デーツシェイクとは? わかりやすく解説

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デーツシェイク

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/08/03 04:44 UTC 版)

デーツシェイク
フルコース 飲料
発祥地 アメリカ合衆国
地域  カリフォルニア州南部のコーチェラ・バレー
考案者 ラッセル・ニコル
提供時温度 半凍
主な材料 デーツ牛乳アイスクリーム
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カリフォルニア州インディオにあるシールズ・デーツ・ガーデンの、高さ40フィートの(シールド)を持つ「騎士」のハイウェイ看板

デーツシェイク英語: date shake、デート・シェーク)とは、デーツ(ナツメヤシの実)を使って作られるミルクシェイクである[1][2][3][4][5][6]。この飲み物はカリフォルニア州コーチェラ・バレーで発祥し、特にその地域と深く結びついた名物となっている。

準備法

デーツシェイクは通常、牛乳アイスクリームをベースにしてブレンドして作られる。1杯のシェイクにはおよそ1/2カップ分[注 1]のデーツが使われることがある[7]

もう一つの方法は、1936年にシールズ・デーツ・ガーデンによって考案されたもので、乾燥デーツを小さく砕きデーツシュガーで甘みを加えた「デーツクリスタル」を使用する。このクリスタルはまず水と混ぜてペースト状にし、その後ほかの材料と一緒にブレンドされる[4]。別の方法では、デーツを焼いてから粉砕し、ペースト状にしたうえで、やはり他の材料とともに攪拌するという方法もある[1]

デーツシェイクは、食物繊維鉄分カリウムナイアシンが豊富に含まれている一方、糖分カロリーも高めである[1][7]

歴史

南カリフォルニアのコーチェラ・バレーのデーツ農園

19世紀の終わりから20世紀初頭にかけて、アメリカ合衆国農務省(USDA)の植物探検家たちは、北米で栽培可能な新しい作物を求めて世界各地へ派遣された。探検家たちは北アフリカや中東からナツメヤシを持ち帰り、そのうちの一人、探検家ウォルター・スウィングルは、モロッコオアシスから6本のメジュール英語版・デーツという品種の側枝を持ち帰った。この6本の側枝の標本が、「アメリカ国内で栽培されているすべてのメジュール・デーツの元になっている」とされている[1]。 1904年にその分株がコーチェラ・バレーのメッカ英語版などに到着すると、その気候と環境がナツメヤシの栽培に向いていたため、この地域はたちまち「アメリカ合衆国のデーツの首都」と宣言されるほど同国産のデーツの約90パーセントが生産される一大産地となり、デーツはコーチェラ・バレーの名産・名物となった[8][9]

1910年代から1920年代にかけてミルクシェイクマシーン英語版または「ドリンクミキサー」と呼ばれる卓上据え置き型の電動ブレンダーが市場に出回り、さまざまなフレーバーのシェイクの準備が容易になった

1928年、コーチェラ・バレーのサーマル英語版近くでデーツ農園を営むラッセル・ニコル(Nicoll、またはNichol とも綴られる)とその家族は、今後増加するであろう観光客を見込んでデーツを直売するために道路沿いの小屋を建てた[10]。別の報道源では、ニコルがこの小屋を建てたのは1919年としている[11]。数年後、この小屋は拡張され、デーツ・ショップはニコルの娘の名前にちなんでヴァレリー・ジーン・デーツ英語版と名付けられた。電気と冷蔵設備の導入やミルクシェイクマシーン英語版または「ドリンクミキサー[注 2]」と呼ばれる卓上据え置き型の電動ブレンダーが市場に出回ったことにより[12]、ニコル家はさまざまな材料を手元にあったデーツとブレンドした商品を提供できるようになった[13][14]。ニコルは、中東に「デーツとヤギ乳だけで生活している」という遊牧民が存在するという話を聞き、それに発想を得て乳製品をベースにした飲み物の開発に挑戦し、デーツと牛乳を使ったデーツシェイクを誕生させたと言われている[1]

1924年、フロイドとベス・シールズは、急速に成長していたコーチェラ・バレーのデーツ産業に対抗するため、インディオにシールズ・デーツ・ガーデンを開業した[2][15]

現代では、コーチェラ・バレーには数多くのデーツシェイク店が開業しており、その多くはカリフォルニア州道111号線英語版沿いに位置している[7]。シールズ・デーツ・ガーデンがあるインディオ、キャバゾン英語版のハドリー・フルーツ・オーチャーズなどがよく知られているほか[16]、さらに南下したインペリアル・バレーに位置するメジュールデーツが栽培されている小さな砂漠の町ウエストモーランド英語版もデーツシェイクで知られている[5][8]

デーツシェイクに使われる果実は、味こそは劣らないものの、実を欠いたり形が不揃いであったり、まるごとのデーツそのものの商品販売における形状基準を満たさないものが利用されることが多く[9]フードロスを削減し、農家の増収への一助となっている[2]

この飲み物は、「コーチェラ・バレーの非公式ドリンク」[4]や「パームスプリングスの非公式ドリンク」[5]とも呼ばれている。

デーツシェイクは、コーチェラ・バレーが位置しているリバーサイド郡で開催されるリバーサイド郡フェアおよびナショナル・デーツ・フェスティバル英語版[17]、そしてコーチェラ・バレー・ミュージック・アンド・アーツ・フェスティバルの期間中に人気のある飲み物である[1]

半凍状の冷たいデーツシェイクそのものは、電気、冷蔵装置、電動モーターを使った調理器具などがいち早く導入されたアメリカ合衆国ならではの発祥物であるが、前述の通り、そのルーツは朝食にデーツとヤギ乳やラクダ乳英語版を食することを好む中東に多く住むベドウィンの食文化に発想を得たもので[1][9]、また中東諸国の人々にとってデーツは伝統食材であるうえ、クアルーンに22回登場するほど宗教的にも重要な果物であることから[8]、「逆輸入」の形で中東へ紹介されるとデーツシェイクは湾岸諸国を中心にたちまち人気になり、やはり伝統食材であるラクダ乳を使ったデーツシェイクなども提供されるようになった[18]

2025年の大阪・関西万博では、中東のヨルダン館がデーツシェイクを提供し話題となった[19]

脚注

注釈

  1. ^ アメリカ合衆国の計量カップを元にしているので約120mlに相当。
  2. ^ 米キッチン家電メーカーのハミルトンビーチ英語版社が特許を保持する商標名。

出典

  1. ^ a b c d e f g Bleiberg, Larry (2018年5月2日). “The Worlds Ultimate Milkshake?”. BBC. http://www.bbc.com/travel/story/20180501-the-worlds-ultimate-milkshake 2021年6月7日閲覧。 
  2. ^ a b c Stern, Jane; Stern, Michael (2009). 500 Things to Eat Before It's Too Late. Houghton Mifflin Harcourt. pp. 378–379. ISBN 9780547416441. https://books.google.com/books?id=hs3z0zZWxpYC&dq=%22Date+shake%22&pg=PA378 2021年6月7日閲覧。 
  3. ^ "Indio's Date With Destiny". The Los Angeles Times, 4 December 1990
  4. ^ a b c Feldmar, Jamie (June 2017). “The Cult of the California Date Shake”. Saveur. https://www.saveur.com/california-date-shake-shields/ 2021年6月7日閲覧。. 
  5. ^ a b c Marcus, Lilit (January 2016). “How the Date Shake Became the Unofficial Drink of Palm Springs”. Conde Nast Traveler. https://www.cntraveler.com/stories/2016-01-29/how-the-date-shake-became-the-unofficial-drink-of-palm-springs 2021年6月7日閲覧。. 
  6. ^ Villero, Joselito N. (2020年7月12日). “Westmorland Date Shake and Gift Store”. The Desert Review. https://www.thedesertreview.com/news/westmorland-date-shake-and-gift-store/article_3d4d2c7e-c4a1-11ea-b615-ff8f06727de4.html 2021年6月7日閲覧。 
  7. ^ a b c “California on map with date shake”. Monrovia News-Post. (1991年7月4日). https://www.newspapers.com/image/606326649 2021年6月7日閲覧。 
  8. ^ a b c Mejia, Brittny (2021年5月3日). “During Ramadan, every night is a 'date' night”. The Los Angeles Times. https://www.latimes.com/california/story/2021-05-03/muslim-tradition-break-ramadan-fast-with-dates 2021年6月7日閲覧。 
  9. ^ a b c Lohman, Sarah (2023年10月2日). “How the Coachella Valley became known for its dates” (英語). High Country News. 2025年8月2日閲覧。
  10. ^ "Indio's Date With Destiny". The Los Angeles Times, 4 December 1990
  11. ^ Corn, Elaine (1987年2月18日). “Let me tell you about a place where it is easy to get a date”. The Sacramento Bee. https://www.newspapers.com/image/623254019 2021年6月7日閲覧。 
  12. ^ Hamilton Beach Brands Holding Company - About Our Company - Our History”. www.hamiltonbeachbrands.com. 2025年8月2日閲覧。
  13. ^ McKenney 1938, pp. 13–15.
  14. ^ Date Shake Recipe. Saveur.com
  15. ^ Shields Date Garden Indio, California A giant knight, sex education, date shakes, and Jesus coexist happily in this Coachella Valley desert oasis.”. Atlas Obscura. 2021年6月7日閲覧。
  16. ^ Goldberg, Tod (2024年4月26日). “The Date Shake: The Coachella Valley’s Coolest Concoction” (英語). Palm Springs Life. 2025年8月2日閲覧。
  17. ^ Hong, Joseph (2019年2月15日). “County Fair and Date Festival opens in Indio, celebrating generations of local residents”. Palm Springs Desert Sun. https://www.desertsun.com/story/news/local/indio/2019/02/15/riverside-county-fair-and-national-date-festival-opens-indio/2884499002/ 2021年6月7日閲覧。 
  18. ^ O'Keefe, Faisal (2012年10月26日). “Camel Milk Chocolate and Mideast Dates Permeate Global Markets - Green Prophet” (英語). 2025年8月2日閲覧。
  19. ^ 【万博中継】パビリオン満足度1位!?中東・ヨルダン館で神秘の砂漠体験 死海スパ&サンドアート&デーツシェイクを堪能!【福島暢啓の潜入!今昔探偵】 | 特集”. MBSニュース. 毎日放送 (2025年7月22日). 2025年8月2日閲覧。

参考文献




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