思想史とは? わかりやすく解説

思想史

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/01/19 05:19 UTC 版)

思想史(しそうし、: History of Ideas)は、思想歴史。多くの場合、思想家学者政治家民衆などが残した意見に関するテクストを扱う学問を指す[1]

概要

類義語として哲学史精神史インテレクチュアル・ヒストリーなどがある。また、ドイツ語圏で発展した概念史アメリカアーサー・O・ラヴジョイらが提唱した観念史[2]などが挙げられる[注 1]

一般的に「思想史」と呼称する場合は、哲学者(哲学研究者なる呼称も見られる)が純粋な哲学に近い思想を扱う例か、歴史学者が文化史研究の一環として扱う例か、例えば政治学者が政治思想史を研究するように当該分野の研究者が扱う例が多い[要出典]。あらゆる学問には、その歴史として「○○学史」があるが、その場合は「近代以降に成立した科学としての○○学の歴史」を扱うことがほとんどである。そのため、前近代の学問や科学的方法から逸脱してしまうような思想を扱う場合は、政治思想史、経済思想史[3]、社会思想史[4]、法思想史、教育思想史[5]、科学思想史など、「○○思想史」と呼ぶことがある。

個別分野

分野別

地域別

日本の思想史学では、歴史学と同様に日本、東洋、西洋の三分法が一般的である。ただし、一般の用法として「東洋思想」と言えば、中国思想のみを指す場合、日本思想を含める場合、その他に陰謀論疑似科学新興宗教思想を指す場合がある。

  • 日本思想史日本思想
  • 西欧思想史西洋哲学) - 古代ではギリシアとローマ、中世ではキリスト教思想(単に「中世思想」と言った場合、多くは西洋史上の中世を指す)、近現代では英米独仏伊など各国別の研究が主として行われる。特に近代以降の哲学や法学では大陸系大陸法大陸哲学)と英米系英米法慣習法、英米哲学、分析哲学)の区分も重要である。
  • 東洋思想史東洋哲学) - 東洋では、中国とインドが重要地域とされる。
    • 中国思想史中国哲学) - 漢学の伝統を引き継ぎ、日本では極めて層の厚い分野である。
    • インド思想史インド哲学) - 主に仏教を中心として、中国思想と同様に日本では極めて層の厚い分野である。

思想史家

思想史家は、哲学史家歴史家と違いそのアプローチに特徴があり、必ずしもアカデミズムの枠に留まらない。またイギリスのレズリー・スティーヴンのような文学思想史家、アメリカのG・H・ミードのような社会思想史家も存在する。ほかに日本思想史家、政治思想史家、経済思想史家、宗教思想史家、言語思想史家などに分類され得る。法思想史のように法哲学との境界線が定めにくい分野もある。極めて方法論に自覚的な人々だと言えるのが特徴である[要出典]。なお日本思想史を専攻するものは、日本思想史家と呼ぶことが多い。

思想史家一覧

ドイツ・スイス
イギリス・アメリカ
フランス
その他の国
  • ルートヴィヒ・マルクーゼ
  • マックス・ネットラウ - アナーキズムの思想史家。
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脚注

注釈

  1. ^ ただし、哲学史は「学問としての哲学の歴史」、精神史は「必ずしも文章化されていない芸術や人間の活動などを含む歴史」、インテレクチュアル・ヒストリーは「知識を巡る人間活動全般を扱う歴史」で、日本語の「思想史」とは必ずしも一致しない。
  2. ^ 丸山眞男は思想家あるいは政治思想家と呼ばれるのを嫌い、自分は政治思想史家なのだと述べている[要出典]

出典

  1. ^ 稲村一隆「テクストの分析と影響関係」『思想』第1143号、2019年7月、p.82。
  2. ^ Dictionary of the History of Ideas - 「叢書 ヒストリー・オヴ・アイディアズ」(平凡社)シリーズや『西洋思想大事典』(平凡社、1990年)として翻訳紹介された。フィリップ・P・ウィーナー編『観念史事典』(1973-74年)英語原文の電子版。無料で利用できる。
  3. ^ 日本経済思想史研究会
  4. ^ 社会思想史学会
  5. ^ http://wwwsoc.nii.ac.jp/hets/ 教育思想史学会]

関連項目

参考文献

  • 子安宣邦ほか『日本思想史読本』東洋経済新報社、1979年
  • 矢崎光圀『法思想史』日本評論社、1981年

関連文献

外部リンク


思想史

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ヨーロッパにおける政教分離の歴史」の記事における「思想史」の解説

ハンナ・アレント『人間の条件』志水速雄訳、筑摩書房<ちくま学芸文庫>、1994年ISBN 978-4480081568。 M・Iフィンリー民主主義古代現代柴田平三郎訳、講談社<講談社学術文庫>、2007年ISBN 978-4061598102。 本村凌二中村るい 著『古代地中海世界歴史 ('04)』放送大学教育振興会2004年アリストテレスニコマコス倫理学』<上><下>、高田三郎訳、岩波書店<岩波文庫>、1971年ISBN 978-4003360415,ISBN 978-4003360422[2006年45参照]。 金子晴勇ヨーロッパ人間学の歴史知泉書館2008年ISBN 978-4862850348。 南原繁 著『<新装版>政治理論史』東京大学出版会2007年半澤孝麿ヨーロッパ思想史における「政治」の位相岩波書店2003年ISBN 4000023977。 碧海純一 ほか編『法学史』東京大学出版会1976年藤原保信飯島昇藏西洋政治思想史』1、新評論1995年ISBN 4794802536。 シェルドン・S・ウォーリン西欧政治思想史政治ヴィジョン尾形典男佐々木武・佐々木毅・田中治男福田歓一有賀弘・半沢孝麿訳、福村出版1994年ISBN 978-4571400162。 『西洋における近代的自由の起源R・Wディヴィス鷲見誠一田上雅則訳、慶應義塾大学法学研究会、2007年ISBN 978-4766413977。 アリスター・マクグラスキリスト教思想入門歴史神学概説関川泰寛・神代真砂実訳、キリスト新聞社2008年ISBN 978-4873955148。 クラウス・リーゼンフーバー中世思想史』村井則夫訳、平凡社<平凡社ライブラリー>、2003年ISBN 978-4582764857。 クラウス・リーゼンフーバー中世における自由と超越人間論形而上学接点求めて酒井一郎ほか訳、創文社1988年ISBN 4-423-10083-5。 クラウス・リーゼンフーバー 著『中世哲学源流創文社1995年クラウス・リーゼンフーバー 著『中世における理性霊性知泉書館2008年J・Bモラル中世政治思想柴田平三郎訳、平凡社平凡社ライブラリー〉、2002年ISBN 978-4582764345。 マルクブロック『王の奇跡王権超自然的性格に関する研究/特にフランスイギリスの場合井上泰男ほか訳、刀水書房1998年ISBN 978-4887082311。 エルンスト・H・カントローヴィチ 著、小林公『王の二つの身体』平凡社1992年

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