泡禍に呑み込まれた者
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/03 03:16 UTC 版)
「断章のグリム」の記事における「泡禍に呑み込まれた者」の解説
杜塚 眞衣子(もりづか まいこ) 蒼衣のクラスメイト。母親は良子。『灰かぶり』の〈潜有者〉。〈異端〉化し、蒼衣の断章により殺害された。抱えた〈悪夢〉の内容は “自分は誰からも愛されなくなる” 。配役は「灰かぶり」。末期癌を患っている母親の介護のために学校を休みがちだったうえに、元来の大人しく気弱な性格もあってクラス内では非常に目立たない存在だったが、蒼衣に対し密かに想いを寄せていた。 両親は眞衣子が三歳の頃に離婚している。幼い頃より母親に虐待されていたために、左足がケロイド状態。その左足などにコンプレックスがあり、近所の公園に集まっている鳩に餌をやるのが唯一の楽しみだった。絵本、童話、児童文学などが好きだったために、本人が〈悪夢〉と童話の符合に気づいてしまい、恐怖が連鎖。結果として被害が拡大した。本編や外伝を含めて、〈悪夢〉と童話の符合を認識した唯一の〈潜有者〉。 〈悪夢〉の怪奇現象の内容は、悪意を持って他人を見るという「罪」の贖罪として目玉をつつき出される、血液や人灰から異形の鳩が産まれる、など。〈断章〉に目覚めた蒼衣によって殺害された後、〈名無し〉によって名前と存在を抹消され、蒼衣たち以外に彼女の存在を覚えている人間がいない。このことから、蒼衣は彼女を忘れず、彼女が存在したことを知る唯一の証人として生きることを決意する。 媛沢 遥火(ひめざわ はるか) 雪乃のクラスメイトでクラス委員長。『ヘンゼルとグレーテル』の〈潜有者〉。〈異端〉化したのち風乃の〈断章〉により殺害された。抱えた〈悪夢〉の内容は “自分が救えたはずの人が死ぬ” 。配役は「魔女になったグレーテル」。 誰にでも平等に接する責任感が強い性格の持ち主(この性格が〈異端〉化した原因)。クラス中から無視あるいは敵視されている雪乃に話しかける唯一のクラスメイトだった。雪乃曰く、「普通の世界を守る女主人」。小学生の頃、車の中に放置されていた赤ん坊を見かけ、その赤ん坊が数時間後に熱中症で死亡。そのことに関して、赤ん坊の母親から逆恨み気味の脅迫を受けたことが強いトラウマとなり、現在の異様に強い責任感を形成することになった。人通りのない所で駐車した車の近くを通るのが苦手。〈異端〉化するも死ぬまで自我と理性を維持し、最後の一線を踏み越えることはなかった。 〈悪夢〉の怪奇現象の内容は「殺人」を犯し「帰る場所」を失った者は「魔女」になる、赤ん坊の手形や顔がガラスに浮かび上がる、人間が自分の意志とは関係なしに、狭所に自身の体を潰れ砕けるまで押し込む、など。 横川 麻智(よこかわ まち) 雪乃と遥火のクラスメイト。癖毛のショートカットの少女。クラスで十を超える良くない噂から、雪乃に対し悪いイメージしか持っていない。両親は共働きで帰宅は遅く、時にはどちらも帰ってこないということさえある。頑固で友達思いだが、かなりの激情家で人の好き嫌いが激しく、友達を守るために時として過激な行動を取ることがある。 遥火とは小学校からの親友で、なにかにつけて心配してはいるが、親友というよりはむしろ妹分のように思っている節があり、少々お姉さんぶっている。遥火のトラウマになった「事件」のことも知っている。遥火の表情に、あの時と同じく何かを恐れているような色が浮かんでいることに気づき、それと前後するように彼女が雪乃と登校するようになると、雪乃が何かしたのではないかと思い、一層の不信感を抱く。そして学校から帰宅途中『神狩屋』から歩いてきていた遥火と雪乃、蒼衣を目撃し家まで後をつけて様子を窺い、遥火にさり気無く雪乃との関係に探りを入れるが答えないと悟ると、今度は雪乃に話を聞くため追いかけるが、途中で赤ん坊の母親(最初の魔女)に遭遇し〈泡禍〉に巻き込まれる。母親の家で目を覚まし、電子レンジに右腕が押し込まれ潰れ砕ける様に恐怖し〈異端〉化していた赤ん坊の母親を包丁で刺すが、殺しきれずにそのまま放置して自宅へ戻り、〈異端〉化して「二番目の魔女」となる。弟の亮を惨殺し、遥火を電話で自宅に呼び寄せ襲い掛かるが、振り払われて窓ガラスを割って転落し死亡。遺体は神狩屋の発言から〈名無し〉によって処理された模様。 麻智がなぜ「二番目の魔女」となって帰る場所を失ったのか定かではないが、神狩屋から両親がいつもいない自分の家を自らの帰るべき家であるとは初めから思っていなかったのかもしれないということが推測されている。『ヘンゼルとグレーテル』の〈泡禍〉における配役は「魔女になったグレーテル」。 横川 亮(よこかわ りょう) 麻智の四歳違いの弟。〈異端〉化した麻智により惨殺された。深々と首を切り裂かれて腹を割かれた亮の裸の死体を遥火が目撃している。 〈泡禍〉にも関わらず組み込まれもせずに死んでいった人物の一人。 海部野 幸三(あまの こうぞう) 神狩屋の義父。『人魚姫』の〈潜有者〉。〈異端〉化し始めたところを、蒼衣の〈断章〉により殺害された。抱えた〈悪夢〉の内容は “自分の愛する者たちが死んでいく” 。配役は「人魚の国の王様」。 幼い頃に飼っていた犬が死んだ時、手を洗ったことで犬の感触が全て消えてしまったことと、手洗い消毒をしたことで志弦の感触が消えてしまったことの符号が起因となっている。愛犬家で犬を家族同然であると思っている。そんな優しさを持っている反面、厳格な態度をとって周りに距離を置いてしまい、人と上手く付き合えない不器用な性格という典型的な亭主関白。 〈悪夢〉の怪奇現象の内容は、泡に触れると肉体が溶ける、しゃぼん玉の中に死者の姿が見える、など。現象の種類自体は少ないが、現象の範囲が途方もなく広く、最終的には彼が住む海辺の町全体が〈悪夢〉の舞台となった。また、排水溝から溢れた泡、ビールの発泡、石鹸・歯磨き粉・台所洗剤の泡、水面に浮かぶ泡、しゃぼん玉など、泡の種類は問わない。 海部野 志弦(あまの しづる) 神狩屋の婚約者。享年18。生まれつき虚弱体質で、心臓病を患っていた。渡米し心臓移植まで行なったが、術後の経過が悪く、入院した先の病院でも余命を延ばすことしかできなかった。病院の屋上で雅孝と出会い、体験したくてもできなかった学生の気分を味わうことに生きる喜びを見出だし、雅孝と愛し合うようになる。自身の命が今にも尽きようとしていることは彼女自身が一番よく分かっていたため、一度は雅孝を拒絶したが、結局は駆け落ち同然で退院し、雅孝と同棲生活を始めた。 同棲生活を始めてから1年も経たないうちに、雅孝に浮かび上がった〈悪夢の泡〉による〈泡禍〉で発狂し、作ったカレーシチューの中に自分の舌を切って入れた後自殺。彼女が最期に遺したものが〈潜有者〉の雅孝を〈断章保持者〉の神狩屋に変えた。『八百比丘尼』の〈泡禍〉における配役は「釣り上げられた人魚」。 『人魚姫』の〈泡禍〉における配役は「人魚姫」。 斎藤 愛(さいとう まな) 勇路の幼馴染。『赤ずきん』の〈潜有者〉。物語が始まった時点で、既に誰にも気づかれないうちに〈異端〉化しており、笑美の〈断章〉により殺害された。抱えた〈悪夢〉の内容は “自分の犯した罪が発覚する” 。配役は「赤ずきん」。 臆病で人見知りな性格であり、察しが悪く機微もない。小学校時代に凛が環の人形を妬んで、盗み出し、鋏で切り刻んだ挙句に石を詰めて神社の池に捨てた事件の共犯になってしまったことから、その罪が発覚することを怖れ、その恐怖が〈泡禍〉を浮かび上がらせた。 〈悪夢〉の怪奇現象の内容は、「狼」の呼びかけに答えると鋏で殺された後に、手・足・首を切断されて、姿を盗まれ、姿を盗まれた者は「狼」になる。最初の「狼」は凛(後述)、二番目の「狼」は愛が凛と一緒に切り刻んだ環の人形で、その後は環、環の両親、律子、愛の両親、知沙都と、「狼」は無尽蔵に連鎖し、最終的には愛の自宅を中心とする住宅街数ブロック(合計23棟)の住人の大半が「狼に成り代わられた赤ずきん」になってしまっていた。「狼」に目をつけられる条件は「赤いものを頭に付けている」こと。 なお、発見された死体に石が詰め込まれていたのは〈悪夢〉の怪奇現象によるものではなく、〈異端〉化した愛の手によるもの。切り刻んだ人形に石を詰めて罪の発覚を防いだ過去から、切り刻まれた死体に石を詰めて当座の発覚を防いでいた。 東海林 凛(しょうじ りん) 愛の友人。それなりの素養を持ち合わせているがゆえに、嫉妬深く、少しでも自分より注目された人間に対しては裏で陰湿な嫌がらせを巧妙な手口で仕掛ける。彼女の策謀の綿密さと計算高さはその過程で培われたもの。しかし、純粋に友人思いな面もあり、相応の機微や人情も持ち合わせている。 彼女が環の人形を盗み出し、愛を共犯に巻き込んだことが『赤ずきん』の〈泡禍〉の元凶。しかし、彼女は『赤ずきん』の〈泡禍〉において〈潜有者〉側の一般人で唯一の生存者でもある。『赤ずきん』の〈泡禍〉における配役は「最初の狼」。愛は赤い帽子を被っていた時に、彼女の呼びかけに答えてしまったため、この時点で愛は「最初の赤ずきんちゃん」になり、『赤ずきん』の〈泡禍〉が始まっていたとも考えられる。 また、凛の鋏は『赤ずきん』の〈泡禍〉において「狼」と「狩人」の配役。 遠屋 環(とおや たまき) 愛の友人。愛と凛が切り刻んだ人形とお揃いの赤いリボンを髪に飾っていたため、「狼」に目をつけられた。 少なくとも、『赤ずきん』の〈泡禍〉が夢見子に予言されるより2年前の時点で、両親共々「狼」に殺害され、姿を盗まれていた。『赤ずきん』の〈泡禍〉における配役は「狼に成り代わられた赤ずきん」。 また、愛と凛に切り刻まれた環の人形は「お婆さん」と「二番目の狼」の配役。 新宮 律子(しんぐう りつこ) 愛の友人。髪を赤いゴムで結っていたため、「狼」に目をつけられた。石をつめられた遺体の胴体は斉藤家で発見された。『赤ずきん』の〈泡禍〉における配役は「狼に成り代わられた赤ずきん」。 岡 知沙都(おか ちさと) 愛の友人。ほおずきのような赤い髪留めをしていたため、「狼」に目をつけられた。『赤ずきん』の〈泡禍〉における配役は「狼に成り代わられた赤ずきん」。 衣川 遊美(きぬがわ ゆうみ) イソップ童話「よくばりな犬」の〈潜有者〉(だと思われる)。 〈泡禍〉の内容は、自分の顔が映ったものから剃刀を持った白い手が伸び、自分の顔を傷つけようとする。 主に風呂、プール、水溜り等の水面や、鏡から「手」は現れる。 事の発端は生徒会長である同級生の男子に惚れ、彼が梨花(下記)と仲良くしているのを見たこと。「深夜十二時にカミソリを口にくわえて水を張った洗面器を覗き込むと、そこには将来の結婚相手の顔が映る」という占いを信じて実行したものの、何も映らなかったことに拍子抜けして剃刀を洗面器に落としてしまう。実はその占いは「もしもその時にカミソリを水の中に落としてしまうと、水は真っ赤に染まり、相手の顔に一生消えない傷がついてしまう」というもので、白い「手」が現れて自分を襲うのは親友の気持ちを裏切っている罰だと思っていた。 近所の橋で「手」に襲われたところを、蒼衣に助けられる。 加古下 梨花(かこした りか) 遊美の親友。生徒会書記をしている。 ホラーが好きで、チェシャ猫のような笑い顔をする。 古我 翔花(こが しょうか) 中学1年生の頃の雪乃の友達。イソップ物語『金の卵をうむめんどり』の〈潜有者〉。 母親が亡くなって間も無くに父が再婚。継母との確執に耐えかね、雪乃の家で泣いていた。 継母の執拗で明らかな悪意を含んだ嫌がらせにより、徐々に〈異端〉になっていく。一度、母の形見である指輪を猫に呑まされたことがある。その猫は直後に車に轢かれて死亡し、その肉塊の腹の中から指輪は取り出される。 そして2度目に指輪が無くなり、翔花は指輪を取り戻すために猫を惨殺していった(実際は継母によって売り飛ばされていた)。生前の風乃が彼女の「仕事」を発見されないよう、人通りの少ない場所を提供していた。後に料理をする際に猫の解体シーンがフラッシュバックし、精神的に「何か」の臨界点を突破してしまったことを知る。最終的には、父が継母との和解を切り出したことで、父は何も解っていなかったという事実に絶望し、父と継母をカッターで刺し、家に放火して逃走する。その後風乃に会い、最後には同じ市内のマンションから身を投げた。配役は「金ではない卵」。 小杉 璃華(こすぎ りか) 翔花の友人。アニメの猫のような笑い顔をする。 前述の加古下梨花と容姿、性格共によく似ているが名前の字が違う。また、潜有者と雪乃達との仲介役を担ったリカという人物も存在し、この三名はリカが〈断章効果〉で見ている夢だと思われる。 金森 梢枝(かなもり こずえ) 琴里の八つ上の姉で『なでしこ』の〈潜有者〉。妹とは反対に長い黒髪の清楚で家庭的な美人。抱えた〈悪夢〉の内容は“助けられなかった死者からの糾弾”。〈悪夢〉の怪奇現象の内容は、死んだ人間がみんなの前に、または仄めかすように現れる。配役は最初の『なでしこ』では「王妃」、2つめの『なでしこ』では「庭師」。不仲の両親に代わって働きながら家事手伝い一切を引き受け、琴里にとっては親代わり的存在でもあった。一真と臣からも「ねえさん」と呼ばれ慕われている。身勝手で暴力ばかりふるう父親を心底軽蔑し、お金が貯まったら妹を連れて家を出ていく計画を支えに過ごしてきた。 琴里が自殺したことで生き甲斐が無くなってしまったことと、一番近くにいながら悩みに気付いてあげられなかったこと、さらに、その死を父親に中傷された上に母親の死の原因だと決めつけられ、そのうえ琴里の大切な一真と臣まで踏みにじられた悲しみと悔しさから〈泡禍〉が浮かぶものの、直後に果物ナイフで首を突いて自殺し、遺体をカラスに喰い荒らされているところを蒼衣と臣に発見される。その残り火が一真のトラウマに引っかかり〈断章〉を呼び起こしてしまったことで〈悪夢〉が活性化してしまうが、蒼衣によって拡大は防がれ、残った彼女の遺骨は彼の〈断章〉により消失した。 石田 臣(いしだ しん) 一真の幼馴染で親友。同じく幼馴染の琴里とは中学卒業から付き合っていた。幼い頃から常に周囲の目を気にしてきた優等生タイプで、自分とは正反対の天衣無縫な性格の二人に一種の憧れを抱いている。琴里の自殺に少なからず負い目を感じていた。一真の仲介で蒼衣たちと出会い協力する。活性化した一真の〈断章〉の最初の標的になってしまうものの、蒼衣と群草によって救われた。最初の『なでしこ』の〈泡禍〉における配役は「王様」。 2つめの『なでしこ』の〈泡禍〉における配役は「狩人」と「狩人のふりをした王子」。 また、臣が持ち帰った百合の花は、2つめの『なでしこ』の〈泡禍〉において「花に変えられた少女」の配役。そのため花は枯れることなく、終盤で一真の〈断章〉により「リーゼ」の配役である琴里の遺体が蘇った。 金森 勝(かなもり まさる) 梢枝と琴里の父親。眼鏡をかけた男性。妻が浮気をして出ていってからは毎晩酒に溺れ、あまつさえ梢枝に暴力を振るっていた。だが、妻によほどの未練があったのか離婚はしなかった。琴里の自殺を一真と臣のせいにしたり、さらには妻の自殺の原因だと中傷する身勝手で理不尽な性格で、娘の梢枝からは愛想をつかされていた。『なでしこ』の〈泡禍〉の元凶だが、〈泡禍〉において〈潜有者〉側で唯一の生存者。2つめの『なでしこ』の〈泡禍〉における配役は「王様」。 金森 秋子(かなもり あきこ) 梢枝と琴里の母親。見た目はいたって普通のおばさん。琴里が幼い頃に浮気をして出ていったが、夫に離婚を求めることはなく愛想を尽かしたのかどうかは不明。 琴里の死から数日後、蒼衣たちの目の前で列車に飛び込み自殺し、その首は飼い犬のシーザーに持っていかれ、最後は犬ごと国道でダンプに轢かれた。最初の『なでしこ』の〈泡禍〉における配役は「犬に変えられた料理番」。 金森 琴里(かなもり ことり) 一真と臣の幼馴染。臣とは中学卒業から付き合っていた。短い髪に強い眉が印象的な少女で、男の子に間違われるほど気丈で男勝りな性格で正義感が強い。高校三年の七月初めに、臣と同じ大学を受験するのが難しいと予備校で言われたことを苦に、陸橋から電車に飛び降り自殺した。最初の『なでしこ』の〈泡禍〉における配役は「王子」。 2つめの『なでしこ』の〈泡禍〉における配役は「リーゼ」。 真喜多 さやか(まきた さやか) 『いばら姫』の〈潜有者〉であり、〈異端〉。 抱えた悪夢の内容は、“自分を恨んでいる死者の復活”。配役は「仙女たち」。 自分のせいで死んでしまった一人目の『莉緒』をいつか生き返るのだと信じたかったため、二人目の子供に莉緒と名づける。 家のすべてを莉緒のためにささげるようにするが、自分のことを殺した自分たちを姫が恨んではいないか、という可能性に気づいてしまう。莉緒が自分たちの思いとは違う育ちかたをし、そして莉緒が話した「都市伝説」を聞いたことによって想像が確信に変わり、泡禍へと発展した。 勇路の〈断章〉で一度は殺害されたものの復活。以降、耀・莉緒・可南子らに危害を加え、雪乃の〈断章〉によって焼き払われながらも死ぬことはなかった。最期は蒼衣の〈断章〉で殺害された。 〈悪夢〉の怪奇現象の内容は、如何なる外的要因でも〈異端〉(=自身)は死なない、家に入ることはできるが出ることはできなくなる、彼女が傷つけた部位に菊に似た花を咲かせる芽が生えるなど。 真喜多 輝之(まきた てるゆき) 真喜多家の大黒柱で建築デザイナー。 莉緒を『莉緒』の生まれ変わりとして名づけた張本人。莉緒自身を見ようとせず『莉緒』として育てようとばかりしていたため、本人から反感を買い、最終的には目をかけていた耀にまで反抗されていた。 アクアリウムが趣味で、金魚や蛙などを多く飼っており、自宅のデザインに取り入れるほど。 追い詰められた精神状態の中で、何度殺されても蘇る妻の姿を見て「すべてをやり直そう」と、自身の母(莉緒の祖母)を惨殺、蒼衣に深手を負わせたうえで莉緒をも殺害しようとしたが、逆に殺害された。『いばら姫』における配役は「王様」。 真喜多 耀(まきた よう) 真喜多家の長男で莉緒の弟。 輝之にとっては自慢の息子。彼もまた父の教えを忠実に守っていた。それ故にかなり正義感が強く、家族の中でただ一人莉緒から信用されていた。 〈泡禍〉によって全身に芽を生やして死亡。『いばら姫』における配役は「王子たち」。 真喜多 莉緒(まきた りお) 真喜多家の次女。本来『莉果』と名付けられる予定だったが、幼くして死亡した姉の生まれ変わりとして現在の名をつけられた(故にリカの〈効果〉対象に入っており、リカも生まれてこなかった『莉果』の夢をみている)。自分を「『莉緒』の生まれ変わり」=「『莉緒』のやり直し」としてしか見てくれない両親に対して反発していた。両親の西洋的な趣味に対して本人は和風を好んでいる。 『いばら姫』において、すべてを蘇らせてやり直そうと暴走し始めた父をゴルフクラブで殴って殺害している。『いばら姫』における配役は「死の眠りから蘇ったものの、そんなことを望んではいなかったいばら姫」。 多代 亮介(たじろ りょうすけ) 浅井安奈のクラスメイト。地味な眼鏡男子を絵に描いたような容姿。 彫刻家になりたいと思っており、美大を目指してデッサンの練習をしている。 偶然机に置きっぱなしにしていたミュシャの画集を安奈が読んでいたことがきっかけで少し会話をするようになり、彼女の心に密かに思いを寄せていた。その為(〈葬儀屋〉の〈断章〉で蘇った)安奈を助けるために彼女を連れて逃避行を試みる。 彼が『しあわせな王子』の〈潜有者〉であるとする明確な記述がないものの、抱えた〈悪夢〉は “愛する者を、当人の望みで切り刻まなければならない” 。 安奈の外見などを羨む人々(民衆)にその原因(=安奈の身体)を撒いて分けてあげていた。しかし〈葬儀屋〉の〈断章〉の〈効果〉により安奈は何度も蘇るようになっていたため、いつまでも続けなければならなくなってしまう。 最期は安奈を助けるように蒼衣に懇願するも、可奈子の鉈で頭を割られて死亡。遺体は「しあわせな王子」を収束しようとした蒼衣の〈断章〉の暴発に巻き込まれて、修司や可奈子、安奈と共に消滅した。『しあわせな王子』における配役は「ツバメ」。 浅井 安奈(あさい あんな) 多代亮介のクラスメイト。下田樹里、野々村麻美、藤谷純、小林満梨子の4人とは小学校からの同級生である。 亮介の持ち物で机に置きっぱなしだったミュシャの画集を偶然見ていたことから、趣味が共通だったこともあり少し話すようになる。 可憐な容姿から男子に人気。しかしそれが理由で女子グループ(メンバーは後述)に中学時代からいじめに遭っている。だが、いじめに遭っているにもかかわらず、加害者の女子たちに好かれたいと思っているお人よし。 今までに母親が2度離婚しており現在は母子家庭。父親に性的なイタズラをされたと近所や学校の女子グループで噂になっているが、これは二番目の父親(義父で妹の実父)の仕業で本当のこと。 〈泡禍〉によって自宅で家族(実母、異父妹)と死体になっているところを〈ネットロッジ〉のメンバーに発見され、処理をするために〈葬儀屋〉の〈断章〉で蘇った。ところが、そこへ安奈の欠席を心配した亮介が様子を見に安奈の自宅へ現れ、その姿にただならぬ気配を察し、安奈を連れ出して逃避行に走ったことで事件は起こってしまう。 死亡の理由となった〈泡禍〉などの詳細はわからずじまいで、結局作中で明かされることはなかった(『しあわせの王子』の可能性とまた別の〈泡禍〉の可能性があるため)。 最期は亮介を殺害した可奈子の鉈で切り刻まれ、「しあわせな王子」を収束しようとした蒼衣の〈断章〉の暴発に巻き込まれて、修司や可奈子、亮介の遺体と共に消滅した。『しあわせな王子』における配役は「王子」。 下田 樹里(しもだ じゅり) 浅井安奈をいじめていた女子グループの一人。安奈、野々村麻美、藤谷純、小林満梨子の3人とは小学校からの同級生である。 オシャレを自認しているグループのムードメーカーで、常にオシャレの情報収集と研究に余念がなく、ファッション雑誌と芸能雑誌をいつも買っている。 自分の名前にコンプレックスのある少女で、名前自体は気に入っているのだが、その名前が付いた自分の顔が普通に可愛くもなんともない典型的な日本人顔であることに不満とコンプレックスを持っている。故に共働きの両親がどうして結婚したのかということにも不満を持っている。実際、中学生の時にそれが原因で両親を罵っている。そういう感情的な所業が多く、それは家庭内のみならず外でも度々発揮され、樹里に逆らうと面倒だという一種のリーダーシップになっている。 また、自分の好き嫌いを言い立てるのも当たり前と考えている。しかし、好きなものも多いが嫌いなものはもっと多く、そして自分が好きなものが人に貶されるのも、自分が嫌いなものが人に褒められるのも大嫌いだった。 安奈が死のうが何をしようが知ったことではなかったが、自分の家で見たものが安奈の亡霊ではないと証明したいが為に、蒼衣と雪乃に接触して安奈に繋がる唯一の物的証拠である携帯電話を、安奈とは友達なので自分たちから携帯電話を返しておくという嘘をついてまで手に入れようと計画するなど、自己中心的かつ自己保身さが見える性格である。 陰口も呼吸のようなものと考えており、人間はみんなそうだと疑っておらず、陰口という自覚も無い。また樹里の中では安奈へのいじめもいじめだと思っておらず、ただの人間関係に過ぎないと思って疑っていない。なので皆にとって目障りな人間が冷たくされるのは当たり前のことで、安奈は仲間内で嫌われている人間の1人で、その中でも逆らわない人間という、それ以外にはなんら特別ではない人間だったと思っている。 麻美と同じく、亮介が剥いだ安奈の顔の皮を家で見たことに怯え、純と満梨子を呼び出して話を聞いてもらっていたところ、呼び出していた麻美が病院に入院しており呼び出されて病院に向かうが、病室で自殺していた麻美を発見する。 満梨子と共に安奈の携帯電話を拾った(という建前の)蒼衣と雪乃に接触し、安奈の死体を探していることを告げられ動揺、満梨子が安奈と関係は無いと見え見えの言い逃れをして自己保身に走ってしまい、安奈の死に関して驚かなかったことから蒼衣と雪乃に安奈の死を含めて全てを知っていたのではないかと疑いの目で見られてしまう。その後、亮介に襲われ怪我を負った純の見舞いに訪れて〈泡禍〉に巻き込まれ、蒼衣と雪乃に接触した時に入手した蒼衣の携帯番号で助けを求める。しかし、純の病室で〈泡禍〉の惨劇を目撃して、満梨子と共に純を置き去りにして逃げ出す。だが、病院内が錯乱状態と化す中で満梨子とはぐれてしまい、病院内で異形となった患者たちから縋られた時についた血が腕や足、服に付着し、その気持ち悪い感覚や感染りそうで怖い精神的な不快感を覚えたり、〈異形〉化した満梨子に縋られて恐怖と絶望を感じて心身両面で追い詰められていき、最終的には折り重なった人間の肉の海を目撃して腰が抜け、〈泡禍〉によって口を塞がれて窒息し、病院内からの脱出を果たせずに死亡した。『しあわせな王子』における配役は「民衆」。 野々村 麻美(ののむら まみ) 浅井安奈をいじめていた女子グループの一人。 恋愛話が大好きで、それで皆と盛り上がっている。また、クラスの男子、学校の先輩、男性アイドルグループにも誰よりも入れ上げている。 浅井安奈や下田樹里、藤谷純、小林満梨子と小学校からの同級生。安奈がいじめられる最初の原因を作った。その原因とは、小学校の頃麻美はとある男子が好きだったが、その男子は安奈のことが好きだったというありきたりな内容だった。そのことを知った麻美はまるで自分が被害者のように振る舞い樹里をはじめとする皆の同情を買い、皆で安奈を取り囲んで謝らせた。現在麻美はその男子のことは好きでもなんでも無くなったが、その出来事から安奈のことがムカつく目障りな存在だと思っている。しかし、当の本人は自分がそのいじめの原因だったということを忘れており、原因となった事件も今やただ安奈がムカつくエピソードの1つに過ぎなくなっており、安奈は可愛いから調子に乗っている嫌われ者だという結果だけが残って、その因果は麻美の中からは完全に失われている。また自分たちにいじめ続けられてもなお自分たちに好かれ、仲間に入りたがっている安奈を図々しいと思っている。自分に不都合なことがあったときは黙っていれば済むと思っており、大体取り返しの付かない事態になってからバラすかバレる。 樹里と同じく、亮介が剥いだ安奈の顔の皮を家でを見たことがきっかけで泡を吹き頭を打って病院に救急搬送される。 その後樹里に宛てた遺書を遺し自殺した。亮介からはこの程度で自殺するほど臆病なくせに、安奈をいじめていたことで弱くて蒙昧な人間で、人をいじめた報いを受ける覚悟もないと酷評された。 麻美の遺体は、樹里と満梨子が純の見舞いに訪れた時にはまだ病院内にあるという描写があり、後に病院が〈泡禍〉の現場と化し、証拠隠滅と〈異形〉を一掃するために起こした風乃の〈断章〉により病院が火事となったため、共に消失したと思われる。『しあわせな王子』における配役は「民衆」。 藤谷 純(ふじたに じゅん) 浅井安奈をいじめていた女子グループの一人。 安奈、樹里、麻美、満梨子とは小学校からの同級生。グループの中で一番背が高く痩せており、派手でノリも威勢もいい。だが、実際には小心者で安奈へのいじめや悪口もグループから仲間外れにされたくない、安奈のようには絶対になりたくないという怖れがあるために加担していたに過ぎず、罪悪感で気が咎めていた。それ故に麻美と麻美が自殺前に遺書を残したことや遺書の内容、麻美という友達が死んだというのに安奈の携帯電話を拾った(という建前の)蒼衣と雪乃と平気で接触しようとする樹里や満梨子が許せず、それらに関して憤慨していた。そのような思いから自分が人の死を悲しまない非情人ということを意識しながらも、麻美の身勝手な遺書の内容により、麻美の死のショックも悲しむ気持ちもほぼ完全に消え失せていた。 その後、亮介に襲われて右目を刳り抜かれて気絶。蒼衣たちが亮介に関する記憶を純から消した後に匿名で通報されて病院に入院していたところ〈泡禍〉に巻き込まれ、ガーゼを当てていた右目から大量の血が溢れ出てきてしまい、それに恐怖した樹里や満梨子に逃げ出され、ベッドですすり泣いていたところを喜美江に発見され、ともに病院内で死亡したと思われる。 夜遊びにだけはうるさい両親がいる。両親のうち母親が入院した純に付き添い、樹里と満梨子を対面させたが、彼女も病院内で〈泡禍〉に巻き込まれて死亡したと見られる。『しあわせな王子』における配役は「民衆」。 小林 満梨子(こばやし まりこ) 浅井安奈をいじめていた女子グループの一人。安奈、樹里、麻美、純とは小学校からの同級生である。 背格好は樹里と似ているが彼女に比べてぽっちゃりしており、常にへらへら笑っているような表情と雰囲気を持っている。 妙に若々しく、満梨子の友人にも自分の友人のように付き合う母がいる。 樹里と共にの携帯電話を拾った(という建前の)蒼衣と雪乃に接触し、安奈の死体を探していることを告げられ動揺、安奈と関係無いと見え見えの言い逃れをして自己保身に走ってしまったことと安奈の死に関して驚かなかったことから、蒼衣と雪乃に全てを知っていたのではないかと疑いの目で見られてしまう。その後、亮介に襲われ怪我を負った純の見舞いに病院を訪れて〈泡禍〉に巻き込まれて心身共に追い詰められていき、樹里と共に純を置き去りにして逃げ出す。だが、病院内が錯乱状態と化す中で樹里とはぐれてしまい〈異形〉化する。その後、その姿で樹里に助けを求めるも振り払われてしまい、死亡したと思われる。『しあわせな王子』における配役は「民衆」。 野々村 菜央(ののむら なお) 野々村麻美の妹。麻美と小学校からの仲で、一緒に遊んでいた樹里たちにとっては勝手知ったる仲。 樹里たちの影響かお洒落で派手目な中学生。 吉田 喜美江(よしだ きみえ) 麻美と純が入院した病院に勤務する看護師。面会時間終了が近いことを告げるために見回りに出る。その中で樹里と満梨子に逃げ出され、すすり泣いていた純を見つけるが、この時すでに〈泡禍〉が始まっており、それに巻き込まれ死亡。 〈泡禍〉にもかかわらず組み込まれもせずに死んでいった人物の一人。 眞守 玲(まもり れい) 『ラプンツェル』の〈潜有者〉。〈断章保持者〉である眞守大輔の長女で、一家ぐるみで「ロッジ」の世話になっていた。抱えた〈悪夢〉の内容は “愛する人のために掴んだものが間違っていて、その結果大切な人を失う” 。配役は「魔女」であり「王子」。 目の前で死んだはずの妹が、父親に連れられて帰ってきた時には異様なモノと化していたことに恐怖心を抱き、その時〈泡禍〉や〈断章〉について聞かされる。そのため物心ついた頃から悪夢にさいなまれた母親と変貌した『妹』を間近で見てきたものの、内心では受け入れることができなかったために〈泡禍〉が浮かび、それが湖乃美の死と父親の負傷によって膨れあがり、しまいには両親が入院した病院全体が〈異形の森〉と化した。母親のトラウマから髪を伸ばすのをやめ、趣味だったブログも秘密を漏らしてしまうことを恐れてやめてしまった。 〈悪夢〉の怪奇現象の内容は、高い所にいると見えない「手」に髪を引っ張られる。目を潰され「異形の一部」を大切な人だと思い込み、自分も取り込まれて〈異形の森〉となる。〈森〉に取り込まれる条件は「愛する人の死を受け入れきれていない」こと。条件が条件なだけにこの〈泡禍〉は、下手をすれば誰もがなりうる可能性があった。 母親を追いかけて取り込まれかけた際、偶然居合わせた勇路に助け出されるものの、怪我により盲目となったことで再び「愛する人」の姿を間違え、父親共々〈異形〉化し、駆けつけた勇路と神狩屋によって「死滅」した。 眞守 大輔(まもり だいすけ) 玲の父親で〈断章保持者〉。健康そうな肌とは裏腹に白髪の目立つ髪と目元に深い皺を刻んでいる。 小学生時代に好奇心で妻の髪を引っ張って大怪我を負わせてしまったことがきっかけで〈断章〉が発生し、一家ぐるみで「ロッジ」の世話になっていた。結婚後落ち着きを見せた矢先に紫が見えない「手」によって転落死し、発狂しかけた妻を繋ぎ止めるために禁忌だと知りながらも瀧の〈断章〉で蘇らせてもらい、うわべながらも幸せを掴もうと画策していた。 妻の連絡で駆けつけた病室で目撃した「手」に髪を掴まれ、アルミ格子に頭を打ちつけて大怪我を負い別の病室に運ばれるが、目覚めると同時に「手」に引かれた妻を目撃し後を追いかけて〈森〉にたどり着き、同じくのまれかけた玲を救おうとするが共に〈異形〉化した。 最初は彼か妻の〈断章〉が、〈葬儀屋〉の死で起きた紫の消失が引き金による暴発だと考えられていた。『ラプンツェル』における配役は「王子」。 秋山 湖乃美(あきやま このみ) 玲の小学校の頃からの親友。背が高く長い髪の持ち主だが、見かけによらず姉御肌で大雑把な性格。 当初はがさつなスポーツマンタイプで服装にも無頓着だったが、怪我でやめたことをきっかけに玲が服から髪まで見立て上げ、今ではモデルに間違われるほどおしゃれで美人に成長した。 玲の家に寄った際偶然『妹』の部屋を見てしまい、気を落ち着かせるために向かった展望台で「手」に髪を引っ張られ転落死し、後に遺体は〈森〉にのまれた。玲が何か隠し事をしていたことに薄々だが感づいていた様子。『ラプンツェル』における配役は、明確に記されていないが恐らく「二番目のラプンツェル」。 眞守 葉子(まもり ようこ) 大輔の妻で玲と紫の母親。旧姓は板橋。小学生時代、夫に悪戯で髪を引っ張られて階段から落ちて大怪我を負ったことがトラウマとなって〈断章〉が発生し、一家ぐるみで「ロッジ」の世話になっていた。それが原因で高い所から引きずり落とされることに極端に恐怖心を抱き、自分の身体を何かと紐でつないでおかないと家の中も満足に歩けない状態になっていた。 しかし、落ち着きを取り戻した矢先に紫が転落死し発狂しかけ、夫が藁にもすがる想いで瀧の〈断章〉で蘇らせてもらったことにより表状は人らしさを取り戻し、紫が『人』でなくなったにもかかわらず甲斐甲斐しく世話をしていた。しかし、瀧の「死亡」で紫が消えてしまうと再び発狂し、ベランダから飛び降り自殺を図って盲目になるほどの大怪我を負った。その後入院していた病院で「手」を紫と間違えて〈森〉に連れていかれ〈異形〉にのまれた。 事件が発覚した当初は、彼女が夫の〈断章〉が、〈葬儀屋〉の死で起きた紫の消失が引き金による暴発だと考えられていた。『ラプンツェル』における配役は「王子」。 眞守 紫(まもり ゆかり) 大輔の二番目の娘で、玲の少しだけ歳の離れた妹。半年前に突然現れた「手」に髪を掴まれて転落死し、大輔の願いで瀧の〈断章〉により蘇らせてもらうが、言葉も話さず家族のことも分からず、手掴かみで物を食べ、時々絶叫して暴れまわる『異形』となっていたため、ある意味『ラプンツェル』の〈泡禍〉の元凶ともいえる存在である。 瀧の「死亡」後〈断章〉が消えた事で塵の塊となって消滅した。『ラプンツェル』における配役は、明確に記されていないが恐らく「最初のラプンツェル」。 飯田 真佐代(いいだ まさよ) 眞守一家が世話になっているロッジの世話役。田舎のおばさんといった風貌。蒼衣に対し露骨に無粋な態度をとり、慈悲や自制に欠けている。雪乃いわく「〈騎士〉も〈ロッジ〉も理解していない素人」。 神狩屋によって彼の〈断章〉を摂取させられたために全身が〈異形〉化し死亡。〈泡禍〉にもかかわらず組み込まれもせずに死んでいった人物の一人。 溝口 葉耶(みぞぐち はや) 詳細はサブキャラクターの項を参照。 溝口夫人(みぞぐちふじん) 葉耶の母親で『白雪姫』の〈潜有者〉。抱えた〈悪夢〉の内容は “死んだはずの娘が何度も蘇る” 。 葉耶をずっと虐待しており、ある時、口答えをしたことに腹を立てて絞殺し家のガレージの下に埋めた後、何食わぬ顔で警察に捜索願を出した。だが、それから葉耶が生き返ってくる悪夢に苛まれるようになり、そこへ〈泡禍〉が浮かび上がったことで、本当に蘇った葉耶を掘り起こしては再び首を絞めて殺し直すを何度も繰り返したことで死体が発見され逮捕された(蒼衣と夢見子が見たのはこの時の光景だった)。 その後執行猶予がついて家に戻ってからも〈泡禍〉は止まず、周りには祖母だと偽ってひっそりと暮らし、死んだ後の年数分の人形を供えながら、病死するまで空っぽの穴から生き返る葉耶を何度も殺し直し続けた。そのため〈泡禍〉自体は当事者の死亡で既に止まっていたのだが、そこへ同じ悪夢から生まれた〈断章〉を持った蒼衣と夢見子が現れたことで残った〈泡禍〉が呼び水効果を生み、さらに神狩屋が配役に組み込まれようと便乗した末に膨れあがってしまった。〈悪夢〉の怪奇現象の内容もそのまま、何度も生き返る娘を、自らの手で何度も殺す。 登場から最後まで名前が不明のままだった。『白雪姫』の〈泡禍〉における配役は「お妃」。 また、彼女が供えた七つの人形は『白雪姫』の〈泡禍〉において「小人」の配役。 神狩屋(かがりや) 詳細は鹿狩 雅孝の項を参照。 白野 光一(しらの こういち) 蒼衣の父親。当初蒼衣は葉耶を親同士が親友による幼馴染だと思っていた。 神狩屋が自分の血液を混ぜた『毒リンゴ』を食べたことで〈異形〉化。それを見た蒼衣に激しく「拒絶」され殺害された。 白野 圭(しらの けい) 蒼衣の母親。当初蒼衣は葉耶を親同士が親友による幼馴染だと思っていた。 神狩屋が自分の血液を混ぜた『毒リンゴ』を食べたことで〈異形〉化。それを見た蒼衣に激しく「拒絶」され殺害された。
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