小乗仏教とは? わかりやすく解説

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しょうじょう‐ぶっきょう〔セウジヨウブツケウ〕【小乗仏教】

読み方:しょうじょうぶっきょう

小乗のこと。呼称としては明治以後用いられるようになった

「小乗仏教」に似た言葉

小乗

(小乗仏教 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/14 07:33 UTC 版)

小乗(しょうじょう、हीनयानHīnayāna)とは仏教用語で[1]、小さい(ヒーナ)乗り物(ヤーナ)を意味する語[2]。個人の解脱を目的とする教義を大乗側が劣った乗り物として貶めて呼んだものであり[1]、否定的な呼び名である[3]

概説

衆生の救済を目的とする教義(大乗、大乗仏教、偉大な乗り物)と対比的に用いる。菩薩行を称え、自らの教えを大乗と称する集団が、二乗声聞乗と縁覚乗)をまとめて小乗と呼んだ(この場合の声聞乗は当時の部派仏教を指していたとされる)[4][注釈 1][注釈 2]

語の成立と用法

小乗の語は、大乗経典の発展史のなかでは大乗の語よりも遅れて成立しており[8]、大乗の興起した時代の最初期には、大乗が対立する既存の伝統仏教を小乗(hīnayāna)と名指すことはなかった[9]。小乗の語は、大乗経典が成立する過程において、その一部に考案されて用いられ、その指示対象も限定されていた[8]。すなわち説一切有部のみを、もしくはその中の一派のみを小乗と呼んだことが、ほぼ論証されている[8]。小乗の語が出現した時代に小乗と名指された部派仏教がこれを自称したわけではない[4]三枝充悳は、小乗という語が濫用されるのはごく特殊であるとしている[10]

現代における使用例

上座部系のスリランカ分別説部大寺派に発するとされる[11]今日の南伝仏教を日本では小乗仏教と呼ぶこともあるが、小乗の語の由来に鑑みると不適切である[4][12][13][注釈 3]

大乗との差異

竹村牧男は、大乗と小乗(部派)の違いについて、小乗(部派)では人間は釈尊にはほど遠く、修行しても及ばないと考えられているのに対して、大乗では人間は釈尊と同じになれると考えられているとしている[15]。また、小乗(部派)では修行の最終の地位は阿羅漢であるのに対して、大乗では最終的に仏となることを目標に掲げるとしている[15]植木雅俊は、小乗は出家至上主義とする。

仏典における扱い

初期仏教の仏典に由来するとされる阿含経の漢訳のなかでは、瞿曇僧伽提婆(ゴータマ・サンガデーヴァ)訳「増一阿含経」に小乗という漢語の使用が1例だけみられる[16][注釈 5]

脚注

注釈

  1. ^ 大乗仏教は声聞乗と縁覚乗と菩薩乗を三乗とし、このうち声聞と縁覚の二乗を小乗として斥けた[5]
  2. ^ 大乗の語自体は、漢訳の阿含経のなかにも見い出される[6]。阿含経は原始仏教聖典とされる経典群。北方仏教所伝の現存する漢訳の四阿含は、それぞれ個別の部派が伝持していたものに由来しており、南方仏教所伝のパーリ語聖典のニカーヤとある程度の対応関係がある[7]
  3. ^ 今日の南伝仏教はテーラワーダ(長老)仏教を自称し[14][要追加記述]上座部仏教、上座仏教と呼ばれている。
  4. ^ 静谷によると、平川彰『初期大乗仏教の研究』の説[19]
  5. ^ 増一阿含経は紀元後2-3世紀の成立とみられ[17]、その所属部派は不明である[18]大衆部所伝との説が有力視されるが[17]、大乗仏教の影響を受けているとの指摘があり[17]、大乗教徒によって伝えられ修飾されたものという見解もある[注釈 4][19]

出典

  1. ^ a b デジタル大辞泉『小乗』 - コトバンク
  2. ^ ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典『小乗仏教』 - コトバンク
  3. ^ 世界大百科事典 第2版『小乗仏教』 - コトバンク
  4. ^ a b c 岩波 仏教辞典 2002, p. 52, 小乗.
  5. ^ 平岡 2015, p. 126.
  6. ^ 大乗 (阿含部・毘曇部) - 大正新脩大蔵経テキストデータベース。
  7. ^ 平岡 2015, pp. 41–45.
  8. ^ a b c 中村 & 三枝 1996, pp. 337–338.
  9. ^ 中村 & 三枝 1996, pp. 226, 337–338.
  10. ^ 中村 & 三枝 1996, p. 226.
  11. ^ 岩波 仏教辞典 2002, pp. 521, 781, 上座部, 南伝仏教.
  12. ^ 植木雅俊『今を生きるための仏教100話』(平凡社新書、2019年)p.172
  13. ^ 大乗仏教・上座部仏教の違い | 大阪市西淀川区のお寺 光明寺
  14. ^ 岩波 仏教辞典 2002, p. 781, 南伝仏教.
  15. ^ a b 竹村 2004, pp. 133, 140.
  16. ^ 小乗 (阿含部) - 大正新脩大蔵経テキストデータベース。
  17. ^ a b c 『大蔵経全解説大事典』雄山閣、31頁。
  18. ^ 平岡 2015, p. 42.
  19. ^ a b 静谷正雄、「漢訳『増一阿含経』の所属部派」 『印度學佛教學研究』 1973-1974年 22巻 1号 p.54-59, doi:10.4259/ibk.22.54, 日本印度学仏教学会

参考文献

  • 中村元・福永光司・田村芳朗・今野達・末木文美士, ed. (2002年10月). "小乗". 岩波 仏教辞典 第二版. 岩波書店.
  • 平岡聡『大乗経典の誕生: 仏伝の再解釈でよみがえるブッダ』筑摩書房〈筑摩選書〉、2015年。 
  • 中村元三枝充悳『バウッダ [佛教]』小学館〈小学館ライブラリー〉、1996年4月(原著1987年)。ISBN 4-09-460080-9 
  • 竹村牧男『インド仏教の歴史: 「覚り」と「空」』講談社〈講談社学術文庫〉、2004年2月(原著1992年)。ISBN 4-06-159638-1 

関連項目


小乗仏教

出典:『Wiktionary』 (2021/08/14 23:43 UTC 版)

名詞

小乗 仏教しょうじょうぶっきょう

  1. 上座部仏教または南伝仏教のこと。小乗とは、大乗仏教側から上座部部派や、主として当時紀元前1世紀ごろ以降)の説一切有部(せついっさいうぶ)の思想評して言った言葉侮蔑的な意味あいを含むことから、今ではほとんど使われなくなっている。

発音(?)

ショ↗ージョーブ↘ッキョー

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