清水俊史とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > 百科事典 > 清水俊史の意味・解説 

清水俊史

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/08/03 03:08 UTC 版)

清水 俊史(しみず としふみ 1983年 ‐ )は日本の仏教学者[1]。研究分野は古代インド仏教および上座部仏教

経歴

佛教大学文学部卒業後、2013年同大学大学院博士課程修了(博士(文学)[1]博士論文題目は『部派仏教における業の研究』[2]

その後、日本学術振興会特別研究員PD、佛教大学総合研究所特別研究員などをつとめる[1]

2018年、『阿毘達磨仏教における業論の研究: 説一切有部と上座部を中心に』により浄土宗学術賞受賞[3]

アカデミック・ハラスメント被害

佐々木閑によれば、清水と馬場紀寿(東京大学教授)は、ブッダゴーサの仏教史における位置づけをめぐり2016年から論争を続けている[4][5]。この論争の過程で、清水はアカデミック・ハラスメント(アカハラ)や出版妨害を受けている[4][5]

上座部仏教の『パーリ仏典』の大乗経典に対する優位性(どちらが成立年代が先か、どちらが釈迦直説に近いか)については現在論争中の事案である。上座部の国々で普及している『パーリ仏典』はスリランカブッダゴーサが正典と定めた仏典を底本としているが、馬場紀寿はブッダゴーサが非仏説(釈迦が説いたものではない)として大乗経典を恣意的に排除し、また採用した仏典についてもブッダゴーサが信じる教説にそぐわない箇所は改ざんが行われた、すなわち現在の上座部仏教の教義はブッダゴーサの思惑によって釈迦の直説が排され、大乗的な要素が排されて成立したとする説を唱えた。この馬場説は大乗非仏説に対する有効な反論の論拠とされてきた。しかし清水俊史はこの説に異を唱え、ブッダゴーサは仏典注釈者としての本分を務めたにすぎず経典の改ざんは行わなかったとした。清水説では大乗経典は明らかに後世の創作であるため『パーリ仏典』に採用されず排除されたとした[6]。馬場・清水論争は、清水説が正しければ『パーリ仏典』の方が釈迦直説に近いということになり大乗非仏説に根拠を与え、日本仏教の教義は全て釈迦の直説ではなく後世に創作されたものだということになるので、仏教界の注目を集めていた。

2017年、清水の著書『上座部仏教における聖典論の研究』の出版をめぐり、馬場から研究不正の指摘や出版停止の要求が、清水や出版社に複数回行われた[7][8]。大蔵出版は第三者委員会による調査の結果、不正は認められなかったとし、この行動を「極めて悪質なハラスメント」であり「不当な出版妨害」と判断したと公式声明で発表している[9]。清水はその後、学術公募に落選し無職となり、一時は日雇い労働で生計を立てていたが、後に仏教研究に復帰したと記している[7][10]。2023年、清水は著書『ブッダという男』のあとがきで、馬場による出版妨害や圧力について実名で告発した[7][8][11]。2025年の著書『お布施のからくり』では、職を失い生活困窮を経験したことをきっかけに、路上生活者支援の活動にも関わるようになったと記している[7]

仏教に関する見解

清水は著書『ブッダという男 初期仏典を読みとく』で、万人の平等を唱えた平和主義者ブッダは近代的価値観に基づいて原始仏典を曲解して生み出した神話に過ぎず、本来の釈迦は当時の価値観を持った人物であったとし、暴力を容認し、女性蔑視の感情を持ち、カースト輪廻転生を肯定していたとする説を提示している。

清水は大乗非仏説大乗仏教の教義や経典は後世に創作されたとする説)に立脚しており、大乗経典について「現代の二次創作のようなもの」と述べている[12]

著書

  • 『部派仏教における業の研究』[佛教大学博士論文]、2013年
  • 『阿毘達磨仏教における業論の研究:説一切有部と上座部を中心に』大蔵出版、2017年
  • 『上座部仏教における聖典論の研究』大蔵出版、2021年
  • 『ブッダという男:初期仏典を読みとく』 (ちくま新書; 1763) 筑摩書房、2023年
  • 『初期仏典の解釈学:パーリ三蔵と上座部註釈家たち』大蔵出版、2024年
  • 『お布施のからくり:「お気持ち」とはいくらなのか』幻冬舎、2025年5月

脚注

  1. ^ a b c 私たちはブッダについてそもそも何を知っているのか|ちくま新書|清水 俊史|webちくま”. 2024年4月6日閲覧。
  2. ^ 部派仏教における業の研究 | NDLサーチ | 国立国会図書館”. 2024年4月6日閲覧。
  3. ^ 平成29年度学術賞決定|浄土宗ネットワーク”. 浄土宗宗務庁(京都). 2024年8月4日閲覧。
  4. ^ a b 佐々木閑ブッダゴーサの歴史的位置づけをめぐる馬場紀寿氏と清水俊史氏の論争(1)序言」『禪學研究 = Studies in Zen Buddhism = The "Zengaku kenkyū"』第100号、禪學研究會、2022年3月、123–138頁、CRID 1520292572087775744 
  5. ^ a b 佐々木閑ブッダゴーサの歴史的位置づけをめぐる馬場紀寿氏と清水俊史氏の論争(2)」『禪學研究 = Studies in Zen Buddhism = The "Zengaku kenkyū"』第101巻、禪學研究會、2023年、55-73頁、 CRID 1520296841731419008 
  6. ^ 佐々木閑「〈評論〉ブッダゴーサの歴史的位置づけをめぐる馬場紀寿氏と清水俊史氏の論争1」「〈評論〉ブッダゴーサの歴史的位置づけをめぐる馬場紀寿氏と清水俊史氏の論争2」「〈評論〉ブッダゴーサの歴史的位置づけをめぐる馬場紀寿氏と清水俊史氏の論争3」
  7. ^ a b c d 清水俊史『お布施のからくり 「お気持ち」とはいくらなのか』幻冬舎、2025年5月28日、163-166「あとがき」頁。 ISBN 978-4344987715 
  8. ^ a b 清水俊史『ブッダという男 初期仏典を読みとく』筑摩書房〈ちくま新書〉、2023年。 ISBN 978-4480075949 219f頁。
  9. ^ 『上座部仏教における聖典論の研究』に関する声明”. 大蔵出版 (2021年1月28日). 2025年5月28日閲覧。
  10. ^ 研究日記”. researchmap(清水 俊史). 2025年5月28日閲覧。
  11. ^ 中央公論 2025年3月号』中央公論新社、2025年2月。97;102頁。(「新書大賞2025」大澤真幸の選評)
  12. ^ https://x.com/VisAKBh/status/1933860176215650519”. 2025年7月1日閲覧。

外部リンク




英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  
  •  清水俊史のページへのリンク

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「清水俊史」の関連用語

清水俊史のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



清水俊史のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの清水俊史 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS