被服 製造と管理

被服

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/12/21 14:39 UTC 版)

製造と管理

素材

衣服の素材は、大きく天然繊維化学繊維に分けられる。天然繊維は羊毛などの各種獣毛や絹といった動物繊維と、綿や麻などの植物繊維からなるが、なかでも綿羊毛の利用が飛び抜けて多い。化学繊維はレーヨンなどの再生繊維アセテートなどの半合成繊維、そしてナイロンポリエステルアクリルといった合成繊維からなる[77]。布地は平織綾織繻子織などの織物のほか、編物レースも用いられ、また繊維のほかに皮革も広く用いられる素材である[78]。素材にはそれぞれ長所と短所が存在し、その特性に沿った利用がなされるほか、素材の長所を生かし欠点を補うために2種類以上の素材を混ぜ合わせる混紡も広く行われている[79]

生産・流通

バングラデシュの縫製工場
衣料品店の店内。大量生産の衣服が並ぶ

衣服の製造・流通業はアパレル産業と総称される。ミシンなどの設備と洋裁などの技術があれば、生地を購入した上で自宅で衣服を作ることもいまだ可能ではあり、また高級衣服においては仕立て屋に依頼してオーダーメイドの服を仕立てることも一般的であるが、20世紀後半以降はほとんどの衣服は工場において大量生産された既製服となっている。

衣服生産の機械化と大規模化はミシンの発明と普及によって成し遂げられたが、ミシンは生産過程において人による操作がかならず必要となるため、完全機械化が困難である[80]。これにより大規模な衣服生産には労働力の大量投入が必要となるため、衣料産業は人件費の安価な発展途上国に多く立地しており、また生産国の経済発展により人件費が高騰すると、さらに工賃の安価な国へと拠点が移動することが多い[81]。日本においても1970年代に韓国台湾へと衣服生産は移行し始め、国内生産は1990年代には大きく減少した。さらに2000年頃には中華人民共和国(中国)が衣服の生産拠点となり、その後は東南アジアバングラデシュが一大生産地となった[82]。このため先進国においては衣服は輸入品が中心となっており、日本では国産の衣服は一方で総点数のわずか2.3%にとどまりながら(2018年)、他方でその金額は24.0%(2016年度)となっている[83]

生産された衣服の流通経路は従来、卸売商を経て衣料品店や百貨店などの小売店に渡り、そこから消費者の元に届くのであったが、2000年代以降、生産から販売までを一貫して行う製造小売業が登場し有力な販売形態となっている[84]。日本においては1960年代以降、世帯単位の衣料支出の割合は一貫して減り続けており、1990年代以降は絶対額においても減少傾向にある[85]。1990年代以降の衣料支出減少は、長期不況と、ファスト・ファッション化の進行によって衣料の需要が低価格化したことが主因である[86]

大量消費社会では、ファスト・ファッションを中心に、品切れを防ぐなどの目的で大量生産された衣服が大量に在庫・廃棄されている。持続可能性環境問題などへの配慮から、こうした衣服の過剰生産を欧州連合(EU)が規制を進めている[87]ほか、各社の在庫を安く売る業態(オフプライスストア)[88]などビジネスを通じた問題緩和の動きも出ている。

古着

古い衣服(古着)は文化財ヴィンテージとして新造品にはない価値を評価される場合もあるが、上記のように廃棄されたり、修理されて使われたり、リユースリサイクルに回されたりする。しかし、リユースやリサイクルのためと称して輸出された古着が、発展途上国であっても売り物にならないほど劣化しており、廃棄されて環境破壊を引き起こす例もある[89]

管理

衣服は使用や経年など様々な理由によって汚損や劣化していくため、適切な管理が必要である。日本では、衣服にはその組成や取り扱い方法を表示することが家庭用品品質表示法によって義務づけられている[90]。着用した衣服は洗濯を行い、汚れを除去する。通常、洗濯は家庭において、水と洗剤を利用し洗濯機で行い[91]、その後、乾燥させて保存する。水洗いのできない場合や洗濯が困難な場合はクリーニング店などの専門の洗濯業者に依頼し、ドライクリーニングなどで汚れを除去する[92]。衣類全体に変色が広がった場合は漂白剤によって漂白を行い、一部の汚れではしみ抜きを、しわがある場合はアイロンをかける[93]。衣服を長期保管する際は虫害を避けるため防虫剤を使用することが多く、またカビの発生を避けるため湿度を低く保つことが望ましい[94]

劣化や流行などで使用に耐えなくなった衣服は処分される。衣服の処分は、汚損部分を修理したり仕立て直したりしてそのまま着用する場合や、知人に譲渡したり古着屋に売却したりするなどして再利用する場合、一度解体してウエスや繊維材料としてリサイクルする場合などがあるが[95]、大半はそのまま廃棄される。日本において2010年の衣料の修理・再使用・リサイクル率は26.3%に達したが、金属古紙に比べると廃棄率が目立って高く、環境問題の側面から廃棄の減少が課題となって[96][97]、企業の取り組みも始まった[注 4]


注釈

  1. ^ 白衣が実用的な役割というよりも、むしろ心理操作のために使われていること、ならびにそのカラクリについては、ロバート・S・メンデルソンが解説している[2][要ページ番号]
  2. ^ なお、縄文土器(狭義)の縄目文様は撚糸を土器表面で回転させてつけたもので[43][44]、糸の存在を裏付けるものでもある。
  3. ^ 経済総動員制が研究され[56]国家総動員法の発布、雑誌『商工経済』でもイギリスやナチス・ドイツの衣料切符制度を掲載し[57]、翌1942年春には「戦う国の生活」[58]と呼び、女性雑誌『主婦の友』でも大東亜戦争特集号「特輯決戦家庭経済号」として家庭にある既存の洋服や着物のリメイク(更生服)を勧め「衣類切符制下の洋裁」特集[59]を組み、実物大の型紙を付けて縫い方を紹介した。
  4. ^ 環境省のサイト[98]より。「棄てられたコットン製品から、新たにコットンの服を作るプロジェクトの取り組み事例」[99]、「服は国内で循環するもの」という新しい常識・文化を作る取り組み事例」[100]、「自治体と連携した古着回収&リサイクルの取組事例」[101]、「服から服をつくる衣類のサーキュラー_エコノミーへの取組事例」[102]、「繊維くずや使用済み衣料から新しい衣料を製造する取組事例」[103]

出典

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