密猟とは? わかりやすく解説

みつ‐りょう〔‐レフ〕【密猟】

読み方:みつりょう

[名](スル)禁制犯してひそかに狩猟すること。「鳥獣保護区で—する」


密猟

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/26 15:21 UTC 版)

密猟(みつりょう、: poaching)とは、国際間の協定や法令を無視して陸上の動物を採取する事である。魚介類を不法に採取することは密漁と書き分けて区分する。アザラシなど海産哺乳類には密猟を使う。植物の場合には密採(みっさい)と呼ばれるが、日本語では薬草やキノコなどの採取活動に対しても「狩り」と呼ばれることから広義で「密猟」の語が用いられることがある。

概要

密猟の対象となる動物は、ペットとして求められる場合もあれば、など一部の部位のみを求める場合、さらには食材漢方薬の材料として求められる場合など様々なケースがあるが[1]、いずれも標的となった動物がその土地からいなくなることに変わりはない。特に、絶滅が危惧されている動物や需要がある動物は、裏のルートでは高値が付く[2]。そのため、法律で規制されていても、密猟が摘発される事例は後を絶たず、摘発者が殺害される事例も存在する[3]

絶滅が危惧されている動物は、その個体数自体が僅かであるため、たとえ一頭だけが採取されたとしても、種の存続に多大なダメージを負う可能性もある。実際、人間による乱獲が原因で動物が絶滅した事例は、枚挙にいとまがない。

そのため、密猟行為は厳重に取り締まらなければならないのだが、これら密猟の標的になりやすい貴重な動物は、特にアフリカ東南アジアなど国家財政が厳しい国家に分布しているケースも多い。これらの国家では、まずは国民が豊かになる施策こそが重要であり、動物保護は後回しにされてしまう。さらに、官僚の汚職が進行している国家では、密猟を取り締まるべき法執行機関賄賂によって懐柔されたり、時には治安当局者自らが密猟に参加することさえある[4][5]。このように、世界的には密猟への対策が十分に取られているとは言い難い。

2000年代後半になると、大規模なゾウの密猟が目立つようになったと言われる[6]。内戦などによる紛争によって供給されたAK-47などの軍事用武器が密猟に転用されている技術的背景や、現代における象牙消費の中心であるアジア(特に中国タイ)での需要拡大といった経済的背景が影響している[6]

一方、密猟取り締まりの過程で、地域住民の狩猟道具や仕事用品の没収、抵抗する住民への虐待が報告されている[6]。狩猟道具を奪われた結果、地域住民が動物性タンパク質を自給できない状態が懸念され、生活実態と狩猟実態の乖離を見直す必要性が提唱されているほか[6]、密猟取り締まりとゾウによる農業被害の二重苦が生じているとも指摘されている[7]

自然保護団体による先住民への人権蹂躙も懸念されており、国際NGOSurvival International」は、世界自然保護基金の先住民の権利侵害を告発するビデオをYouTubeに公開している[8]

その中で、住民は次のように語っている。

保全活動家はもうたくさん。私たちバカ・ピグミーで、彼らと同じ制服を着ている人が一人でもいるでしょうか?彼ら保全活動家は、私達から得たお金を分けてくれますか? そんなことはあった試しがありません。彼らの仕事はただ、森を駄目にするだけ。私たちは、スポーツ・ハンティングのお客さんにも来てほしくない。彼らから私たちが得るものは何もないから。スポーツ・ハンターと保全活動家は、森を駄目にしてるだけ。彼らは良くない。彼ら白人があなたを森の中で見つけたら、動物のように殺すでしょう。まるであなたを動物だと見ているかのようにして。いったい全体、なんで白人が私が森の食べ物を口にしたいかどうかってことに、いちいちいちゃもんをつけられるって言うのか。

日本の事例

現在の日本で広く行われている密猟としては、メジロクマタカなど挙げられる[9]

明治時代後期、アホウドリをはじめとした鳥類密猟を目的とした日本人の北西ハワイ諸島への進出が「バード・ラッシュ」と呼ばれる日米間の国際問題となった[10]。日本国内においても、ニホンオオカミラッコニホンアシカニホンカワウソを対象とした密猟が多く、ニホンカワウソの最後に確認された個体群は、密猟者が見つけたものであった。

1970年代にかけて岐阜県東濃地方では、カスミ網によるツグミアオバトルリビタキなどの密猟が盛んに行われていた。網を張る「トヤ場」(密猟場)の中には番小屋が拵えられ、野鳥料理やビールを提供するところもあった[11]1970年日本野鳥の会航空写真で岐阜県内のトヤ場を調査したところ、多治見市内で45ヶ所、恵那市内で137ヶ所、土岐市内で89ヶ所など計1000ヶ所を確認している[12]

脚注

出典

  1. ^ 密猟や違法な取引から、野生生物を守ろう! WWFジャパン”. www.wwf.or.jp. WWFジャパン. 2020年5月9日閲覧。
  2. ^ アフリカ密猟深刻 象牙・サイの角 アジア富裕層需要”. 東京新聞 (2019年5月27日). 2019年5月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年5月9日閲覧。
  3. ^ ゾウやサイの密猟と戦った研究者、ケニヤで刺殺」『BBCニュース』、2018年2月7日。2020年5月9日閲覧。
  4. ^ 頭と鼻を切られた牙なしスマトラゾウ 絶滅危惧種の密猟に警察も関与?”. Newsweek日本版 (2019年11月21日). 2020年5月9日閲覧。
  5. ^ ゾウの60%が消えたタンザニア、その原因は”. natgeo.nikkeibp.co.jp. 2020年5月9日閲覧。
  6. ^ a b c d 大石高典「ゾウの密猟はなぜなくならないか: カメルーンにおける密猟取り締まり作戦と地域住民」『森をめぐるコンソナンスとディソナンス --熱帯森林帯地域社会の比較研究』第59巻、京都大学地域研究統合情報センター、2016年3月、15-21頁。 
  7. ^ 岩井雪乃 (2015), “象牙密猟は生息地でどう受けとめられているか? : 二重に苦しめられるタンザニアの地域住民”, ワイルドライフ・フォーラム (「野生生物と社会」学会) 20 (1): 6-8, doi:10.20798/wildlifeforum.20.1_6, https://doi.org/10.20798/wildlifeforum.20.1_6 2020年5月9日閲覧。 
  8. ^ (日本語) Baka "Pygmies" abused in the name of conservation, https://www.youtube.com/watch?v=OKksHO1XA60 2020年5月9日閲覧。 
  9. ^ 林武雄「クマタカの密猟について」『山階鳥類研究所研究報告』第7巻第5号、1975年、566-567頁、doi:10.3312/jyio1952.7.5_566ISSN 1883-3659 
  10. ^ 平岡昭利「北西ハワイ諸島における1904年前後の鳥類密猟事件 : バード・ラッシュの一コマ」『下関市立大学論集』第50巻第1号、下関市立大学学会、2007年3月、139-148頁。 
  11. ^ カスミ網売らせるな あくどい密猟、焼鳥売る番小屋 野鳥の会、国会に請願へ『朝日新聞』1970年(昭和45年)11月4日朝刊 12版 22面
  12. ^ 天を恐れぬカスミ網 密猟王国岐阜県東農地方に見る 番小屋に羽の山 「罰金払えば」居直る老人『朝日新聞』1970年(昭和45年)11月23日朝刊 12版 22面

関連項目



密猟

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/29 09:23 UTC 版)

セミクジラ」の記事における「密猟」の解説

前述のように19世紀までの乱獲祟り、本種の捕獲停止1930年代独自に決議されたが、日本を含む数か国は会議欠席しており、実効性無かったその後もこれらの国々による捕獲続き日本では南東部北海道厚岸沖での捕獲など、未記載・未報告記録含めて相当数捕獲された。このほか日本調査捕鯨との名目数十頭を捕獲したその後1960年代から70年代後半行われた当時ソビエト連邦による大規模な違法捕鯨により、更なる世界中海洋での大型種激減生息数回復停滞招きシロナガスクジラ等の一部個体群消滅、または回復不能にまで追い込むほどであったソ連違法捕鯨捕獲したジャポニカ種は、判明している限りでも700頭弱に上ったソ連では鯨油軍事目的利用していたため軍事機密であり、当時連邦科学者達監視され一切捕獲記録強制的に破棄され国際捕鯨委員会には実際捕獲数よりも遥かに少ない数を報告していたとされる。これらの情報は、連邦崩壊後の2012年に、当時連邦科学者達による公開資料判明した。なお、この違法捕鯨には日本モニタリング義務怠り少なくとも放置および互い違法捕鯨機密保持という形での関与明らかになっている。 結果的にセミクジラ減少原因日本米国ソビエト連邦捕殺による影響多重的に作用したという意見出されている。

※この「密猟」の解説は、「セミクジラ」の解説の一部です。
「密猟」を含む「セミクジラ」の記事については、「セミクジラ」の概要を参照ください。

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