リスク‐かんり〔‐クワンリ〕【リスク管理】
読み方:りすくかんり
リスク管理
リスク評価の結果を踏まえて、すべての関係者と協議しながら、リスク低減のための政策・措置について技術的な可能性、費用対効果などを検討し、適切な政策・措置を決定、実施すること。政策・措置の見直しを含む。
リスク管理
【英】:risk management
リスクには事故, 災害, 病気, など多くのものがある. リスクを軽減するという公共の目標を達成し, 不必要なコストを削減するためには, リスクを予測し, 管理するより組織的なアプローチが必要とされる. 各種リスクに対して, 推計を行うこと, 事故の原因を決定すること, 安全性の基準を設けること, 費用効果分析あるいはリスク便益分析を行うことなどが含まれる.
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リスク管理
リスクマネジメント
![]() | この記事は検証可能な参考文献や出典が全く示されていないか、不十分です。(2011年4月) |
リスクマネジメント(英語: risk management)とは、JISの定義では「リスクについて,組織を指揮統制するための調整された活動」である[1][2]。和文表記はリスク管理または危機管理(ききかんり)。
注意:規格の混在
リスク管理関連は広範囲の分野が対象で、規格も複数存在する(参考 #規格の種類)。このため、「リスクマネジメント」の用語は複数の規格で設定され定義も異なる。さらに、出典の英語版Wikipediaでも各規格の内容の混同した可能性がある。
2021年9月時点で、Wikipedia記事(他用語ページを含む)でも保険数理士会規格とISO規格の用語が混在する。他ページでも保険数理士会規格関連のページからISO規格へのリンクもあり混在もある。このページではISO(特にISO 31000)規格を主軸に説明するが、一部混在がある。
規格の種類
(出典:英語版wikipedia en:Risk management)
リスクマネジメントは広範囲の分野に関わりがあり、分野ごとに内容や定義や目的が異なる場合がある。 例えば、リスクマネジメントは、下記のように複数の機関により作られた。
- ISO/JIS/IEC
- プロジェクトマネジメント協会( the Project Management Institute; PMI)、
- アメリカ国立標準技術研究所( the National Institute of Standards and Technology; NIST)、
- アクチュアリー会( actuarial societies , 保険数理士会 )
など[3][4] 。同じ用語でも意味が異なることがあり、注意が必要である。
背景
近年、リスクマネジメントは経営上で脚光を浴びており、「コンプライアンスからリスクマネジメントの時代へ」とも言われている。背景には、次の要因があった。
どの会社でも、意思決定を行う際は、当然、リスクマネジメントを暗黙的に行っていたと思われるが、近年、リスクマネジメントに対する意識の高まりを受け、明示的に行われるようになった。民間企業では、例えば、環境リスクに特化したり、不正リスクに特化したりして、様々な種類のリスク因子を使って、より高度なリスクマネジメントを行うところが増えてきた。また、これに伴い、従来の危機管理部門を発展させ、リスクマネジメントに特化した専門部署を置くところも多くなってきた。
ISO規格/JIS規格/IEC規格
1995年に日本で発生した阪神・淡路大震災の教訓を元に、1996年8月に標準情報(テクニカルレポート)危機管理システム(TRZ0001-1996。1998年にTRQ0001に改版)が公表され[5]、それを基礎として2001年にリスクマネジメントシステム構築のための指針(JIS Q 2001:2001)が制定された[6]。同規格は世界初のリスクマネジメント規格として、危機管理(クライシスマネジメント)とリスク管理(リスクマネジメント)を包括していた[7]。2009年に日本、オーストラリア及びニュージーランドの主導でリスクマネジメントに主眼を絞ったISO31000:2009が開発され、翌2010年にISO31000を邦訳したJIS Q 31000:2010が制定された。その際にJIS Q 2001は廃止されたが、危機管理部分はJIS Q 31000付属書JB(参考)緊急時対応への事前の備えとして継承された。2018年にはISO31000:2018(JIS Q 31000:2019)に改訂された。リスクマネジメントプロセスのうち、リスクアセスメントにおいて用いられる技法について、IEC/ISO 31010:2009(JIS Q 31010:2012)が定められている。これらの規格を本項では「ISO規格」という。
以降はISO規格での「リスクマネージメント」について説明する[8]。 ISOではリスクマネジメントの利用に分野の制限はない。 ISOのリスクマネジメント項目では、ガイドラインとして紹介し、ISO認証の対象(マネジメントシステム)となっていない。 ISOのリスクマネジメントでは、リスクによる損失を低下させるための分析手段(30種以上)、手順などを紹介している[9]。
プロセス
(出典:英語版wikipedia en:risk management,en:ISO 31000, ISO 31000)
リスクマネジメントのプロセスは次のようにガイダンスしている。[8]
- コミュニケーション及び協議
- 適用範囲,状況及び基準
- リスクアセスメント (リスク特定、リスク分析、リスク評価)
- リスク対応
- モニタリング及びレビュー
- 記録作成及び報告
コミュニケーション及び協議 | 適用範囲,状況及び基準 | モニタリング及びレビュー |
リスクアセスメント | ||
(リスク特定) | ||
(リスク分析) | ||
(リスク評価) | ||
リスク対応 | ||
記録作成及び報告 |
コミュニケーション及び協議
リスクマネージメント全過程で行うことで、全関係者がリスク、決定の根拠,行動理由が理解させることである。 ここでの協議は,フィードバックや情報の入手を含む。
適用範囲,状況及び基準
リスクマネジメント作業を効率的に進めるために、適用範囲,状況及把握などを行う。
簡潔に言うと、ここですることは
- 適用範囲の決定 - リスクマネジメント活動の適用範囲を定める
- 外部及び内部の状況把握
- リスク基準の決定
リスクアセスメント
リスクアセスメントでは、下記のプロセスから成る。
- リスク特定
- リスク分析
- リスク評価 - 各リスクに対してリスクの度合いを評価
リスク対応(ISO)
リスクに対して、どのような対応をするか選択し実施する。
ISOでの例示は下記の7項目。なお、「リスク回避」「リスク除去」などの用語はISOで定義していない。(参照:#リスク対応)
- 「リスクを生じさせる活動を開始又は継続しないと決定することによってリスクを回避する。」
-
- 「リスク除去」と呼ばれる。(参照:#リスク対応)
- 「ある機会を追求するために,リスクを取る又は増加させる。
-
- 目的のために、あえてリスクを増加させたりすること
- つまり、利益や利便性のために、あえてリスクを増加させることである。
- なお、安全を考慮すべきで、安全の低下を推奨するものではない。
- 例えば、(1)新事業の開始、(2)ハイリスク・ハイリターンへの事業転換
- 「リスク源を除去する。」
-
- 「リスク回避」と呼ばれる方法。(参照:#リスク対応)
- 例えば、ヒューマンエラーに対して、システムで実施するように変えること。
- 「起こりやすさを変える。」
-
- 例えば、地震の発生しにくい場所に移動する。
- 「結果を変える。 」
-
- リスクの結果を変える。
- 例えば、火災対策でスプリンクラーをつける。延焼はなくなるが、水害は発生する。
- 「(例えば,契約,保険購入によって)リスクを共有する。」
-
- 「リスク共有」と呼ばれる方法。(参照:#リスク対応)
- 「情報に基づいた意思決定によって,リスクを保有する。」
-
- 「リスク保有」と呼ばれる方法。(参照:#リスク対応)
モニタリング及びレビュー
リスクマネジメント全行程で適用され、管理、監視、分析し、記録、フィードバックする。
記録作成及び報告
リスクマネジメントでの結果の記録と報告。関連する組織全体に対しての改善活動と結果報告により情報共有をする。
関連規格
- ISO 31000 (2009, 2018)
- JIS Q 31000 (2010, 2019) リスクマネジメント−指針
- IEC/ISO 31010 (2009)
- JIS Q 31010 (2012) リスクマネジメント−リスクアセスメント技法
- ISO/IEC/IEEE 16085 (2006, 2021)
- JIS X 0162 (2008) システム及びソフトウェア技術−ライフサイクルプロセス−リスク管理
- ISO/IEC 27005 (2008, 2011, 2018, 2022)
- JIS Q 27005 情報技術-セキュリティ技術-情報セキュリティリスクマネジメント
関連文献
- 仁木一彦著『図解ひとめでわかるリスクマネジメント』東洋経済新報社 (2009/08) ISBN 4492092811
リスク対応
(出典:英語版wikipedia en:Risk management#Potential risk treatments)
この項目は2018年以前のISO規格(ISO 31000:2009, JIS Q 31000:2010)と思われ、2018年以降のISO規格(ISO 31000:2018, JIS Q 31000:2019)とは異なる。
リスク対応(risk treatment)は、リスクマネージメントのプロセスのうちの1つである。リスク特定されリスク評価後の処理として、リスクに対応するプロセスである。 リスク対応の種類には、リスクの回避、低減、共有、保有 の4分類のうちの1つ以上に当てはまる [10]。
リスク回避(Risk avoidance)
- リスクのある活動を実施しない
- 例)廃業、事業売却、該当製品の製造停止、該当部品/該当方法を利用しない
リスク低減(Risk reduction)
- リスクの発生率を下げたり、リスクによる影響を下げること
- 例えば、火災に対してスプリンクラーを設置する対策をした場合でも、リスクを完全に排除することはできず、「初期の火災による損失」と「消火時の水による損害」が発生する。
- 例)スプリンクラー設置、作業マニュアル、チェックリスト
リスク共有(Risk sharing)
- リスクを他者に移転・他者と分割すること。下記の2つに大別できる。
- リスク転嫁
- リスクを他の事業者などに移転すること
- 例)火災保険
- リスク分散
- リスクを他の事業者などと分配すること
- 例)アウトソーシング
リスク保有(Risk retention)
- リスクを受け入れること
- 例)戦争/天変地異による被害(保険対象外)、保険補償額を超える損害
保険数理士会規格
金融関連などの分野では、保険数理士会規格で定義の用語を用いることがある。 ISO規格と異なる事があるため、別項目とした。
用語(保険数理)
- リスクアセスメント(actuarial risk assessment, ARA, risk assessment )
- 指定期間中に特定の人が危害の行動をする数学的なリスクの評価 [11]
- リスク共有
- リスクが顕在化した場合の損失補償を準備すること。保険が掛けられる場合には、有効な対策の一つとなる。この場合、リスクを保険会社に転嫁(または移転)するともいう。金融派生商品のオプションの購入も1つの方法。
プロジェクトマネジメント協会規格 (PMI)
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アメリカ国立標準技術研究所規格 (NIST)
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情報セキュリティなどの分野では、NIST規格に基づくリスクマネジメントフレームワーク(Risk Management Framework:RMF)を使用することがある。
関連規格
- “連邦政府情報システムに対するリスクマネジメントフレームワーク適用ガイド (NIST SP 800-37 rev.1)”. 2023年2月26日閲覧。
- “Risk Management Framework for Information Systems and Organizations (NIST SP 800-37 rev.2)”. 2023年2月26日閲覧。
- “リスクアセスメントの実施の手引き (NIST SP 800-30 rev.1)”. 2023年2月26日閲覧。
- “連邦政府情報システムと組織におけるセキュリティとプライバシーのコントロールの評価 (NIST SP 800-53A rev.5)”. 2023年2月26日閲覧。
関連項目
- 危機管理
- リスクアセスメント(リスク特定・リスク分析・リスク評価)
- 本質安全
- 機能安全
- 事業継続マネジメント
- 情報ガバナンス
- サプライチェーン
- トレッドウェイ委員会支援組織委員会
- 保険数理
- リスク回避
- 天候デリバティブ
- 分散投資
- オプション取引
- リスク・コミュニケーション
脚注
- ^ JIS Q 31000 用語及び定義
- ^ https://kikakurui.com/q/Q31000-2019-01.html
- ^ ISO/IEC Guide 73:2009 (2009). Risk management — Vocabulary. International Organization for Standardization
- ^ ISO/DIS 31000 (2009). Risk management — Principles and guidelines on implementation. International Organization for Standardization
- ^ 南方哲也「リスクマネジメントに関するJIS規格(JISQ2001)について」『危機と管理』第33巻、日本リスクマネジメント学会、2002年、doi:10.32300/jarms.0.33_79、2023年2月26日閲覧。
- ^ 指田朝久「危機管理の考え方:JIS規格リスクマネジメントシステム構築のための指針JIS Q 2001より」(PDF)『土木学会誌』第87巻第12号、土木学会、2002年12月15日、15-16頁、ISSN 0021468X、2023年2月26日閲覧。
- ^ “リスクマネジメント規格”. 三井住友海上火災保険. 2023年2月26日閲覧。
- ^ a b ISO 31000
- ^ IEC/ISO 31010
- ^ Dorfman, Mark S. (2007). Introduction to Risk Management and Insurance (9 ed.). Englewood Cliffs, N.J: Prentice Hall. ISBN 978-0-13-224227-1
- ^ https://medical-dictionary.thefreedictionary.com/actuarial+risk+assessment
リスク管理
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/17 21:48 UTC 版)
リスク管理では、相対売買や取引中に投資銀行またはその顧客が貸借対照表に織り込む市場リスクおよび信用リスクを分析する。信用リスクは、シンジケートローン、債券発行、リストラクチャリング、レバレッジド・ファイナンスといった資本市場活動に焦点を当てている。市場リスクは、VARモデルを利用してセールスとトレーディング活動の評価を行い、ポートフォリオ運用会社にヘッジファンドの解決法を提供する。その他のリスク群には、カントリーリスク、オペレーショナルリスク(金融機関が日常業務の中で抱えるリスク)、そして銀行間では存在するともしないとも限らないカウンターパーティリスクが含まれる。信用リスクの解決は資本市場取引の重要な部分で、これには債券の構造化、エグジット・ファイナンス、融資のリスケ、プロジェクト・ファイナンス、レバレッジド・バイアウト、そして時にはポートフォリオヘッジ(運用リスクを減らすための投資比率見直し)が含まれる。フロントオフィスでは、デリバティブ解決策、ポートフォリオ管理、ポートフォリオ相談、およびリスク顧問を通じて投資家に市場リスク対処のサービスを提供している。 JPモルガン・チェース、モーガン・スタンレー、ゴールドマン・サックス、バークレイズのよく知られたリスク対応グループが、企業、政府、ヘッジファンドなどの顧客のために、債券の構造化、リストラクチャリング、シンジケートローン、証券化を含む、収益を生み出す活動を行っている。JP Morgan IB Risk社は投資銀行と連携して取引の実行および投資家への助言を行っているが、その財務と運営のリスクグループは、収益を生み出さない内部のオペレーショナルリスクを管理する、ミドルオフィス機能に重点を置いている。例えば、クレジット・デフォルト・スワップは、1990年代にJPモルガンのBlythe Mastersによって考案された顧客のための有名な信用リスクヘッジ解決策である。バークレイズの投資銀行部門内のローン・リスク解決グループ およびゴールドマン・サックスの証券部門に含まれるリスク管理財務グループ は、顧客主導のフランチャイズである。ただし、オペレーショナルリスク、内部リスク管理、法的リスクなどのリスク管理グループは、 たとえ資本市場活動に直接影響を与えるディール承認の責任を同グループが負う場合でも、企業の貸借対照表リスク分析や顧客ニーズとは独立したトレード上限の割り当てなど内部の業務機能に制限されている。リスク管理は幅広い分野であり、リサーチと同様、その役割は対顧客のみならず内部的なこともありうる。 企業経営と収益戦略に取り組む内部企業戦略は、顧客に助言する企業戦略グループとは異なり、収益こそ生み出さないが投資銀行内における重要な機能的役割である。 フロントオフィスやバックオフィス内の特定デスクが内部機能に参加することもあるため、これは投資銀行内のミドルオフィス全機能の包括的な要約ではない。
※この「リスク管理」の解説は、「投資銀行」の解説の一部です。
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- リスク管理の重要さが強調されねばならない。
- ダブルループラーニングはリスク管理のために不可欠なものだ。
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