神代文字とは? わかりやすく解説

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じんだい‐もじ【神代文字】

読み方:じんだいもじ

日本で、漢字渡来以前古くから用いられていたという文字日文(ひふみ)・天名地鎮(あないち)・阿比留(あひる)などがある。古来神道家などの間にその存在信じられてきたが、その多く表音文字で、現在ではすべて後世偽作とされる江戸後期には、平田篤胤の「神字日文伝(しんじひふみでん)」(存在説)、伴信友の「仮字本末(かなのもとすえ)」(否定説その他の論争があった。


神代文字

読み方:カミヨモジ(kamiyomoji), ジンダイモジjindaimoji

神代文字


神代文字

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/12 08:35 UTC 版)

神代文字(じんだいもじ、かみよもじ)は、「漢字伝来以前に存在した」とみなされる、日本語を表記する固有の文字のことである。


注釈

  1. ^ 柳田康雄・久住猛雄などにより板石硯が出土することを根拠として、弥生時代の日本列島にすでになんらかの文字文化が存在したとする主張がおこなわれている。一方、古澤義久によりこれら「硯」とされた出土品には、近世の砥石の特徴を有するものが多くあるという反論も出ており、2023年現在、結論は出ていない[2]
  2. ^ また、光明皇后の蔵書であり、760年以前に伝来した『判比量論残巻』(大谷大学蔵)にも同様に省画した漢字を用いた吏読が残っている。こうした理由から、片仮名のルーツは新羅にたどることのできるものである可能性がある[7]
  3. ^ 空海『声字実相義』によれば、大日如来法身仏であり、一切世界を内包する。その説法は十界の言語、六境の表す文字をもてなされる。それゆえ、一切世界の現象は声字である[13]
  4. ^ 日本は、天照大神の系譜が続く秘められた領域であり、天孫降臨がなされた神聖な地である。東の果ての辺境といえども、その言葉の響きは澄み通って上品であり、中国や天竺とも共通しうる。
  5. ^ 五十というのは単に字に現れた数だけではなく、実に天地の声でもあるから、その中に含まれるものは自ずから異なっているといわなければならない[14]
  6. ^ 内閣文庫には天保14年(1843年)に小笠原通当によって記された『秀真政伝紀』が所蔵されているが、これは日吉神社本にさらに解釈を加える体裁となっている[31]
  7. ^ なお山田は、吏道は漢字の略字であり、この文字は諺文をもとに作られた文字にすぎないと同説を批判している[37]
  8. ^ なお、『竹内文書』収録神代文字の五十音図は公刊されており、狩野も同論文において「私はいわゆる神代文字の予備知識がなかったため、この等文書の調査を始めた時には天津教の神代文字は読めようとは想わなかったが、丁付の数字に不図気付いてから奮発しておよそ一ヶ月を費して全部が読めた。後に友人の渡辺大濤氏から近頃某氏の著した神代文字の本の中にこの文字を説いていることを聞かされ、自分の寡聞を恥ずると同時に、世間にはまた迷信者もあるものと思った」と述懐している[64]

出典

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  2. ^ 「「硯」論争 日本の文字文化の証拠 漢字いつ流入、出土品に賛否」『朝日新聞』、2023年5月17日、夕刊。
  3. ^ 藤堂明保「漢字」『国史大辞典』吉川弘文館。 
  4. ^ a b 上野英二「仮名成立の意義 覚書 : 言葉の獲得」『成城国文学』第37号、2021年3月19日、104–132頁。 
  5. ^ 武田祐吉注釈校訂. “古事記”. www.aozora.gr.jp. 2024年3月28日閲覧。
  6. ^ a b 築島裕「片仮名」『国史大辞典』吉川弘文館。 
  7. ^ a b 小林芳規東アジアの角筆文献から見る片仮名の起源」『比較文化 第54号』2008年、3–6頁。 
  8. ^ 矢田勉. “平仮名は誰が作ったのですか - ことばの疑問”. ことば研究館. 国立国語研究所. 2024年3月26日閲覧。
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  10. ^ a b c d e f g h i j k l m n 山田孝雄「所謂神代文字の論-上-」『藝林』第4巻第1号、1953年、2-24頁。 
  11. ^ 関晃「王仁」『国史大辞典』吉川弘文館。 
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  13. ^ 添田隆昭「声字実相義」『国史大辞典』吉川弘文館。 
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  15. ^ a b 鎌田東二言霊思想の比較宗教学的研究」『筑波大学博士論文』2001年、49-50頁。 
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