脱脂粉乳とは? わかりやすく解説

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だっし‐ふんにゅう【脱脂粉乳】

読み方:だっしふんにゅう

脱脂乳濃縮乾燥して粉末状したもの製菓料理などに使う。スキムミルク


脱脂粉乳


脱脂粉乳

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/08/05 10:06 UTC 版)

脱脂粉乳(だっしふんにゅう)は粉乳の一種で、牛乳からすべての脂肪分を取り除き、ほぼ全ての水分を除去し粉末状にしたものである[1]。英語由来でスキムミルクとも呼ぶが、英語でskim milkといった場合には粉末化する前の無脂肪乳のことを指す。

用途

調整牛乳の成分調整用、食品原料、製菓ホームベーカリー原料、一般家庭の調理用に用いられている。ごく一般的な食材として食料品取扱店で流通しており、メロンパン、マフィンなどの菓子作りにも使われている。

また、ELISAウェスタンブロッティングなどのタンパク質を扱う分子生物学実験では、ブロッキングに用いる安価なタンパク質として頻用されている。

製造

2015年(平成27年)、日本では年間約13万トンが製造されており[2]。内、北海道産が約9割を占める。

学校給食での利用

保存性がよく、蛋白質カルシウム乳糖などを多く含んでおり、栄養価が高いことから、戦後しばらく飲用牛乳の代替として学校給食に飲用として供された[注釈 1]。学校給食に用いられたのは主にユニセフからの援助品である。戦後間もないころの日本の食糧事情を知ったアメリカ合衆国在住の浅野七之助らが日本の子供たちのために実行したララ物資が学校給食の開始に寄与し、ララの援助は1946年11月から1952年6月まで行われた。ユニセフからは1949年から1964年にかけて、脱脂粉乳などの食糧援助を受けた。

  • 保存性や栄養価などを評価されることは多いが、当時の学校給食で用いられた脱脂粉乳の味を知っている者(団塊の世代など)には、これが美味しかったという評は皆無に近く[注釈 2]、これが原因で牛乳に苦手意識を持つようになった人も多い。特に臭いが酷かったといわれるが、これは当時学校給食に供されたものは、バターを作った残りの廃棄物で家畜の飼料用として粗雑に扱われたものだからである[4][5]
  • 多くの児童の口には合わず下痢する子もおり各地で不満が噴出したことから、ラジオで健康相談をしていた医事評論家の石垣純二の呼びかけによりテレビ討論が実現した。しかし、「脱脂粉乳の嫌いな人」の質問に三分の二が手を挙げたにもかかわらず、実際にはこのシーンをカットして放送された。石垣と公開討論した文部省給食課の茂木専枝は、のちに「児童の残した脱脂粉乳で学校の裏の川が真っ白に染まったという話もあるほどだったが、当時の日本では給食用に牛乳を安定して供給できる状態ではなく、輸入の脱脂粉乳に頼るほかなかった」と述懐している[3]
  • GHQ公衆衛生福祉局長サムスの、「子どものうちから味を覚えさせ、日本人の食習慣を変えさせる」という主張に対し、農林省は難色を示したものの、脱亜入欧にみられる欧米崇拝思想もあって厚生省文部省はこれに同調、推進にあたって、脱脂ミルク給食に反対する教師がクラス担任をおろされたり、栄養士が仕事からはずされたり、ビラまきをした人が警察検挙されるなど権力的性格もみられ、また教師を使って学童にミルクを飲むよう強力に指導した例もあり、その際勤務評定体制がものをいった、との証言もある[注釈 3][6]

日本の学校給食では、1950年代半ばから通常の牛乳に切り替わり始め、早いところでは1966年(石崎岳によると1963年)に札幌市では姿を消した。地域にもよるが、遅いところ(沖縄県鹿児島県奄美群島など)では1970年代前半まで飲用で供されていたと推定される。

ただし飲用牛乳の代替として脱脂粉乳が用いられることはまれになったとはいえ、学校等給食用脱脂粉乳自体の消費は現在でもある。関税暫定措置法に基づく関税割当のなかに学校等給食用脱脂粉乳があり、2020(令和2)年度において7,264トン[7] が対象となっている。学校給食のみならず保育所などの給食事業においても一般的に用いられていて、用途はパンの原料の一部やシチューなどの調理用である。

関連項目

脚注

注釈

  1. ^ 戦後に学校給食が再開したのちは「いわしにまさる脱脂粉乳」として給食には欠かせないものであった[3]。現在では生乳に置き換えらているが、魚類の提供は稀であり、子どもの魚嫌いにつながっている。
  2. ^ 北見けんいちの終戦直後を扱った漫画、『焼けあとの元気くん』においては、食糧事情が酷かった当時においてすら、不味くて誰も飲めなかったものだから、相当な(酷い不味さの)ものであると記されている。
  3. ^ 教職員の勤務評定は、余剰となった小麦や脱脂粉乳をひきうけたMSA協定とともに、池田・ロバートソン会談で約束させられたものだった。

出典

  1. ^ 乳と乳製品のQ&A 脱脂粉乳とはどういうものですか?”. nyukyou.jp. 日本乳業協会. 2022年3月29日閲覧。
  2. ^ 牛乳乳製品課 (2016年6月). “牛乳乳製品の生産動向(平成28年5月分)” (PDF). 農林水産省. 2016年8月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年7月7日閲覧。
  3. ^ a b 藤原辰史「脱脂粉乳」『給食の歴史』岩波書店〈岩波新書〉、2018年11月、112-130頁。ISBN 978-4-00-431748-7 
  4. ^ 鈴木猛夫「学校給食とアメリカ余剰農産物」『「アメリカ小麦戦略」と日本人の食生活〈新版〉』藤原書店、2022年12月、81-93頁。 ISBN 978-4-86578-374-2 
  5. ^ 米満裕『「牛の餌」が給食だった?』明治図書出版、1993年9月。 ISBN 978-4184414013 
  6. ^ 藤原辰史「給食が変えた食生活」『給食の歴史』岩波書店〈岩波新書〉、2018年11月、153-167頁。 ISBN 978-4-00-431748-7 
  7. ^ 大臣官房国際部 (2020年4月1日). “令和2年度の学校等給食用脱脂粉乳の関税割当てについて” (PDF). 農林水産省. 2021年2月20日閲覧。

外部リンク


脱脂粉乳

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/30 10:07 UTC 版)

日本の学校給食」の記事における「脱脂粉乳」の解説

深刻な栄養失調解消目的導入された。当初給食は脱脂粉乳とパンという質素なもので、団塊の世代など当時を知る者の間では脱脂粉乳のまずさが、しばしば話題になるお湯で溶かしバケツ入れて配膳されていた。時間の経過とともに表面に膜が張り、とても飲める代物ではなくなるため、最初に一気に飲むのが定石であった昭和32年度より、国策として国産牛乳が利用される事となったが十分な供給流通体制が整う1960年代半ば頃までは学校給食定番で、遅いところでは1970年代前半まで給食出されていた。

※この「脱脂粉乳」の解説は、「日本の学校給食」の解説の一部です。
「脱脂粉乳」を含む「日本の学校給食」の記事については、「日本の学校給食」の概要を参照ください。

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