ツェルメロ=フレンケル集合論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/01 10:18 UTC 版)
集合論において、ツェルメロ=フレンケル集合論(英: Zermelo-Fraenkel set theory)とは、ラッセルのパラドックスなどのパラドックスのない集合論を定式化するために20世紀初頭に提案された公理系である。名前は数学者のツェルメロとフレンケルにちなむ。歴史的に議論を呼んだ選択公理 (AC) を含むツェルメロ=フレンケル集合論は公理的集合論の標準形式であり、今日では最も一般的な数学の基礎となっている。選択公理を含むツェルメロ=フレンケル集合論はZFCと略される。Cは選択 (Choice) 公理を[1] 、 ZFは選択公理を除いたツェルメロ (Zermelo)=フレンケル (Fraenkel) 集合論の公理を表す。
出典
- ^ Ciesielski 1997. "Zermelo-Fraenkel axioms (abbreviated as ZFC where C stands for the axiom of Choice"
- ^ Ebbinghaus 2007, p. 136.
- ^ Halbeisen 2011, pp. 62–63.
- ^ これについての議論は Fraenkel, Bar-Hillel & Lévy 1973を参照
- ^ Kunen (1980, p. 10).
- ^ Hatcher 1982, p. 138, def. 1.
- ^ Fraenkel, Bar-Hillel & Lévy 1973.
- ^ Shoenfield 2001, p. 239.
- ^ Kunen 1980, p. 15
- ^ Shoenfield 1977, section 2.
- ^ Hinman 2005, p. 467.
- ^ (Link 2014)
- ^ Tarski 1939.
- ^ Feferman 1996.
- ^ Wolchover 2013.
注釈
- ^ 集合の元であって、それ自体が集合ではないもの
- ^ a b それに属する元が共通してもつ属性によって定義された数学的対象の集まりであり、集合とするには大きすぎるもの
- ^ 集合の存在を直接主張する公理の省略は、2つの方法で正当化できる。1つ目として、通常ZFCが形式化される一階述語論理の標準的な文脈では、論議領域が空でない必要がある。したがって、「何か」が存在することは一階述語論理の論理的定理である。この定理は通常、「何か」がそれ自体と同一であるという命題 として表される。前述の通り、ZFCの言語では集合のみを扱うため、この論理的定理をZFCの言語で解釈すると、何らかの集合が存在するということになる。したがって、集合の存在を主張する別の公理は必要ない。2つ目として、ZFCがいわゆるフリーロジックで定式化されており、論理だけでは何かが存在することを証明できない場合でも、無限公理(後述)は無限集合が存在すると主張する。これは何らかの集合が存在することを意味するので、やはり追加の公理は不要である。
- 1 ツェルメロ=フレンケル集合論とは
- 2 ツェルメロ=フレンケル集合論の概要
- 3 公理
- 4 パラドックスの回避
- 5 累積階層による動機づけ
- 6 超数学
- 7 批判
- 8 関連項目
ツェルメロ=フレンケル集合論(ZF公理系)
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「公理的集合論」の記事における「ツェルメロ=フレンケル集合論(ZF公理系)」の解説
詳細はツェルメロ=フレンケルの公理系 (ZF: Zermelo-Fraenkel) を参照されたいが、これは以下の公理からなる。 外延性の公理 A と B が全く同じ要素を持つのなら A と B は等しい: ∀ A ∀ B ( ∀ x ( x ∈ A ↔ x ∈ B ) → A = B ) {\displaystyle \forall A\forall B(\forall x(x\in A\leftrightarrow x\in B)\rightarrow A=B)} 。 空集合の公理 要素を持たない集合が存在する: ∃ A ∀ x ( x ∉ A ) {\displaystyle \exists A\forall x(x\notin A)} 。 外延性の公理から、空集合の公理が存在を主張する集合はただ一つであることが言えるので、これを空集合と呼び、 ∅ {\displaystyle \varnothing } で表す。 対の公理 任意の要素 x, y に対して、x と y のみを要素とする集合が存在する: ∀ x ∀ y ∃ A ∀ t ( t ∈ A ↔ ( t = x ∨ t = y ) ) {\displaystyle \forall x\forall y\exists A\forall t(t\in A\leftrightarrow (t=x\vee t=y))} 。 外延性の公理から、x と y に対して対の公理が存在を主張する集合はただ一つであることが言えるので、これを { x , y } {\displaystyle \{x,y\}\,} で表す。 { x , x } {\displaystyle \{x,x\}\,} を { x } {\displaystyle \{x\}\,} で表す。これにより順序対の存在が言え、それにより直積集合の存在も言える。 和集合の公理 任意の集合 X に対して、X の要素の要素全体からなる集合が存在する: ∀ X ∃ A ∀ t ( t ∈ A ↔ ∃ x ∈ X ( t ∈ x ) ) {\displaystyle \forall X\exists A\forall t(t\in A\leftrightarrow \exists x\in X(t\in x))} 。 外延性の公理から、X に対して和集合の公理が存在を主張する集合はただ一つであることが言えるので、これを X の和集合と呼び、 ⋃ X {\displaystyle \bigcup X} で表す。 ⋃ { x , y } {\displaystyle \bigcup \{x,y\}} を x ∪ y {\displaystyle x\cup y} で表す。 無限公理 空集合を要素とし、任意の要素 x に対して x ∪ {x} を要素に持つ集合が存在する: ∃ A ( ∅ ∈ A ∧ ∀ x ∈ A ( x ∪ { x } ∈ A ) ) {\displaystyle \exists A(\varnothing \in A\wedge \forall x\in A(x\cup \{x\}\in A))} 。 冪集合公理 任意の集合 X に対して X の部分集合全体の集合が存在する: ∀ X ∃ A ∀ t ( t ∈ A ↔ t ⊆ X ) ) {\displaystyle \forall X\exists A\forall t(t\in A\leftrightarrow t\subseteq X))} 。 外延性の公理から、X に対して冪集合の公理が存在を主張する集合はただ一つであることが言えるので、これを X の冪集合と呼び、 P ( X ) {\displaystyle {\mathcal {P}}(X)} または2xで表す。 置換公理 "関数クラス"による集合の像は集合である: ∀ x ∀ y ∀ z ( ( ψ ( x , y ) ∧ ψ ( x , z ) ) → y = z ) → ∀ X ∃ A ∀ y ( y ∈ A ↔ ∃ x ∈ X ψ ( x , y ) ) {\displaystyle \forall x\forall y\forall z((\psi (x,y)\wedge \psi (x,z))\rightarrow y=z)\rightarrow \forall X\exists A\forall y(y\in A\leftrightarrow \exists x\in X\psi (x,y))} 。 この公理は、論理式 ψ をパラメータとする公理図式である。 正則性公理(基礎の公理) 空でない集合は必ず自分自身と交わらない要素を持つ: ∀ A ( A ≠ ∅ → ∃ x ∈ A ∀ t ∈ A ( t ∉ x ) ) {\displaystyle \forall A(A\neq \varnothing \rightarrow \exists x\in A\forall t\in A(t\notin x))} 。 正則性公理はジョン・フォン・ノイマンによって導入された(1925年)。
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