飛行機 運用を支える施設・人員

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飛行機

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/12 04:55 UTC 版)

運用を支える施設・人員

ほとんどの固定翼機離陸着陸にある程度の長さを持つ滑走路が必要である。垂直離着陸機回転翼機も整備や燃料補給が欠かせないため、飛行機はこれらを支える施設を持つ飛行場(民間空港空軍基地)を拠点とする。飛行機の組み立て工場も、完成後にそのまま飛行できるよう飛行場に隣接しているか[15]、滑走路を備えていることが多い。

軽量の軍用機などは野外の不整地で離着陸した例もある(第二次世界大戦中のグラン・サッソ襲撃など)。水上機飛行艇は海面、湖面での離着陸が可能である。また航空母艦は、艦載機艦上機)を運用できる。

飛行機の操縦士パイロット、点検・修理を行う技術者を航空整備士と呼ぶ。

歴史

世界初の飛行機 (ライトフライヤー)

1903年12月17日に米国でライト兄弟ライトフライヤー号による有人飛行を行い、サントスデュモンは、1906年10月22日にヨーロッパで「14-bis」を飛行させた。この飛行機は、独自の手段で離陸した最初の航空機だった。この時代、骨組は木製、翼は布張りが一般的であった[16]

種類

「飛行機の種類」と言っても、分類するための単なるグループ分け、といった程度のものである。ここでは既存の入門書などに倣って、用途と大きさに着目した分類、さらに外観に注目した分類を示す。[17] 付記として代表的な機体を一部例示する[18]

操縦資格はエンジンの種類(レシプロタービン)、エンジンの数(単発か多発)、運用場所(陸上のみか水上)の8等級で分類されている。

なお「複葉機 / 単葉機」は、主翼の枚数で分類する、歴史的な分類法である。現在では1枚が一般的で当たり前になっているので、わざわざ「単葉機」とは分類しないことが一般的。

用途別種類分類

民間機

  1. 練習機ステアマン モデル75
  2. 旅客機
    1. エアバス[注 10]エアバスA320ボーイング747
    2. コミューターリージョナルジェット[注 11]デ・ハビランド・カナダ DHC-8エンブラエル ERJ 145
  3. 貨物機 [注 12]
    1. 郵便機[注 13]
  4. ゼネラル・アビエーション[注 14]
    1. 農業機グラマン アグキャット
    2. ビジネス機三菱MU-2ムーニー
    3. 消防・防災機 [注 15]
      1. 防災機[注 16]
      2. 空中消火機
      3. 救難機
      4. 航空救急機[注 17]
    4. スポーツ機[注 18]セスナ 172
    5. レース機
      1. 曲芸飛行[注 19]ピッツ・スペシャル
      2. エアレース機=ジブコ エッジ540
  5. 実験機
  6. 研究機

軍用機

本稿では武器を積んでいない非武装機でも軍事目的として利用されている場合は軍用機としている。

  1. 戦闘機F-15 イーグルミラージュ2000MiG-21
  2. 爆撃機アブロ バルカンツポレフTu-22MバックファイヤーロックウェルB-1
  3. 偵察機ロッキードSR-71
  4. 早期警戒機グラマンE-2Aホークアイ
  5. 早期警戒管制機E-3 (航空機)
  6. 空中指揮機=E-4 (航空機)E-6 (航空機)
  7. 輸送機[注 20]川崎C-1ロッキードC-130ハーキュリーズ
  8. 空中給油機ボーイングKC-135ストラトタンカー
  9. 哨戒機新明和PS-1ロッキードP-3Cオライオン
  10. 救難機
  11. 実験機
  12. 研究機
  13. 試験機[注 21]
  14. (マルチロール機)=F-16以降現在主要各国戦闘機は多用途機化が進んでいる。

政府機関機

非軍用の国際機関(国際連合など)、多国政府共同運用(EUなど)、中央政府機関、自治領地方政府地方自治体などの機体。任務は民間機・軍用機の一部と被る場合がある。

  1. 政府専用機(要人移動用。日本国政府専用機、米国エアフォースワンなど)
  2. 消防・防災機
  3. 空中消火機
  4. 救難機
  5. 航空救急機[注 22]
  6. 輸送機
  7. 警戒機[注 23]
  8. 哨戒機[注 24]
  9. 試験機[注 25]
  10. 実験機
  11. 研究機
  12. 観測機[注 26]
  13. 地図海図等用撮影機
  14. 郵便機[注 27]

形状別種類分類

翼の数

複葉機単葉機三葉機多葉機タンデム翼機

翼の位置

航空機の主翼の形状(薄緑の部分)
左から矩形(テーパー)翼P-51
後退翼F-100
前進翼X-29
三角翼F-102
可変翼F-111
可変翼(斜め翼)(AD-1)

単葉機における分類。詳細は単葉機を参照。

低翼、中翼、高翼(貨物の出し入れが容易なため輸送機に多い)、パラソル翼(飛行艇に多い)

主翼の形

平面形での分類=矩形・後退・前進・三角・可変・楕円・オージー。

エンジンの数

単発の場合通常ジェット機は胴体内、レシプロでは機体の最前部もしくは最後部に取り付けられる。双発以上の場合ほとんど位置は主翼か胴体後方である。現在軽飛行機や一部の作戦用・訓練用軍用機以外は故障のリスクを考えエンジンは双発以上である。
単発機・双発機(ツインジェット)・三発機トライジェット)・四発機(クワッドジェット)・多発機

エンジン種類

  1. レシプロ
  2. タービン(ターボ、ターボファン、ターボプロップ、ラム、パルス)
  3. ロケット[注 28]音速機実験機ベルX-1Me-163コメート秋水ナッターナッターは邀撃ミサイルではあるが有人有翼であるので飛行機として例示記載。
  4. 電動機

推進方式

プロペラ機における分類。

推進式牽引式プッシュプル方式

降着装置

前輪式・尾輪式・尾橇式・タンデム式・フロート・艇体(飛行艇)・ソリ

操縦席の数

単座式・複座式

スピードによる分類

音速を基準として亜音速、遷音速(マッハ0.75~1.25)、超音速(マッハ1.25以上)に分類。[注 29]

離着陸方法による分類

垂直離着陸機、短距離離陸垂直着陸機、垂直/短距離離着陸機、短距離離着陸機、通常離着陸機、CATOBAR機や短距離離陸拘束着艦機(航空母艦カタパルトアレスティング・ワイヤーアレスティング・フックを使用)、空中発進機、着陸機

その他、雑学など

日本語の「飛行機」という名称の初出

日本語の「飛行」という表現は、森鷗外が「小倉日記」1901年明治34年)3月1日条に記したのが初出だとされる[注 30]


注釈

  1. ^ なお、一部には「飛行機がなぜ飛ぶかという原理は、科学的に解明されていない」とする風説があるが、これは誤りで、実際には100年以上も前に解明されている(リンク切れ。山中浩之 (2014年5月14日). “「飛行機がなぜ飛ぶか」分からないって本当?”. 日経ビジネス. http://business.nikkeibp.co.jp/article/interview/20140514/264597/ 2014年5月17日閲覧。 
  2. ^ 『世界大百科事典』はあくまで一般向けの百科事典なので、「構造」という名の章で扱っているが、「構造」には様々な意味があり、(専門家的に言えば)この文の「構造」は、「構成」と読み替えたほうが誤解が生じないかも知れない。
  3. ^ トラス構造は「枠組み構造」とも呼ばれており、ロンジロン(強力縦通材)が縦横の支柱で連結されたプラット・トラス構造とロンジロン(強力縦通材)が斜めの支柱で連結されたワーレン・トラス構造がある。
  4. ^ モノコック構造、セミモノコック構造は骨組み構造と外板とで、強度を分担する構造であることから応力外皮構造と呼ばれている。
  5. ^ 外板と芯材の材料には、合成樹脂または金属が使用されるが、荷重は主に外板が負担するので、芯材は荷重に弱い構造となっている。また、芯材の形状には、泡状・波状などが使用されている。代表的な形状としては、六角形の蜂の巣状(ハニカム)を使用しており、これを使用したものを、ハニカム・サンドイッチ構造と呼ばれている。
  6. ^ エンジンの回転速度、タブのトリム舵角度、フラップの角度位置などの表示装置が操縦席に装備される。
  7. ^ 索の動きを、クォードランドとトルク・チューブを介して、プッシュ・プル・ロッドに伝達するトルク・チューブ、プッシュ・プル・ロッドの動きの方向を変えるベルクランク、セクタと呼ばれる部品を動かすことにより、索に動きを伝達するセクタ、操作輪に繋がったケーブルドラムを回すことで索を巻き付けたり巻き戻したりするケーブルドラムがある
  8. ^ 降着装置の脚部は、ほとんど現在の飛行機は、前輪式の三支点輪取り付け方式である。主脚は重心位置の主翼に取り付けられるのが主流である。
  9. ^ 降着装置(ランディング・ギア)を格納する部分(ホイール・ウェル)は、胴体を切り欠いた後に平板形の圧力隔壁により構成されている。
  10. ^ 本来エアバスはワイドボディ旅客機のカテゴリだったが、近年はエアバス社の台頭により、他社のワイドボディ機をエアバスと表現しなくなってきている。
  11. ^ 中小型機により幹線空路を補完する航空輸送サービス路線
  12. ^ 旅客機を改造した機体が多い
  13. ^ 郵便物を運ぶために使用される航空機。現代では貨物機や旅客機の空きスペースに積むため専用機は無い。郵便事業が民間に開放され、小荷物宅配事業などと共に民間が行う国もある。
  14. ^ 航空運送事業以外で使用される機体。航空写真、報道、遊覧、自家用に用いられる民間機
  15. ^ 警察や消防などから防災・救急任務などを請け負う民間機。
  16. ^ 災害状況を空中から確認する機体。
  17. ^ ドクターヘリが多い。
  18. ^ 競技用ではなく遊覧飛行など個人が娯楽とし飛行させる機体
  19. ^ エアレース用と曲芸用は共通の機体が多い
  20. ^ 一般に人員輸送も任務に含む。
  21. ^ 空港・レーダー施設などの試験・検定
  22. ^ ドクターヘリが多い。
  23. ^ 警察・陸上国境警備・麻薬輸入警戒など
  24. ^ 哨戒任務を軍以外の政府機関が行う国もある。
  25. ^ 空港・空路施設などの試験・検定
  26. ^ 観測対象は地上・水域・気象・宇宙など
  27. ^ 郵便物を運ぶための政府専用航空機。現代では政府機関の郵便専用機は無い。
  28. ^ 「飛行機のエンジンはピストンエンジンかガスタービンエンジンに限る」とした見解がある、従ってその場合はロケットエンジンを搭載している機器スペースシャトル等は飛行機の範疇外となる(※なおミサイルは当初から除外)。(出典:中山直樹 佐藤晃共著『飛行機の基本と仕組み』秀和システム2005年12頁)
  29. ^ 「マッハ数」は音速(気温15℃1気圧の地上で340.3m/s。約1,225㎞/hour)を基準とした比率で速度を表す方法。なお、プロペラ機はどれも「亜音速」に分類される。ピストンエンジンの最高速度はマッハ0.55程度だからである。
  30. ^ この日、森(当時、第12師団軍医部長)を訪問した矢頭良一が「飛行機の沿革を説く」とある[19]。ただし構想していた飛行機械そのものは飛行船であった可能性もあると考えられている[20]。先行の二宮忠八は「飛行」という表現を用いていた。

出典

  1. ^ 広辞苑』第五版 p.2234 【飛行】内【飛行機】
  2. ^ 平凡社世界大百科事典』23巻1988年版 p.409-417【飛行機】 項目執筆担当木村秀政・導入部p.409-410
  3. ^ 木村秀政編『初歩の航空ハンドブック』 1951年、山海堂
  4. ^ 小林昭夫著『紙ヒコーキで知る飛行の原理』講談社 1993年刊 ISBN 978-4061327337
  5. ^ a b c d e f 平凡社『世界大百科事典』23巻2007年改訂版 p.412-421【飛行機】【飛行の原理】
  6. ^ a b 平凡社『世界大百科事典』23巻 p.415-420【飛行機】【性能と構造】
  7. ^ 中山直樹・佐藤晃共著『飛行機の基本と仕組み』秀和システム 2005年 13頁 ISBN 4798010685
  8. ^ 藤原洋編『飛行機構造』社団法人日本航空技術協会 2012年4月1日第3版第1刷 p4-p8 ISBN 4-902151-02-2
  9. ^ 小林昭夫『紙ヒコーキで知る飛行の原理』講談社、1993年刊69頁
  10. ^ 鈴木真二『飛行機物語』中公新書1694、2003年刊126頁
  11. ^ 飯田誠一『飛ぶ・そのしくみと流体力学』オーム社、1995年
  12. ^ 中山直樹・佐藤晃共著『飛行機の基本と仕組み』秀和システム 2005年 14頁 ISBN 4798010685
  13. ^ 「電動航空機 次世代へ注目/騒音も振動も少なく」『毎日新聞』朝刊2018年9月13日(科学の森面)2018年9月16日閲覧。
  14. ^ 石川幹武編『日本航空整備㈱マニュアル』1959版
  15. ^ MRJの展示施設、予約開始 11月末オープン朝日新聞DIGITAL(2017年10月31日)2018年9月16日閲覧。
  16. ^ Telegram from Orville Wright in Kitty Hawk, North Carolina, to His Father Announcing Four Successful Flights, 1903 December 17”. World Digital Library (1903年12月17日). 2013年7月21日閲覧。
  17. ^ 中山直樹・佐藤晃共著『飛行機の基本と仕組み』秀和システム 2005年刊 18-24頁 ISBN 4798010685
  18. ^ 例示基準機体としては最もポピュラーな図典『大図典View』講談社1984年刊掲載機を優先した。
  19. ^ 明治時代に開発された我が国最初の計算機「自働算盤」 電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review 2010年 4巻 2号 p.105-112, doi:10.1587/essfr.4.105
  20. ^ 「矢頭良一の機械式卓上計算機「自働算盤」に関する調査報告」(かはく技術史大系(技術の系統化調査報告書))p.286


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