ギター
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/06 08:07 UTC 版)
構え方や奏法
基本の構え方
まず演奏時の基本姿勢やギターの保持の方法は、音楽のジャンルやギターの種類などにより異なる。
クラシックギターでは椅子に座って左足を踏み台に乗せ、脚の位置を高くしてボディ側面のくぼみを左脚の太股に乗せ、ギターを体全体で抱えるような姿勢で演奏をする。クラシック以外では、座る場合でも、踏み台は使わず、右脚の太股に、脚を組みギター側面のくぼみ[注釈 3]を乗せて演奏をする場合と、脚を組まずにギターのくぼみを脚に載せる場合がある。(なおジャズギタリストは座って演奏することが多かった。また1970年代の日本のフォークシンガーも座って演奏することが多かった。)ハイスツール(座面の高い椅子)を用意し、そこに尻を載せて演奏する方法もある。
立って演奏する場合、フォークギターなどではギターストラップをギターのネック部分とギターのボトム(尻)のとめ金にかけ肩にかける方法があり、エレキギターではギターストラップの片方をギターのボトム(尻)の止め金にかけるのは同じだがもう片方はボディの止め金にかける(ギターのネックにかけない)。ラテン音楽のギターなどではギターのサウンドホールにひっかけるフックを利用し首から吊る方法などがある。
-
脚を組んでギターのくぼみを載せる構え
-
ストリートでアコギ類を座って演奏する場合
-
ハイスツールを使う方法
-
ラテンアメリカの音楽で立って演奏する場合のギターの構え方。
-
フォークミュージックやポピュラーミュージックを街頭で立って演奏する場合の構え方。《ギター ストラップ》を使い、ギターを肩にかける方法。ストラップの片端をネックに縛りつけているパターン。クラシック音楽のギターの構え方に比べると、ギターは水平に近い。
-
エレキギターを立って演奏する場合の一例。ストラップを使うが、ストラップの両端をボディの止め金にかける。エレキギターの位置は、近年では、フォークギターの場合と比べて低いことが一般的。
-
エリック・クラプトンがストラトキャスターを立って演奏する場合の構え
-
ロックミュージック系のエレキギターの奏者がステージで立ち姿勢で演奏していて、スポットライトを浴びて《速弾き》をしたり派手な演奏をする時の構え方
- 右利きの場合
右利き用のギターを使う。左手でネックを持って弦を押さえ、右手で弦を弾く。
- 左利きの場合
いくつかの方法がある。
- 右利き用のギターを使い、右利きの人と同じように左手でネックを持ち右手で弦を弾く方法
- 左利き用のギターを使い、右手でネックを持ち弦を押さえ、左手で弦を弾く方法
- 右利きの先生から教えてもらう場合は、常に「鏡写し」の動作をすればよい。左利き用のギターの販売数は右利き用と比べて少なく、小さな店舗では販売されていないことも多いのが難点。
- この持ち方をするプレーヤーの例としてはトニー・アイオミ[31]、ポール・マッカートニー[28]などが挙げられる。
他に以下のような変則的な手法を使うプレイヤーも存在するが、ギターの大幅な調整が必要だったり、練習が非常に困難だったりするなど難点が多い。
- 右利き用のギターを逆に持ち、弦も左利き用に逆順に張り替えて演奏する方法
- アコースティック・ギターの場合は、弦を逆順に張ることは根本的に非常に難しい[32]。調整が比較的容易なエレクトリック・ギターでも、ブリッジやナットの大幅な組み直しや調整が必要になる。
- この持ち方をしたプレーヤーの例として、ジミ・ヘンドリックス[33]などが挙げられる。
- 右利き用のギターを逆に持ち、弦の並びが通常と上下逆の状態で演奏する方法
- 右利き用のギターを逆に持ち、「鏡の国のギター」の状態で演奏する方法
- 通常の持ち方と遜色がなく快適である。
- この持ち方をしたプレーヤーの例としては大阪芸術大学准教授の中野圭などが挙げられる。
弦の押さえ方の基本
クラシック音楽やフラメンコ音楽などでは、弦を押さえる手は、ネックの下側をくぐるようにして親指をネックの裏側に当て、人差し指から小指までの4本の指で弦を押さえるのが基本姿勢となる(クラシックスタイル)。
一方、ブルースやロックの世界では、親指を表(指板)側に出してネックを握り込むような押さえ方も使われ、さらに親指で第6弦(通常一番上部に位置し、最も低い音を担当する)を押さえるという技法もある。

コードを演奏する際、基本的には左手の指1本につき弦1本を押さえるが、この場合、6本の弦の内、4本を押さえることしかできない。必然的に押さえられていない「開放弦」の音が混じることがあり、比較的澄んだ、伸びやかな響きとなる。この左手のポジションを、オープンコード、もしくはローポジションという。オープンコードは、開放弦が多いほど澄んだ伸びやかな音が鳴るが、音を細かくリズミカルに止めるのが困難で、楽曲のリズム感が損なわれがちになる。
一方、左手の人差し指を寝かせて使い、1 - 6弦や1 - 5弦など複数の弦を一度に押さえた上で、残りの3本の指も併用してコードの形を作るポジションもあり。この人差し指の技術をバレー、もしくはセーハと言い、これによって作られた左手のポジションをハイコードやバレーコードなどと言う。ハイコード(バレーコード)は、細かくリズミカルに音を止めることができ、楽曲のリズム感やビート感を出せるが、その代わりにオープンコードのような澄んだ伸びやかな音は出づらい。
フォークミュージックの伴奏専門のギターなどでは、どうしても弾けないハイコードがある初心者や中級者は、カポタスト(短縮形は「カポ」)というアクセサリーで、ある程度ハイコードを避けるという手法が用いられる(だが、ロックミュージックでは、特にエレキギターでは、基本的にカポタストは使わない)。おまけにオープンコードは開放弦の音が鳴り続けるのを細やかにリズミカルに制御するのは難しいという短所があり、ビートのきいたキレのある演奏が困難である。したがってリズム感やビート感の溢れる楽曲で楽譜でハイコードで演奏するよう指示されている部分はハイコードのまま弾くのが望ましく、一方、楽譜でオープンコードで演奏するよう指示されている部分はオープンコードのまま弾くのが望ましい。
なおカポタストは上述の場合だけでなく、コードのボイシングや開放弦の独特の澄んだ伸びやかな音色を活かしたまま移調するための道具として使われることもある。特に歌謡曲の伴奏にギターを使う場合は、ヴォーカルの音域に併せてカポを移動させるだけで楽曲の音高を上げ下げでき(まるでカラオケ装置の伴奏の音高調整のように使えて)簡単で、便利ではある。ただし、カポタストで移調する方法は、基本的に楽曲が始まる前にそれの位置を決めておかなければならず、曲の途中の移調や転調はかなり困難だという短所はある。一方、ハイコードを極めれば、カポという道具無しに、自分の指だけで、いかなる瞬間にも全ての移調・転調が自由自在にできるようになり、曲の途中でも即興演奏でも、自由自在に転調することができるようになる。歌謡曲の伴奏用のギターではない場合、たとえばクラシックギターの独奏曲の中の移調・転調やロックのエレキギターのソロパートの移調・転調は、カポは使わずハイコードを駆使して行われるほうが一般的である。
なお、アルペジオ奏法は言うに及ばず、ストローク奏法でも、特定の弦を弾かない、もしくは鳴らさないことが可能であるため、以上の記述はあくまで一般論である。音が鳴ると困る弦については、左手の任意の部分で軽く触れておくことによって、発音をほぼ抑えることができる。この技法をミュートという[注釈 5]。アルペジオやソロで本来弾かない弦であっても、誤って適切でない弦が演奏されることを防ぐため、予防としてミュートしておくこともある。バレーコードでも、1 - 5弦までのバレー(セーハ)では人差し指の先で6弦をミュートしておくことが多い。
奏法
(右手について)クラシックギターでは、複数の弦を別々に弾き、複数の指で弾く必要があるのでピックは普通は用いない[35]。なお親指から薬指までを使い弾く[35](小指は使わない)。クラシックギターはもともと独奏用の楽器であり[35]、クラシックギター用の楽曲は(右手の指も一本一本、独立に用いて)伴奏と旋律を同時に奏でる独奏曲が多い。
クラシックギター以外のアコースティックギターは伴奏用に用いられることが多く、右手の方は指やピックで全ての弦を一気に掻き鳴らすストローク奏法が多い。ストローク奏法は、フラメンコ・ギターではダウンストロークの場合は小指から人差し指に向けて4本の指で指先をきっちりと詰めて振り下ろす[36]。アップストロークの場合は親指の爪で下から振り上げるように弾く[36](通常、他の4本は使わない[36])。
エレクトリック・ギターではピックを用いたソロ演奏もある。
注釈
出典
- ^ Oxford Dictionary "guitar"
- ^ 「見て読む本 世界なるほど楽器百科」p30 株式会社ヤマハミュージックメディア編 ヤマハミュージックメディア 2008年11月10日初版発行
- ^ a b c d e f g h i j k l m n Britannica "guitar".
- ^ a b c 「図説 50の名器とアイテムで知る楽器の歴史」p22 フィリップ・ウィルキンソン 大江聡子訳 原書房 2015年2月15日第1刷
- ^ 「写真で分かる! 楽器の歴史 楽器学入門」p83 守重信郎 時事通信出版局 2015年9月30日発行 ISBN 978-4788714175
- ^ 「世界の楽器百科図鑑」p119 マックス・ウェイド=マシューズ 別宮貞徳監訳 東洋書林 2002年11月12日発行
- ^ 「図説 50の名器とアイテムで知る楽器の歴史」p22-23 フィリップ・ウィルキンソン 大江聡子訳 原書房 2015年2月15日第1刷
- ^ 「知ってるようで知らない ギターおもしろ雑学事典」p18-19 湯浅ジョウイチ ヤマハミュージックメディア 2007年11月20日初版発行
- ^ 「日用品の文化誌」p179-180 柏木博 岩波書店 1999年6月21日第1刷
- ^ 「日用品の文化誌」p180 柏木博 岩波書店 1999年6月21日第1刷
- ^ 「知ってるようで知らない ギターおもしろ雑学事典」p20 湯浅ジョウイチ ヤマハミュージックメディア 2007年11月20日初版発行
- ^ a b 「図説 50の名器とアイテムで知る楽器の歴史」p21 フィリップ・ウィルキンソン 大江聡子訳 原書房 2015年2月15日第1刷
- ^ 「知ってるようで知らない ギターおもしろ雑学事典」p22 湯浅ジョウイチ ヤマハミュージックメディア 2007年11月20日初版発行
- ^ 「知ってるようで知らない ギターおもしろ雑学事典」p26-27 湯浅ジョウイチ ヤマハミュージックメディア 2007年11月20日初版発行
- ^ “アコギとは”. コトバンク. デジタル大辞泉. 2021年9月26日閲覧。
- ^ “エレキギターとは”. コトバンク. 精選版 日本国語大辞典. 2021年9月26日閲覧。
- ^ “エレキとは”. コトバンク. 精選版 日本国語大辞典. 2021年9月26日閲覧。
- ^ 「知ってるようで知らない ギターおもしろ雑学事典」p217 湯浅ジョウイチ ヤマハミュージックメディア 2007年11月20日初版発行
- ^ “クラシックギターのしくみ:クラシックギターにはこんな特徴が - 楽器解体全書”. ヤマハ株式会社. 2021年11月5日閲覧。
- ^ “Wire World ~知る・楽しむ~”. 日鉄SGワイヤ株式会社. 2021年9月19日閲覧。
- ^ “次世代のギター弦 NYXL について”. D'Addario. 2021年9月19日閲覧。
- ^ 「知ってるようで知らない ギターおもしろ雑学事典」p217-218 湯浅ジョウイチ ヤマハミュージックメディア 2007年11月20日初版発行
- ^ 「知ってるようで知らない ギターおもしろ雑学事典」p219 湯浅ジョウイチ ヤマハミュージックメディア 2007年11月20日初版発行
- ^ a b 「知ってるようで知らない ギターおもしろ雑学事典」p212 湯浅ジョウイチ ヤマハミュージックメディア 2007年11月20日初版発行
- ^ “オープン・チューニング[open tuning]”. 音楽用語ダス. ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス. 2021年10月9日閲覧。
- ^ “11 ноября 2015: OKER (Норвегия) Kei Nakano (Япония) ТОПОТ аркестра (Россия)”. dom.com.ru. 2018年12月8日閲覧。
- ^ “日本特許第6709929号 【発明の名称】弦楽器 【特許権者】中野 圭”. patents.google.com. 2023年6月30日閲覧。
- ^ a b Martin, Jennifer (2022年11月16日). “29 Lefties that'll make you wish you were a member of the southpaw club”. CBS. 2023年1月29日閲覧。
- ^ a b UG Team (2015年7月31日). “10 Famous Left-Handed Guitarists Who Play Right-Handed”. Ultimate Guitar. 2023年1月29日閲覧。
- ^ Bacon, Tony (2021年8月13日). “Musical Implications of Being a Left-Hander”. Reverb.com. 2023年1月29日閲覧。
- ^ Starkey, Arun (2022年8月31日). “How Tony Iommi got his first left-handed guitar”. Far Out. 2023年1月29日閲覧。
- ^ “【アコースティックギター全般】左利きなのですが、弦を左右反対に張り替えれば「左利き用」として使えますか?”. ヤマハ. 2022年12月24日閲覧。
- ^ Hodgson, Peter (2022年11月27日). “The secrets of Jimi Hendrix's guitar setup: Roger Mayer reveals what made the guitar hero's Strat tone sing”. Guitar World. 2023年1月29日閲覧。
- ^ Thompson, Art (2022年7月1日). “Here’s How to Replicate the Magic of the Blues Greats”. Guitar Player. 2023年1月29日閲覧。
- ^ a b c YAMAHA、クラシックギターの弾き方
- ^ a b c [1]
ギターと同じ種類の言葉
- ギターのページへのリンク