プロジェクト・ファイナンスとは? わかりやすく解説

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プロジェクト・ファイナンス

読み方ぷろじぇくと ふぁいなんす
【英】: project financing

プロジェクト・ファイナンスとは、「貸し手プロジェクト資産のみを担保として、原則としてその返済当該プロジェクトから生み出されるキャッシュ・フローにのみ依存する金融」であり、借り手信用に基づく通常の金融コーポレート・ファイナンスcorporate finance)とは、実施形態分析手法著しく異な金融である。
この手法は米国石油開発事業発達したプロダクション・ペイメントproduction payment)を担保とする融資もしくはオイル・アンド・ガス・プロパティ・ローン(oil and gas property loan)を原型としているとされているが、今日では各種鉱物資源開発精製石油化学などのプラント建設パイプライン造船不動産事業などプロジェクトキャッシュ・フロー把握できる事業において広く採用されている。プロジェクト・ファイナンスは、プロジェクト資金巨額化、建設期間の長期化に伴い担保保証提供しない借り入れ実現しようとする借り手側と、包括的な担保保証は十分ではないながら個別保証積み上げることによってリスク回避しようとする貸し手思惑接点成立しているものであるそれだけにこの金融案件ごとに多様な形態をとり、定形はないが、代表的なスキーム石油開発プロジェクト即して図示すれば図のとおりであり、次の諸点特徴がある。
(1) 融資当該プロジェクト直接対象とするので、借り手プロジェクト遂行のために新設され事業体(プロジェクト・カンパニー)がなるのが通常である。
(2) プロジェクト実施主体スポンサー)にとって、この金融は (i) (直接借り手とならないため)貸借対照表外部負債計上されないオフ・バランス・シート(off balance sheet扱いとなること、および (ii) 借入金返還請求受けないノン・リコースnon-recourse)・ベース期待でき、(iii) そのうえ借入金増加社債格付にマイナスの影響を及ぼすことを排除できるメリットがある。
(3) この金融他方貸し手リスク著しく高くする。このため貸し手プロジェクトから直接担保徴求する(資源開発場合埋蔵量)ほか、スポンサーから工事完成保証始め各種保証取り付けたり生産物バイヤーとの長期取引契約の締結要求するなど、できるだけリスク回避する策がとられる
(4) こうして実際のプロジェクト・ファイナンスでは、貸手借手リスク分担し合うリミテッド・リコース(limited recourse)方式一般的となる。したがってこの金融成立するための決め手は、第一義的にはプロジェクト優劣であるが、スポンサー能力資金技術販売などの包括的企業力)も重要な要素となる。
(5) 貸手借手買手間で締結され長期売買契約に基づく売上代金債権譲渡を受け、売上代金信託勘定エスクロウ勘定)に買手から直接支払われ、売上代金からの元利金返済優先的に行われるシステムとられるのが普通である。
(6) 対象プロジェクトからのキャッシュ・フロー唯一の返済原資であるプロジェクト・ファイナンスにおいてはプロジェクト評価極めて重要であり、貸手にも技術的法律的、その他広範な知識求められるので、これを補うため貸手専門エンジニアリング会社コンサルタント活用を図るとともに最終評価当たってかなりの安全率見込む例え可採埋蔵量50 %しがなくても事業成立するようなプロジェクトのみを対象とするなど)のが通例である。


プロジェクト・ファイナンス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/17 10:27 UTC 版)

プロジェクト・ファイナンス (PF, project finance) は、金融用語の一つ。ストラクチャード・ファイナンス(SF, structured finance)の一種で、コーポレート・ファイナンス (CF, corporate finance) やアセット・ファイナンス (AF, asset finance) と対比して使われる。

概要

CFでは、企業が借入をするとき、企業全体の信用力を基礎に借入が行われる。一般には物的な担保を取り、加えて、ローンは遡及権(リコース)付きで組まれている。

PFでは、ある特定の事業からあがる予想収益を基礎に借入が行われる。担保になっているのは、その特定事業の資産全てであり、スポンサーからは追加の担保を取らない。ローンはスポンサーに対して遡及をしないノンリコースローンになっている。

PFでは、金融機関は、企業が行おうとする事業の将来予想により深く関わっており、そのリスクを負担している。このリスク負担に対応して、より高い収益を期待できる。このようなリスク負担を分散させるため、事業内容を開示して他の金融機関の参加を求めることが一般的である。また資産証券化(セキュリタイゼーション)の手法が組み合わされることも多い。

日本初のプロジェクト・ファイナンスは、大阪市に所在する中山共同発電に対する1998年(平成10年)の三和銀行と日本開発銀行(現在の日本政策投資銀行)による共同組成の事例である。

インフラ投資支援メソッドとして

PFは、その性質上、公共事業や公共的要素の強い民間事業について活用されている。民間の資金や経営手法などを活用して公共サービスを効率的に提供する手法であるとしてPFI (private finance initiative) と呼ばれることがある。

海外発展途上国における発電所や鉄道などのインフラ建設計画において、巨額になる工事費用を当該国が一度に支払うことが難しい場合、インフラ投資を促進する存在としての役割もPFは担う。その場合建設後の電気料金や運賃など営業収入も資産に算入される。

2010年10月に日本の受注が決まったベトナム原子力発電所建設については、財務省所管の国際協力銀行がファイナンス役として参画している[1]

参考文献

  • 横山士郎編『プロジェクト・ファイナンス』有斐閣ビジネス, 1985.
  • 小原克馬『プロジェクト・ファイナンス』金融財政事情研究会, 1997.
  • 日本開発銀行PFI研究会『PFIと事業家手法』金融財政事情研究会, 1998.
  • 第一勧銀国際金融部『PFIとプロジェクト・ファイナンス』東洋経済新報社, 1999.
  • 西川永幹「BOT,PFIとプロジェクト・ファイナンス」『神戸大学国民経済雑誌』18(2), 2000.
  • 若松仁「わが国におけるプロジェクト・ファイナンスの現状と課題」『三菱総合研究所所報』No.39, Sept.2001.
  • 野田由美子『PFIの知識』日本経済新聞社, 2003.
  • E.R.イェスコム著・佐々木仁訳『プロジェクトファイナンスの理論と実務』金融財政事情研究会, 2006.

脚注

  1. ^ “政府・民主党、国際協力銀行を分離・独立、インフラ輸出支援”. オルタナティブ・ブログ. (2010年12月8日). http://blogs.itmedia.co.jp/serial/2010/12/post-122b.html 

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