調査捕鯨
鯨の生息数や生態などについて、科学的な調査を行うために鯨を捕獲すること。鯨肉の販売をはじめとする商業目的の捕鯨とは異なるものだとされる。2013年現在、日本やアイスランドなどが行っている。
日本は1987年に調査捕鯨を開始した。当初は南極海に生息するミンククジラのみが調査捕鯨の対象だったが、後にマッコウクジラなども対象になった。1988年には、国際捕鯨取締条約が締結されたことで、日本は商業捕鯨を中止しているが、科学的な調査のための調査捕鯨は認められていると主張している。
日本は国際捕鯨委員会(IWC)の管理下で、鯨の科学的データを収集して、その情報をIWCの各種委員会に提出する目的で、調査捕鯨を行っている。具体的には、鯨の耳垢栓や卵巣などを採取する。また、調査に使用した後の鯨の肉などを、副産物として市場で流通させていることが多い。
反捕鯨の立場をとる国や団体などから、日本の調査捕鯨は批判を受けている。主に調査捕鯨によるデータの信頼性や、鯨の肉などを副産物として流通させることに疑問の声が多い。また、調査のために鯨を殺す致死的調査は不要であるという考えもある。
特にオーストラリアは、日本の調査捕鯨は実質的には商業捕鯨であるという見解を示している。2013年6月、オーストラリアは日本の調査捕鯨が国際法に違反するとして、国際司法裁判所に提訴した。
関連サイト:
捕鯨問題 - 日本捕鯨協会
捕鯨に関するQ&A - 外務省
ちょうさ‐ほげい〔テウサ‐〕【調査捕鯨】
調査捕鯨
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/09 18:05 UTC 版)
調査捕鯨の仕事は大別すると、鯨体を捕獲する捕獲調査と個体数を数える目視調査がある。鯨の推定頭数の算出や生態調査も目的としている。平行してバイオプシー調査も行っており、こちらでは確保不能なシロナガスクジラなどの種のサンプルも集めている。 調査捕鯨が開始された理由は、1982年のモラトリアム導入に際し反捕鯨国側は「現在使われている科学的データには不確実性がある」ことを根拠にして安全な資源管理ができないと主張したためであった。 日本捕鯨協会によれば日本の南極海鯨類捕獲調査捕鯨ではクロミンククジラ、ザトウクジラなど各種クジラが増加していること、鯨種や成長段階による棲み分けの状態、回遊範囲が非常に広範囲であること、1980年代後半から現在までクロミンククジラの資源量推定値に大きな増減はみられず、個体数は安定していることも明らかになり、多様な調査結果が得られている。 北西太平洋鯨類捕獲調査においては、日本周辺のクジラは豊富であること。DNA分析で太平洋側と日本海側の鯨は別の系群にあること、などがわかった。IUCNのレッドリストで「絶滅危機」に分類されているイワシクジラの調査捕鯨では、北西太平洋イワシクジラの生息数を2004年6月までは28,000頭、2004年9月からは67,600頭、2009年5月からは28,500頭と考えており、年間100頭程度の捕獲はイワシクジラの安定的な生息には影響を与えないとしている。 調査捕鯨に関して日本は1987年から2006年までの間に、査読制度のある学術誌に91編の論文を発表し、IWCの科学小委員会に182編の科学論文を提出するなどしており、2006年12月のIWC科学小委員会では、日本の研究について「海洋生態系における鯨類の役割のいくつかの側面を解明することを可能にし、その関連で科学小委員会の作業や南極の海洋生物資源の保存に関する条約(CCAMLR)など他の関連する機関の作業に重要な貢献をなす可能性を有する」と結論づけ、1997年のIWC科学小委員会においても、日本の調査が「南半球産ミンククジラの管理を改善する可能性がある」と評価されている。「捕獲調査は商業捕鯨の隠れみの」という批判に対し、クジラ調査は専門の学者が調査計画に基づいて船を運航させて、若干の捕獲を行い、耳垢栓や卵巣などの標本を採取し、調査後の鯨体は完全に利用することが条約(ICRW第8条第2項)で定められているので調査の副産物として持ち帰り、市場に出し、販売で得られた代金は調査経費の一部に充当されており、鯨体を可能な限り利用することは資源を大切にするという意味であると述べている。 また、耳垢栓や生殖腺などの器官は鯨体の内部深くにあり、体内の汚染物質、胃内容物の調査を効果的に実施するためには致死的調査は不可欠である。バイオプシーなど非致死的調査で得られる情報もあるが非効率で現実的でないことはIWC科学委員会でも認識されている。 世界自然保護基金は、日本は生態系調査を目的とする「調査捕鯨」(鯨類捕獲調査)に切り替えたが、捕殺した鯨の肉の一部を商業市場で販売しており、調査捕鯨は科学調査という大義名分を使った疑似商業捕鯨であると述べた上で、日本は集積された情報を独立した審査のために公開することを拒否し、調査で集められたデータの殆どは殺さない方法で得ることが可能であり、日本の鯨調査計画が信頼にたる科学として最低限の基準を満たしていないと批判している。 2014年、国際司法裁判所は、日本の南極海での調査捕鯨は事実上の商業捕鯨であるとする判決を下した。
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