海洋酸性化
英語:ocean acidification
長期間にわたって海洋のpH(水素イオン濃度)が低下する、すなわち酸性に近づく現象のこと。
海洋酸性化は、大気中の二酸化炭素濃度の上昇と密接な関係があるとされている。海水に溶け込んだ二酸化炭素は、化学反応によって炭酸水素イオンや重炭酸イオンを経て炭酸に変化するが、その際に水素イオン(H+)の解離が起こる。これにより、海洋の水素イオン濃度の増加、すなわちpHの低下が起こることとなる。
海洋酸性化は、様々な海洋生物に影響をもたらすことが知られており、特に炭酸カルシウムが生存に不可欠なサンゴ類、貝類などに深刻な影響を与えるとされている。海洋酸性化に伴い重炭酸イオンが増加すると、炭酸カルシウムの生成反応の効率が低下することから、貝類は貝殻を、サンゴ類は骨格を形成することが困難になる。2014年には、海洋酸性化の影響により、カナダで1千万匹以上のホタテガイが死滅したと報告された。
また、円石藻や有孔虫など、石灰質の殻を形成するプランクトンにも、海洋酸性化の影響に対して敏感なものがある。海洋酸性化が起こり、それらのプランクトンが死滅することで、漁業生産量が低下することが懸念されている。また、2014年に千葉工業大学の研究グループは、白亜紀末に起こった生物の大量絶滅に、隕石落下に伴って海洋酸性化が起こり、ナノプランクトンが死滅したことが強く影響したことを示唆する研究成果を発表した。
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の2007年の報告書では、世界的に海洋酸性化が進行していることが明記されている。産業革命以前の海洋の平均pHが8.17程度だったのに対して、2007年の時点では8.06程度にまで減少しているとされた。海洋酸性化の傾向は、地球温暖化の傾向よりも明確に証拠づけられているとされているが、海洋酸性化が生態系に与える影響に関する知見は断片的であり、早急な解明が必要とされている。
関連サイト:
海洋酸性化 - 気象庁
海洋酸性化の影響 - 国立環境研究所地球環境研究センター
Production of sulphate-rich vapour during the Chicxulub impact and implications for ocean acidification - Nature Geoscience
海洋酸性化
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/11/22 14:47 UTC 版)
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海洋酸性化(かいようさんせいか)とは、主に大気中において以前よりも濃度が上昇した二酸化炭素が、より多く海洋へと溶け込んだことによって引き起こされる、海水のpH低下のことである。
機序





産業革命以降200年以上にわたって、化石燃料の燃焼により大気中の二酸化炭素濃度は増加しつづけている。産業革命以前は約280 ppmで安定していた二酸化炭素濃度は、2011年には390 ppmを超えた[4]。さらに2016年には400 ppm、つまり、0.04 %を観測史上初めて超えた[5]。つまり、たったの5年で0.001 %も大気中に二酸化炭素が増えるなど、この増加には歯止めがかかっていない。
海洋酸性化
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/04 04:31 UTC 版)
「プラネタリー・バウンダリー」の記事における「海洋酸性化」の解説
海洋酸性度は産業革命以来30%も増加している。人間の活動で輩出された二酸化炭素の約4分の1が海洋に溶解し、炭酸が生成される。この酸はサンゴ、甲殻類およびプランクトンが殻や骨格を作る能力を阻害する。こうした生態系の主要な種が一次的に絶滅することで、さらに二次的な絶滅(カスケード効果)が引き起こされ、魚資源に深刻な影響を与えるおそれがある。この限界点は大気中の二酸化炭素濃度増加が基礎となる制御変数でもあるため、気候変動の限界点と相互に強く関連している。海洋化学者Peter Brewerは、「海洋の酸性化はpHの単純な変化以外の影響を有しており、これらには境界も必要である」と考えている。 指標とされているアラレ石(アラゴナイト)は、海水が酸性になることで溶解する炭酸カルシウムの一種であり、この水準が産業革命以前の80%を下回るとサンゴ礁は絶滅の危機におちいる。サンゴ礁の絶滅は海洋の生態系の崩壊につながる。海洋酸性化によって魚やクジラの耳小骨も変形も起こす。
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