国家総動員法とは?

こっ かそうどういん ほう こく-そうどうゐんはふ 【国家総動員法】


国家総動員法

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/10/07 06:19 UTC 版)

国家総動員法(こっかそうどういんほう)は、1938年昭和13年)第1次近衛内閣によって第73帝国議会に提出され、制定された法律日中戦争の長期化による総力戦の遂行のため国家のすべての人的・物的資源を政府が統制運用できる(総動員)旨を規定したもの。




注釈

  1. ^ 古川「戦中期」p.9では、要綱の公表は1月下旬であると書かれている。
  2. ^ 国家総動員審議会は原案にはなかった組織で、この政府の譲歩によって国家総動員法第50条に新たに付け加えらた[34]。当審議会は、委員の過半数が貴族院・衆議院議員から構成された諮問機関である[35]。本審議官制は、国家総動員法の公布後、1938年5月4日に公布、翌日から施行された[35]。人事の発令は同年7月1日で、委員は計48名、幹事22名、総裁、副総裁、幹事長はそれぞれ近衛文麿首相、瀧正夫企画院総裁、青木一男企画院次長の陣容で始まった[36]。総動員法運用の際に、各省庁で作成された要綱は企画院で検討、調整の後、国家総動員法制委員会へ送られ、そこで最終的に決定された要綱案が本審議会に諮問される手続きになっていた[37]。本審議会で承認されたものは、内閣法制局で成文化され、勅令として公布、施行された[37]。この審議会は、国家総動員法運用において実質的には議会の代理をする意味を持っており、政治的な意味において重要だった[38]。ただし、戦争遂行に賛成しており、審議会は上がってきた要綱案を検討すること以上のことができず、立案や実施状況のチェックができなかったことから、審議会の民間側の力が弱かったことは否定できない[39]。国家総動員審議会の評価は分かれている。ゴードン・バーガーのように、議会が国家総動員法の政府原案承認と引き換えに勝ち取った成果として高く評価する研究者もいれば[40]御厨貴長尾龍一のように、形骸化した組織に堕したとして消極的な評価をする研究者もいて[41]、評価は定まっていない。
  3. ^ 国家総動員審議会官制(昭和13年勅令第319号)は同法が成立したのちの5月4日に公布されたが、天皇の他に署名しているのは近衛文麿のみである[42]が、これは審議会の官制の勅令は、審議会を所管する大臣(国家総動員審議会は、内閣総理大臣が所管する)及び内閣総理大臣が署名する慣例に従ったことでありそれ以上の意味はない。
  4. ^ 法案審議時には、宇垣一成を党首に擁立して、政友会・民政党を合同した新党を作り、政党内閣の復活を目指した運動が進行していた[47]。この運動を阻止したのが陸軍である[48]
  5. ^ 第31条「本章に揭げたる条規は、戦時または国家事変の場合において天皇大権の施行を妨げることなし」。大日本帝国憲法第2章『臣民権利義務』。大日本国憲法-ウィキソース。
  6. ^ 纐纈『総力戦』p.72では、勅令第三一五号(法律第五五号)として4月15日に公布、施行が5月1日となっているが官報の記載からこれは明らかに誤りである。古屋哲夫「翼賛体制と対米開戦」では、北博昭『日中開戦』と同様に、4月1日に公布、 5月5日より施行、と書かれている[64]

出典

  1. ^ 総動員計画設定処務要綱案、1929年6月18日。
  2. ^ 纐纈 厚 『総力戦体制研究 日本陸軍の国家総動員構想』 三一書房、1981年、47頁。
  3. ^ 総力戦体制研究p47。なお、同書は「軍需工業動員法閣議請議案として閣議決定された」としているが、「閣議請議案」とは、閣議決定を求める案の意味であり、閣議決定されたものは「請議案」ではないので用語を修正した。
  4. ^ a b c 纐纈「総力戦」p.48には4月16日公布とあるが、16日は裁可の日で官報は17日付け官報第1709号である。また施行の日は特に規定がないため法例の規定で公布の日の20日後になる。
  5. ^ 纐纈「総力戦」p.49.
  6. ^ a b c 纐纈「総力戦」p.51.
  7. ^ a b c d 纐纈「総力戦」p.53.
  8. ^ 軍需工業動員法ヲ朝鮮台湾及樺太ニ施行スルノ件(大正7年10月2日勅令第368号)及び関東州及南満洲鉄道附属地ニ於ケル軍需工業動員ニ関スル件(大正7年10月2日勅令第369号)
  9. ^ 纐纈「総力戦」p.52.
  10. ^ a b c 纐纈「総力戦」p.55.
  11. ^ 纐纈「総力戦」p.58.
  12. ^ 纐纈「総力戦」p.59.
  13. ^ 纐纈「総力戦」p.62.
  14. ^ 纐纈「総力戦」p.60.
  15. ^ a b c 纐纈「総力戦」p.63
  16. ^ a b 纐纈「総力戦」p.64.
  17. ^ 纐纈「総力戦」p.65.
  18. ^ 纐纈「総力戦」p.66.
  19. ^ 纐纈「総力戦」p.70.
  20. ^ a b c d 纐纈「総力戦」p.71.
  21. ^ 山上正太郎「革命戦争」日本大百科全書(ニッポニカ)
  22. ^ 別宮暖朗 『帝国陸軍の栄光と転落』 文春新書2010年4月20日、156-161頁。
  23. ^ 遠山茂樹・今井清一・藤原彰『昭和史』[新版] 岩波書店 〈岩波新書355〉 1959年 160-161ページ
  24. ^ 『1940年体制 - さらば戦時経済』(野口悠紀雄東洋経済新報社、1995年・2002年)
  25. ^ 堺屋太一 『東大講義録 文明を解く』 講談社2003年4月
  26. ^ a b 古川隆久 『昭和戦中期の議会と行政』 吉川弘文館、2005年、9頁。ISBN 4-642-03771-3
  27. ^ a b c d e f g h i j 永井和 『日中戦争全面化と東亜新秩序』 第一法規出版〈日本議会史録 第3巻〉、1990年、290頁。ISBN 4-474-10173-1
  28. ^ a b 北博昭 『日中開戦―軍法務局文書からみた挙国一致体制への道』 中公新書、1994年、128頁。ISBN 4-12-101218-6
  29. ^ a b c 纐纈「総力戦」p.72.
  30. ^ 纐纈「総力戦」p.71.
  31. ^ 纐纈「総力戦」p.71.
  32. ^ a b 古川「戦中期」pp.9-10.
  33. ^ a b c d e f g 古川「戦中期」p.11.
  34. ^ 古川「戦中期」pp.31-32.
  35. ^ a b 古川「戦中期」p.32.
  36. ^ 古川「戦中期」pp.32-33.
  37. ^ a b 古川「戦中期」p.33.
  38. ^ 古川「戦中期」p.54.
  39. ^ 古川「戦中期」pp.53-54.
  40. ^ 古川「戦中期」p.32.
  41. ^ 古川「戦中期」p.36.
  42. ^ 官報(1938年5月4日)。国立国会図書館。
  43. ^ 永井和「日中戦争全面化と東亜新秩序」p.292.
  44. ^ 昭和13年2月21日付け官報第3338号
  45. ^ 第73帝国議会衆議院議事速記録第17号
  46. ^ a b 古川「戦中期」p.23.
  47. ^ 古川「戦中期」p.15.
  48. ^ 古川「戦中期」p.23.
  49. ^ 永井和「日中戦争全面化と東亜新秩序」
  50. ^ a b 古川「戦中期」p.24.
  51. ^ 永井和「日中戦争全面化と東亜新秩序」
  52. ^ a b c d 北「日中開戦」p.130.
  53. ^ 『官報』、「国家総動員法委員会議録」、pp19。
  54. ^ a b c 永井「日中戦争全面化」p.293.
  55. ^ a b 古川「戦中期」p.20.
  56. ^ a b c d e f g 古川「戦中期」p.21.
  57. ^ a b c 北「開戦」p.131.
  58. ^ 官報(1938年3月16日)、pp695。
  59. ^ a b 永井「日中戦争全面化」p.316
  60. ^ a b 伊藤隆 『近衛新体制』 中公新書、1983年、75頁。ISBN 4-12-100709-3
  61. ^ 永井「日中戦争全面化」pp.316-317.
  62. ^ 永井「日中戦争全面化」p.317.
  63. ^ a b c d 北「開戦」p.132.
  64. ^ a b c d 古屋哲夫 『翼賛体制と対米開戦』 内田健三、第一法規出版〈議会史録 第3巻〉、1990年、345頁。ISBN 4-474-10173-1
  65. ^ 北「開戦」p.133.
  66. ^ a b c d 北「開戦」p.134.
  67. ^ 古川「戦中期」pp.25, 30.
  68. ^ 古川「戦中期」p.25.
  69. ^ 古川「戦中期」p.47、p.56注(25)
  70. ^ a b c d e 古屋「翼賛体制」p.346.
  71. ^ >廃止法案に対する政府委員(法制局長官 楢橋渡)の提案理由説明。昭和20年12月05日貴族院入営者職業保障法及国民労務手帳法廃止法律案特別委員会


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