三法印とは? わかりやすく解説

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さん‐ぼういん〔‐ボフイン〕【三法印】

読み方:さんぼういん

小乗仏教で、仏教根本的な理念を示す旗印である三つ教理諸行無常諸法無我涅槃寂静(ねはんじゃくじょう)。


三法印

読み方:サンホウイン(sanhouin)

無常印・無我印・涅槃印。


三法印

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/08/27 13:27 UTC 版)

三法印(さんぼういん)は、仏教において三つの根本的な理念(仏法)を示す仏教用語である[1][2]

  1. 諸行無常印(: anityāṃ sarvasaṃskārāṃ[2])-「すべての現象(形成されたもの)は、無常(不変ならざるもの)である」
  2. 諸法無我印(: sarvadharmā anātmānaḥ[2])-「すべてのものごと(一切法)は、自己ならざるものである」
  3. 涅槃寂静印(: śāntaṃ nirvāṇaṃ[2])-「ニルヴァーナは、安らぎである」

法印(ほういん、: dharmoddāna[3][4])とは、仏教と他の教え(バラモン教ヒンドゥー教六師外道)との区別を明らかにする用語[5]と一般に言われるが、パーリ仏典には、このような術語はみられない。[6][1]

上座部仏教においては、代わって三相(諸行無常,一切行苦,諸法無我)を採用する[2]

内容

雑阿含経

雑阿含経においては以下と記載される。

令我知法見法。我當如法知如法觀。時諸比丘語闡陀言。
色無常。受想行識無常。一切行無常。一切法無我。涅槃寂滅。

雑阿含経(大正新脩大蔵経)[7]

大智度論

龍樹の著作といわれる大智度論巻十五では、まだ煩悩を十分に絶つことができないで、有漏道(うろどう)にあって無漏道を得ていない人々が「三種法印」を信ずべきである、として「一切有為生法無常等印」・「一切法無我印」・「涅槃実法印」の三法印を示している[8]。また巻三十二では「一切有為法無常印」「一切法無我印」「涅槃寂滅印」とよんでいる[8]

通達無礙者。得佛法印故通達無礙。如得王印則無所留離。問曰。何等是佛法印。
答曰。佛法印有三種。一者一切有爲法。念念生滅皆無常。二者一切法無我。三者寂滅涅槃。[9]

以是故佛説三法爲法印。所謂一切有爲法無常印。一切法無我印。涅槃寂滅印。[10]

大智度論(大正新脩大蔵経) [8]

仏教詩人マートリチェータの説

2世紀ごろの仏教詩人マートリチェータは自作中において"dharmamudrã trilakṣaṇā"という表現で三つの教えを表した。それは以下の通り。[11]

  1. Sarva-dharmā anātmanaḥ[11] - 一切の法は無我である。
  2. Kṣaṇikaṃ sarva-saṃskṛtam[11] - 一切の作られたものは刹那(滅)である。
  3. Śāntaṃ nirvāṇam[11] - 涅槃は寂静である。

マートリチェータはこれらを「eṣa dharmamudrã trilakṣaṇā」(これが『三法印』である)としている。[注 1][11]

三法印と大乗仏教

中村元は、三法印は部派仏教のものであり、それに対して、大乗仏教諸法の実相を説く「実相印」を標幟とするとしている[12]。大乗仏教では部派仏教の三法印とは別に、諸法実相の「一法印」がよく説かれるとされる[5][13]。中村は実相印を第四の印としている[12]。なお、諸法実相が意味する内容は諸宗派の教学によって異なる[12]。中村は、龍樹(ナーガールジュナ)は三法印のほかに別の法印を立てなかったとしている[14]。袴谷憲昭はエジャートンの『Buddhist Hybrid Sanskrit Dictionary』には“dharmamudrā”の用例が三つしか挙げられておらず、すべて梵文の法華経によるものであると指摘している[6]。また袴谷は、坂本幸男による「小乗教は三法印、大乗は諸法実相印。」という言明について、天台宗智顗の所説に依っていることを推測している[15]

脚注

注釈

  1. ^ dharmamudrã trilakṣaṇā”に対する「三法印」という訳は室寺(2013)による。

出典

  1. ^ a b 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)『三法印』 - コトバンク
  2. ^ a b c d e 室寺 2013, p. 442.
  3. ^ 袴谷 1979, pp. 60–66.
  4. ^ 室寺 2013, p. 431.
  5. ^ a b ほういん【法印】 - コトバンク 大辞林 第三版の解説。
  6. ^ a b 袴谷 1979, p. 60.
  7. ^ 雑阿含経 求那跋陀羅譯」『SAT大正新脩大藏經テキストデータベース』第02巻、東京大学大学院人文社会系研究科、No.0099, 0066b12、2018年https://21dzk.l.u-tokyo.ac.jp/SAT2015/T0099_.02.0066b12:0066b12.cit 
  8. ^ a b c 室寺 2013, p. 437.
  9. ^ 大智度論」『SAT大正新脩大藏經テキストデータベース』第25巻、東京大学大学院人文社会系研究科、No.1509, 0222a27、2018年https://21dzk.l.u-tokyo.ac.jp/SAT2015/T1509_.25.0222a27:0222a27.cit 
  10. ^ 大智度論」『SAT大正新脩大藏經テキストデータベース』第25巻、東京大学大学院人文社会系研究科、No.1509, 0297c24、2018年https://21dzk.l.u-tokyo.ac.jp/SAT2015/T1509_.25.0297c24:0297c24.cit 
  11. ^ a b c d e 室寺 2013, p. 434-433.
  12. ^ a b c 中村元 『広説佛教語大辞典』 中巻 東京書籍、2001年6月、701頁「實相」。
  13. ^ 《三法印》与《一法印》 - 个人图书馆。
  14. ^ 中村元 『広説佛教語大辞典』 中巻 東京書籍、2001年6月、927頁「諸法實相印」。
  15. ^ 袴谷 1979, p. 62.

参考文献

  • 袴谷, 憲昭「<法印>覚え書]」『駒澤大學佛教學部研究紀要』第37号、駒澤大学、1979年、60-81頁、NAID 110007014220 
  • 室寺 義仁「三法印(dharmamudra trilaksana) : 古典インドにおける三句の發端と展開の諸様相」『東方学報』第88巻、京都大學人文科學研究所、2013年、442-423頁、doi:10.14989/180561 

関連項目


三法印

出典:『Wiktionary』 (2021/08/14 23:58 UTC 版)

名詞

法印さんぼういん

  1. 仏教根本にある三つ概念思想)。「諸行無常」、「諸法無我」、「涅槃寂静」の三つ。(「諸行無常印」のような言い方もある。)→法印名詞)1。

発音(?)

サ↗ンボ↘ーイン

語源

三法印の語は『成実論』(鳩摩羅什訳) ほかに見える。(同書サンスクリット原典伝えられていない。)

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