小乗とは? わかりやすく解説

しょう‐じょう〔セウ‐〕【小乗】

読み方:しょうじょう

《「乗」は車・乗物の意。転じて、人を解脱に導く教えのこと》仏語後期仏教の二大流派の一。大乗比して自己の悟り第一とする教え大乗側からの貶称(へんしょう)。インド・ミャンマー・タイなどがこの系統属する。⇔大乗

「小乗」に似た言葉

〒986-2248  宮城県牡鹿郡女川町小乗

小乗

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/16 02:56 UTC 版)

小乗(しょうじょう、हीनयानHīnayāna)とは仏教用語で[1]、小さい(ヒーナ)乗り物(ヤーナ)を意味する語[2]。個人の解脱を目的とする教義を大乗側が劣った乗り物として貶めて呼んだものであり[1]、否定的な呼び名である[3]


注釈

  1. ^ 大乗仏教は声聞乗と縁覚乗と菩薩乗を三乗とし、このうち声聞と縁覚の二乗を小乗として斥けた[5]
  2. ^ 大乗の語自体は、漢訳の阿含経のなかにも見い出される[6]。阿含経は原始仏教聖典とされる経典群。北方仏教所伝の現存する漢訳の四阿含は、それぞれ個別の部派が伝持していたものに由来しており、南方仏教所伝のパーリ語聖典のニカーヤとある程度の対応関係がある[7]
  3. ^ 今日の南伝仏教はテーラワーダ(長老)仏教を自称し[14][要追加記述]上座部仏教、上座仏教と呼ばれている。
  4. ^ 静谷によると、平川彰『初期大乗仏教の研究』の説[19]
  5. ^ 増一阿含経は紀元後2-3世紀の成立とみられ[17]、その所属部派は不明である[18]大衆部所伝との説が有力視されるが[17]、大乗仏教の影響を受けているとの指摘があり[17]、大乗教徒によって伝えられ修飾されたものという見解もある[注釈 4][19]

出典

  1. ^ a b 「しょう‐じょう」 - デジタル大辞泉
  2. ^ 「小乗仏教」 - ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
  3. ^ 「しょうじょうぶっきょう」 - 世界大百科事典 第2版
  4. ^ a b c 岩波 仏教辞典 2002, p. 52, 小乗.
  5. ^ 平岡 2015, p. 126.
  6. ^ 大乗 (阿含部・毘曇部) - 大正新脩大蔵経テキストデータベース。
  7. ^ 平岡 2015, pp. 41–45.
  8. ^ a b c 中村 & 三枝 1996, pp. 337–338.
  9. ^ 中村 & 三枝 1996, pp. 226, 337–338.
  10. ^ 中村 & 三枝 1996, p. 226.
  11. ^ 岩波 仏教辞典 2002, pp. 521, 781, 上座部, 南伝仏教.
  12. ^ 植木雅俊『今を生きるための仏教100話』(平凡社新書、2019年)p.172
  13. ^ 大乗仏教・上座部仏教の違い | 大阪市西淀川区のお寺 光明寺
  14. ^ 岩波 仏教辞典 2002, p. 781, 南伝仏教.
  15. ^ a b 竹村 2004, pp. 133, 140.
  16. ^ 小乗 (阿含部) - 大正新脩大蔵経テキストデータベース。
  17. ^ a b c 『大蔵経全解説大事典』雄山閣、31頁。
  18. ^ 平岡 2015, p. 42.
  19. ^ a b 静谷正雄、「漢訳『増一阿含経』の所属部派」 『印度學佛教學研究』 1973-1974年 22巻 1号 p.54-59, doi:10.4259/ibk.22.54, 日本印度学仏教学会


「小乗」の続きの解説一覧

上座部仏教

(小乗 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/22 15:09 UTC 版)

上座部仏教(じょうざぶぶっきょう、: Theravāda: Sthaviravāda: เถรวาท, thěeráwâat: Theravada Buddhism)は、仏教の分類のひとつで「長老派」を意味しており[1][2]、現存する最古の仏教の宗派である[1][2]上座仏教[注釈 1]テーラワーダ仏教(テーラヴァーダ仏教)[注釈 2]。 上座部仏教は、南伝仏教とも呼ばれ[5]パーリ語三蔵を伝えていることからパーリ仏教ともいう[6]


註釈

  1. ^ この名称は前田慧學の説による[3]
  2. ^ テーラヴァーダとは「長老の教え」という意味[4]
  3. ^ 佐々木閑は、大乗仏教が部派横断的に多発した運動群であったという考えから、現存の南方上座仏教は一部派というよりも部派の概念では捉えられない前部派的な形態の仏教集団と見ることができるという見解を提出している[11]
  4. ^ また、: Mahā thera で「大上座」と訳される[15]
  5. ^ 「小乗」は「ヒーナ(捨てられた、卑しい、劣った)[17]ヤーナ(乗り物)」の翻訳であり大乗仏教側から見た差別的意味を含む。
  6. ^ ただし、現存する阿含経典は根本分裂後の部派を経由して伝えられたものであり、口伝で伝承されていた初期仏教の時代の経そのままではないと指摘される[20]
  7. ^ スリランカの年代記『島史』や『大史』によると、この部派の呼称は「上座部」(テーラヴァーディン)または「分別説部」(ヴィバッジャヴァーディン)である。また、インド北伝の伝承では、「有分識」を説く部派を玄奘訳の『摂大乗論』無性釈においては「分別説部」とし[28]、また、九心輪思想を唱える分別説部を「上座部」とも呼んでいる[29]。ただし佐々木閑は、上座部大衆部を除く諸部派の総称でもあり、この呼称をスリランカなどの南方諸国に伝わる部派のみを指す固有名として用いるべきか明らかでないと指摘している[30]
  8. ^ テーラヴァーダという言葉の初出は、スリランカの史書『島史』における第一結集にかんする記述のなかにある。ここでは、500人の長老(上座)たちによって結集された法と律の集合が Theravāda と呼ばれている。上座部仏教の研究者である馬場紀寿によれば、これは後発の部派であったと考えられるスリランカ上座部が自らを第一結集の仏説を継ぐ正統派であると主張したことを示すものである[32](馬場紀寿は『島史』のこの文脈において、Theravāda という語を「上座たちによる法と律の集約」については「上座説」、それを継承する集団については「上座部」と二通りに読み[32][33]、上座説を「結集仏説」とパラフレーズしている[34])。
  9. ^ 法を理解しないこと、すなわち四諦十二縁起などに対する無知[49]

出典

  1. ^ a b c Gyatso, Tenzin (2005). Bodhi, Bhikkhu. ed. In the Buddha's Words: An Anthology of Discourses from the Pali Canon. Somerville, Massachusetts: Wisdom Publications. p. ix. ISBN 978-0-86171-491-9. https://books.google.com/books?id=11X1h60Qc0IC&printsec=frontcover 
  2. ^ a b c d Theravada”. britannica.com. Encyclopaedia Britannica (2018年). 2018年1月閲覧。
  3. ^ パーリ学仏教文化学会 上座仏教事典編集委員会編、『上座仏教事典』、めこん、2016年、pp.22-23.
  4. ^ 立川武蔵 『ブッダをたずねて - 仏教2500年の歴史』〈集英社新書〉、集英社、2014年、18頁。
  5. ^ a b 「仏教」 - 世界大百科事典 第2版
  6. ^ 水野 2006, p. 51.
  7. ^ Crosby, Kate (2013), Theravada Buddhism: Continuity, Diversity, and Identity, p. 2.
  8. ^ 竹村牧男 『インド仏教の歴史 「覚り」と「空」』 講談社、講談社学術文庫、2005年7月、6頁。
  9. ^ 岩波 仏教辞典 2002, pp. 886–887, 「部派仏教」.
  10. ^ 佐々木 2011, pp. 74–75.
  11. ^ 佐々木 2011, pp. 74–74, 91–92.
  12. ^ 馬場 2011, p. 140.
  13. ^ a b 岩波 仏教辞典 2002, p. 781, 「南伝仏教」.
  14. ^ 岩波 仏教辞典 2002, p. 521, 「上座」.
  15. ^ 『パーリ仏教辞典』 村上真完, 及川真介著 (春秋社)1488-1489頁。
  16. ^ 岩波 仏教辞典 2002, p. 781, 「南伝仏教」; p. 526, 「小乗」.
  17. ^ 水野弘元『増補改訂パーリ語辞典』春秋社、2013年3月、増補改訂版第4刷、p.372
  18. ^ 中村 & 三枝 1996, pp. 337–338.
  19. ^ 中村 2011, p. 33.
  20. ^ 平岡 2015, pp. 38–41.
  21. ^ 大乗 (阿含部・毘曇部)摩訶衍 (阿含部) - 大正新脩大蔵経テキストデータベース。
  22. ^ 平岡 2015, pp. 39–40.
  23. ^ 平岡 2015, pp. 41–42.
  24. ^ 中村 & 三枝 1996, pp. 113, 125.
  25. ^ 岩波 仏教辞典 2002, p. 1077, 「論」.
  26. ^ a b 中村 & 三枝 1996, p. 241.
  27. ^ 岩波 仏教辞典 2002, p. 14, 「阿毘達磨」.
  28. ^ 日暮 1928, p. 103.
  29. ^ 高井 1921, p. 33.
  30. ^ 佐々木閑 『インド仏教変移論』 大蔵出版、2000年、386頁。
  31. ^ 馬場 2011, pp. 140, 155.
  32. ^ a b c 馬場 2011, p. 155.
  33. ^ 馬場紀寿「ブッダゴーサ作品の文献学的研究」三島海雲財団助成研究報告書 (PDF)
  34. ^ 馬場紀寿「小部の成立を再考する : 説一切有部との比較研究」『東洋文化研究所紀要』第171号、東京大学東洋文化研究所、2017年3月、320(157), 319(158)、NAID 120006027335 
  35. ^ 馬場 2011, pp. 155–156.
  36. ^ 馬場 2011, pp. 156–157.
  37. ^ 馬場 2011, pp. 159–160.
  38. ^ 岩波 仏教辞典 2002, pp. 781-782, 「南伝仏教」.
  39. ^ 馬場 2011, p. 160.
  40. ^ a b 東南アジア上座部仏教社会における社会動態と宗教意識に関する比較研究 科研費 1997 年度 実績報告書
  41. ^ 「国民を「こじき」にした一族支配、行き過ぎた仏教ナショナリズム──スリランカ崩壊は必然だった」 ニューズウィーク日本版 2022年7月22日(金)18時20分
  42. ^ 橘堂 1995, p. 27.
  43. ^ ギャビン・バトラー「薬物検査でタイの仏教寺院の僧侶が陽性、追放へ」 2023年5月13日
  44. ^ Jerryson, Michael K. (2011), Buddhist Fury: Religion and Violence in Southern Thailand, Oxford University Press, ISBN 978-0-19-979324-2
  45. ^ 「ロヒンギャを迫害する仏教徒側の論理」 ニューズウィーク日本版 2018年11月20日(火)14時45分
  46. ^ 清水俊史「パーリ上座部における正法と書写聖典」、『佛教大学仏教学会紀要 23』pp.19-41, 2018-03-25
  47. ^ a b c 南 2014, pp. 155–176.
  48. ^ パーリ仏典, ダンマパダ 11 Jarāvaggo, Sri Lanka Tripitaka Project
  49. ^ ウ・ウェープッラ & 戸田 2013, p. 234.
  50. ^ Gethin 1998, pp. 81–83.
  51. ^ Anderson 2013, pp. 64–65.
  52. ^ 「ブッダの智慧で答えます」(Q&A) - 日本テーラワーダ仏教協会ホームページ。
  53. ^ 宗教 タイ王国.com
  54. ^ タイ 外務省海外安全情報
  55. ^ 新潟大学発HELP YOU PROJECT(@helpyou_niigata) 2020年10月14日午前6:52のTweet


「上座部仏教」の続きの解説一覧

「小乗」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。



小乗と同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「小乗」の関連用語

小乗のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



小乗のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
デジタル大辞泉デジタル大辞泉
(C)Shogakukan Inc.
株式会社 小学館
日本郵政株式会社日本郵政株式会社
Copyright (C) 2024 JAPAN POST SERVICE Co.,Ltd. All Rights Reserved.
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの小乗 (改訂履歴)、上座部仏教 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2024 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2024 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2024 GRAS Group, Inc.RSS