プラネタリー・バウンダリーとは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > デジタル大辞泉 > プラネタリー・バウンダリーの意味・解説 

プラネタリー・バウンダリー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/25 10:02 UTC 版)

プラネタリー・バウンダリー: Planetary boundaries)は、人類が生存できる安全な活動領域とその限界点を定義する概念である。地球の限界[1]、あるいは惑星限界[2]とも呼ばれる。


注釈

  1. ^ 論文の原題は「A Safe Operating Space for Humanity」[6]
  2. ^ ロックストロームは、当初の失敗を次のように回想している。「『事実を目の前にすれば人は正しい決断を下す』と考えることがいかに素朴すぎるか、私にとって痛いほどはっきりした。大多数の人が自分に関わりがあると感じ、何かを信じる場合にのみ、社会の大きな変化が起こる。(中略)それは感情と思考の両面から起こることが必要だった」[10]
  3. ^ 書籍の原題は『The Human Quest: Prospering within Planetary Boundaries』[12]
  4. ^ 二酸化炭素濃度と放射強制力は2015年時点で連動している。ただし、大気は温室効果ガスと冷却化物質が混じり合う複雑な状態にあるため、つねに連動する保証はない[34]
  5. ^ 雲の高さや面積などによって、温暖化への影響が異なる。たとえば高い雲は地球を暖める傾向があり、低い雲は地球を冷やす傾向がある[36]
  6. ^ 絶滅した頂点捕食者であるオオカミを他の土地から再導入して生態系を回復した例として、1995年のイエローストーン国立公園の試みがある[40]
  7. ^ インドでは灌漑に使う化石水が世界最大であり、将来の農業への影響が懸念されている[59]
  8. ^ 環境省のサイトで、バーチャル・ウォーターの計算ソフトが公開されている。製作はNPO法人日本水フォーラムによる[63]
  9. ^ 霧の都とも呼ばれるロンドンでは冬のスモッグが有名であり、ロンドンスモッグ(1952年)によって1万人以上が死亡する事件も起きた[65]
  10. ^ 2014年の調査による[76]
  11. ^ オーストラリアでは2000年から2012年の12年間の旱魃で40億USドルの損害となった。2012年のハリケーン・サンディによって、ニューヨーク市は190億USドルの損害となった[76]
  12. ^ 新たな技術革新について、マサチューセッツ工科大学(MIT)のエリク・ブリンジョルフソンとアンドリュー・マカフィーは「第二の機械時代」と呼んでいる[80]
  13. ^ SDGsの議論は、国際連合事務総長潘基文が設置した地球の持続可能性に関する上級会合(GSP)から始まっている。OWGは、政府間協議プロセスとして活動した[43]

出典

  1. ^ 環境省 (2018年6月5日). 環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書. 環境省 
  2. ^ 国連環境計画編 青山益夫訳 (2015). 『GEO5 地球環境概観 第5次報告書 上巻』. 一般社団法人 環境報告研. pp. 207-208,5,23,103,111,119,128,206. https://www.hokokuken.com/geo5.html 
  3. ^ ロックストローム, クルム 2018, pp. 165–167.
  4. ^ ロックストローム, クルム 2018, p. 59.
  5. ^ a b 工藤 1975.
  6. ^ a b ロックストローム, クルム 2018, p. 2.
  7. ^ a b ロックストローム, クルム 2018, pp. 2–3.
  8. ^ Rockström, Johan m. fl. (2009). “=Planetary Boundaries: Specials,”. Nature. 
  9. ^ Editorial, Nature 2009
  10. ^ ロックストローム, クルム 2018, p. 4.
  11. ^ ロックストローム, クルム 2018, p. 3.
  12. ^ ロックストローム, クルム 2018, p. 5.
  13. ^ ロックストローム, クルム 2018, pp. 5–6.
  14. ^ ロックストローム, クルム 2018, pp. 68–72.
  15. ^ a b c ロックストローム, クルム 2018, pp. 70–72.
  16. ^ ロックストローム, クルム 2018, p. 69.
  17. ^ ロックストローム, クルム 2018, p. 88.
  18. ^ Steffen, Rockström & Costanza 2011.
  19. ^ Rockström, Steffen & 26 others 2009; Stockholm Resilience Centre 2009.
  20. ^ Recent Mauna Loa CO2 Earth System Research Laboratory, NOAA Research.
  21. ^ Allen 2009; Heffernan 2009; Morris 2010; Pearce 2010, pp.34-45, "Climate change".
  22. ^ Allen 2009.
  23. ^ Samper 2009; Daily 2010; Faith & others 2010; Friends of Europe 2010; Pearce 2010, p.33, "Biodiversity".
  24. ^ Schlesinger 2009; Pearce 2009; UNEP 2010, pp.28-29; Howarth 2010; Pearce 2010, pp.33-34, "Nitrogen and phosphorus cycles".
  25. ^ Schlesinger 2009; Carpenter & Bennett 2011; Townsend & Porder 2011; Ragnarsdottir, Sverdrup & Koca 2011; UNEP 2011; Ulrich, Malley & Voora 2009; Vaccari 2010.
  26. ^ Brewer 2009; UNEP 2010, pp.36-37; Doney 2010; Pearce 2010, p.32, "Acid oceans".
  27. ^ Bass 2009; Euliss & others 2010; Foley 2009; Lambin 2010; Pearce 2010, p.34, "Land use".
  28. ^ Molden 2009; Falkenmark & Rockström 2010; Timmermans & others 2011; Gleick 2010; Pearce 2010, pp.32-33, "Fresh water".
  29. ^ Molina 2009; Fahey 2010; Pearce 2010, p.32, "Ozone depletion".
  30. ^ Pearce 2010, p.35, "Aerosol loading".
  31. ^ Handoh & Kawai 2011; Handoh & Kawai 2014; Pearce 2010, p.35, "Chemical pollution".
  32. ^ USGCRP 2009.
  33. ^ a b ロックストローム, クルム 2018, p. 73.
  34. ^ a b c d ロックストローム, クルム 2018, p. 76.
  35. ^ ロックストローム, クルム 2018, pp. 29–31.
  36. ^ 杉山 2011, p. 15.
  37. ^ 杉山 2011, pp. 15–17.
  38. ^ “国連報告書が世界に「警告」:100万種の生物が絶滅の危機に”. 国際連合広報センター. (2019年5月10日). https://www.unic.or.jp/news_press/features_backgrounders/33018/ 2021年4月21日閲覧。 
  39. ^ ロックストローム, クルム 2018, pp. 76–77.
  40. ^ ロックストローム, クルム 2018, p. 131-132.
  41. ^ a b c d ロックストローム, クルム 2018, p. 80.
  42. ^ ウォルフ 2016, pp. 114–121.
  43. ^ a b c d ロックストローム, クルム 2018, p. 165.
  44. ^ 矢ケ崎 1995.
  45. ^ 川田 1991, pp. 45–46.
  46. ^ “マメ科植物と共生する根粒菌の多様性を解明 -持続可能な農業への応用に期待-”. 国立大学法人千葉大学. (2019年7月26日). https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000362.000015177.html 2021年4月8日閲覧。 
  47. ^ a b ロックストローム, クルム 2018, p. 78.
  48. ^ Gruber, Sarmiento & Stocker 1996.
  49. ^ Stockholm Resilience Centre 2009.
  50. ^ Brewer 2009
  51. ^ ヴィンス 2015, pp. 206–207.
  52. ^ a b c d ロックストローム, クルム 2018, p. 77.
  53. ^ ヴィンス 2015, p. 350.
  54. ^ ヴィンス 2015, pp. 347–348.
  55. ^ Palaniappan & Gleick 2008.
  56. ^ a b c ヴィンス 2015, pp. 126–127.
  57. ^ ヴィンス 2015, p. 90.
  58. ^ ヴィンス 2015, pp. 71–78.
  59. ^ ヴィンス 2015, pp. 142.
  60. ^ ヴィンス 2015, pp. 142, 262.
  61. ^ 沖 2008, pp. 69–70.
  62. ^ 渡邉, 沖, 太田 2009, pp. 127–128.
  63. ^ “仮想水計算機”. 環境省. https://www.env.go.jp/water/virtual_water/kyouzai.html 2021年4月8日閲覧。 
  64. ^ a b ロックストローム, クルム 2018, p. 72.
  65. ^ 溝口 1998.
  66. ^ 藤田 1998.
  67. ^ バナジー, デュフロ 2020, p. 4811/8512.
  68. ^ ヴィンス 2015, p. 48.
  69. ^ ロックストローム, クルム 2018, p. 61.
  70. ^ a b c d e f ロックストローム, クルム 2018, pp. 48–49.
  71. ^ ロックストローム, クルム 2018, p. 53.
  72. ^ a b ヴィンス 2015, p. 188-189, 214-215.
  73. ^ ロックストローム, クルム 2018, pp. 89.
  74. ^ “海面上昇の影響について”. 全国地球温暖化防止活動推進センター(JCCCA). https://www.jccca.org/faq/15931 2021年4月8日閲覧。 
  75. ^ ロックストローム, クルム 2018, pp. 92–93.
  76. ^ a b c d ロックストローム, クルム 2018, p. 129.
  77. ^ バナジー, デュフロ 2020, p. 4518-4526/8512.
  78. ^ バナジー, デュフロ 2020, p. 4544-4551/8512.
  79. ^ a b c d e f ロックストローム, クルム 2018, p. 153.
  80. ^ ロックストローム, クルム 2018, p. 151.
  81. ^ Breaking Boundaries - IMDb(英語)


「プラネタリー・バウンダリー」の続きの解説一覧

プラネタリー・バウンダリー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/30 03:56 UTC 版)

人新世」の記事における「プラネタリー・バウンダリー」の解説

人類もたらした変化が、地球の限界超えつつあるという警告を含む仮説を指す。地球システムとして考えると、恒常性維持するフィードバック働いている。しかし、引き返し不能点ティッピング・ポイント)を超えると、システム予想つかない振る舞いをする。この仮説2009年発表された。当初の提唱者は、地球システム研究するスウェーデン環境学者ヨハン・ロックストローム化学者のウィル・ステフェン(英語版)をはじめとする20名の研究者だった。 仮説では9つ限界点指標にしており、機能によって3種類に分けられる地球的な閾値明確に定義されたもの:気候変動成層圏オゾン層の破壊海洋酸性化緩やかに変化する地球環境にかかる変数にもとづくもの:土地利用変化淡水利用生物多様性の喪失窒素リン循環。これらは緩やかな限界値とも呼ばれる人類が作り出した脅威大気エアロゾル環境負荷与え化学物質重金属有機化学物質による生物圏汚染この中で気候変動生物多様性の損失生物地球化学的循環2009年時点限界超えたともいわれている。

※この「プラネタリー・バウンダリー」の解説は、「人新世」の解説の一部です。
「プラネタリー・バウンダリー」を含む「人新世」の記事については、「人新世」の概要を参照ください。


プラネタリー・バウンダリー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/25 03:46 UTC 版)

ヨハン・ロックストローム」の記事における「プラネタリー・バウンダリー」の解説

2009年、ロックストロームは、28人もの著名な学者からなる国際的なグループ「アース・リーグ(The Earth League)」を率いて持続可能な発展前提条件となるべく、新し地球システム枠組みフレームワーク)として、人類生存できる安全な活動領域その限界点=プラネタリー・バウンダリーを把握することで、人類にとっての壊滅的変化回避できるではないかそのようなバウンダリー限界点がどこにあるかを知ることが大切であるという新し考え方を、政府政府関係機関に対して提案した。この概念2009年論文として公表され全文Ecology and Society に、またその要約版ネイチャー掲載された。この枠組みは、この惑星地球システムプロセスには超えてはいけない「境界値バウンダリー)」または「閾値」があることを仮定する学者グループらは、これらの境界超えない範囲を、「人類生存のための安全な活動領域」と呼んで注目している。学者グループらは、人間生き残り不可欠な9つの「地球生存支援システム」を特定し、これらの7つシステムのうちが既に飛び越えてしまっているものがないかどうか定量化ようとした。これらのバウンダリー越えて地球居住性悪化させる可能性のある「不可逆的かつ急激な環境変化」のリスク脅威について、学者らは、人類生存脅かされる前に人類どれほど開発続けることができるかを見積もった。 プラネタリー・バウンダリーは、人類発展領域余裕特定し人間開発のための安全な領域」を定義することができる。そして人間による地球へ悪影響最小限抑えるアプローチへの改善促す上記論文は、9つ地球システムにおける限界値気候変動海洋酸性化オゾン層の破壊窒素リン循環グローバルな淡水利用土地利用変化生物多様性の損失大気エアロゾルの負荷化学物質による汚染)の評価が行われた。

※この「プラネタリー・バウンダリー」の解説は、「ヨハン・ロックストローム」の解説の一部です。
「プラネタリー・バウンダリー」を含む「ヨハン・ロックストローム」の記事については、「ヨハン・ロックストローム」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「プラネタリー・バウンダリー」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「プラネタリー・バウンダリー」の関連用語

プラネタリー・バウンダリーのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



プラネタリー・バウンダリーのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
デジタル大辞泉デジタル大辞泉
(C)Shogakukan Inc.
株式会社 小学館
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのプラネタリー・バウンダリー (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの人新世 (改訂履歴)、ヨハン・ロックストローム (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS