公共政策
【英】:public policy
概要
公共部門における意思決定が公共政策となる. どのような政策が望ましいかという問題は関連する多くの集団の価値観, 利害関係も異なるため, 非常に難しい問題となる. 政策決定に際しては, 集団の評価基準も住民の便益, 効用, 行政の効率, 政策の効率, 公平性, 平等性など様々なものが考えられ, いろいろな制約が加わることも多い. どのような意思決定が最も合理的かつ最適かといった問題は非常に重要である.
詳説
OR理論の応用については, その発生からの流れとして, 軍事部門から企業における経営を中心とする民間部門, そして公共部門へという大きな流れがある. 公共部門における政策分析の道具としてのOR理論, 手法の応用はかなり長い歴史を有しており, ORの誕生あるいはそれ以前からすでに存在していたといってもよいであろう. 民間部門における意思決定では利潤の最大化, 効率の最大化, あるいは費用の最小化などが一般的であるのに対して, 公共部門における意思決定は一般国民, あるいは公務員, 官僚による行政機関, あるいはまた国民の代表者である政治家からなる立法機関等によって行われるという点が大きな違いである. 公共部門における意思決定は公共政策として表現される. どのようにして政策を決定すればよいか, あるいはどのような政策が望ましいかという問題は関連する多くの集団の価値観, 利害関係も異なるため, 非常に難しい問題となることが多い. したがってそれぞれの集団の評価基準も住民の便益, 効用, 行政の効率, 政策の効率, 公平性, 平等性など実にさまざまなものが考えられる. また政策決定に際しては, 状況によっていろいろな制約が加わることが多い. このような中で意思決定をどのように行えばよいか, あるいはどのような意思決定が最も合理的かつ最適かといった問題は非常に重要である. 政策の決定, 作成, 実施, 評価の諸過程において, 統計, OR, システム分析, 情報科学等の理論, 手法に基づいてデータ, モデルを用いて種々の分析を行うことを一般に政策分析と呼ぶ. 政策評価は政策を定量的に評価, 分析するという意味で政策分析の一分野である. 公共部門におけるOR理論の応用は種々の公共政策の決定過程で現れることが多く, 最適政策の決定が必要とされる. 代表的な分野としては, 交通・輸送, 施設配置, 政治・行政, 裁判・犯罪, 漁業・農業・森林, 環境・エネルギー, 医療などをはじめとして実に多くの分野が考えられる.
交通・輸送部門では, 初期の代表的な研究としてニューヨーク交通局が実施した橋やトンネルの交通量, スタッフ配置などに関する待ち行列理論を用いたものがある. その後も交通・輸送のネットワークにおける非常に多種にわたる数多くの問題が最適化手法あるいはシミュレーション手法によって解かれている(交通政策). 交通問題としては, かなり古い歴史を有する鉄道, 航空機, 自動車等に関する交通需要予測, 新設あるいは増設道路に関するプロジェクト選択などが主要な問題として解決が図られている. 輸送問題に対しては, あらゆる物資, 情報, 人員等の最適輸送を求める問題が解かれている.
公共施設配置問題はORの分野において古い歴史を有しているが, 多くの場合, それに伴って人員, 物資, 資源などを最適配分するという問題も生じるために資源配分問題と同時に解かれることが多く, より一般的に配置配分問題と呼ばれ, 長い年月にわたって多くの研究者の関心の的となっている. 公共的な施設の最適配置を考える場合, 評価基準として何を設定すればよいかは重要な問題となる.
原子力発電プラント, 有害廃棄物あるいは放射性廃棄物の処理施設, 危険廃棄物貯蔵施設などの有害施設の最適配置を決定する危険施設配置問題も公共政策分析としてOR理論, 手法が盛んに用いられてきている. このような問題に適用されるモデル分析手法として, いくつかのリスク緩和策の中で何が有効かを決定するために社会便益総額を最大化するものを効用関数を用いて求める最適化モデルがある. 有害施設, 危険施設の配置問題は立地案の住民による受け入れ可能性, 費用, 補償, 便益, リスク等の関連する多くの要因を考慮しなければならないということから多属性効用モデルの適用もなされている.
裁判研究のORあるいは犯罪の分野における数学的な分析は1960年代に米国において犯罪件数が増大したのに伴って行われ, 司法裁判システムの運用に関する問題が大統領委員会のもとでも詳細に検討され, この分野におけるORの将来の研究の方向付けが示された. 犯罪者に関する研究は1970年代から80年代にかけてかなり積極的に行われ, 待ち行列理論を中心とする確率モデルに基づく犯罪者行動の分析, そして警察, 検察, 矯正機関等の運用管理にOR手法を用いることが活発に行われ, 信頼性理論あるいは確率理論が犯罪常習者の行動タイプの分析に用いられた. 個人が犯罪を犯す確率をポアソン過程のパラメータとして一定期間内の犯罪率, 逮捕率等を説明したのは画期的なアプローチであった. 1980年代には, 犯罪者の年齢, 発生地域, 再犯率などと警察官のパトロール活動との関係を確率モデルを用いて統計的に分析した成果が数多く得られた. また死刑の効果についての統計的な分析に関する議論も長期にわたって活発に行われた.
環境・エネルギーの分野における応用が活発に行われるようになったのは1970年代初頭にForrester, Meadowsらがローマクラブとして人口の拡大, 天然資源の浪費が続けば破滅的な結果に至るということをシミュレーションモデル(システムダイナミックス)を用いて警告し, いわゆる第一次エネルギー危機が勃発した頃からである. その後米国, そしてわが国においてもエネルギーの効率的利用, 省エネルギーの促進, 硫黄酸化物, 窒素酸化物排出量の削減等による環境問題への考慮をモデルに導入した分析が非常に数多くなされた. その後は枯渇性資源の有効利用, 化石燃料の大量消費による二酸化炭素排出量削減等を考慮したモデル(資源管理モデル)が開発され, 国連による地球温暖化防止条約締結のための政策資料提供や世界資源研究所等による分析が行われている.
医療政策の分野におけるORの応用としては, 1970年代に緊急医療システムの効率性の改善, 血液銀行の管理問題, 保健サービス計画と運用問題等へのOR手法の応用などが活発に行われた. 疾病検査と調査にモデルを用いることも一般化しているが, 医療における意思決定は主としてOR理論と手法の応用によって可能となったといえよう.
保健ケア実施問題の分析にORの手法を適用することは非常に時宜を得た課題である. 保健ケアシステムの設計と立案の問題は主として国あるいは地方政府のレベルで発生する. 保健ケアサービスの地域化はシステム立案の重要な構成要因である. 地域化によってサービスの配分はより効率的となり, 保健ケアシステムの費用あるいは質も改善される. 保健ケア管理においてORモデルを実行するには, 管理情報システム(MIS)が必要とされる. 医療の意思決定とモデルに基づく支援システムを組み合わせると, MISは意思決定の感度, 患者に対するケアの質, 生産性等を改善する可能性を持っている. 管理とケア実施に関するいろいろなレベルの機関が意思決定を作成し, 支援するために, 統計学, OR, 管理科学, エキスパートシステム等の手法を用いたモデルが構築されている. 病院管理, 運営に関する決定としては, 給与会計システム, 予算の立案分析, 入院と退院と転院(ADT)のシステム, 外科とリハビリ室のスケジュール, 看護婦の配置とスケジュール, 外来患者のスケジュールと予約システム, 購入と在庫管理と維持管理, 管理部門の人事システム, 患者の医療管理, 医療政策などが含まれる. 人的資源の管理は保健ケア組織の主要業務である. 人件費は通常運営費の大半を占めているので, この分野は将来より一層重要になっていくであろう.
スポーツの問題に対するOR/MSの応用(スポーツのOR)は50年代からで, 線形計画法や期待効用分析, 動的計画法, 制御理論, 組合せ理論, ゲーム理論などのOR/MS技法の理論的進歩を反映している. 初期における応用例の多くは野球であった. 様々なスポーツに関わるスケジューリングやルールづくり, トーナメントの組立て, あるいは公平性の問題が70年代から研究された. スポーツに対するOR/MSの関心は70年代半ばにピークを迎えた. 最近における研究の方向としては, 純粋に統計的な問題, ミクロ経済的側面, 交渉問題(野球における調停), スポーツに関するビジネス的な意思決定, マーケティングの問題, コーチング技術, ギャンブルに関連することなどがある. 将来の研究の方向としては, 新たなルール変更, 新たなトーナメント方式, いくつかの国で広まる新たなスポーツ等によってもたらされる問題への取り組みなどであろう.
政府が資産を購入したり政府の権利を譲渡したりするのに競売を利用することがある. 広範囲にわたる競売の数学モデルが提起され, 競合システムを設計する場合にこれらを用いる方法の分析が行われている. 交渉や公示価格などの一般的な移転方法としての競売や競争入札という経済的競争は公共部門においては特に興味のあるものであって, 売り手と買い手, あるいは所有者と購入者のように, 彼らの目標の間に十分な信頼や一致が存在しないかもしれないような状況においても適用可能で, 公平さあるいは偏見の回避といった必要性をも満たす方法である. 競売と競争入札の形式的な本質は, ORの研究者を含む分析家にとって大変興味深いものである. これらの分野には, 州や連邦の石油賃借権, 連邦の石炭賃借権, 連邦の木材伐採権の販売, 財務省証券の販売, 電力会社のコジェネレーション業者や他の業者からの電力購入, 軍や他の政府の調達, 道路建設, 宇宙ステーションや規制されたパイプラインにおける容量の配分などが含まれる.
リスクには事故, 災害, 病気, など多くのものがある. リスクを軽減するという公共の目標を達成し, 不必要なコストを削減するためには, リスクを予測し, 管理する組織的なアプローチが必要とされる. 各種リスクに対して, 推計を行うこと, 事故の原因を決定すること, 安全性の基準を設けること, 費用効果分析あるいはリスク便益分析を行うことなどが必要となる. このような手続きはリスク管理と呼ばれている. 事象樹木と原因樹木による原因究明分析, あるいは最小費用で目標の実現を図ろうとする費用効果分析, あるいはまた基準や技術によって解決を図ろうというアプローチ[1]などがある. OR理論と手法の適用の将来性について, 災害, 危機管理といった分野は注目に値する.
[1] S. Gass and R. Sisson, A Guide to Models in Governmental Planning and Operations, Sauger Books, Potomac, MD, 1975.
[2] S. M. Pollock, M. H. Rothkopf and A. Barnett, Operations Research and the Public Sector, in Handbooks in Operations Research and Management Science, North-Holland, Amsterdam, Netherland, 1994. (大山達雄監修翻訳, 『公共政策ORハンドブック』, 朝倉書店, 741pp., 1998.)
[3] 大山達雄, 『最適化モデル分析』, 日科技連出版, 372pp., 1993.
[4] P. B. Mirchandani and R. L. Francis (eds.), Discrete Location Theory, John Wiley and Sons, New York, 1990.
[5] J. Current, H. Min and D. Schilling, Multiobjective Analysis of Facility Location Decisions, MIT Press, Cambridge, MA, 1990.
[6] M. Crew and P. Kleindorfer, The Economics of Public Utility Regulation, MIT Press, Cambridge, MA, 1986.
[7] G. F. List, P. B. Mirchandani, M. A. Turnquist and K. G. Zografos, "Modeling and Analysis for Hazardous Materials Transportation : Risk Analysis, Routing/Scheduling and Facility Location," Transportation Sciences, 25 (1991), 100-114.
[8] R. Tarling, "Statistical Applications in Criminology," Statistician, 35 (1986), 369-388.
[9] R. Engelbrecht-Wiggins, M. Shubik and R. M. Stark(eds.), Auctions, Bidding and Contracting : Uses and Theory, New York University Press, New York, 1983.
[10] M. H. Rothkopf, "On Auctions with Withdrawable Winning Bids," Marketing Sciences, 10 (1991), 40-57.
[11] M. H. Rothkopf, "Equilibrium Linear Bidding Strategies," Operations Research, 28 (1980), 576-583.
[12] F. Pezzella, R. Bonanno and B. Nicoletti, "A System Approach to the Optimal Health-care Districting," European Journal of Operational Research, 8 (1981), 139-146.
[13] S. P. Ladany and R. E. Machol (eds.), Optimal Strategies in Sports, North-Holland, Amsterdam, 1977.
[14] R. E. Machol, S. P. Landany and D. G. Morrison (eds.), Management Science in Sports , North-Holland, Amsterdam, 1976.
[15] B. L. Golden and E. A. Wasil, "Ranking Outstanding Sports Records," Interfaces, 17 (1987), 32-42.
[16] B. Fischhoff, S. Lichetenstein, P. Slovic, S. L. Derby and R. L. Keeney, Acceptable Risk, Cambridge University Press, New York, 1981.
[17] P. Slovic, "Perception of Risk," Science, 236 (1987), 280-286.
[18] J. Linnerooth-Bayer and B. Wihlstrom, "Applications of Probabilistic Risk Assessments : the Selection of Appropriate Tools," Risk Analysis, 11 (1991), 249-254.
公共政策
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/04/28 22:31 UTC 版)
| 政治 |
|---|
| |
公共政策(こうきょうせいさく、英語: public policy)とは、社会における公共的課題に対処するために、政府、地方公共団体、国際機関などの公的主体が立案・実施する政策をいう。広義には、NPO・NGO、住民、専門家集団、民間事業者などが政策形成や実施に関与する場合も含めて把握される[1][2][3]。公共政策学は、そうした政策の形成、実施、評価、変化を対象とする学際的研究分野である[1][2]。
概要
公共政策は、国家や地方自治体などの公的主体が、経済、福祉、教育、医療、環境などの分野における社会的課題へ対応するために行う意思決定とその実施を指す。日本公共政策学会は、公共政策を「社会の公的な問題」に関して地方自治体や国をはじめ、NPOやNGO、住民などが担う方針・施策・事業として説明している[3]。このため公共政策は、法令や計画の制定だけでなく、予算配分、規制、給付、公共事業、情報提供、評価、見直しまでを含む広い概念として用いられる[1]。
公共政策の研究では、政策内容そのものだけでなく、それがどのように形成され、執行され、評価され、さらに将来の政策選択へどのような影響を与えるかも重要な対象となる[1][2]。また、現代の政策形成は、単独の政府機関のみで完結するとは限らず、中央政府・地方政府・国際機関・民間部門・市民社会の相互作用の中で進められることが多い[2][4]。
公共政策学は、政治学、行政学、経済学、法学、社会学、統計学などの知見を横断的に用いながら、政策問題の把握、政策手段の選択、政策効果の検証を扱う学際的分野として発展してきた[1][3]。
政策過程
公共政策は、しばしば政策サイクルとして把握される。これは、社会問題が政治的議題として認識されるアジェンダ設定、具体的な対応策を構想する政策立案、政策を公式に採択する意思決定、政策を実際に遂行する政策執行、その結果を検証する政策評価、さらに修正・継続・廃止へ至る政策の終結・再定義から成ると説明される[1]。
アジェンダ設定の過程を説明する理論としては、政策の窓モデルが知られ、この文脈では政策起業家が問題、政策案、政治的支持を結びつける役割を担うとされる[1][5]。また、政策は実施後に将来の政治過程や制度選好へ影響を与えることがあり、こうした作用は政策フィードバックと呼ばれる[1]。
政策執行の段階では、法制度、行政組織、財政資源、現場の運用能力、関係主体の協力などが政策成果を左右する。執行過程で得られたモニタリング情報や現場の知見は、その後の政策修正や再設計の基礎となる[1][4]。
もっとも、実際の政策過程は常にこのような段階を明確に区切って進行するわけではなく、各段階が重なり合いながら展開することも多い。そのため、政策サイクルは分析上の整理概念として理解されることが多い。OECDも、政策形成が必ずしも線形に進むものではないことを指摘している[1][4]。
政策手段
公共政策は、目標を達成するために多様な政策手段を用いる。代表的な手段としては、法令・基準・許認可などの規制、租税・減税・課徴金などの課税、補助金・給付・公共投資などの財政支出がある[4]。さらに、公共サービスの直接供給、公共調達、情報提供や広報、行動変容を促す制度設計なども政策手段に含まれる[1][4]。
どの政策手段が選ばれるかは、問題の性質、財政制約、法制度、政治的実現可能性、行政能力、対象集団の受容可能性などによって左右される[1]。複数の手段を組み合わせて用いることも多く、その組み合わせ方は政策デザインの重要な論点となる[1]。
理論と分析視角
公共政策を分析するためには、さまざまな理論枠組みが用いられる。たとえば、費用便益計算や効率性を重視する合理的選択の視点、既存政策の漸次的修正を重視する漸進主義、多様な主体の相互作用に注目するガバナンス論、政治家や官僚を自己利益の追求主体として捉える公共選択論などがある[1]。
また、政策変化の契機を説明する理論として、問題・政策・政治の複数の流れの接合に注目する政策の窓モデルがある。この理論では、政策採用の機会を現実の変化に結びつける行為者として政策起業家が重要視される[5]。
このほか、政策研究では、制度の持続性や制約に注目する制度論的視角、分野ごとの利害関係者の結び付きに注目する政策ネットワーク論、共有された信念体系に基づく連合の競合と学習を通じた政策変化を説明するアドボカシー連合フレームワーク、政策が将来の選好や政治参加に影響する過程を分析する政策フィードバック論なども用いられる[1][2]。
さらに、公共政策研究では、個別政策の成果や副作用を検証する政策評価、政策形成における因果推論や実証分析、比較研究なども重要な分析視角とされる[1][3]。
主な政策分野
公共政策の対象領域は広く、代表的には経済政策、社会政策、教育政策、医療政策、環境政策などが含まれる。加えて、外交政策、安全保障政策、エネルギー政策、科学技術政策、地域政策、都市政策、労働政策なども公共政策の重要な一部をなす[1][3]。
公共政策は、国家レベルのマクロな制度設計だけでなく、地方自治体による福祉、交通、防災、まちづくり、ごみ処理などの身近な行政活動とも深く結び付いている[3]。このように公共政策は、国家や地方自治体の活動の広い範囲に関わる総称的概念である[1]。
政策評価とEBPM
公共政策では、政策が所期の目的をどの程度達成したかを検証する政策評価が重要な位置を占める。政策評価は、政策の妥当性、有効性、効率性、影響、持続可能性などを検討し、その結果を将来の政策改善や説明責任に結び付ける営みである[1][6]。
日本の「政策評価の基本方針」においては、「政策評価は、 これを「企画立案(Plan)」、「 実 施 ( Do)」、「 評 価 ( Check)」、「 改 善 ( Action)」を主要な要 素とする政策のマネジメント・サイクルの中に制度化されたシステムとして明確に組み込 み、その客観的かつ厳格な実施を確保し、政策評価の結果を始めとする政策評価に関する 一連の情報を公表することにより、政策の不断の見直しや改善につなげるとともに、国民 に対する行政の説明責任の徹底を図るものである。」と、述べている。[7]
しかし、この基本方針では原因分析を伴わない政策評価方式として「実績評価方式」と「事業評価方式」を設定しているのでPDCAサイクルを完結しない方式を併存させているという問題がある。
OECDは、公共政策評価を、公共介入の設計・実施・結果を対象とする構造化された証拠ベースの評価と位置付けており、評価は政策学習、透明性、説明責任の向上に資するとしている[6]。
現代の公共政策では、証拠に基づく政策(EBPM)の重要性が高まっている。内閣府は、EBPMを「その場限りのエピソードに頼るのではなく、政策目的を明確化したうえで合理的根拠(エビデンス)に基づくもの」と説明している[8]。また、政策効果の測定に重要な関連を持つ情報や統計等のデータを活用することが、政策の有効性向上と行政への信頼確保に資するとされる[8]。
現代的課題
現代の公共政策においては、少子高齢化、財政制約、格差、気候変動、感染症、災害対応、経済安全保障など、相互に関連する複雑な問題への対応が求められている[2][1]。そのため、単一の省庁や自治体だけでは解決が難しく、部門横断的・政府間的な調整が重要となる[2][4]。
また、行政のデジタル化とデータ活用を進めるデジタルトランスフォーメーション(DX)も主要な課題である。デジタル庁の重点計画は、AI・デジタル技術の活用、制度・データ・インフラ整備、安全・安心なデジタル社会の形成、デジタル人材の確保・育成などを掲げている[9]。
さらに、公共政策に対する市民参加、透明性、信頼の確保も重視されている。OECDは、健全な公共ガバナンスの一環として、ステークホルダー・エンゲージメント、公開性、整合的な政策形成の重要性を指摘している[4]。
日本における公共政策学
日本では、戦後長らく官僚主導の政策形成が重視されてきたが、1990年代以降の行政改革や政治主導・官邸主導の強化を背景として、政策形成の制度的環境は変化してきた[1]。
こうした変化と並行して、公共政策学は、行政学や政治学に加え、経済学や法学、統計学などを取り込む学際的分野として発展した[1][3]。日本公共政策学会は、政策過程論、評価手法、公共政策の経済分析など、多様な研究アプローチを包含する学術交流の場として位置付けられている[3]。
公共政策大学院の設置は、その教育と研究の制度化を示すものとされる。公共政策学の教育課程には、政策分析や立案に重点を置くMPP(英語: Master of Public Policy)や、行政運営や管理に重点を置くMPA(英語: Master of Public Administration)などがある[1]。たとえば東京大学公共政策大学院では、公共管理、国際公共政策、経済政策などの分野を含む教育が行われている[10]。
脚注
- 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 秋吉, 貴雄; 伊藤, 修一郎; 北山, 俊哉 (2020). 公共政策学の基礎 第3版. 有斐閣. ISBN 978-4-641-18449-7
- 1 2 3 4 5 6 7 新グローバル公共政策. 晃洋書房. (2016). ISBN 978-4-7710-2748-0. OCLC 952978081
- 1 2 3 4 5 6 7 8 “学会概要”. 日本公共政策学会. 2026年3月31日閲覧。
- 1 2 3 4 5 6 7 “Policy Framework on Sound Public Governance”. OECD (2020年12月22日). 2026年3月31日閲覧。
- 1 2 Kingdon, John W. (2011). Agendas, Alternatives, and Public Policies (Updated 2nd ed. ed.). Longman 2026年3月31日閲覧。; Hoefer, Ralph (2022). “The multiple streams framework: understanding the problems, policies, and politics approach”. Journal of Policy Practice and Research 14 (1): 1-18 2026年3月31日閲覧。.
- 1 2 “Implementation Toolkit for the OECD Recommendation on Public Policy Evaluation”. OECD (2025年). 2026年3月31日閲覧。
- ↑ “政策評価に関する基本方針 閣議決定(平成17年12月16日)”. 総務省. 2026年4月29日閲覧。
- 1 2 “内閣府におけるEBPMへの取組”. 内閣府. 2026年3月31日閲覧。
- ↑ “デジタル社会の実現に向けた重点計画”. デジタル庁. 2026年3月31日閲覧。
- ↑ “東京大学公共政策大学院”. 東京大学公共政策大学院. 2026年3月31日閲覧。
参考文献
- 秋吉, 貴雄; 伊藤, 修一郎; 北山, 俊哉 (2020). 公共政策学の基礎 第3版. 有斐閣. ISBN 978-4-641-18449-7
- 新グローバル公共政策. 晃洋書房. (2016). ISBN 978-4-7710-2748-0. OCLC 952978081
- Kingdon, John W. (2011). Agendas, Alternatives, and Public Policies (Updated 2nd ed. ed.). Longman 2026年3月31日閲覧。
- Hoefer, Ralph (2022). “The multiple streams framework: understanding the problems, policies, and politics approach”. Journal of Policy Practice and Research 14 (1): 1-18 2026年3月31日閲覧。.
- “学会概要”. 日本公共政策学会. 2026年3月31日閲覧。
- “内閣府におけるEBPMへの取組”. 内閣府. 2026年3月31日閲覧。
- “Policy Framework on Sound Public Governance”. OECD (2020年12月22日). 2026年3月31日閲覧。
- “Implementation Toolkit for the OECD Recommendation on Public Policy Evaluation”. OECD (2025年). 2026年3月31日閲覧。
- “デジタル社会の実現に向けた重点計画”. デジタル庁. 2026年3月31日閲覧。
- “東京大学公共政策大学院”. 東京大学公共政策大学院. 2026年3月31日閲覧。
関連項目
外部リンク
公共政策
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/01/05 22:35 UTC 版)
古脊椎動物学会は、 脊椎動物の化石は、連邦政府、州政府又は地方政府の環境法、条例およびガイドラインによって保護されている重要な再生不可能な古生物学的資源であり、 科学的に重要な化石、特に公有地で発見された化石は、公共、特に博物館又は研究機関に信託されるべきであり、このような信託を通じて、科学界全体に利益をもたらすことができる と考えている。 古生物学的資源保護法S.546は、SVPの支持のもと、アメリカ合衆国議会で制定された。
※この「公共政策」の解説は、「古脊椎動物学会」の解説の一部です。
「公共政策」を含む「古脊椎動物学会」の記事については、「古脊椎動物学会」の概要を参照ください。
公共政策と同じ種類の言葉
固有名詞の分類
- 公共政策のページへのリンク