バター 製造方法

バター

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/23 14:24 UTC 版)

製造方法

  1. 牛乳からクリームを分離する。
  2. 攪拌機に入れて攪拌し、脂肪の塊をつくる。
  3. 冷水で洗浄し、脂肪分以外のバターミルクを除去する。
  • なお乳脂肪の粒子同士がくっついて分離することを防ぐ「均質化」(Homogenization)の工程を経ている牛乳についてはクリームを分離することができない。日本で市販されている牛乳については、「ノンホモ(ジナイズド)」等の表示があるものからならば自宅で牛乳から作ることが可能であり、その表示が無い牛乳の場合はこの均質化を受けており、作ることは困難である。
  • ミキサーで撹拌すると瓶に入れて振るよりも手早くできる。また、ホイップクリーム(Chantilly cream)をミキサーで製造中に、過度の撹拌のために脂肪分が固まることがある。

なお家庭でも上記の方法で市販の動物性生クリームから作ることも可能だが、市販品に比べて割高となる。

保存法

10℃以下での保存が望ましいとされる。冷凍庫に入れておくと長持ちする。レストランなどではバターディッシュやバタークーラーなどの容器に入れてテーブルに供されることもある。

歴史

かつてのヨーロッパでバター製造に使われた桶。中にクリームを入れ、中央の棒を上下させて攪拌する

容器に入れた生乳が偶然揺れただけでもバターは出来るため、起源は不明。少なくともメソポタミア文明の時代(紀元前5世紀頃)には存在していた。『聖書』や『マハーバーラタ』(乳脂として)にも記述が存在するので、その時代には存在していたとされる。

そうしてアブラハムはバター(凝乳)と牛乳と子牛の調理したものを取り、彼らの前に供え、木の下で彼らのそばに立ち給仕し、こうして彼らは食事した。 — 『創世記』18:8

バターが作られだした当初は皮製の袋に生乳を入れて木に吊るし、それを棒で打って揺すって作っていたと見られる。その後、バターはケルトヴァイキングベドウィンといった牧畜の盛んな諸民族へと伝わっていった。

バターは古代ギリシア時代にスキタイから地中海世界に渡り、「牛のチーズ」を意味する「ブトゥルム」[6]と呼ばれた。野蛮人の食べ物と見られたこと、オリーブオイルが普及していたこと、チーズと違い保存性が無いことなどから、髪や体に塗る薬[7]、化粧品、潤滑油として、ごく一部で使われていた。

南ヨーロッパでは中世になってもバターはほとんど知られておらず、イタリアの料理書にバターが登場するのは15世紀になってからのことである。ピレネーアルプス山脈以北のヴァイキングとノルマン人の征服を受けた地域からバターは定着し始め、14世紀にかけてオランダスイスへと広がったが、ノルマン系ではない貴族にとっては「野蛮人の食べ物」という見方は変わらず、貧しい者の食べ物とみなされていた。フランスで本格的に食用として利用され出すと、ようやく貴族もバターを食べ始めた。

歴史学者のジャン・ルイ・フランドラン英語版は14世紀から17世紀のヨーロッパにおけるバター・オイル圏を画定しており、現在でもヨーロッパでは「オリーブオイルが主流の地域」と「バターが主流の地域」がはっきりと分かれている。基本的に、バターを保存しやすい寒冷な土地でバターが普及していると見てもいい。それ故、スカンジナビアでは少なくとも12世紀頃にバターの輸出が始まった。

12世紀にサン=ドニキリスト教司祭により、四旬節の期間中にバターを食べることが「断ち」の禁を犯すかどうか、初めて問題提起された。その後、14世紀になって正式に罪になると決められた。既にバターに慣れ親しんでいた地域の貴族や富裕層は禁欲日にバターを食べる贖宥状を取り付け、そのための寄進でカトリック教会は大いに潤った。ジャン・ルイ・フランドランは、16世紀の宗教改革とバター・オイル文化圏の地図上の関連について指摘している[8]

また、バターはランプの油の代用ともされた。ルーアンにあるルーアン大聖堂の「バターの塔」は16世紀の四旬節に実際にランプの油にバターを使っていたことからこう名付けられたとされる[9]

日本では江戸時代徳川吉宗が、明治時代にはエドウィン・ダンがバターを試作している。江戸時代にはごくわずかではあるが生産されており、オランダ語に由来する「ぼうとろ」、あるいは「白牛酪」という名称で呼ばれ、購入者は削って食べたり、湯に溶かして飲んだ[10]。本格的にバターが日本に広まったのは明治維新の後、政府が外国人相手に乳製品を供給するため、酪農の普及を指示してからである。

19世紀末、戦争の混乱でバターの価格が高騰し、ナポレオン3世の命令で、バターの安価な代用品として作られたのがマーガリンである。

用途

チベット仏教で用いられるバターランプ

調味料のほか、パンなどのスプレッドソースの材料、食用油ソテーの焼き油や炒め油等)といった用途に幅広く使われる。特に小麦粉との相性が極めて良い。小麦粉を主原料とした食品、料理であればほぼ何にでも合うが、有塩と食塩不使用で用途が異なることもある。 食塩不使用バターは洋菓子によく使われる。トーストホットケーキなどに使うものは有塩のものが多いが、塩分を控えている人などや、文化圏によっては食塩不使用のものを使う場合もある。

そのほか、様々な食材や香辛料などを加えたバターもある。たとえばバターの中にレーズンを入れたレーズンバターもある。クラッカーの上などにその塊を乗せて食べる場合などに利用される。パセリバター、レモンバター、にんにくバターなどもあり、オードブルのほかにステーキカレーライスなどに添えられる。日本では安納芋(サツマイモの一種)、ウニなどの海産物とブレンドした「食べるバター」が各種製造・販売されている[11]

ラードの代わりとしてラーメンに使われることもある。香港台湾の「ラードごはん」のように、米飯にバターと醤油をまぶして食べる人もいる(バターご飯)。

アメリカではバターを衣で包んで揚げた揚げバターと呼ばれるスナック菓子も作られている。

バタークリーム

バターに砂糖、さらに卵白あるいは卵黄を練り合わせ、空気を入れて撹拌させてクリーム状にしたものはバタークリーム[12]と呼ばれ、ケーキのアイシング(糖衣)や詰め物に使われる[13][14][15]

冷蔵・冷凍設備が普及し、生クリームでデコレーションすることが容易になるまでは、バタークリームを使うことが多かった。ただし、純正のバターではなく、マーガリンやショートニングを使用してクリームに加工したものもあった。

バターランプ

既述の通り、歴史的にはランプの燃料として使用された例もある。またチベット仏教寺院では、蝋燭ではなくバターランプ (Butter lampが使われる[16]


  1. ^ USDA National Nutrient Database
  2. ^ a b デジタル大辞泉
  3. ^ 香料ジアセチルの安全性について 日本香料工業会 2007年9月3日
  4. ^ バターとは|バター研究室 雪印メグミルク
  5. ^ 乳のうまみのかたまり「バターラボ研究編」|食べよう!乳製品|食を知る|明治の食育 株式会社 明治
  6. ^ ギリシア語ラテン翻字: buturum
  7. ^ フジテレビトリビア普及委員会『トリビアの泉〜へぇの本〜 5』講談社、2004年。
  8. ^ トゥーサン=サマ 1998, pp. 118–122.
  9. ^ Soyer, Alexis (1977) [1853]. The Pantropheon or a History of Food and its Preparation in Ancient Times. Wisbech, Cambs.: Paddington Press. p. 172. ISBN 0-448-22976-5.
  10. ^ 歴史の謎を探る会・編『江戸の食卓』61頁、河出書房新社
  11. ^ 【食のフロンティア】食材の風味豊かな「食べるバター」安納芋、ウニ…見た目も鮮やか『日経MJ』2020年3月2日(フード面)
  12. ^ : buttercream
  13. ^ 「バター‐クリーム」『大辞泉小学館
  14. ^ 「bútter・crèam」『ランダムハウス英語大辞典』
  15. ^ 「バタークリーム」『情報・知識事典imidas集英社
  16. ^ 国王陛下主催のバターランプ点火式から小学生のマーチまで―ブータンの人びとも被災者を応援―
  17. ^ USDA FAS『Dairy: World Markets and Trade』
  18. ^ 農水の緊急輸入発動は小手先 バター不足“慢性化”の深刻週刊ダイヤモンド』(2014年11月4日)2017年2月5日閲覧
  19. ^ 「バター輸入1万3千トンに 農水省17年度計画国内生産不足で倍増方針」どうしんweb・北海道新聞(2017年1月27日)2017年2月5日閲覧
  20. ^ 下川耿史 『環境史年表 明治・大正編(1868-1926)』p322 河出書房新社 2003年11月30日刊 全国書誌番号:20522067
  21. ^ a b c クリスマスが迎えられない!” (2021年12月15日). 2021年6月5日閲覧。
  22. ^ a b c d e ノルウェーのバター不足危機は新ダイエット法の流行が原因?” (2011年12月17日). 2021年6月5日閲覧。
  23. ^ トゥーサン=サマ 1998, p. 123.
  24. ^ 印南 敏 監修『Cook 料理全集別巻 材料の事典』p.141 千趣会 1979年発行
  25. ^ 印南 敏 監修『Cook 料理全集別巻 材料の事典』p.143 千趣会 1979年発行


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