漢字三音考とは? わかりやすく解説

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かんじさんおんこう〔カンジサンオンカウ〕【漢字三音考】

読み方:かんじさんおんこう

江戸中期語学書。1巻本居宣長(もとおりのりなが)著。天明5年(1785)刊。日本語の音と、漢音呉音唐音三音について論じたもの。


漢字三音考

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/11/19 13:38 UTC 版)

『漢字三音考』
著者 本居宣長
発行日 天明5年(1785年
ジャンル 語学書
日本
言語 日本語
形態 和装本
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漢字三音考』(かんじさんおんこう)は、江戸時代中期に本居宣長が著した語学書。日本に伝来した漢字音について、漢音呉音唐音の3種を論説したもの[1]

概要

宣長は本書において、日本語が「純粋正雅ノ音」で成立していると主張し、中国やインドの音を「不正」としている[2]

天明5年(1785年)刊。書名については、すでに『字音仮字用格』の冒頭および巻末広告に見られる[3][4]文雄の『三音正儒』や『和字大観抄』に負うところが多いが、賀茂真淵の『語意考』の影響も受けている[5]

本書は漢字音研究であるが、宣長の立脚点は常に日本であり[注 1]中国語文字としての漢字を扱ったものではない[6]。また、日本語の活用形における用法に関して、少なからず体系的な説明をしている[7]

内容

全20章のうち、最初の6章では「皇国の古言が純粋正雅の五十音から成るのに対し、中国や印度の音は鳥獣万物の音に似ている」ということを説き、第7章以降において、字音の伝来から始めて日本字音の特性を述べる[8]。すなわち、宣長のいう漢字音とは、「中国の文字としての音そのもの」ではなく、「受容した日本人日本語の音韻観念の範囲内で捉えて定着させた音」であり、その根底には音の「翻訳」ともいうべき問題がある[9]。なお附録では音便について論じている[3]

受容

刊行前の明和8年(1771年)頃には、谷川士清が宣長宛の書簡で絶賛している[3]。また刊行後には上田秋成と、「」の存在や半濁音のほか、清濁について論争した[10]

影印・翻刻

脚注

注釈

  1. ^ 有名な「漢意」も日本人の問題として論じられている[6]

出典

  1. ^ 矢田勉 (2016), p. 53.
  2. ^ 本居宣長記念館 (2001), p. 15(竹田純太郎「漢字三音考」)
  3. ^ a b c 本居宣長記念館 (2015), p. 21.
  4. ^ 本居宣長記念館 (2018), p. 7.
  5. ^ 竹田鐵仙 (1937), p. 41.
  6. ^ a b 本居宣長記念館 (2022), p. 72.
  7. ^ 湯浅茂雄 (1980), pp. 80–81.
  8. ^ 小松英雄 (1961), p. 124.
  9. ^ 尾崎知光 (2012), p. 147(初出:尾崎知光 1997
  10. ^ 本居宣長記念館 (2022), p. 73.

参考文献

図書
  • 尾崎知光『国語学史の探求』新典社〈新典社研究叢書〉、2012年9月。 ISBN 9784787942319 
  • 本居宣長記念館 編『本居宣長事典』東京堂出版、2001年12月。 ISBN 4490105711 
  • 鈴屋遺蹟保存会本居宣長記念館 編『宣長の版本』本居宣長記念館、2015年1月。 
  • 鈴屋遺蹟保存会本居宣長記念館 編『本居宣長年表:(稿)』本居宣長記念館、2018年3月。 
  • 鈴屋遺蹟保存会本居宣長記念館 編『本居宣長の不思議』(令和版)鈴屋遺蹟保存会本居宣長記念館、2022年6月。 
論文
  • 河合一樹「不朽の音:『漢字三音考』における徂徠派批判」『求真』第21号、求真会、2016年3月、31-43頁。 
  • 小松英雄 著「字音研究の歴史」、佐伯梅友中田祝夫林大 編『国語学』三省堂〈国語国文学研究史大成15〉、1961年2月、114-131頁。 
  • 満田新造「本居宣長の字音研究を評す」『國學院雜誌』第31巻第3号、1925年3月、25-33頁。 
  • 満田新造「漢字三音考評論」『國學院雜誌』第31巻第10号、1925年10月、17-26頁。 
  • 満田新造「本居宣長の字音研究に現れたる二の主義」『國學院雜誌』第32巻第11号、1926年11月、1-17頁。 
  • 竹田鐵仙「本居宣長翁の國語學と悉曇」『密教研究』第62号、密教研究会、1937年6月、37-52頁。 
  • 天沼寧「「漢字三音考」における「云ふ」の送りがなについて」『近代語研究』 4巻、武蔵野書院、1974年3月、417-428頁。 
  • 田山令史「『漢字三音考』:本居宣長の言語観」『仏教学部論集』第97号、佛教大学仏教学部、2013年3月、21-35頁。 
  • 湯浅茂雄「本居宣長の活用論」『上智大学国文学論集』第13号、1980年2月、55-88頁。 
  • 肥爪周二「近世音韻学における促音挿入形:『かたこと』『倭語連声集』『漢字三音考』」『近代語研究』 23巻、武蔵野書院、2022年9月、73-92頁。 
  • 尾崎知光「『漢字三音考』の本旨:ンノ韻の問題にふれて」『鈴屋学会報』第14号、鈴屋学会、1997年12月、1-8頁。 
  • 矢田勉「本居宣長」『日本語学』第35巻第4号、明治書院、2016年4月、52-55頁。 

外部リンク




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