに基づき、国家公安委員会には事務局、監察、苦情処理委員会を置いて監視機能を強化することとなり、また警察の情報公開の強化も規定された。警察法が改正され、政府案に基づいて政策評価及びハイジャック等に関する警察庁の指揮並びに情報公開に関する所掌、警察署協議会の設置、警察官の懲戒事由に係る報告義務、公安委員の欠格要件、皇宮護衛官に関する規定が設けられた[2]

施行から17年が経過した2017年12月には、国家公安委員会と警察庁による「総合評価書」が報告された[3]。各都道府県警察からの報告の頻度は、施行当初は4半期に1回とされていたが、2019年3月15日、国家公安委員会は規則を改正して、報告回数を年1度に削減した(委員長は当時第4次安倍内閣山本順三議員)。

規則

  • 警察庁長官ならびに警視総監および道府県警察本部長は、毎年度監察実施計画を作成し、それぞれ国家公安委員会または都道府県公安委員会に報告し、少なくとも毎年1回、監察実施状況を報告する。
  • 国家公安委員会および都道府県公安委員会は、監察について必要があると認めるときは、それぞれ警察庁または都道府県警察に対して具体的または個別的な事項にわたる指示ができる(警察法第12条の2及び43条の2)。
  • 警視総監および道府県警察本部長に、都道府県警察職員の懲戒事由に係る事案について都道府県公安委員会への報告義務を課す。

首席監察官

首席監察官とは、警察庁(長官官房人事課)、管区警察局および都道府県警察において、監察に関する事務を掌理する職である。総責任者は「警察庁長官官房首席監察官」といい、階級警視監。官房人事課長よりさらに上位であり、国家公務員たるいわゆるキャリアの警察官が就く。警察庁では監察官を務めた後、局長警察大学校幹部になることがある。

関東・近畿・九州の各管区警察局は「総務監察部」、東北・中部・中国四国の各管区警察局は「総務監察・広域調整部」と称している。首席は警視長または警視正

警視庁・道府県警察本部

警務部監察官室に属し、階級は全員が警視以上。都道府県毎に多少の違いはあるが、警察官を捜査する監察官はその役割から、署長経験者が多い。

いわば「警察の中の警察」であり、監察官室も警務部の中に置かれる。また監察官の指揮下で、捜査対象の警察官への行動確認などを行う監察官室員は、公安警察の出身者が多いとされる。

近年監察官に対し接待や馴れ合いなどで不正との批判等を受ける事案も発生しており、上には甘く下とは馴れ合う風習ができあがっており、それがカラ監察などの風潮を生み出す原因にもなったとされる。新潟県で発生した新潟少女監禁事件の際に発覚した『賭け麻雀スキャンダル』なども、警察庁の特別監察チームを新潟県警察本部が過度に接待をしたことが原因といわれる。

なお、警視総監は東京を管轄する警視庁の長という位置付けであるが、身分が国家公務員であるので、都知事や都公安委員会による処分・勧告などは行えず、東京都の権限では裁くことができない。同様に各道府県警本部長や主要部長も全て警視監・警視長・警視正の国家公務員であるから、知事・道府県公安委員会の権限では処分が下せない。これは消防吏員との最大の違いといえる。

警察庁

警察庁の監察官は、警察庁組織令第6条で首席監察官の設置が規定されている。官房人事課監察官(定数2)は上部監察として道府県警察本部に出張することがある。官房人事課の監察は22人体制。地方機関である管区警察局の監察課・監察官は、管内の道府県警察本部にしばしば出向く。管区警察局の監察は全国で126人体制。ただし通常の監察は警視庁・道府県警察本部監察官の業務で、官房首席監察官であっても直接監察を行うわけではない。監察業務の重点方針決定、各監察官の監督が主である。警察庁長官警視総監、各道府県警本部長や主要部長などの最高幹部の監察は、国家公安委員会が担当することとされている。

留置施設・刑事施設の監視

2005年の刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律に基づき、独立の留置施設視察委員会、刑事施設視察委員会が設けられ[4]、留置施設(警察署の留置場など)や刑事施設(法務省所管の刑務所拘置所など)の運営状況を監視し、被収容者の処遇が適正に行われるよう意見を述べている。

中国

伝統的に中華王朝は官吏の監察を重視しており(「監察御史」の名も隋朝から受け継がれている。)、清朝滅亡後も、中国独自の「五権」(通常のいわゆる「三権」に、官吏の採用システムたる「考試」と官吏の監察システムたる「監察」を加えたもの)を構想した孫文らからの流れを受けて、中華民国憲法民国36年1月1日国民政府公布)でも、一章(第9章)を割いて監察院の定めを置いている。

満洲国でも満洲国国務院とは独立して満洲国監察院を置いていた。中華人民共和国でも国家監察委員会を設置している。

アメリカ合衆国

監察総監委員会のロゴ。

アメリカの監察総監局の枠組みは、1978年の監察総監法英語版によって確立した[5]

監察総監英語版が政府機関、軍事組織、または請負業者の活動調査を行い、政府規定の遵守やセキュリティの有効性の監査、または、予見される予算や地位の不正使用を含む犯罪活動を調査している。連邦、州、地方レベルで多数の監察総監室がある[6]

例えば陸軍には、陸軍監察総監室英語版がある。

関連項目

脚注

注釈
出典
  1. ^ 法令検索「監察に関する規則」
  2. ^ 第150回国会衆議院「地方行政委員会議事録第1号」。 平成12年10月24日。
  3. ^ 「総合評価書」
  4. ^ 「刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律」(平成17年法律第50号閣法)。e-Gov。
  5. ^ Schudson, Michael (December 16, 2017). ""Book Review: The Accountability State: US Federal Inspectors General and the Pursuit of Democratic Integrity". The International Journal of Press/Politics. doi:10.1177/1940161217744468. Retrieved 18 May 2020.
  6. ^ Hilliard, Nadia (2017). The Accountability State: US Federal Inspectors General and the Pursuit of Democratic Integrity. Lawrence, KS: University Press of Kansas. ISBN 9780700623983. [要ページ番号] Excerpt.

外部リンク





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