大乗非仏説とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 学問 > 世界宗教用語 > 大乗非仏説の意味・解説 

だいじょうひぶっせつ 【大乗非仏説】

大乗仏教経典釈迦直説ではないとする説。すでにインド中国にもあるが、日本では江戸時代富永仲基出定後語』や服部天游『赤』などでこれが主張され明治になり改め論じられたが、経典釈迦滅後編纂であるから直説ではないにしても教理的に否定されるべきものではなく今日この説はあまり用をなさない。→ 出定後語

大乗非仏説

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/28 00:09 UTC 版)

大乗非仏説(だいじょうひぶっせつ)は、大乗仏教の経典はゴータマ・シッダッタの直説ではなく[1]、後世に成立した偽経という説である。


注釈

  1. ^ 法相宗徳一真言宗を批判した『真言宗未決文』のように、釈迦牟尼仏を教主としない経典の出自を疑ったケースは存在する。
  2. ^ なお、富永仲基は『出定後語』「教起前後」の章において、「大乗仏教」同様「小乗仏教」に対しても同様の指摘をおこなっているCITEREF渡辺2019
  3. ^ とくに附録「大乗仏教考」。
  4. ^ 「小乗仏教」は南伝仏教とイコールではないことに注意。植木雅俊は自著において、大乗仏教側が「小乗」という貶称で呼んだのは部派仏教の時代に最有力だった説一切有部であったこと、「小乗」と呼ばれた人たちが自分たちをそのような悪い言葉で呼ぶはずはないこと、「スリランカや、東南アジアの仏教の場合は、小乗仏教と呼ぶのは適当ではなく、上座部仏教、あるいは長老仏教と呼ばれている」(植木雅俊『今を生きるための仏教100話』(平凡社新書、2019年)p.172)ことを強調している。
  5. ^ 原始仏典『サンユッタ・ニカーヤー』第1巻では、弟子がゴータマ・ブッダにむかって「君、ゴータマさんよ」と気さくに呼びかけるのが定型句となっており、ゴータマ・ブッダの神格化は見られない (植木雅俊『今を生きるための仏教100話』p.59)。原始仏典『スッタニパータ』第927偈で、ゴータマ・ブッダは迷信を否定し、呪法や夢占い、手相や顔相など相の占い、星占い、鳥や動物の声による占い、呪術的な懐妊術や医術を信奉することを仏教徒に禁じた(植木上掲書p.88)。また歴史に実在したゴータマ・シッダッタは徹底した平等主義者であり、原始仏典『スッタニパータ』第608偈-第611偈は人間は本質的に平等であると説く(植木上掲書pp.143-144)。ゴータマ・シッダッタは女性や在家信者も弟子として教えを説いた。原始仏典『テーリー・ガーター』に出てくるアノーパマーという在家の女性は、ゴータマ・ブッダの教えを聞いて阿羅漢の一つ手前のステージ「不還果」まで到った (植木上掲書pp.149)。植木雅俊『仏教、本当の教え』(中公新書、2011年)第1章でも、同様の考証が展開されている。
  6. ^ もちろん、このことは大乗経典が全て釈迦牟尼仏の直説であるということを意味するものではない。

出典

  1. ^ a b c d e 中村元ほか(編)『岩波仏教辞典』(第二版)岩波書店、2002年10月、666-667頁。 
  2. ^ 植木雅俊・訳『サンスクリット版縮訳 法華経 現代語訳』 (角川ソフィア文庫)p.228
  3. ^ 『潭州潙山靈祐禪師語録』「師問仰山。涅槃經四十卷。多少是佛説。多少是魔説。仰山云。總是魔説。師云。已後無人奈子何。」
  4. ^ a b 渡辺 2019, p. 178.
  5. ^ a b 林淳「宗教的知の形成―仏教学を例に―
  6. ^ a b 渡辺 2019, p. 180.
  7. ^ 渡辺 2019, pp. 180–181.
  8. ^ 増谷文雄「仏陀思想の原初を探る〝古くて新しい〟根本仏教」『日本経済新聞』1980年8月5日付、27頁。
  9. ^ 阿含宗とは、どのような教団なのでしょうか | 阿含宗について | 先祖供養の総本山 阿含宗
  10. ^ パーリ聖典の編纂・第一結集 - 日本テーラワーダ仏教協会
  11. ^ a b 『大乗仏典〈14〉龍樹論集』、中公文庫、中央公論新社、2004年、p.308
  12. ^ 『大乗仏典〈14〉龍樹論集』、中公文庫、中央公論新社、2004年、pp.310-311
  13. ^ 仏教説話大系編集委員会編『仏教説話体系 第40巻 仏陀の教え』鈴木出版、119頁
  14. ^ 末木文美士監修『仏教 雑学3分間ビジュアル図解シリーズ』PHP研究所、60頁
  15. ^ 田村芳朗『法華経』中公新書、1969年
  16. ^ 中村元・訳『ブッダ最後の旅 大パリニッバーナ経』岩波文庫、1980年 ISBN 978-4003332511
  17. ^ 並川 孝儀「初期韻文経典にみる修行に関する説示 : 三十七道品と三界」(小野田俊蔵教授 本庄良文教授古稀記念号)佛教大学仏教学会紀要 28 1-21, 2023-03-25
  18. ^ 高楠順次郎『東洋文化史における仏教の地位 』(青空文庫)
  19. ^ 中村元・三枝充悳『バウッダ[佛教]』(講談社学術文庫、2009年)p.52
  20. ^ 下田正弘 (2002-10). 「『正典概念とインド仏教史』を再考する―直線的歴史観からの解放―」、『印度學佛敎學硏究』. 第68巻 第2号. 日本印度学仏教学会. p. 1043-1035 
  21. ^ 河口慧海 チベット旅行記
  22. ^ 植木雅俊『今を生きるための仏教100話』(平凡社新書、2019年)p.172
  23. ^ 植木雅俊『今を生きるための仏教100話』(平凡社新書、2019年)pp.340-341
  24. ^ 植木雅俊『今を生きるための仏教100話』(平凡社新書、2019年)pp.172-174
  25. ^ 中村元『インド人の思惟方式』pp.188-189
  26. ^ 精選版 日本国語大辞典「仏説」の解説 https://kotobank.jp/word/仏説-619313 閲覧日2022年3月28日
  27. ^ 植木雅俊『今を生きるための仏教100話』(平凡社新書、2019年)p.83
  28. ^ コトバンク https://kotobank.jp/word/諸仏-535101
  29. ^ 中村元・三枝充悳『バウッダ[佛教]』(講談社学術文庫、2009年)p.84
  30. ^ 上掲『バウッダ[佛教]』p.84
  31. ^ 『中村元選集 決定版 13 仏弟子の生涯』(春秋社 1991年10月発行)参照。
  32. ^ 『仏教の思想(1)~智慧と慈悲・仏陀』(角川書店)参照。
  33. ^ 『龍樹』(講談社 2002年6月発行)参照。
  34. ^ 大乗非仏説をこえて|国書刊行会


「大乗非仏説」の続きの解説一覧


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「大乗非仏説」の関連用語

大乗非仏説のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



大乗非仏説のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
中経出版中経出版
Copyright (C) 2024 Chukei Publishing Company. All Rights Reserved.
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの大乗非仏説 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS