サツマイモ
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栽培
サツマイモは種芋ではなく、発芽させてから苗をつくり、畑に植え付けて栽培する。植え付けまでは手間がかかるが、植え付け後は収穫するまで放任栽培で生育する。連作障害は出にくく栽培は容易であるが、窒素分が多い肥えた畑では茎葉が育ちすぎてイモができなくなる「つるボケ」になるため、肥料は少なく調整する。
栽培法
苗となるツルを初夏に定植してから約4か月ほどで、イモの収穫時期となる[24]。サツマイモは繁殖能力が高く、窒素固定細菌(クレブシエラ・オキシトーカ (Klebsiella oxytoca) 、パントエア・アグロメランス (Pantoea agglomerans) )など[25][26]との共生により窒素固定が行えるため、痩せた土地でも育つ。ナス科のジャガイモは連作を非常に嫌う性質を持つ一方で、サツマイモは連作には強く連作障害は少ない方であるが[27]、同じ畑では1 - 2年あけるようにする[15][28]。野菜のうちでは最も高温性で、生育適温は25 - 30度以上、発芽適温は20 - 30度、イモ肥大の適温は20 - 30度が必要とされている[15][10][29]。強い光を好み、乾燥にもよく耐えて生育する[29]。栽培に適する土壌酸度は pH 5.0 - 6.0[15]、土壌の適応性は幅広く、どんな土壌でも栽培は可能であるが、耕土が深くて通気が良いことが芋の肥大には不可欠となる[29]。有機物の多い肥沃な土地では、ツルばかりが伸びて葉が茂り、塊根が太らなくなる「つるぼけ」になってしまうことがある[18][30]。従って、肥料は窒素過多によって茎葉が茂りすぎる「つるぼけ」を防ぐため、肥沃な畑では肥料をごく少なくする[18][29]。施肥するとすればデンプン生成に必要なカリ(つまり灰)を施肥するだけでも十分効果がある[24]。栄養繁殖で栽培するため、前年に収穫したイモを次年栽培用の種芋とするが、低温には弱いため10度以上で保存する必要があるといわれる[10]。
サツマイモは種芋を植えるのではなく、種芋から芽を出して育苗して、7 - 8枚の葉が付いたツル(さし苗)を切り取って土に挿すという形で定植し[注釈 2]、さし苗の葉の付け根の節から出る不定根を発生させるため浅い角度で茎が埋まるように斜めに挿す[18]。その後、不定根が十分に肥大してやがて芋になるので[31]、これを収穫する方法が一般的である。農家では前年に収穫した種芋を土の中で貯蔵しておき、種芋の両端を切り落として温床をつくって伏せ込み、その種芋から伸びたツルを切り取って苗とする[18][32]。植え付ける前に、苗のしおれが戻るまで水に挿しておく[33]。苗をつくる場合は、健全な種芋を育苗土を入れた発泡スチロール箱に埋め、日当たりのよい場所を選んで箱の下半分を地面に埋めて、上方をビニールシートで覆い、さらにビニールトンネルをかけておく[34]。温度上昇に伴って芽が出したら、徐々に覆いを外して日に当て、長さ30 cmの苗に仕上げる[34]。切り取った苗はコンテナなどにそのまま入れて冷暗所に1週間ほどおき、時々水やりをして発根を促しておくとよい[35]。
水はけと通気性の良い環境を好むため、高さ30センチメートルほどの高畝で育てる[15][29]。畝は地中の温度を上げ、除草のためにマルチングを行うときもある[31]。春、高畝にした畑に苗を水平、または斜めに差すようにして、30 - 40 cmずつ開けて植え付ける[36]。苗は、ややしおれ気味になった苗のほうが根が出やすくなり、植え込んでから1週間ほどで活着する[24]。植え付け後の追肥は一般的には不用である[31]。ツルが四方に伸びてくると、畝間など周囲の土にも根付いてしまうので、根付いた部分から余計な芋がつくのを防止するため、また栄養成長を抑えて芋を充実させるために、ツルを持って根を引き剥がして裏返すように置く「つる返し」を何度か行う[36][37][24]。晩夏から秋にかけて、地上部のツルを刈り取って、芋を傷つけないようにまわりの土を掘ってほぐし、株元をつかんで引き抜いて収穫する[31]。霜に当たるとサツマイモが腐ったり、貯蔵性が悪くなったりするため、霜が降りる前に収穫を終えるようにする[38]。
肥料、特に窒素肥料が効き過ぎると葉や茎が育ちすぎる「つるぼけ」になるため禁物である。葉の色を見て特に淡すぎるようであれば少量与えてもよいが、普通の畑ならばほとんど無肥料で良い[39]。サツマイモは痩せた土地でも育つので、前作で野菜を作っている畑の場合では、全く肥料を与える必要はない[40]。苗が植物ウイルスに感染すると収量低下を起こすため、ウイルスフリー苗が利用されることもある[41][42]。
特殊な栽培法であるが、乾燥地ではツル苗の活着率が悪いため、種芋を直接または種芋を適当な大きさに分割して、ジャガイモのように圃場に直接植えつける(直播)こともある。栽培の省力化を目論んで種芋直播用農機具の技術開発が行われている[43]。
病虫害
病虫害はあまり発生しない方であるが[40]、発生する場合は以下のようなものがある。
- 病気
沖縄県全域、奄美群島、トカラ列島、小笠原諸島ではアリモドキゾウムシ[46]、イモゾウムシ[47]、サツマイモノメイガ[48]による被害が問題となっているが、根絶に向け不妊虫放飼法による対策も行われている[49]。
注釈
- ^ ニュージーランドではkumaraと呼ぶ。
- ^ 種まきとは種子(特に真性種子)に対して使われる言葉であり、種芋やツル苗あるいは球根などの栄養繁殖の場合は定植(ていしょく)という言葉が一般的。
- ^ 小笠原諸島には蒸熱処理施設が無いので根本的に持ち出しは出来ない。
- ^ 当時はイギリス(グレートブリテン王国)と呼ばれる国家は存在せず、イングランド王国とスコットランド王国の同君連合であったが、便宜上「イギリス」の呼称を用いる。
- ^ ここまで各地で栽培に成功しており、また、近年になって利兵衛の孫の口上書が発見されたが、それに拠れば流刑先は肥前国壱岐島(現・長崎県)で、1746年(宝暦3年)に赦免され帰国したことになり、以降に栽培した場合、江戸幕府試験場での栽培試験のほうが先であったことになる。
- ^ 1833年(天保4年)城北百拙老人・著『世のすがた』によれば「ほうろく焼き」、すなわち壺焼き。
- ^ 「みやこのひるね」。旅先の江戸やその道中の風俗を、著者の地元である京・大阪と比較している。
- ^ これを顕彰した「島酒の碑」が昭和42年に建立されたが、除幕式典には庄右衛門の曾孫で当時の鹿児島県阿久根市長であった丹宗忠が招かれた。
- ^ 1927年に農商務省と農事試験場によって「七福」と名前が認定されている。元々イタリアで栽培されていたが、イタリアからの移民の手により1830年ごろにアメリカに伝わったとされる品種であり、1. 風土を選ばない、2. 作りやすい、3. 貯蔵性が良い、4. 食味が良い、5. イタリアから、6. アメリカに伝わり、7. 日本に伝わった、以上合わせて七つの福が名前の由来。収穫直後は食用に向かないが、貯蔵しているうちに糖化し風味がよくなる。このため島の住宅には、床下や倉庫に芋の貯蔵保管庫が作られていた。
- ^ a b ただし、内40,600トン(総消費量中約5.1%)は自家消費であり、これらは飼料用途と考えられる。
- ^ ジャガイモ、ナガイモ(長芋)、サトイモ(里芋)を主原料とした焼酎も存在する。これらは「芋」を使った焼酎であることには違いないが、通常、芋焼酎とは区別され、ジャガイモ焼酎、長芋焼酎、里芋焼酎などと呼ばれる。したがって、芋焼酎といえばサツマイモを主原料とした焼酎と考えてよい。
- ^ 静岡県榛原郡白羽村は、御前崎村と合併し、1955年に御前崎町が設置された。
- ^ 1954年、茨城県那珂郡前渡村の一部は那珂湊町に編入され、前渡村の残部は勝田町に編入された。
出典
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サツマイモと同じ種類の言葉
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