仏教
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解脱への道
菩提分法(三十七道品)とは、菩提(悟り)に至るための素質・要因(道、magga, mārga)であり、様々な修習事項の記載がなされている[27]。
上座部 - 八正道
仏教の実践の重要な指導原則は中道である。これは釈迦の初転法輪の中で述べられており、そこで釈迦は極端な苦行および快楽主義の両方を避ける「中道」として、八正道を提示した[28][29]。
この八正道は四諦の4番目で示されており、苦の停止の筋道を示している[30][31]。八正道は渇望、執着、カルマの蓄積を止めることを教え、これにより無限の再生と苦のサイクルを終止させる[32][33][34]。
八正道は以下のように三つに分類することができる(三学)[35][36][37]。
分類 | 八正道 | サンスクリット, パーリ | 内容 |
---|---|---|---|
慧 (梵: prajñā, 巴: paññā) |
1. 正見 | samyag dṛṣṭi, sammā diṭṭhi |
来世は存在し、死ですべてがなくなりはしないと考え、釈迦が教える涅槃への道に従うこと[35]。 |
2. 正思惟 | samyak saṃkalpa, sammā saṅkappa |
出家し、道に沿って宗教的な托鉢生活に入る[35]。 | |
戒[36] (梵: śīla, 巴: sīla) |
3. 正語 | samyag vāc, sammā vācā |
嘘をつかず、失礼な話をせず、他人が言っていた話を本人にしせず、救済につながる話をする[35]。 |
4. 正業 | samyak karman, sammā kammanta |
殺傷や加害をせず、与えられていない物を取らない。比丘については性的行為をしない[35]。 | |
5. 正命 | samyag ājīvana, sammā ājīva |
比丘については、命を維持するために不可欠なものだけを手に入れて摂取する[38]。在家者について経典では、正しい生計を立て間違った生計を避けるとし、たとえば衆生をだましたり害したり殺したりすることを避けると説明している[39][40]。 | |
定 [36] (梵, 巴: samādhi) |
6. 正精進 | samyag vyāyāma, sammā vāyāma |
正しい努力。Harveyは、貪・瞋・痴という不健全な精神的状態を防ぎ、健全な精神的状態を増進させることだとしている[41]。 |
7. 正念 | samyak smṛti, sammā sati |
ぼんやりすることなく、自分が今何をしているのか意識を向ける(マインドフルネス)。 | |
8. 正定 | samyak samādhi, sammā samādhi |
正しい瞑想または集中(dhyāna)。4つの禅那(四禅)として説明されている[35][42]。 |
大乗仏教
大乗仏教では、菩薩(ボーディ・サットヴァ)への道を理論的中心とする[43]。菩薩とは仏になろうと決意して修行する人のこと[44]。
注釈
- ^ 例えばユダヤ教はタルムードが日本語に全訳されていないなどの不備を持つが、仏教ではそのようなことはなく、仏典のほぼすべてが日本語訳されており研究点数も多い。
- ^ 原始仏典『サンユッタ・ニカーヤー』第1巻では、弟子が釈迦にむかって「君、ゴータマさんよ」と気さくに呼びかけるのが定型句となっており、釈迦の神格化は見られない (植木2019[16]p.59)。
原始仏典『スッタニパータ』第927偈で、釈迦は迷信を否定し、呪法や夢占い、手相や顔相など相の占い、星占い、鳥や動物の声による占い、呪術的な懐妊術や医術を信奉することを仏教徒に禁じた(植木2019[16]p.88)。
また歴史に実在した釈迦は徹底した平等主義者であり、原始仏典『スッタニパータ』第608偈-第611偈は人間は本質的に平等であると説く(植木2019[16]pp.143-144)。
釈迦は女性や在家信者も弟子として出家信者と同等に扱い、教えを説いた。原始仏典『テーリー・ガーター』に出てくるアノーパマーという在家の女性は、釈迦の教えを聞いて阿羅漢の一つ手前のステージ「不還果」まで到った (植木2019[16]p.149)。
植木雅俊『仏教、本当の教え』[17]第1章でも、同様の考証が展開されている。 - ^ 武田宏道, 「無我の論証 ―『倶舎論』破我品の研究―」 龍谷大学 学位論文 乙第53号, 2007年, hdl:10519/102 参照。仏教は実体的な我(アートマン, आतमन्)を論理的に否定する。それは、「常住であるなら、変化しない。それゆえに人が行為をしても、それの変化は認められないから、行為が無意味となってしまう」という理由である。これは後に大乗仏教の龍樹による『根本中頌』(中論)の第24章にも概ね伝承された考え方である。五蘊を離れて「我」が存在しない理由は以下の通りである。まず、目の見えない人には、目の見える人が見るようには、外界の対象が見えない。それは、目という感覚器官の働きが有るか、無いかの違いによる。普通は認識することはできないが、目という感覚器官が存在するであろう、ということが推理によって知られる訳である。しかし「我」にはそのようなことはない。ゆえに「我」は存在しない。
- ^ これについて、日本の仏教各宗派に対してアンケート調査が行われたことがあり、結果は存在を認める宗派、肯定も否定もしない宗派、否定する宗派の割合がそれぞれ同程度で、見解が全く相違した。
- ^ 経典『中部』(マッジマ・ニカーヤ)第63経「小マールンキャ経」(Cūḷa-Māluṅkyaputta Sutta)によって、仏教は霊魂の有無を形而上学説としてみなし、これを扱わなかった(無記)とする説もあるが、ここで問題にされているのは、「身体と命の同異」と「生死を乗り越えたもの(如来)の死後」であって、霊魂の有無ではない。
- ^ 「小乗」という呼び名は大乗仏教からの一方的な蔑称であること、また大乗勃興当時のその批判対象は説一切有部が中心であったことが知られてきたため、南伝仏教の実際が知られてきた近年ではむやみに使用されることはなくなってきている。大乗経典群が指している「小乗」の語は当時の部派仏教を指したものであって、大乗仏教が北伝を開始した時点でその蔑視の対象はすでに滅んでいた。したがって存続中の何らかの宗派・学派に対して小乗の語を当てるのは誤用であり、蔑称であるためカテゴライズとしても適切な言葉ではない。
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