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神代文字

(神字 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/08 13:51 UTC 版)

神代文字(じんだいもじ、かみよもじ)は、漢字伝来以前に存在したとみなされる、日本語を表記する固有の文字のことである。


注釈

  1. ^ 柳田康雄・久住猛雄などにより板石硯が出土することを根拠として、弥生時代の日本列島にすでになんらかの文字文化が存在したとする主張がおこなわれている。一方、古澤義久によりこれら「硯」とされた出土品には、近世の砥石の特徴を有するものが多くあるという反論も出ており、2023年現在、結論は出ていない[2]
  2. ^ また、光明皇后の蔵書であり、760年以前に伝来した『判比量論残巻』(大谷大学蔵)にも同様に省画した漢字を用いた吏読が残っている。こうした理由から、片仮名のルーツは新羅にたどることのできるものである可能性がある[7]
  3. ^ 空海『声字実相義』によれば、大日如来法身仏であり、一切世界を内包する。その説法は十界の言語、六境の表す文字をもてなされる。それゆえ、一切世界の現象は声字である[13]
  4. ^ 日本は、天照大神の系譜が続く秘められた領域であり、天孫降臨がなされた神聖な地である。東の果ての辺境といえども、その言葉の響きは澄み通って上品であり、中国や天竺とも共通しうる。
  5. ^ 五十というのは単に字に現れた数だけではなく、実に天地の声でもあるから、その中に含まれるものは自ずから異なっているといわなければならない[14]
  6. ^ 内閣文庫には天保14年(1843年)に小笠原通当によって記された『秀真政伝紀』が所蔵されているが、これは日吉神社本にさらに解釈を加える体裁となっている[30]
  7. ^ なお山田は、吏道は漢字の略字であり、この文字は諺文をもとに作られた文字にすぎないと同説を批判している[36]
  8. ^ 一方で、藤原明は、竹内巨麿が酒井勝軍に対して受動的だったとする有賀龍太以来の見解に疑問を唱えており、竹内が酒井のために記した「モーゼの遺言と系図」に、「後代ニモオゼノ十誡法宝五枚石宝三千年後ニ発見スル時アル(略)左腿胯ニ地球図形ノ図紋アル人五色人を統一スル神主ナリ」などと自らの世界統一の正当性を主張する文言を書き加えていることなどから、「『竹内文献』の気宇壮大な構想の誕生に、酒井勝軍のような外部の人士からの影響は必ずしも必要であったとは思えない」と論じている[59]
  9. ^ なお、『竹内文書』収録神代文字の五十音図は公刊されており、狩野も同論文において「私はいわゆる神代文字の予備知識がなかったため、この等文書の調査を始めた時には天津教の神代文字は読めようとは想わなかったが、丁付の数字に不図気付いてから奮発しておよそ一ヶ月を費して全部が読めた。後に友人の渡辺大濤氏から近頃某氏の著した神代文字の本の中にこの文字を説いていることを聞かされ、自分の寡聞を恥ずると同時に、世間にはまた迷信者もあるものと思った」と述懐している[63]

出典

  1. ^ a b c 斎藤達哉. “漢字はいつから日本にあるのですか。それまで文字はなかったのでしょうか - ことばの疑問”. ことば研究館. 国立国語研究所. 2024年3月26日閲覧。
  2. ^ 「「硯」論争 日本の文字文化の証拠 漢字いつ流入、出土品に賛否」『朝日新聞』、2023年5月17日、夕刊。
  3. ^ 藤堂明保「漢字」『国史大辞典』吉川弘文館。 
  4. ^ a b 上野英二「仮名成立の意義 覚書 : 言葉の獲得」『成城国文学』第37号、2021年3月19日、104–132頁。 
  5. ^ 武田祐吉注釈校訂. “古事記”. www.aozora.gr.jp. 2024年3月28日閲覧。
  6. ^ a b 築島裕「片仮名」『国史大辞典』吉川弘文館。 
  7. ^ a b 小林芳規東アジアの角筆文献から見る片仮名の起源」『比較文化 第54号』2008年、3–6頁。 
  8. ^ 矢田勉. “平仮名は誰が作ったのですか - ことばの疑問”. ことば研究館. 国立国語研究所. 2024年3月26日閲覧。
  9. ^ a b 小林芳規「平仮名」『国史大辞典』吉川弘文館。 
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  11. ^ 関晃「王仁」『国史大辞典』吉川弘文館。 
  12. ^ a b c d 内村和至「〈五十音思想〉の素描-『五十音和解』をめぐって-」『文芸研究』第95巻、2005年2月28日、43–66頁。 
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  17. ^ 山下久夫「宣長・秋成・そして篤胤 「復古」の構図をめぐる問題」『現代思想』2013年12月、162-181頁。 
  18. ^ 岩根卓史「〈神代文字〉の構想とその論理 平田篤胤の《コトバ》をめぐる思考」『次世代人文社会研究』第4巻、2007年。 
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  22. ^ a b c 飯島忠夫日本上古史論』中文館書店、1947年、134-135頁https://dl.ndl.go.jp/pid/2968009/1/77 
  23. ^ 『神代の文字』霞ケ関書房、1942年、256頁。doi:10.11501/1126385 
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  73. ^ 寺石悦章「楢崎皐月の生涯について」『四日市大学総合政策学部論集』第9巻1_2、2010年、25–50頁、doi:10.24584/jpmyu.9.1_2_25 
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  78. ^ 原田 2007, pp. 91–92.


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