緊急事態条項
別名:緊急事態対処条項、国家非常事態対処条項、国家緊急権
東日本大震災のような大規模災害や他国からの攻撃を受けた場合などの緊急時に、政府や国会の権限を規定するもの。具体的には、緊急時の首相の権限を強化する条項などが挙げられる。また、人権に対して特別の制限が課されることもある。
緊急事態条項は、緊急時に混乱した秩序の迅速な回復などが期待されているが、政府などの一部に権力が集まり、民主主義の存続が脅かされるなどの懸念がある。欧米では国家緊急権として、緊急時に政府が憲法を一時停止することなどが定められている場合もある。そのような国家では、国家緊急権は主権国家が持つ権利の一つとしてみなされる。
2013年5月現在、緊急事態条項を日本国憲法に加えることが議論されている。23日に衆院憲法審査会が開かれ、緊急事態条項新設について各党が意見を表明した。
自民党は緊急時の首相の権限強化と国民の一部統制などを提案。また緊急事態条項新設について民主党、維新の会、みんなの党などは前向きに検討している一方で、公明党、共産党などは反対している。
こっかきんきゅう‐けん〔コクカキンキフ‐〕【国家緊急権】
国家緊急権
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/08/08 00:33 UTC 版)
国家緊急権(こっかきんきゅうけん、ドイツ語: Staatsnotrecht、英語: emergency powers[1])とは、戦争、内乱、大規模な災害・疫病・テロリズムなど、国家の平和・独立・公衆衛生を脅かす緊急事態に際して、平常の統治秩序では対応できない際に、憲法条項の一部を一時停止し、行政機関などに大幅な権限を与える非常措置をとることによって、独裁を図る権限のことをいう[2][3][4]。また、当該緊急時の特例を定める憲法上の規定を (きんきゅうじたいじょうこう)という[5]。1789年から2013年までに世界で制定された約900の憲法中、93.2%が何らかの緊急事態条項を有するとされるが、一方で、緊急事態において、法律と同等の効果を持つ政令を内閣が発出することができる旨を憲法に定めているのは7.4%にとどまっているとされる[6][7][8][9]。日本においては植木枝盛の『東洋大日本国国憲案』などでも緊急事態条項が明記されていた[10]。
- 1 国家緊急権とは
- 2 国家緊急権の概要
国家緊急権(緊急事態条項)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/07 00:11 UTC 版)
「憲法改正論議」の記事における「国家緊急権(緊急事態条項)」の解説
詳細は「国家緊急権」を参照 多くの国家の憲法、特に大陸法をとる国のほとんどの憲法には緊急権の規定があり、存在していない憲法は少数派である。英米法ではコモンローとしてマーシャルローの法理が認められており、イギリスでは第一次世界大戦後から個別立法制度が採用されるようになり、アメリカにおいてはウォーターゲート事件以降立法制度が多く採用されるようになった。イギリスの緊急権法、アメリカの戦争権限法や全国産業復興法がこれに該当する。 国家緊急権は、緊急事態のために憲法を一時停止して超法規的立場の判断に委ねる意味で超憲法的性質を持っている。 国家緊急権は、非常事態のために考え出された概念であるが、三権分立のような一般の憲法と違い為政者の権力に制限をかけるのでなく、緊急事態をきっかけに逆に権力を集中させ国民の人権を広く制限するものであるため、諸刃の剣のようなもので一歩使い方を誤ると独裁に陥る危険性があることが指摘されている。当初の意図はそうでなくとも、歴史的には、国家緊急権は野心を抱いた一部の人間によってたびたび権力を握る手段として利用されてきた過去を持っている。憲法学者の村田尚紀は「各国の歴史を見ると、国家緊急権はクーデターに利用されることが多い」と述べている。たとえば、アドルフ・ヒトラーが民主的に選ばれながら、ワイマール憲法の国家緊急権を利用して全権委任法を公布して独裁体制を築いた歴史もあるため、日本国憲法に国家緊急権(緊急事態条項)を導入することについては慎重な意見もある。 もし導入するとすれば、あくまでもとの憲法秩序を復帰させることを目的とし、期限つきの一時的なものとし、事後に検証を働かせられる仕組みが必要という意見もある。具体的には、国政調査権の発動による「国家緊急事態調査特別委員会」のようなものを設置して国家緊急権に関与した当事者を招致することや、特別裁判所の設置などが考えられている。 自民党の改憲草案では、国家緊急権(緊急事態条項)を発動する条件としての緊急事態は「①我が国に対する外部からの武力攻撃、②内乱等による社会秩序の混乱、③地震等による大規模な自然災害」を主に想定している。 ①外国からの攻撃に関しては、すでに武力攻撃事態国民保護法、武力攻撃事態対処法が2004年に施行されている。②テロなど国内で起きた内乱については、テロ対策特別措置法、警察法の「第六章 緊急事態の特別措置(第七十一条~七十五条)がすでに存在している。これらのことから、新たに憲法で定めなくとも法律ですでに十分対処でき、わざわざ憲法に書き込むまでもないという意見もある。 ③地震などの大規模災害を想定したケースであるが、災害対策基本法、災害救助法がすでに存在していて、権力の集中が定められている。阪神大震災、東日本大震災などの例から、地方で大地震などの天災が起こった際、永田町・霞が関のある東京から司令を行うことが有効かは疑問がつけられている。小林節は、阪神大震災、東日本大震災で実際に支援活動をして現場をよく知る弁護士たちの意見を紹介している。災害に際して中央の政府の権限を強化したところで、たいてい情報インフラは寸断されており、被災地の状況は把握できない。災害時に必要なのは中央の権限を強化するのではなく、むしろニーズを最も把握している地方自治体の首長に権限を委譲しておくほうがよい、というものである。実際、被災者に最も近い市町村などは日頃から地域に密着しているので迅速に情報が入りやすく、適切な支援活動をしやすいという。アメリカ、ドイツ、イギリス、フランスなど外国の例を見ても、災害時には地方自治体の責任に任せて国はサポートに回るのが普通であり、権力を集中させる例はむしろ例外である。 大日本帝国憲法においては、天皇が国家緊急権を行使する規定が制定されており、緊急勅令制定権(8条)、戒厳状態を布告する戒厳大権(14条)、非常大権(31条)、緊急財政措置権(70条)などが存在した。日本国憲法においては国家緊急権に関する規定は存在しないとする見方が多数的である。さらに日本国憲法は国家緊急権を認めていないとする否定説、緊急権を容認しているという容認説の二つの解釈があり、また否定説は緊急権規定がないのは憲法の欠陥であるとみる欠缺説、緊急権規定の不在を積極的に評価する否認説の二つに大別される。また内閣憲法調査会の委員有志により、1964年に憲法調査会に提出された「憲法改正の方向」と題する共同意見書において「重大な憲法のミス」であるとしている。
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