被服 製造と管理

被服

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/28 14:44 UTC 版)

製造と管理

素材

衣服の素材は、大きく天然繊維化学繊維に分けられる。天然繊維は羊毛などの各種獣毛や絹といった動物繊維と、綿や麻などの植物繊維からなるが、なかでも綿羊毛の利用が飛び抜けて多い。化学繊維はレーヨンなどの再生繊維アセテートなどの半合成繊維、そしてナイロンポリエステルアクリルといった合成繊維からなる[52]。布地は平織綾織繻子織などの織物のほか、編物レースも用いられ、また繊維のほかに皮革も広く用いられる素材である[53]。素材にはそれぞれ長所と短所が存在し、その特性に沿った利用がなされるほか、素材の長所を生かし欠点を補うために2種類以上の素材を混ぜ合わせる混紡も広く行われている[54]

生産

衣服の製造・流通業はアパレル産業と総称される。ミシンなどの設備と洋裁などの技術があれば、生地を購入した上で自宅で衣服を作ることもいまだ可能ではあり、また高級衣服においては仕立て屋に依頼してオーダーメイドの服を仕立てることも一般的であるが、20世紀後半以降はほとんどの衣服は工場において大量生産された既製服となっている。

衣服生産の機械化と大規模化はミシンの発明と普及によって成し遂げられたが、ミシンは生産過程において人による操作がかならず必要となるため、完全機械化が困難である[55]。これにより大規模な衣服生産には労働力の大量投入が必要となるため、衣料産業は人件費の安価な発展途上国に多く立地しており、また生産国の経済発展により人件費が高騰すると、さらに工賃の安価な国へと拠点が移動することが多い[56]。日本においても1970年代に韓国台湾へと衣服生産は移行しはじめ、国内生産は1990年代には大きく減少した。さらに2000年頃には中国が衣服の生産拠点となり、その後は東南アジアバングラデシュが一大生産地となった[57]。このため先進国においては衣服は輸入品が中心となっており、日本では2018年には衣服の総点数のうち国産品はわずか2.3%にとどまった。これに対し金額では2016年度で24.0%が国産品となっている[58]

生産された衣服は卸売商を経て衣料品店や百貨店などの小売店に渡り、そこから消費者の元に届くのが従来の流通経路であったが、2000年代以降、生産から販売までを一貫して行う製造小売業が登場し有力な販売形態となっている[59]。日本においては、各世帯における衣料支出の割合は1960年代以降一貫して減り続けており、1990年代以降は絶対額においても減少傾向にある[60]。1990年代以降の衣料支出減少は、長期不況と、ファスト・ファッション化の進行によって衣料の需要が低価格化したことが主因である[61]

管理

衣服は使用や経年などさまざまな理由によって汚損や劣化していくため、適切な管理が必要である。日本では、衣服にはその組成や取り扱い方法を表示することが家庭用品品質表示法によって義務づけられている[62]。着用した衣服は洗濯を行い、汚れを除去する。通常、洗濯は家庭において、水と洗剤を利用し洗濯機で行い[63]、その後乾燥させて保存する。水洗いのできない場合や洗濯が困難な場合はクリーニング店などの専門の洗濯業者に依頼し、ドライクリーニングなどで汚れを除去する[64]。衣類全体に変色が広がった場合は漂白剤によって漂白を行い、一部の汚れではしみ抜きを、しわがある場合はアイロンをかける[65]。衣服を長期保管する際は虫害を避けるため防虫剤を使用することが多く、またカビの発生を避けるため湿度を低く保つことが望ましい[66]

劣化や流行などで使用に耐えなくなった衣服は処分される。衣服の処分は、汚損部分を修理したり仕立て直してそのまま着用する場合や、知人に譲渡したり古着屋に売却するなどで再利用する場合、一度解体してウエスや繊維材料としてリサイクルする場合などがあるが、大半はそのまま廃棄される。日本において2010年の衣料の修理・再使用・リサイクル率は26.3%に達したが、金属古紙に比べると廃棄率が目立って高く、環境問題の側面から廃棄の減少が課題となっている[67]




注釈

  1. ^ 白衣が実用的な役割というよりも、むしろ心理操作のために使われている、ということ、そのカラクリについては、ロバート・S. メンデルソン 著『医者が患者をだますとき』(草思社、1999)で解説されている。

出典

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  4. ^ 「衣服と気候」(気象ブックス039)p103-104 田村照子 成山堂書店 平成25年12月18日初版発行
  5. ^ 「衣服と気候」(気象ブックス039)p132 田村照子 成山堂書店 平成25年12月18日初版発行
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