しゅう‐ごう〔シフガフ|シユウガフ〕【集合/×聚合】
集合
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/29 06:47 UTC 版)
集合(しゅうごう、英: set, 仏: ensemble, 独: Menge)とは数学における概念の1つで、大雑把に言えばいくつかの「もの」からなる「集まり」である。集合を構成する個々の「もの」のことを元 (げん、英: element; 要素) という。
集合は、集合論のみならず現代数学全体における最も基本的な概念の一つであり、現代数学のほとんどが集合と写像の言葉で書かれていると言ってよい。
慣例的に、ある種の集合が系 (けい、英: system) や族 (ぞく、英: family) などと呼ばれることもある。実際には、これらの呼び名に本質的な違いはないが細かなニュアンスの違いを含むと考えられている。たとえば、方程式系(「相互に連立する」方程式の集合)、集合族(「一定の規則に基づく」集合の集合)、加法族(「加法的な性質を持つ」集合族)など。
導入
集合は「ものの集まり」である[1]。集合の元(要素)として、集められる対象となる「もの」は、数、文字、記号などをはじめ、どんなものでも(当然、集合でも)構わない。
一方で、どんな「集まり」でも集合と呼んでよいわけではない。その「集まり」が集合と呼ばれるためには、対象が「その集まりの元であるかどうかが不確定要素なしに一意に決定できる」ように定義されていなければならない。
例えば、ジョーカーやコマーシャルカードを除いたトランプのスート全体 {♠(スペード), ♦(ダイヤ), ♣(クラブ), ♥(ハート)} やトランプの数字全体 {A, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10, J, Q, K} は集合の例である(A,J,Q,Kは数字では無いが、多くのトランプゲームでは数字として解釈される。)。トランプはこれらの組
- {(♠, A), ..., (♠, K), (♦, A), ..., (♦, K), (♣, A), ..., (♣, K), (♥, A), ..., (♥, K)}
を符牒とする、4×13=52枚のカードであるが、これもまた集合の一例である。特に、トランプはスートの集合と数字の集合との直積集合と同一視でき、「52」はこの集合の濃度を表している。また、先のスートの集合、数字の集合の濃度はそれぞれ 4, 13 である。
A | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | J | Q | K | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
♠ | (♠,A) | (♠,2) | (♠,3) | (♠,4) | (♠,5) | (♠,6) | (♠,7) | (♠,8) | (♠,9) | (♠,10) | (♠,J) | (♠,Q) | (♠,K) |
♦ | (♦,A) | (♦,2) | (♦,3) | (♦,4) | (♦,5) | (♦,6) | (♦,7) | (♦,8) | (♦,9) | (♦,10) | (♦,J) | (♦,Q) | (♦,K) |
♣ | (♣,A) | (♣,2) | (♣,3) | (♣,4) | (♣,5) | (♣,6) | (♣,7) | (♣,8) | (♣,9) | (♣,10) | (♣,J) | (♣,Q) | (♣,K) |
♥ | (♥,A) | (♥,2) | (♥,3) | (♥,4) | (♥,5) | (♥,6) | (♥,7) | (♥,8) | (♥,9) | (♥,10) | (♥,J) | (♥,Q) | (♥,K) |
個々の集合を表すには、しばしばラテン文字の大文字 A, B, ..., E, F, ..., M, N, ..., S, T, ..., X, Y, ... などを使う[注釈 1]。集合の元はラテン小文字 a, ..., e, ..., m, ..., s, ..., x, ... とすることが多く[注釈 2]、特に集合を表す大文字に対応する小文字を使う。
帰属と包含

集合と元、集合と集合などの間には含んだり含まれたりといった素朴な関係を考えることができる。
- 帰属関係
- 対象 a が集合 A を構成するものの一つであるとき、「a は集合 A に属す」「a は集合 A の要素(あるいは元)である」「集合 A は a を要素として持つ」などといい、a ∈ A あるいは A ∋ a と表す。
- 包含関係
- 2 つの集合 A, B について、A に属する元がすべて B にも属するとき、すなわち x ∈ A ⇒ x ∈ B が x の取り方に依らずに成り立つとき、「A は B の部分集合である」「A は B に集合として含まれる」「A は A を包含する」などといい、A ⊂ B または A ⊆ B あるいは B ⊃ A または B ⊇ A と記す。
帰属関係と包含関係は異なる概念であって、混同してはならない。例えば、X ⊂ Y ⊂ Z ならば必ず X ⊂ Z であるが、X ∈ Y ∈ Z からは X ∈ Z は必ずしも導かれない。また、x ∈ A ⊂ B ならば x ∈ B であるが、x ⊂ A ∈ B からは x ∈ B を帰結することは一般にはできない。
記法
集合の記法には、おおまかに2通りの方法がある。論理的な概念として「内包と外延」というものがあるが、ほぼそれに相当するもので、その要素をすべて列挙するという方法と、その集合に含まれるのであれば必ず満たされ、含まれないのであれば必ず満たされない条件を明示するという方法である。
「外延」に相当する、すべて列挙する方法では、例えば、1, 3, 5, 7, 9 からなる集合は、
結びの模式図 - 二つの集合を「くっつけ」て一緒にしてしまうことで新しい集合を取り出すことができる。加法的な集合族の基本となる演算のひとつ。和集合。
交わりの模式図 - 二つの集合の共通した部分を見つけることで、新しい集合を取り出すことができる。乗法的な集合族の基本となる演算。共通部分。
差集合の模式図 - 二つの集合のうちの一方の集合について、それに帰属する元のうち、同時に他方にも含まれる元を取り除いて新しい集合を作ることができる。差は一方と他方の補集合との交わりであり、乗法的な演算である。
補集合の模式図 - 全体集合(普遍集合)が与えられ、任意の集合は全体集合の部分集合であるという仮定のもとで、一つの集合の全体からの差。勝手な集合はその補集合と交わりを持たず、それらの和は全体集合に一致する。
外部リンク
- Hazewinkel, Michiel, ed. (2001), “Set”, Encyclopedia of Mathematics, Springer, ISBN 978-1-55608-010-4
- Weisstein, Eric W. "Set". mathworld.wolfram.com (英語).
- set - PlanetMath.(英語)
- Sets in nLab