大義名分
「大義名分」とは、主に「自分の行動が正当であり疚しくないことを示す根拠・口実・建前など」を意味する表現である。普段はできない・はばかられる・避難されるようなことが堂々とできるだけの理由のこと。「大義名分を振りかざす」という言い回しで用いられることが多い。
「大義名分」は、その行為が「正義」や「正当防衛」などの正当な理由によるものであり、後ろめたい行為ではない、と主張して周囲に認めさせるだけの説得力をもった理由や理屈である。
「大義」は「個人が人として守るべきこと」を意味する語であり、「名分」は「立場や役割に応じて守るべき本分」を意味する語。かつては「人として正しくあるべきこと」「守るべき道理」といった意味合いで用いられた表現である。
大義名分の類語
大義名分の類語には、行動の根拠や口実を意味する「名目」「建前」などが挙げられる。例文としては「お見舞いという名目で都心に買い物に行く」のような使い方をする。また、守るべき正しい道を意味する「正義」「モラル」も類語として挙げることができる。例文は、「道端にたばこを捨てるなど人としてのモラルがなっていない」となる。大義名分の例文
大義名分の語は、上記のように建前という意味合いで使われたり、正当な理由という意味合いで使われることがある。大義名分は使い方によっては、良い意味にも悪い意味にもなる。表現によっては、言い逃れをしようとしている、言い訳をしているようにとられることもある。大義名分
大義名分
大義名分とは、大義名分の意味
大義名分とは、行動の根拠や口実を意味する四字熟語である。大義名分の「大義」には人として守るべき事柄、 重要な意義という意味がある。また、「名分」には立場、身分に応じて守らなければならない正しい道という意味がある。すなわち、「守るべき正しい道」を表す語である。大義名分の語の由来・語源
大義名分は、もともとは儒教の考え方に由来する概念である。儒教においては上の立場にある者(主君や父兄など)が絶対的に正しいと考える。その主君などから命じられた行動の正当化を「大義名分」といった。大義名分の語の使い方(用法)、例文
大義名分は、現代ではもっぱら「行動を正当化する理由・理屈」の意味で用いられる。特に「邪な理由を覆い隠すための表向きの理由」というニュアンスを込めて用いられる場合もある。もちろん、大義名分を掲げて行われる行為のすべてに「裏」が潜んでいるわけではないが、「裏がある」も「裏がない」も含めて「裏の理由」を意識させるニュアンスが「大義名分」にはある。大義名分の類語と使い分け方方
大義名分の類語としては「錦の御旗」が挙げられる。錦の御旗とは、赤地の絹織物に金の糸で刺繍を施した旗で、日本では古くから官軍が掲げてきたものである。官軍の旗は、お上の意思であり、すなわち大義名分の比喩である。しかも「最高権威」のニュアンスがある。行動が本当な邪な理由に基づいている場合「免罪符」も大義名分に近い意味合いとなる。免罪符は中世カトリック教会が発行した「免罪の証書」であり、転じて「悪事や後ろめたいことを《してもよいこと》と納得させるための理由づけ」を指す表現。
大義名分の英語
大義名分を英語で表現する場合は、just cause(正当な理由)、justification(正当化)、reason(理由)などの語を文脈に応じて使い分けることになろう。大義名分
大義名分とは、大義名分の意味
大義名分とは、何らかの行動を正当化するための理由のこと。大義名分は、儒教に由来する言葉を語源として日常的に使われる四字熟語になった。「大義」とは重要な教え、「名分」とは公に示す理由を意味する。大義名分の語は国家や組織など、大きな文脈で使われる傾向にある。英語では単に cause、objective などと表現することが多い。大義名分の類語
大義名分の類語には「至上命題」がある。ただし、ある立場の人間が担っている使命を表す言葉である。「義務」も類語ではあるものの、大義名分はより神聖な目的を指す場合が多い。大義名分は戦争や報復行為に対して、攻撃する側が掲げる言葉でもある。そのため、現代社会では決してポジティブな文脈で登場するとは限らない。ある諍いの中で、双方が大義名分論をぶつけ合ってきりがなくなるという事態も起こり得る。大義名分の例文、使い方
大義名分の例文を挙げると、「あの戦争はテロリスト討伐が大義名分だったのに、どうして罪のない人たちが亡くなったのだろう」といった使い方は、まさにネガティブな文脈の典型である。また、「彼はもっともらしい大義名分を述べているが、結局は借金を返したくないだけだ」といった皮肉を込めた文脈で登場することも少なくない。大義名分は気軽に使うのにそぐわない言葉でもある。
たいぎ‐めいぶん【大義名分】
大義名分
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/05/28 21:56 UTC 版)
大義名分(たいぎめいぶん)とは、
- 現代日本語で、「重大な行動を起こす際の名目・根拠・事由」をさす。例:「戦争の大義名分」→開戦事由 (Casus Belli)
- 儒学 (特に朱子学)の専門用語。1の由来だが1の意味は薄い[1] 。儒学者が「大義名分」という四字の語句を使うことも基本的に無い[2][3][4]。「大義」「名分」のように分けて言う方が多い。→「正名 (思想)#名分を正す」も参照。
この記事では2を扱う。
中国
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儒教文化圏では古くから、君臣・父子などの関係(名)には、相応の責任・役割(分)が付随し、それは正当なる人倫の分限に基づいた価値判断(大義)に基づいて正否が定まると考えられていた。このため、古くから現実及び過去の経験的実証的知識の蓄積である史実と「華夷内外」・「是非善悪」といった名分を組み合わせて大義名分の有り様についての議論が行われるとともに、これに基づいた倫理的価値判断をもって現実の事象を評価することが試みられた[5]。
その理念的源泉は孔子がまとめたとされる『春秋』であり、宋・司馬光の『資治通鑑』や朱熹の『資治通鑑綱目』はこれを継承しようとする試みであった。
日本
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日本では儒学者のみならず国学者の間でも様々な説が立てられた(大義名分論)。特にその延長上に位置づけられるのが、幕末の尊王攘夷論である。ただし、尊王論も攘夷論も本来は内に「君臣の義」、外に「華夷の弁」を強調するもので実際の政治体制(幕藩体制)と直ちに対立するものではなかった。しかし、その価値基準は個々の価値判断(大義)に基づくものであったから、社会の安定期には儒教と皇室の権威に基づいた保守的な現状維持論に過ぎなかった尊王攘夷論が、江戸時代後期の政治・社会の不安定期には一転して政治の革新を求める運動に転化することとなり、山縣大弐の『柳子新論』(1759年)や藤田幽谷の『正名論』(1791年)のように体制変革に踏み出す主張も現れるようになったのである。
更に幕末最末期すなわち尊王攘夷運動終盤には中岡慎太郎のように尊王攘夷論を外圧に対抗して国家の独立を維持するための理念と捉えて本来は排撃すべき「夷狄」であるアメリカ合衆国の建国者たちの活躍をその模範とすべしと唱える者まで現れるようになり、現実的な内外認識に合わせて変革思想の合理的解釈と正当化のための理論武装として大義名分論が持ち出されるようになった。
朝鮮
明・清交替期以後から、朝鮮では中華文明の継承者という自己認識が拡大され、朱子学的価値観はさらに強化されていた。
脚注
- ^ 尾藤正英・日本大百科全書(ニッポニカ)『大義名分』 - コトバンク
- ^ “第1回 會澤正志斎『新論』|日本思想史の名著を読む|苅部 直|webちくま”. webちくま. 2020年11月24日閲覧。
- ^ 土田健次郎『江戸の朱子学』筑摩書房〈筑摩選書〉、2014年、26f頁。ISBN 978-4480015907。
- ^ 清水則夫「浅見絅斎の「大義名分」の再検討」『日本思想史学』第48巻、2016年、136頁。
- ^ ただし、それは時に抽象的にあるいは相対的で価値基準自体が不安定になりがちである。
関連項目
参考文献
- 鈴木正「名分論」『社会科学大事典 18』鹿島研究所出版会、1974年
外部リンク
「大義名分」の例文・使い方・用例・文例
大義名分と同じ種類の言葉
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