〈騎士〉
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/30 05:03 UTC 版)
「ウィザーズ・ブレイン」の記事における「〈騎士〉」の解説
近接戦闘特化型《魔法士》。より正確には運動係数制御特化型《魔法士》であり、各種の運動係数を書き換えることにより身体能力制御、情報解体、そして自己領域を使用することが出来る。最初期に開発された一般的な《魔法士》の型の一つで、能力の性質上、個人戦、特に対《魔法士》戦では最強と言われるが、一対多の戦闘には不向き。そのため大戦当時は一般兵を相手取る機会が少なく、「大戦当時《魔法士》でない一般兵を殺さなかった」として英雄視される傾向にある。大戦時には1000人以上が生み出されたが、そのほとんどが戦死した。 数少ない弱点は、自己領域と他の能力を同時に使えないことであり、また自己領域を展開したまま接敵すると使用者の方が不利になること。そこで接敵する際には自己領域から身体能力制御への切り替えを行なうが、切り替え時に発生する僅かな(しかし身体能力制御で加速できる〈騎士〉にとっては大きな)タイムラグは、〈騎士〉にとって能力を使えない時間であり、その隙を突かれるとなす術もない。 《情報制御理論》が発表された後、当時はまだ理論上の存在であった「I-ブレインを持つ人間」を生み出す最初の開発競争が行われていた頃に、シティ・神戸自治軍の情報制御研究部〔天樹機関〕で開発された最初期の《魔法士》。《情報制御理論》創始者の1人である天樹健三が開発に関わっている。〈騎士〉の基本戦術や訓練法、騎士剣と言ったものも〔天樹機関〕で開発されたものが基礎となっている。 作中では七瀬雪や黒沢祐一を始め、各シティ自治軍に所属する端役の軍人など、数多く登場する。 なお〈騎士〉に必要な要素は、最適な運動を行うための脳や神経の機能であり、そのためには身体能力がかえって邪魔になる。なまじ運動能力が高かったり、既存の戦闘術が身についていると、それが却って効率的な〈騎士〉の動きを阻害するようである。曰く「I-ブレインの運動加速を前提とした完璧な動きは人間の本能と矛盾する」ため、“真の〈騎士〉戦闘”を体現するには「普通の感覚を全て捨てないと駄目」「既存の剣術の常識を全て捨てる所から始まる」ものであり、「なまじ運動が出来ると筋肉に頼ってしまっていけない」らしい。 一般的な〈騎士〉の戦闘訓練法は、既存の軍隊格闘術をベースに各シティの研究者が組み上げたものだが、上述の理由から、それらの訓練を受けた〈騎士〉は戦闘時に真価を発揮できない。真の〈騎士〉戦闘を体現するための「騎士の正しい訓練法」のカリキュラムはあるが、〔天樹機関〕の最高機密であり、一通りこなした祐一でも身に付いているのは5割程度。ディーは戦闘経験から自然と効率的な〈騎士〉戦闘を身に付けており、良い線を行っているが完璧には程遠い。真の〈騎士〉戦闘を本当の意味で体現できた〈騎士〉は唯一、七瀬雪だけらしい。 ☆身体能力制御 使用者本人の体内の物理法則を書き換えることにより、運動能力と知覚速度を加速する。加速率は使用者の任意で設定でき、騎士剣を併用することで更に向上する。しかし使用者の身体そのものを強化する能力はなく、運動能力を加速し過ぎると反作用で身体を壊してしまうため、それらの加速や〈騎士〉にとって最適かつ人間としては不自然な動作から発生する衝撃などを打ち消す《情報制御》も同時に行われている。そのため、使用者は高速で動きつつも運動エネルギーは普通に動いているときと変わらず、つまり“動きが速くなる空間の中にいるだけ”で、速い動きに伴う衝撃などはなく、蓄積する肉体疲労も通常の運動と全く変わらない。 なお、最高レベルの〈騎士〉が最高レベルの騎士剣を使ったとしても、運動速度の加速率は100倍が限界。 ☆情報解体 物体を《情報の海》側から破壊する。《情報の海》側から破壊された物体は原子単位で分解され、その後安定化のため分子として再結晶する。情報解体プログラムは物体を区別しないため、特定の物体を情報解体するには、原則としてその物体に接触していなければならない。そこで接触範囲を広げるべく、騎士剣が利用される。 原則として単一分子で構成されている物体(石、金属など)は情報的にもろく、高い演算速度を持つ物体――すなわち思考・演算する物体(生命体・コンピュータなど)は情報的に強固である(現実世界とは正反対の性質を持っていることになる)。《魔法士》は情報の塊であり、解体はほぼ不可能な存在である。ただし、より高い演算速度を持つ情報解体に接すれば、《魔法士》の解体も理論上は可能である。 ☆自己領域 光速度(光速度を越えることは不可能だが、光速度の値そのものは改変可能である)、万有引力定数、プランク定数を改変し、自分の周囲の空間を“自分にとって都合のいい時間や重力が支配する空間”に改変する。なお、それ相応の負荷を使用者に与えるため、短時間に何度も起動と終了を繰り返すことはできない。 周囲の空間ごと重力制御し空中移動と並行して亜光速(I-ブレインの能力・騎士剣の性能により差が生じる)で動ける為、他者からは“瞬間移動した”ように見える。欠点は、敵が自己領域に入ると同等の恩恵を受ける為、使用者の方がI-ブレインが自己領域プログラムに占有されている分だけ不利となる点。そのため通常、近接戦闘の際には自己領域を解除する。また、二つの自己領域がぶつかり合うと互いの自己領域の境界面に矛盾が発生して強制終了する。同様に、使用者自身が維持できる自己領域(正確には不明だが、作中の描写から人間が2人入る程度である様子)以上の大きさを持つ物体に接触したときも、自己領域の境界面が維持できなくなり強制終了する。 騎士剣の結晶体に展開プログラムを収納しているため、自己領域を使用するには騎士剣が不可欠で、かつ高度な演算を必要とするため、A級の〈騎士〉でなければ使用不可能。また騎士剣の補助記憶領域まで占有するため、自己領域と他の能力を同時起動する事は基本的にできない。 考案者は七瀬雪。 騎士剣 〈騎士〉の能力を補助する剣型のデバイス。《情報制御》において〈騎士〉の身体の一部として扱うことができ、“剣”という形状は情報解体が通用しない人体への攻撃を目的としている。刃はミスリル製で、柄に演算中枢の結晶体が象嵌されている。身体能力制御による加速度はこれの演算を使用することで大幅に上昇し、また自己領域の展開プログラムは騎士剣に搭載されているため〈騎士〉の強さは概ね使用している騎士剣の質に左右される。騎士剣『紅蓮』 最初に自己領域システムが組み込まれた騎士剣であり、七瀬雪の愛剣。190cm近くある長大な剣で、刀身はほのかに紅く、また赤い結晶体が埋め込まれている。雪の死後は彼女と共にシティ・神戸に安置されていたが、神戸の事件の際に黒沢祐一が譲り受け(雪から生前、譲渡の旨を伝えられていたが、当時の祐一は断っていた)、以後愛用している。 騎士剣『陰陽』 二つのI-ブレインを持つディー専用の、二本一組の騎士剣。黒い結晶体が埋め込まれた方が右手用の騎士剣『陰』で左脳に接続し、白い結晶体が埋め込まれた方が左手用の騎士剣『陽』で右脳に接続する。エピソードVにて『陰』の結晶体が深刻な損傷を受けたため、騎士剣『森羅』の結晶体を素材に修復され、右手用の騎士剣は『陰』の自己領域と『森羅』の万象の剣の両機能を持つようになった(起動はどちらか片方のみ)。 騎士剣『森羅』 黒沢祐一のために制作された広域殲滅特化型の騎士剣。騎士剣『狂神二式』をベースとする。結晶体は透明な深緑色。自己領域システムが組み込まれていない代わり、広域殲滅用の戦闘プログラム“万象の剣”が組み込まれている。 現物を初めて見た天樹月夜によると「悪い噂がたくさん」あり「作った奴は頭おかしいんじゃない?」と評する、非常に危険な代物であり、祐一自身を含めて誰も使いこなせなかった。 騎士剣『天王』シリーズ 名称が登場したのみで、詳細は不明。 騎士剣『冥王』シリーズ 大量生産型の騎士剣。 『冥王三式』は2186年12月時点での最新型。 『冥王六式』は2198年2月時点で祐一が使用していた型。 『冥王八式』は2198年9月時点でモスクワ軍の〈騎士〉が使用していた型。 騎士剣『盗神』シリーズ 下位クラスの〈騎士〉が使う大量生産型の騎士剣で、刃渡りは60㎝ほど。騎士剣『陰陽』の基礎となったシリーズ。 騎士剣『狂神』シリーズ 騎士剣『森羅』の基礎となったシリーズ。平たく言えば“狂戦士”システムが組み込まれた騎士剣。 『森羅』と『陰陽』は同系列らしき描写があり、そのため『狂神』シリーズは『盗神』シリーズの派生とも考えられるが、明確な描写はなく両者の関係は不明。
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