中世思想
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/07 03:22 UTC 版)
フランスの哲学者、神学者のコンピエーニュのロスケリヌスは、黎明期の著名な唯名論者である。唯名論の思想は、ピエール・アベラールの著作に見られ、最も影響力のある徹底した名目主義者であるオッカムのウィリアムが開花させた。アベラールやオッカムが主張した唯名論哲学は、概念論(概念主義、conceptualism)と呼ばれ、唯名論と実在論の中間的な立場をとっている。 オッカムは、存在するのは個人だけであり、普遍は個人の集合を指す心的方法にすぎないと主張した。「私は、普遍的なものは、対象に存在する現実的なものではなく、心の中の思考対象(objectivum in anima)としてのみ存在することを主張する」と述べている。オッカムは原則として、説明に必要のない実体を仮定することに反対した。したがって、例えばソクラテスの中に「人間性」という実体があると信じる理由はないし、それを主張しても何も説明されないと書いている。これは「オッカムの剃刀」と呼ばれる分析方法に対応したもので、現象の説明にはできるだけ少ない仮定を置くべきだという原則である。 これに対して、概念論的手法は、普遍性という心的問題にのみ答えを与えると批判がある。同じ概念が2人の個人に正確かつ恣意的に適用されるならば、2人の個人の間には、同じ概念に該当することを正当化するような類似性や共有される性質があるはずであり、それこそが普遍性が対処するために持ち込まれた形而上学的な問題であり、問題全体の出発点であるという。個人間の類似性が主張されれば、概念論は穏健な実在主義となり、否定されれば、唯名論に崩壊する。
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